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個別学習で「自立」を支える放課後等デイサービス
トライクは、八王子・相模原エリアを中心に展開する、放課後等デイサービス(以下:放デイ)です。小学生から高校生までを対象に、個別学習支援に特化したサービスを提供しています。
利用者の半数は通常学級に通う子どもたちです。集団授業ではカバーしきれない一人ひとりの学習の「つまずき」を個別で支えます。一対一の学習を通じて感情のコントロールやコミュニケーション力を育み、将来の自立につなげています。

トライクでは、学習につまずいた単元まで戻る「さかのぼり学習」を取り入れています。苦手意識を丁寧に紐解くことで、「できた!」という実感を積み重ねていきます。
また、e-ラーニング教材も活用し、紙と鉛筆が苦手な子どもでも楽しみながら学べる環境を整えています。
こうした学習支援の仕組みをつくったのが、学校の教員から放デイに転職し、トライクの立ち上げに携わった和田さんです。元教員だからこそ見えた学習支援のあり方と、現場の声から生まれた働きやすい職場づくりについて伺いました。
話を聞いた人

事業部長 トライク橋本室長 和田 久美子さん
新卒で中高一貫校の数学講師として2年間従事。「生徒一人ひとりに向き合いたい」という想いから、2017年に株式会社ココミライトへ入社。学習支援に特化した放課後等デイサービス「トライク」の立ち上げに携わる。現在は事業部長としてトライク全教室を統括しつつ、橋本教室の室長・児童発達支援管理責任者として現場の支援方針の決定もおこなう。
教員時代に感じた、集団教育のもどかしさ

──和田さんはもともと学校で教員をされていたそうですね。なぜ放デイへ転職されたのでしょうか。
和田さん:新卒で中高一貫校に入職し、中学生の数学の授業を担当していました。担任は持たず、授業と授業後の質問対応が主な業務でしたが、補講などで個別に関わる時間が増えるにつれ、「この子はここでつまずいているんだな」という気づきが増えていきました。
教室には、授業についていくのが難しい生徒や、理解に時間がかかる生徒もいます。個別に補習をすれば理解が進みますし、わかった瞬間の表情を見ると私もうれしくなります。ただ、40人ほどのクラスでは、どうしても全体の進行を優先せざるを得ません。気になる生徒がいても十分に時間は割けず、「もっと一人ひとりを見たい」というもどかしさを抱え続けていました。
一人の子どもに深く関われる環境はないかと考え、教員免許が活かせる仕事を探したときに、放デイの存在を知りました。
──個別指導といえば学習塾もありますよね。
確かに塾も検討しました。ただ、一般的な学習塾のゴールは「合格」や「成績向上」です。私がやりたかったのは、勉強を含めた「その子の人生」を支えることでした。
実は教員を目指したのも、勉強そのものよりも、友達と過ごしたり、部活や行事を通じて人間関係を学んだりする“学校という場所”が好きだったからなんです。
だからこそ、学習を通じて生活力や生きていくためのスキル、楽しみや気づきを与えることが大切だと思っていました。それなら、塾よりも福祉の枠組みのほうが自分のやりたいことに近いと感じたんです。
「やりたい」を形に。ゼロから設計した個別支援
──転職して、まずはどのような業務からスタートしたのでしょうか?
入社した当初、まだトライクはなくて、同じ会社が運営する別の放デイ「ハッピーテラス」に配属されました。
転機になったのは、入社3年目が過ぎたころのコロナ禍でした。学校の一斉休校で子どもの学びの場がなくなり、保護者の方からも「学習の遅れが心配だ」という声が多く寄せられたんです。
そこで、教員免許を持っていた私が試験的にマンツーマンの学習支援を始めたところ、あっという間に予約が埋まり、手応えを感じました。勉強がわからないことは、子どもにとっても家族にとっても切実な悩みなんだと改めて実感しました。
──そこから個別学習に特化した事業が生まれたんですね。
はい。「一対一でないと行きたがらない」「ここなら勉強できる」という声も多くいただき、そうしたニーズに応える形で、今のトライクが生まれました。
私は事業の立ち上げ段階から携わらせてもらい、授業の流れや教材を一から作っていきました。例えば、読みが苦手な子には音読から始めたり、ひらがなカードを使ったり。一人ひとりに合わせて授業を組み立てられるよう、いくつものマニュアルを準備したんです。
「みんなで音読」「みんなで文字を書く」などの集団授業では対応できない発達に凸凹がある子どものために、教員時代にやりたくてもできなかったことを、ここで形にしていきました。
自信を育てる「さかのぼり学習」

