1. 医療ソーシャルワーカー(MSW)の仕事内容
医療ソーシャルワーカー(MSW)とは、医療機関などにおける福祉の専門職で、病気になった患者や家族を社会福祉の立場からサポートする人のことを指します。
病気になると、本人も周りの方も経済的にも心理的にも悩みや課題がたくさん出てくるもの。そうした方の相談に応じ、よりよい社会生活を送れるように支援をおこないます。例えば、医療的・社会的な制度の活用方法の提案から地域の社会資源の紹介、入院・退院の調整、自宅の環境整備までさまざまです。
具体的には、入院時に症状に合わせて病室を調整したり、退院時に各部門と連携して日時を決めたりします。
自宅に戻る場合は自宅の生活環境を把握し、必要に応じて福祉用具業者と連携し、自宅の設備改修や生活スタイルの提案をおこなうこともあります。自宅に戻ることが難しい場合は患者に合った施設を紹介したり、入所の調整をおこなったりします。
また退院時の面談やカンファレンスも開催し、事前に調査した患者の状況を報告したうえで、患者が退院後も問題なく生活できるように病院内外の関係者に必要な支援について協力を求めます。
2. 医療ソーシャルワーカーの給与
ジョブメドレーに掲載中(2024年12月時点)の医療ソーシャルワーカーの平均給与は、雇用形態別にそれぞれ次のようになりました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
雇用形態 | 給与上限 | 給与下限 | 総平均 |
---|---|---|---|
正職員(月収) | 27万5,008円 | 21万8,712円 | 24万6,860円 |
パート・バイト(時給) | 1,795円 | 1,310円 | 1,553円 |
3. 医療ソーシャルワーカーに資格は必要?
医療ソーシャルワーカーになるために特別な資格は必要ありませんが、多くの医療機関が国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士を応募要件にしています。
これには、医療法が改正されたことでこれまで以上に質の高い支援が求められるようになったことが理由として挙げられます。社会福祉士しかおこなえない「保険加算業務」の新設もその一例です。
医療と福祉の連携強化が求められるなか、医療ソーシャルワーカーの存在意義はますます高まっているといえます。
受験資格を得るには、大学などで指定の科目の履修し、医療機関や福祉施設などで実習をおこなう必要があります。試験に合格したら社会福祉士や精神保健福祉士として登録をおこないます。そして各医療機関に応募し採用されれば、晴れて医療ソーシャルワーカーとして働くことができます。
4. 医療ソーシャルワーカーは狭き門?
ジョブメドレーに掲載されている医療ソーシャルワーカーの求人は全国で約960件(2024年12月現在)。東京都で約183件、地方では数件程度の募集しかなく、ほかの医療・福祉系の職種と比較してかなり狭き門といえるでしょう。
5. 医療ソーシャルワーカーのやりがい
各医療機関で働いている医療ソーシャルワーカーの人数は数名、多くても10数名程度しかいないようです
社会的にも需要が高まっている医療ソーシャルワーカーですが、現在は病院も採用枠を積極的に広げられないというのが実状のようです。しかしながら、医療ソーシャルワーカーの仕事は社会的にとても意義があり、挑戦する価値の大きい仕事です。気になる方は、次の記事も参考にしてみてください。
▼医療ソーシャルワーカーについてはこちらもチェック!
【コロナ禍インタビュー】医療ソーシャルワーカー 39歳 男性の場合
医療ソーシャルワーカーは福祉のプロ 入職を目指す人へ伝えておきたいこと
6. 医療機関に就職する方法
医療ソーシャルワーカーとして就職するにはどうすればいいのでしょうか。
求人の数そのものが少ないため、できるだけ多くの病院に応募しましょう。ただし、病院によって医療ソーシャルワーカーに求める資質や仕事内容が異なるため、求人内容をよくチェックしてからの応募することをおすすめします。
新卒で就職できたら理想的ですが、できなくても諦めずに求人情報をチェックし続けましょう。その時点で医療ソーシャルワーカーの募集をおこなっていない医療機関でも、将来的に募集を始める可能性があります。
それまでは医療や福祉関係の仕事に就き、アピールできる経験を積みましょう。医療ソーシャルワーカーには医療だけでなく、社会福祉全般に関する専門知識や経験が必要です。高齢者福祉や障害者福祉の仕事は利用者本人やその家族の支援をすることが多いため、医療ソーシャルワーカーに活かせる経験となるでしょう。
7. あるほうが良いスキルや心構えは?
