1.「年収の壁」は税金・社会保険料の境目の額
「年収の壁」とは、税金や社会保険料の負担が生じたり、税金の控除額が減ったりする境目となる年収額を指します。いくらまでは税金がかからない、いくらからは社会保険料を払うといった段階を「壁」にたとえた表現で、正式な制度名ではありません。

働く本人に影響する年収の壁には大きく分けて「所得税の壁」と「社会保険料の壁」があります。アルバイトやパート、時短勤務などで「壁」付近の収入になりそうな場合は、超えないように調節したほうが負担を少なくできることがあります。また、配偶者や親に扶養されている場合、これらの「壁」は働く本人だけでなく、養う人の負担にも影響します。
※この記事では、とくにことわりのない限り年収=収入が給与だけの場合の収入金額として扱います
「壁」の理解に役立つ用語解説
これから登場する「年収の壁」に関係する用語を説明します。知っておくとわかりやすいですが、ここを飛ばして各見出しから気になる「壁」の説明を読んでもOKです。
所得税
企業などから給与を受け取る場合、1年間に受け取った給与収入から給与所得控除を差し引いた金額を「給与所得」といいます。所得税は稼いだお金全体ではなく、給与所得から基礎控除などの所得控除を差し引いた課税所得金額をもとに計算されます。
社会保険料
いざというときや老後の生活を支える健康保険、年金、介護保険をまとめて「社会保険」といいます。社会保険料は収入額に応じて細かく負担額が分かれているほか、家族の扶養に入ることで、自分では健康保険料を負担しなくてよい場合もあります。
控除
控除とは税金を計算する際に、収入や所得などから一定の金額を差し引く仕組みです。給与収入から差し引く「給与所得控除」や、所得から差し引く「所得控除」などがあります。所得控除には配偶者控除や配偶者特別控除、特定親族特別控除などがあり、控除額が大きいほど、税金がかかる所得は少なくなります。
2.所得税の壁は「178万円」に引き上げ

所得税の壁とは、年収がある金額を超えると税負担が発生する境目を意味します。従来、この「壁」は103万円に設定されてきました。低所得層の税負担軽減や働き控え解消のため、2025年分は160万円に変更されました。
2026年分では、この「壁」はさらに引き上げられ、収入が給与だけでほかに所得がない場合178万円になります。なお、2026年と2027年分は178万円ですが、2028年分からは変更になる見込みです。
3.社会保険加入の「106万円の壁」は撤廃

「年収の壁」には社会保険料の負担が生じる境目もあります。とくに企業などに勤務する場合、健康保険や厚生年金などの賃金要件が年収約106万円以上だったことから、「106万円の壁」と呼ばれてきました。
ただし、この「106万円の壁」は最低賃金の上昇などを背景に廃止が議論されるようになり、2025年には年金制度改正法が成立しました。これにより、「106万円の壁」は2026年10月に撤廃されました。
▽「106万円の壁」について詳しくはこちら
4.「130万円の壁」は社会保険の扶養から外れる

社会保険の扶養とは、配偶者や親などに養われている人が働く場合、年収が一定未満であれば、健康保険料の負担なしで保障を受けられる仕組みです。
原則として年収130万円以上になるとこの扶養から外れるため、自身で社会保険料を負担しなければなりません。
扶養に入る収入条件
- 年収130万円未満*
- 同居の場合、収入が扶養する人の半分未満
- 別居の場合、収入が扶養する人からの仕送り額未満
*60歳以上または障害者の場合は、年収180万円未満
*19歳以上23歳未満の場合は、年収150万円未満
5.働く若者が「159万円の壁」を超えると養う人に影響

親などが19歳以上23歳未満の親族を養っている場合は、特定親族特別控除の適用を受けられます。これは学生など年収136万円超197万円以下(2026年・2027年分)の人を対象に、養う人の所得から最大63万円を控除する仕組みです。
2026年・2027年分は控除の対象になる年収が引き上げられており、年収159万円まで控除を満額受けられます。また、年収159万円を超えると控除額は段階的に下がり、年収197万円を超えるとゼロになります。
6.配偶者特別控除は「207万円の壁」を超えるとゼロに

配偶者特別控除も2026年・2027年分の対象年収が引き上げられています。控除を満額受けられるのは年収169万円までで、年収169万円を超えると、働く本人を養う納税者の控除は段階的に減少していきます。そして、年収207万円を超えると控除はゼロになります。
この金額を超えると本人と配偶者の双方にとって、労働量を減らすメリットは少なくなります。なお、控除を受ける配偶者の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者特別控除は適用されません。
参考
- 首相官邸|いわゆる「年収の壁」対策
- 国税庁|所得税のしくみ
- 国税庁|No.1191 配偶者控除
- 国税庁|No.1195 配偶者特別控除
- 国税庁|No.1199 基礎控除
- 国税庁|No.1410 給与所得控除
- 国税庁|No.1177 特定親族特別控除
- 国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
- 国税庁|令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
- 厚生労働省|「年収の壁」への対応
- 厚生労働省|年金制度改正法が成立しました