──トライクに通われているのは、どんなお子さんが多いのでしょうか?
小学生が中心です。ただし、学習支援という特性上、ほかの放デイに比べて中学生・高校生の利用も多いですね。また、利用者の半分以上は通常学級に通っている「グレーゾーン」と呼ばれるような、集団生活で少し困難を感じているお子さんです。
──学習面では、具体的にどんな困りごとを抱えているのでしょうか?
例えば、読み書きに極端な苦手意識がある中学生がいました。利用開始当初は「メッセージ」という言葉を「め」「っ」「せ」「ー」「じ」と、一文字ずつしか読めない状態だったんです。
そこで私たちは、まず短い単語から始めて、次は2〜3語の文章へ、と段階的に練習を重ねました。結果、普通の本が読めるようになり、本人もすごくうれしそうでした。
逆に、得意な科目をどんどん進めたいという小学生もいます。その場合は、本人と保護者の希望を聞いたうえで、中学生の内容まで先取りして、自信につなげていくこともあります。
──学校や塾の授業とは、アプローチが違いそうですね。
そうですね。学校では集団授業のため、全員が同じペースで進む必要がありますが、トライクでは一人ひとりに合わせたカリキュラムを組んでいます。
また、塾の目的は学力を伸ばすことですが、ここでは学習を通じて感情のコントロールやコミュニケーション力を伸ばす支援をしています。将来社会に出たときに困らないよう、その子の自立を見据えた視点を大切にしているんです。

──具体的にどんな授業をおこなっているんですか?
学年に縛られず、つまずいた地点の少し前まで戻って学び直す「さかのぼり学習」を採用しています。
初回の面談で保護者の方から苦手なことを詳しくヒアリングして、そこから支援計画を立てます。例えば、割り算でつまずいている小学6年生の場合、割り算の前に習う掛け算から始めることもあります。
いきなり苦手に向き合うのは大変なので、苦手なところの少し前からスタートして気持ちを盛り上げる流れにしています。「わからない」を放置せず「できた!」に変えることで、学習以外の生活面でも自信を取り戻していくんです。
──勉強が苦手な子どもにとって、通い始めのハードルが高そうです。拒否感を持つお子さんはいませんか?
勉強をする場所というイメージで来るので、最初は身構えていますね……。でも体験に来て、e-ラーニング教材「すらら」を触ってみると、ゲーム感覚で楽しんでくれる子どもが多い印象です。

──教材のほかに学習環境づくりで工夫していることはありますか?
できるだけ、その子の特性に合わせた環境を意識しています。例えば学校では、授業中に突然立ち上がると先生から注意されてしまいますよね。トライクでは「立つときは声をかけましょう」というルールがあり、一声あれば授業中に立ち上がっても大丈夫なんです。
また、保護者の方からテスト対策を依頼された場合などを除いて、「いつまでにこの単元を終わらせる」という期限は設けていません。本人が理解に時間がかかっているなら、その日の内容を無理に終わらせるのではなく、一緒に立ち止まる。逆に早くできたら先に進めるなど、その子に合わせて柔軟に対応しています。
準備も日誌も勤務時間内に。残業ゼロのスケジュール
──トライクで働く職員の1日のスケジュールを教えてください。
基本的には11時出勤、20時退勤です。授業は13時30分から19時20分までで、6つのコマ(各50分)があります。1日最大15名の生徒を5名のスタッフで分担するため、1人が担当するのは2〜4コマ程度です。