医療ソーシャルワーカーとして働くには、どのようなスキルや心構えが必要なのでしょうか?
医療ソーシャルワーカーの仕事は対話が基本となります。相手の考えや行動の背景をしっかりと理解し、細やかな配慮をおこなうことが求められます。話以外にも、表情や行動のわずかな変化から、相手の気持ちを汲み取れるよう経験を積みましょう。
患者や家族には病気やその対処法について不安をかかえている方が多くいらっしゃいます。優しい言葉をかけることが必要なときもあれば、進むべき方向について自分の考えをはっきり示すことが必要なときもあります。さまざまな状況に臨機応変に対応する柔軟性も必要です。
医療や福祉に関する公的支援制度や社会資源に関する知識も必要です。制度については幅広く勉強してみてください。社会資源については地域の公共機関から高齢者福祉施設や事業所、コミュニティなどの情報を調べ、集めていくことになります。病院内だけでなく、利用者の生活環境を整えることも業務の一部です。少しずつ勉強し、経験を積んでください。
8. 実際に病院のどんなところで働いているの?
医療ソーシャルワーカーには看護師のような制服がなく、事務職の方と同じ服装であることが多いため、病院に行ったとしても医療ソーシャルワーカーを見分けることは困難です。病院によって名称は異なりますが、「地域医療連携室」、「医療福祉相談室」といった名称の部署に所属することが多いようです。
9. それぞれの医療機関の特徴を事前に調べよう!
救急患者や重篤な患者などのための急性期病院や、慢性的な状態の患者や長期的な治療が必要な患者のための慢性期病院では、患者さんの置かれた状況はまったく異なります。当然医療ソーシャルワーカーに求められる役割も変わってきますので、自分に合った病院はどちらなのかよく考えましょう。
急性期病院は救急患者や重篤な患者が多いため、限られた時間で支援を考え、スピード感を持って対応することが求められます。そのため、ハキハキした性格の方やたくさんの仕事をこなしたい方に向いています。
慢性期病院は治療の継続が必要な方、とくに高齢の方が多いため、時には人生を通じた支援をおこなうこともあります。一人ひとり丁寧に対応したい方やその人の人生に継続して関わりたい方が向いています。
どちらも社会的にやりがいのある仕事であり、どちらが正解ということもありません。自分の性格ややりたいことと向き合ったうえで選びましょう。「どちらも経験したうえで決めたい」ということであれば、それもOKです。
10. 医療ソーシャルワーカーの復職ポイント
結婚や出産、育児などさまざまな理由で一度現場から離れ、復帰を考えている方もいるかと思います。医療ソーシャルワーカーはさまざまなケースに対応した経験こそが財産です。ブランクがあったとしても、医療ソーシャルワーカーとしての勤務実績があれば、大きなアピールポイントとなるでしょう。
復職する際に押さえておきたいのは、勤務条件です。医療ソーシャルワーカーは、利用者の要望に応じて動くことが多いため、勤務状況が不規則になることもあります。特に小さなお子さんがいらっしゃる方は、夜遅くの勤務や土日勤務を避けるなど、無理のなく仕事を続けられる勤務体制を整えることも重要です。内定承諾前に採用担当者と交渉してみるのもよいかもしれません。
11. リファラル採用を有効活用
自分が卒業した大学の先生や先輩、友人を介したリファラル採用の活用もオススメです。信用できる人物からの紹介を重視している医療機関もあるため、「医療ソーシャルワーカーの仕事を探しているのですが……」と聞いてみると意外な道が開けるかもしれません。
インターンシップを活用する方法もあります。見学や実習、体験など医療機関にアプローチする方法があればどんどん活用してみてください。インターンシップ先にそのまま就職することは珍しい話ではありませんので、試してみる価値はありますよ。