1. 失業手当を受け取るための条件は?
失業手当は誰でも受け取れるわけではなく、次の2つの条件の両方を満たしている必要があります。
条件1|ハローワークで求職の申し込みをおこない、積極的に転職活動している
失業手当を受け取ることができるのは、仕事に就く意志と能力がある方です。具体的にはハローワークで求職の申し込みをしたうえで、求人に応募したり面接を受けたりすることが必要です。そのため、次のような方は失業手当の給付対象となりません。
仕事に就く意志と能力があると認められない方
- けがや病気の治療のため、すぐには仕事に就けない方
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには仕事に就けない方
- 定年などで退職し、しばらく休養するつもりでいる方
- 結婚を機に退職し、しばらく家事に専念するつもりでいる方、など
条件2|雇用保険の被保険者期間が過去2年間で通算12ヶ月以上ある
失業手当を受け取るには、雇用保険の被保険者期間*が離職前の2年間で通算12ヶ月以上なければなりません。
ただし、会社都合で仕事を辞めざるを得なかった方や自己都合であっても正当な理由があった方はその期間が半分(1年間で通算6ヶ月以上)に軽減されます。
会社都合で仕事を辞めざるを得なかった方
- 倒産や解雇(懲戒を除く)
- 事業所が廃止・縮小された
- 事業所の休業が3ヶ月以上続いた
- 事業所の移転で通勤が難しくなった
- いやがらせ・ハラスメントがあった
- 妊娠や出産を理由に不当な扱いを受けた
- 雇用契約の更新を希望したが叶わなかった
- 当初提示された労働条件と実際の労働条件が大きく異なった
- 賃金がもともと支払われていた金額の85%未満に減った
- 賃金の3分の1を超える金額が期日までに振り込まれなかった
- 離職前半年以内に時間外労働が長時間におよぶ月があった(3ヶ月連続45時間以上など)、など
自己都合でも正当な理由があった方
- けがや病気
- 身内の介護
- 配偶者の転勤
- 妊娠・出産・育児、など
*参考:ハローワーク|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
2. 失業手当はいくら受け取れる?
失業手当の金額はおおよそ離職前の給与の50〜80%で、離職前の給与水準が低かった方ほど給付率が高く設定されています。それでは、詳しい計算方法について確認してみましょう。
STEP1|賃金日額を計算する
まず、次の計算式で賃金日額を求めます。
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与*の合計額 ÷ 180日
ただし、賃金日額には上限と下限があるため、上記の計算式で求めた金額が上限額を上回る場合には上限額を、下限額を下回る場合には下限額を賃金日額とします。
賃金日額の上限と下限(2024年8月時点)
離職時の年齢 |
上限額 |
下限額 |
---|---|---|
29歳以下 |
14,130円 |
2,869円 |
30〜44歳 |
15,690円 |
|
45〜59歳 |
17,270円 |
|
60〜64歳 |
16,490円 |
STEP2|基本手当日額を計算する
次に、STEP1で求めた賃金日額に所定の給付率を掛けて基本手当日額を求めます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 50〜80%
基本手当日額の給付率(2024年8月時点)
賃金日額 | 給付率 |
---|---|
2,869円以上、5,200円未満 | 80% |
5,200円以上、12,790円以下*1 | 80%〜50%*2 |
12,790円超*1 | 50%*3 |
*2:離職時の年齢が60〜64歳の場合は80〜45%
*3:離職時の年齢が60〜64歳の場合は45%
なお、基本手当日額にも上限と下限がありますのでご注意ください。
基本手当日額の上限と下限(2024年8月時点)
離職時の年齢 |
上限額 |
下限額 |
---|---|---|
29歳以下 |
7,065円 |
2,295円 |
30〜44歳 |
7,845円 |
|
45〜59歳 |
8,635円 |
|
60〜64歳 |
7,420円 |
STEP3|支給総額を計算する
最後に、STEP2で求めた基本手当日額に給付日数を掛けると、失業手当の支給総額がわかります。
支給総額 = 基本手当日額 × 給付日数
給付日数は仕事を辞めた理由が自己都合か会社都合かによって異なります。
自己都合で離職した場合の給付日数
離職時の年齢 |
雇用保険の被保険者だった期間 |
||
---|---|---|---|
