週3日でも給与は倍!? アメリカで活躍する日本人トラベルナースに実情を聞いてみた

看護師が働ける場所は多様化し、人手不足の病院や施設で有期契約で働く人もいます。アメリカでも同様に、40年以上前から各地でトラベルナースとして働く看護師が医療現場を支えています。今回は、アメリカで正看護師の資格取得後にトラベルナースとして活躍するMさんに話を聞いてみました。

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トラベルナースとは?

トラベルナースとは、有期雇用で場所や時間を自身で調整しながら働く看護師のことです。1970年代から1980年代にかけて、アメリカで季節的に発生する看護師不足を補うため、一時的に就労する看護師を受け入れたことをきっかけに普及しました。日本では「応援ナース」とも呼ばれています。

就労するためには人材紹介会社に登録後、勤務地や給与など希望条件に合う施設や病院に応募し、6〜13週など有期契約を結びます。応募条件には、病棟での勤務経験が3年程度必要です。

働きたい場所を自由に選べるほか、就労した先々で観光を楽しめたり、働くタイミングやシフトなども決められたりするのが特徴です。

>トラベルナースに関する詳しい内容はこちらの記事でチェック

ドラマ化される「トラベルナース」とは? 働き方とメリット・デメリットを経験者に聞いてみた

アメリカで看護師として働くMさん

ニュージャージー州に住む看護師のMさんは、3年前からトラベルナースとして活躍しています。一生食いっぱぐれのない職業に就きたいという理由から、アメリカで准看護師・正看護師の資格を取得し、夢だったトラベルナースになったMさん。海外で資格取得から就職するまでの道のりや、トラベルナースとして働くメリット・デメリットを聞きました。

Mさんのプロフィール

人手不足の病院と契約して働くトラベルナース

──「トラベルナース」という働き方について教えてください。まず、就労先はどうやって決めるんでしょうか? 

Mさん:アメリカにはトラベルナースの派遣エージェンシーが100以上あって、登録して気になる病院や施設があれば応募します。オンラインで面接があり、受かれば数日後には就労という流れです。一度トラベルナースとしての就労経験があれば問題ないのですが、初めての場合には、無数の手続きをする必要があります。主に税金関係や信用調査などです。

あと、事前に健康診断を受けたり、山のような課題やオンライン授業を履修したりしなければなりませんでした。

──トラベルナースの就労先はすぐに決まるものなのでしょうか?

トラベルナースになる以前は准看護師も看護師もなかなか就職できずに苦労してきましたが、病院勤務の経験を積んでからは比較的スムーズに就職できています。

初めてトラベルナースとして働いたのは2020年、ワシントン州シアトルの病院でした。日本に一時帰国しているときに国際電話で面接をして働くことになったんです。

コロナ案件が出始めてからは求人数も増えて就労しやすくなりました。給与も通常の倍以上を提示されるようになりましたね。それ以降は、シアトル、カリフォルニア、バージニア、ニュージャージーと4つの地域で働いてきました。

アメリカの看護師ってICUなど専門分野を極める傾向があって、コロナで手術が延期になったり、診療科によっては閉鎖されたりして辞めた人も結構いたんです。コロナが落ち着いた今でも人が戻らず不足状態なので、就職には困らない状況です。

──就労先はどのように選んでいますか?

たいていの人は給与の高さで選んでいる印象ですが、私は勤務地と職場の人間関係、雰囲気を重視しています。どこに住みたいかで絞り込み、気になる病院があればエージェントを介して職場の雰囲気や、トラベルナースを受け入れる体制が整っているかなどを確認してもらいます。以前、受け入れ当日まで把握されておらず、就労開始から2週間ほぼ業務ができなかった経験があるので……。

──なるほど。就労先への引越しや家探しはどうしているんですか?

私の場合、車に積みきれる量の荷物しか持っていないので、自分で運転して次の職場がある土地へ向かいます。なかには実家に荷物を預けたり、持ち家があるためパートナーや子どもと離れて単身赴任で働いたりする人もいます。

住居はエージェントが紹介してくれるか、Airbnbの物件やアパートを自分で探して契約します。トラベルナース向けの住居紹介サイトもありますよ。

リストラに就職難。それでも諦めなかった

──そもそも、看護師を目指したきっかけは何ですか?

