目次
1.病児保育とは
病児保育とは、子どもが病中や病後で保育所などに預けられない場合に、一時的に預かり保育・看護するサービスのことです。子ども自身の病気のほか、保護者の病気や仕事により自宅での保育が難しいときにも利用できます。
病児保育は児童福祉法で定められており、自治体が実施体制の整備を進めています。厚生労働省の調査によると、病児保育を実施する施設数は3,130ヶ所です(2018年時点)。全国には約4万の保育所があり、約13の保育所に対してひとつの病児保育施設がある計算となります。
病児保育の種類
病児保育には主に以下の種類があります。
子どもの状態 | 主な実施場所 | |
---|---|---|
病児・病後児対応型 | 病中・病後 |
|
体調不良児対応型 | 保育中の体調不良 | 保育所 |
非施設型(訪問型) | 病中・病後 | 自宅 |
病児・病後児対応型は病中や回復不十分のために集団保育ができない子どもを対象に、病院や保育所などに併設された専用スペースで看護師や保育士がケアします。病児対応型の実施場所は7割以上が診療所や病院で、病後児対応型は約6割が保育所です。
体調不良児対応型は保育施設で体調を崩した子どもを一時的に預かり、看護師などが保育をおこないます。ほかの子どもへの感染を防ぐため、医務室など保育室とは別の部屋で実施します。加えて、地域の子育て家庭や妊婦などを対象にした相談支援もサービスの一つです。ほぼすべての体調不良型は保育所や認定こども園などで実施されています。
非施設型(訪問型)は病児・病後児を対象に、看護師や保育士が自宅を訪問し一時的に看護・保育します。職員が一人で訪問するため、看護師の場合には医療行為もできますが保育士の場合は保育のみとなります。
病児保育の施設数・利用者数の推移
いずれの種類においても施設数は増加傾向にあり、なかでも体調不良児対応型が最も多くなっています。施設によっては定員以上の申し込みがあり希望日に利用できないことや、地域による設置数の差などの課題を抱えていることから、今後の拡充が期待されます。
2.病児保育の預かり基準
対象年齢と対応可能な病気
病児保育が利用できる子どもの年齢は自治体ごとに異なり、生後2ヶ月ころから未就学児までまたは小学3年生までを対象としているところがほとんどです。国が対象児童の拡大を求めていることから、小学6年生までとしている自治体もあります。
子どもがかかりやすい風邪や発熱のほか、喘息などの慢性疾患、骨折などの外傷性疾患も対象となることが一般的です。
インフルエンザや感染症の預かり基準
インフルエンザやロタウイルス、新型コロナウイルスなどで発症間もない時期には、ほかの子どもに感染する恐れがあるため利用不可としている自治体もあります。受け入れ可能な病気についても自治体ごとに異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
3.病児保育を利用するには
病児保育を利用するにはまず利用登録が必要です。登録後、子どもが発病したら医療機関を受診し、子どもの症状や処方内容、入院不要の旨などを記載した病児・病後児保育医師連絡票(診療情報提供書)をもらいます。
病児保育施設に希望日時や子どもの病状について相談し、受け入れ可能と判断されれば施設または訪問にて保育開始となります。
利用料の相場は2,000〜2,500円
利用料金は自治体ごとに決められており、一日あたり2,000〜2,500円が相場です。また、多くの自治体では生活保護世帯や住民税非課税世帯は無料となっていたり、ひとり親は減額されたりと負担軽減制度が設けられています。
病児保育の運営費用には国や自治体から補助金が出るため、安価で利用できるようになっています。
利用時間は7〜18時が多い
利用できる時間帯は7時から18時としているところがほとんどです。また、全体の約6割が土曜日に開所しています。とくに体調不良型では、土曜日に開所しているところが約8割、日曜日にも開所しているところが1割近くとなっています。
4.病児保育で働く職員と仕事内容
人員配置基準
病児保育は施設の種類によって職員配置が異なり、それぞれの基準は以下のとおりです。
病児・病後児対応型 |
|
---|---|
体調不良型 |
※看護師1人につき子ども2人程度まで |
非施設型 |
※上記いずれか1人以上 |
病児・病後児対応型の場合、看護師と保育士の常駐が必要ですが、隣接する病院などからすぐに対応が可能であれば常駐でなくてもよいとされています。
非施設型で働くためには「病児・病後児 保育(訪問型)研修」を修了している必要があります。また、看護師や保育士以外にも市区町村長が認めた家庭的保育者も従事可能です。いずれかの職種1人に対し、預かる子どもは1人です。
仕事内容
病児保育で働く看護師の主な業務は、子どもの病状を観察し必要なケアをおこなうことです。回復が遅れたり二次感染が起きたりしないよう衛生面の管理も徹底します。また、症状が落ち着いた子どもの遊び相手をすることも業務のひとつです。
保育士の主な業務は子どもの保育や遊び、食事の提供です。訪問の場合は保護者が食事やおやつを用意します。日々異なる子どもに対応するため、状況や特性を素早く把握し、臨機応変に対応することが必要です。
5.セーフティーネットを維持するために
病児保育を実施する施設の数は増加傾向にあるものの、キャンセル率が高く利用児童数が不安定などの理由から経営赤字に陥っている事業所が約6割に上るという調査報告もあります。また、病児・病後児の保育ができる看護師や保育士の確保に課題を感じている事業所もあります。
病児保育は、子育て世帯が安心して子どもを育てるために必要なセーフティーネットです。事業所が安定的に運営し、利用しやすいサービスとするためには交付金の拡充や職員の処遇改善が期待されます。
参考