10年未満 |
10年以上 |
20年以上 |
|
65歳未満 |
90日 |
120日 |
150日 |
自己都合で仕事を辞めた場合、給付日数は90〜150日となります。給付日数が最長の150日となるのは雇用保険の加入期間が20年以上ある方なので、多くの場合、給付日数は90日、長くて120日となります。
会社都合で離職した場合の給付日数
離職時 |
雇用保険の被保険者だった期間 |
||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 |
1年以上 |
5年以上 |
10年以上 |
20年以上 |
|
30歳未満 |
90日 |
90日 |
120日 |
180日 |
─ |
30歳以上 |
90日 |
120日 |
180日 |
210日 |
240日 |
35歳以上 |
90日 |
150日 |
180日 |
240日 |
270日 |
45歳以上 |
90日 |
180日 |
240日 |
270日 |
330日 |
65歳未満 |
90日 |
150日 |
180日 |
210日 |
240日 |
会社都合で仕事を辞めた場合、給付日数は90〜330日となります。上の表を見ると、子育てなどで出費の多い30〜50代が手厚く保障されていることがわかります。ただし、20代の場合、給付日数は90日、長くても120日となるケースがほとんどです。
このように失業手当を受け取れる期間は多くの場合3〜4ヶ月程度ですので、転職活動は計画的におこなう必要があります。
3. 失業手当はいつから受け取れる?
失業手当は申請してすぐに受け取れるわけではありません。特別な事情のある方で約1ヶ月、通常は約2ヶ月かかります。それでは、失業手当を申請してから受け取るまでの流れについて詳しく確認してみましょう。
失業手当を受け取る流れ
退職後、10日〜2週間程度で以前の勤務先から離職票が届きますので、まずはそれをハローワークに持参して求職の申し込みをおこないます。このときハローワークの職員と面談をおこない、受給資格が決定します。
それから待機期間を経た7日後に雇用保険受給説明会に出席し、雇用保険受給資格者証を受け取ります。初回の失業認定日は受給資格決定から約4週間後となりますので、指定された日に必ずハローワークに行って失業認定を受けてください。
ここまでは全員共通ですが、そのあとは仕事を辞めた理由によって初回の失業手当を受け取るまでの流れが異なります。
・会社都合で辞めた方、自己都合でも正当な理由があった方
初回の失業認定の1週間後に失業手当が振り込まれます。7日間の待機期間がありますので、初回の失業手当は20日分前後になります。これ以降も4週間に一度ハローワークで失業認定を受けることで、最大28日分の失業手当を受け取れます。
・自己都合で辞めた方、懲戒解雇された方
待機期間7日間のあと、さらに2ヶ月間の給付制限期間があります。そして給付制限期間の明けた2回目の失業認定のあとに初めて失業手当が振り込まれます。初回の失業手当は給付制限期間が明けてから2回目の認定日前日までの分となりますので、15日分前後になります。これ以降は会社都合で辞めた場合と同じ動きとなります。
用語解説|失業認定とは?
失業認定とは、失業手当を受け取る条件の一つである「仕事に就く意志と能力がある」ことを認めてもらうことを指します。具体的には4週間に一度の失業認定日に雇用保険受給資格者証を持参してハローワークに行き、転職活動やアルバイトの状況について申告します。このときに虚偽の申告をすると不正受給とみなされてしまいますので、必ず正直に申告しましょう。
失業手当の申請に必要な書類
失業手当を申請するには次の書類が必要です。以前の勤務先から離職票が届くまでに10日〜2週間程度かかります。届いてから慌てることのないよう、その間にほかの書類を準備しておきましょう。
・雇用保険被保険者離職票
退職から10日〜2週間後に前の勤務先から届く
・個人番号を確認できる書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票のいずれか
・身元を確認できる書類
運転免許証、マイナンバーカードなど
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
ネット銀行や外資系銀行は振込先として指定できない場合があるため注意
・証明写真(2枚)
おおむね半年以内に撮影したもの、正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.4cm
*参考:ハローワーク|雇用保険の具体的な手続き
4. 失業手当受給中にアルバイトをしてもいい?
