身寄りのない高齢者支援に新制度
2026年6月19日、改正社会福祉法が参議院本会議で可決・成立、身寄りのない高齢者への支援が国の事業として整備されることになりました。具体的には、認知症の高齢者や知的障害者などを支援する「福祉サービス利用援助事業」を拡充し、身寄りのない高齢者を加えた新たな第2種社会福祉事業を創設します。
今回の改正の背景には、一人暮らし・身寄りのない高齢者の増加があります。65歳以上の一人暮らしは増加傾向にあり、2025年には約816万人でしたが、2050年には約1,084万人まで増加する見込みです。
なかでも、三親等内の親族がいない「身寄りのない高齢者」の増加は顕著で、日本総研が2024年に実施した調査では2024年の約286万人から、2050年には約448万人まで、1.5倍以上増加するとされています。

日本総研|増加する「身寄り」のない高齢者より作成
国の事業化は決まりましたが、実際の介護現場ではどう受け止められているのでしょうか。また、人手不足が続くなかで誰が新事業の担い手となり得るのか。NPO代表として長年、介護サービスを運営してきた峯尾武巳さんに聞きました。
話を聞いた人

特定非営利法人介護の会まつなみ理事長
峯尾 武巳さん
身体障害者療護施設、知的障害児施設、特別養護老人ホームの勤務を経て、2003年から2018年まで神奈川県立保健福祉大学にて介護福祉学を指導。現在はNPO代表として、さまざまな介護サービスを運営し、訪問介護も提供している。
民間先行でトラブル増加
峯尾さんは「遅すぎたくらいですが、制度化は歓迎です」と話します。
峯尾さん:これまで公的な枠組みがなく、民間の有料サービスが先行していたため、トラブルもありました。頼れる人がいない高齢者への対応は“社会福祉”そのもので、儲かる儲からないに関係なく社会福祉法人が担うべき仕事です。
多死社会・無縁社会を迎えるなか、国が福祉サービスとして整備することで、安心して利用できる環境が整うのではないでしょうか。
実際に国民生活センターには、民間の高齢者サポートサービスについての相談が寄せられており、トラブルへの注意も呼びかけられています。
国民生活センターに寄せられた相談
- 預託金として100万円を支払うように言われた
- 思ったより高額な契約になった
- 契約するつもりのなかったサービスも含まれていた
- 契約内容がよく分からず高額なので解約したい
国民生活センター|身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意 より作成
これまで、家族・親族や身近に頼れる人がいない場合、身元保証や緊急連絡先を得られず、スムーズに入退院・入退所ができないケースがありました。そのため、新事業ではどのような暮らしぶりの高齢者でも必要な福祉サービスを受けられるよう、以下のサポートを無料または低額で提供します。
- 日常生活支援:
福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理、定期的な見守り、重要書類の預かりなど - 入院入所などの手続支援:
病院や介護施設の手続支援、緊急連絡先の提供、費用の支払代行など - 死後事務の支援:
葬儀・納骨・家財処分の契約手続支援、行政官庁への届け出、公共料金の支払い先への連絡など
「大規模法人が社会貢献の一環として担うのが現実的」
介護分野では人手不足が続き、既存サービスであっても事業を続けられないケースがあります。また、介護現場では介護職やケアマネジャーが無報酬で引き受ける「シャドウワーク」の負担も指摘されています。このような環境のなかで、新たな事業の担い手は誰になるのでしょうか。
峯尾さん:小さな社会福祉法人は手が回らないのが現実だと思います。全国展開するような規模の大きな法人が、社会的責任を自覚し、社会貢献の一環として担い手となってほしい。法人にとっても地域住民の信頼と安心を得られるメリットが出てくるはずです。
法人同士がエリアを分けて連携することで、「この地域に住んでいれば安心だ」と感じてもらえるような仕組みになるのではないでしょうか。
参考
- 厚生労働省|社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要
- 厚生労働省|身寄りのない高齢者等への対応、成年後見制度の見直しへの対応について
- 国民生活センター|身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意
- 内閣府|令和6年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況(第1節 3)
- 日本総研|増加する「身寄り」のない高齢者