──授業前や授業を担当しない時間は何をされているんですか?
授業前の11時から13時30分は、研修や支援会議などに充てています。空きコマは次の授業の準備や日誌の記入などを各自おこないます。授業を担当する時間がスタッフによって違うので、休憩はそれぞれの空きコマを使って取っています。
また、6コマ目の授業終了後は、片付けや日誌の記録、ミーティングなどをしています。授業後に事務作業の時間を確保しておくことで、残業時間をなくし、持ち帰り仕事をゼロにできるんです。
「スタッフの心身の健康がサービスの質に直結する」という会社の方針があるので、ワークライフバランスや仕事に前向きに取り組める環境にはこだわっています。
──働きやすさという点では、どのような制度や福利厚生がありますか?
年次有給休暇に加えて誕生日休暇や、子育て支援として子どもが小学校に入学するまで利用できる時短勤務制度、あとは、仕事に関わる資格取得にかかる費用は会社が負担する制度などがあります。
また、急な体調不良などにも対応しやすいのも働きやすいポイントだと思います。八王子・相模原エリアに3事業所(2025年12月取材時点)あるので、ほかの教室からもヘルプを呼びやすいんです。
未経験でも独り立ちできる、3ヶ月の「教育実習」

──未経験可で求人募集をされていますよね。子どもと関わる仕事が未経験で始める方もいるのでしょうか?
もちろんです。教員免許や心理系資格を持つスタッフも多いですが、新卒の方や異業種から転職してきた方も活躍していますよ。そうした未経験の方でも無理なく現場に入っていけるよう、とくに研修には力を入れていて、入社後3ヶ月間の研修期間を設けています。
学校の「教育実習」のようなイメージで、最初の1ヶ月は1日1〜2コマを担当し、先輩スタッフが授業に同席して見守ります。また、空いている時間は別のスタッフの授業を見学してもらいます。
そこから少しずつコマ数を増やして、段階的に慣れていく仕組みです。ほかの放デイ出身の方からも、「こんな手厚い研修は初めて」と驚かれていますね。
──研修が終わったあとのフォロー体制についても教えてください。
はい、独り立ち後も私が定期的に授業を見てアドバイスをしています。また、毎日のミーティングでは悩みを相談する時間がありますし、月に1回ほかのスタッフの授業を見学してもらっています。
見学時は、ギスギスしないように良いところだけをフィードバックするルールにしています。ダメ出しをするのではなく、お互いの良い部分を学んで高め合えるような環境づくりを意識しています。
授業は個別、支援はチームで

──和田さんはもともと現場で指導員をされていましたが、管理職になってどんなことを意識されていますか?
一番重視しているのは人間関係です。1事業所あたり正職員が5人、パートが2名と小規模な事業所なので、人の配置にはかなり気を遣っています。
スタッフが多い職場なら、苦手な人がいても距離を置けますが、小規模だとそうはいきません。だからこそ、相性や年齢構成を見ながら配置したり、困ったときはすぐに相談してもらえるよう、日頃から教室を見てまわったりしています。
また、年に2回の個別面談で、一人ひとりの悩みや希望を丁寧に聞くようにしています。
──在籍されているスタッフはどんな人が多いですか。
子どもが好きなのはもちろんですが、集団教育にモヤモヤを感じていた人や、一人ひとりに向き合いたいという気持ちを持った人が多いですね。
年齢層でいうと20代のスタッフが多いですが、50代のスタッフも在籍しています。できるだけ多くの年代の人と関われたほうが生徒にも良いので、特定の年代で固めないよう人員配置は調整しています。
──2026年2月には八王子市に七国教室もオープンすると伺いました。事業所が増えていくなか、これまで大切にしてきた「支援の質」をどのように守っていこうと考えていますか?
そうですね。今は3事業所なので、ある程度目が届くのですが、事業所が増えていくにあたって、どうしても私一人では対応しきれない部分が出てくるかと思います。
ただ、支援の質は維持したいので、授業の組み立て方や会議の時期などは、引き続き全事業所で連携して統一する予定です。また、今後も事業所を増やすことを計画しているので、採用にも力を入れていきたいです。
──採用ではどんなことを重視していますか?
授業は個別ですが支援はチームでおこなうので、まずはコミュニケーション力を重視しています。生徒の小さな変化を共有し合ったり、困りごとを抱え込まずに相談し合ったり。「みんなで支援する姿勢」を持てる方を採用の軸にしています。
そのうえで、保育士や心理職、就労支援の経験者など、幅広い分野の方を歓迎しています。多様なバックグラウンドがチームの強みになると考えているからです。
──ありがとうございます。最後に、求職者の方へメッセージをお願いします。
トライクは、1日の定員10名に対し、スタッフは5〜6名の小規模な事業所です。だからこそ、集団教育では難しい一人ひとりと向き合う支援が実現できています。
個別の支援に興味を持たれた方はぜひ、見学にいらしてください。