「失業手当を受け取るまで2ヶ月以上も収入がないなんて、生活できない」「以前の給与の6割程度では心もとない」という方も多いかもしれません。失業手当を受け取ろうとするとき、受け取っているときでもアルバイトはできますが、次の4つの点に注意しましょう。
1. 待機期間中の7日間はアルバイトをしない
失業手当の申請をしたあとの待機期間中にアルバイトをすると、その分だけ待機期間が延長されてしまいます。アルバイトをするのは待機期間を終え、初回の失業認定を受けたあとにしましょう。
2. 1日の勤務時間を4時間以上にする
1日の勤務時間が4時間未満だと「内職または手伝い」と見なされ、収入額によっては失業手当が減らされてしまいます。アルバイトをするなら1日の勤務時間が4時間を超えるものを選びましょう。ただし、1日4時間以上働いた日は支給対象になりません。
3. 1週間の勤務時間を20時間未満にする
通常、1週間に20時間以上働くと雇用保険の加入対象となります。つまり「就職した」と見なされ、失業手当を受け取れなくなる可能性があります。シフトを決めるときには1週間の勤務時間が20時間を超えないよう調整してもらいましょう。
4. 失業認定日に必ず申告する
4週間に一度の失業認定日に虚偽の申告をすると「不正受給」と見なされ、受け取った失業手当の3倍の金額を返さなくてはなりません。働いた日数や収入は正確に申告しましょう。
失業手当は求職者の方が安心して転職活動に集中できるように支給されるものです。アルバイトが本分になってしまっては本末転倒ですので、メリハリをつけて活動しましょう。
5. 失業手当受給中に扶養に入れる?
仕事を辞めたあとに気がかりなのが健康保険や年金をどうするかです。とくに健康保険は任意継続や国民健康保険に切り替えると保険料の負担が大幅に増えてしまいます。収入がないのに高い保険料を払わなくてはならないのは経済的につらいですよね。
配偶者がいる方であれば「扶養に入れてもらう」という選択肢がありますが、それには年収130万円未満である必要があります。健康保険や年金の扶養は確定金額ではなく“見込み金額”で判断されるため、基本手当日額が一定額以上だと扶養には入れません。厚生年金の場合は3,612円と定められていますが(参考:日本年金機構)、健康保険の場合は加入先によって誤差(3,610〜3,612円)がありますので、必ず確認してください。
なお、失業手当の給付制限期間中(2ヶ月間)については収入がないため扶養に入ることができます。
扶養について詳しくはこちらの記事で解説しています。
6. 失業時には公的支援制度の活用を
再就職先の目処が立っていないまま仕事を辞めたときには、なるべく速やかにハローワークで失業手当の申請をしましょう。
失業手当は申請から一定期間をおかないと受け取ることができませんので、申請が遅れるとその分支給も遅れてしまいます。失業手当を受け取ることができるのは仕事を辞めてから原則1年以内ですので、申請が遅れたがために「もらえるはずのお金がもらえなかった……」といったことのないようにしましょう。
また、再就職先が決まったときに給付日数が3分の1以上残っていれば、再就職手当(就職祝金のようなもの)も受け取れます。早く就職すればするほど再就職手当の金額も高くなるので、転職活動のモチベーションも上がりますね。
さらに、ハローワークでは再就職に向けてさまざまな職業訓練もおこなっています。職業訓練は原則無料で受講することができ、介護職員初任者研修や実務者研修といった介護関連の資格を取得することもできます(参考:都立職業能力開発センター)。
失業中は不安も多いですが、自分に合った仕事、安心して働ける職場を見つけるためにこのような公的支援制度も積極的に活用しましょう!
参考
- ハローワークインターネットサービス|雇用保険手続きのご案内
- ハローワークインターネットサービス|基本手当について