アメリカで日系の旅行代理店に勤めていたときに、リーマンショックのあおりを受けてリストラにあったことがきっかけです。失業後はフロリダのレストランで住み込みのバイトをしていたんですが、日本でも就職氷河期で苦労したので「これからは景気に左右されない仕事に就こう」と心に決めました。最初は、郵便局員か看護師になろうって考えていましたね。

たまたま見ていた新聞で准看護師の学校の試験が3日後にあることを知って、すぐに申し込んだんです。そしたら受かって、学校側に金銭面の不安を伝えたら奨学金が使えるとのことだったので入学しました。

──そこから順調に准看護師の資格を取得され、最初は老人ホームに入職されたんですね。

本当は病院で働きたかったのですが、そのときはぜんぜん求人がなかったんです。言語にハンデのある私だけでなく、ネイティブのクラスメイトも就職に苦労していましたね。准看護師の職場はほとんどが老人ホームで、私もなんとか老人ホームでの仕事に就いたのですが、週に2回のシフト制でした。

──准看護師の学校を卒業後、働きながら正看護師の資格を取得されています。学業との両立は大変ではなかったですか?

准看護師になってから、1年くらい経って正看護師の学校に入りました。出席日数やテストの点次第ですぐ落第してしまうので厳しいんですが、日本の看護学校よりは楽なんじゃないかと思います。学科では准看護師の内容とかぶっていたので、ストレート(1年)で正看護師の試験に合格できました。アメリカの場合、現場に出てからのほうがきついと思います。

──正看護師になって晴れて病院勤務に?

それが、このときも想像を絶するくらい就職先がなくて。老人ホームではまだ求人があったんですが……。応募しても応募しても面接にすらこぎつけず、一時は日本食の惣菜店などで働いてなんとか食いつないでいました。

就職難を語るMさん
求人が出てくると懸賞に応募するような気持ちで、ひたすら応募していたというMさん

──壮絶な就職活動で心が折れそうになったことは……?

准看護師の学校に行っているときにトラベルナースの存在を知り、自分も絶対になるという夢がありました。旅行好きな私にぴったりの働き方だ! と思っていたので、病院勤務を何としても勝ち取って応募条件を満たそうと必死でした。あとは何とか生き延びてやる! というサバイバル精神ですね(笑)。

──そこからどのようにして正看護師としての仕事に就いたのでしょう?

あまりに就職できなかったので、戦略を練ったんです。当時住んでいたニューヨークは求人はあるものの競争が激しく、私のような未経験者には厳しい状況でした。なので、過疎地へ範囲を広げて探してみたところ、モンタナにある病院が求人を出していると聞き、有休を取って面接に行きました。3年働く契約で内定をもらえたのですが、配属先はまたしてもリハビリの部署で病棟勤務の経験にはならず……。しかも入職後半年で配属部署が売却されちゃったんです。

そこを辞めて2ヶ月間転職活動をして、ニューオーリンズの病院に就職でき、ようやく夜勤専従として一般病棟で働くことができました。

トラベルナースのメリットは自由度の高さと給与

──夢だったトラベルナースになってみて、実際はどうでしたか?

想像よりはるかに良かったです。給与の高さも働く場所を自由に選べるって、私にとってメリットばかりです。デメリットをしいて挙げるとすれば、安定していない点でしょうか。あとは、職場が変わるたびにエージェントや病院とのやりとりをするのは面倒ですね。

10年くらいトラベルナースを続けている人から、「ある時点で燃え尽きて嫌になる」と聞いたことがあります。

インタビュー中のMさん
夢のトラベルナースとなり、ICUでの経験を積むという新たな目標もできたMさん

──今後もトラベルナースを続けていく予定ですか?

いったんトラベルナースは中断して、正規の職員として病棟勤務に戻りICUを経験しようと思っています。

というのも、シアトルでコロナ病棟にいたとき、人工呼吸器やECMO(エクモ)につながれた人と接する機会があったんです。それでICUでの経験を積みたいと思いニュージャージー州にある病院に応募したところ就職が決まりました。これもトラベルナースの経験を積んだおかげかなと思っています。

しばらく働いたらトラベルナースとしてICUでも働けるので、また始めたいですね。次は、ハワイかアラスカに行ってみたいです。

──これからトラベルナースになろうと思っている人に、メッセージをお願いします!

旅が好きで、いろんなところを働きながら見てみたいという人がいれば、こんな良い働き方はないと思います。お給料も良いですし。ちょっとでも興味があればぜひチャレンジしてください!

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