メンタルヘルス不調からの再スタートに伴走する会社
2017年に広島県で創業した株式会社Rodinaは、メンタルヘルスの不調から休職・離職した人の社会復帰を支援する会社です。リワークを、Return to workではなくRestart to work(再スタート・再設計)と考え、困難な状況にある人が再び自分らしく働けるようサポートしています。
企業理念に「Create New Value “ないものはつくる”」を掲げる同社では、創業当時まだ世の中に普及していなかったリワーク事業を、約8年間で全国50拠点以上にまで拡大。これまでに、2,000人以上の復職や再就職を支援してきました。

Rodinaでは、休職や離職中の悩み相談から、社会復帰に向けた心身のサポートまで、幅広いプログラムを提供しています。新たな福祉の形として注目されるリワーク支援とはどのような仕組みなのか。その仕事内容や事業の特徴について、サービス管理責任者(以下、サビ管)と東日本エリア統括部長のふたりに話を聞きました。
話を聞いた人
サービス管理責任者 Kさん
新卒で就労継続支援B型事業所に入職し、生活支援員を経験。その後、同じ法人が運営する共同生活援助へ異動し、サービス管理責任者としてのキャリアを開始。2021年に株式会社Rodinaに入社し、リワークセンターにて個別支援計画の作成やスタッフの教育をおこなう。
東日本エリア統括部長 Yさん
アパレルや保育業界にて、新規拠点のオープニングや運営管理を経験。社会貢献度の高さに魅力を感じ、2022年に株式会社Rodinaに入社。東日本エリアにあるセンターのマネジメントや人材育成を担当している。
不安と期待を抱え「リワーク支援」へ挑戦

──Kさんは前職も障害者福祉に関わる仕事をしていたそうですが、Rodinaに転職したきっかけは何だったのでしょうか?

前職では、就労継続支援B型と共同生活援助を10年ほど経験しました。仕事にはやりがいを感じていましたが、次第に業務がルーティン化し、自分のスキルが伸び悩んでいると感じるようになったんです。
そんなとき、友人がメンタルヘルス不調で休職したことをきっかけに、自分にできることはないかと模索するなかでRodinaに出会いました。
当時は、メンタルヘルス不調によって休職を余儀なくされている人たちに向けた支援がまだ十分とはいえない状況でした。だからこそリワーク事業の可能性を感じ、これまでの支援経験やスキルが活かせるのではないかと思い転職を決めました。
──Rodinaについて調べるなかで、どんなところに魅力を感じましたか?

Rodinaはチェコ語で“家族”という意味があり、「家族や大切な人に勧められるサービスをつくる」という想いに共感しました。
──これまでとは異なる分野への挑戦に、不安はありませんでしたか?

リワーク支援自体がまだ世の中に知られていなかったので、具体的にどんな支援をするのかという不安はありましたね。
──Yさんは保育業界からの転職だそうですね。どんな経緯だったのでしょうか?

前職では保育所の新規開設に携わっていました。待機児童の問題が解消されていくうちに、福祉とビジネスを両立させる難しさを痛感するようになったんです。
そんなとき、スカウト経由で誘いを受け、初めてリワーク事業について知りました。話を聞くうちに、福祉とビジネスを成り立たせている点に興味を持ち入社を決めました。

私は前職がNPO法人だったこともあり、Rodinaに対して入社前は数字に追われているイメージがあったんですが、働いてみると“支援の質”を大切にしている会社なんだと実感しました。

リワーク事業は、国の障害福祉サービスのひとつに位置付けられているので、利用者支援が最優先です。運営面はもちろん大切ですが、利用者さまに丁寧に向き合うことで結果はあとからついてくる。Rodinaにはそういう考え方があります。だからこそ、スタッフが支援に集中できるような体制を整えているんです。
──支援に集中できる環境が整っているのは安心ですね。入社後のサポート体制や研修制度も気になります。

配属前にオンライン研修で会社の方針やリワークについて学ぶ期間があるのですが、私の入社時はそれが2日間あり、センターに配属後は前任のサビ管から1ヶ月間のOJTを受けました。いまはオンライン研修が4日間に拡充されたほか、サビ管向けの専門研修もあります。
心理的に安全な場を目指して
──ここからはリワーク支援について詳しく教えてください。具体的にどのような支援をしているのでしょうか?

利用者さまは、気力・体力ともに低下している方がほとんどです。なので、まずはセンターに通うことから慣れていただき、健康的な生活習慣が身に付くようサポートします。通所に慣れてきたら、休職・離職に至った要因の振り返り、対策などの内省支援に移行します。
支援には大きく分けて、午前の個別プログラムと午後の集団プログラムがあります。個別では、センターが提供しているワークシートをもとに自分の不調サインの整理とその対処法の検討、プログラムの復習をおこなってもらい、必要に応じて私たちが助言をします。
集団プログラムでは、座学やグループワークを通じてストレスマネジメント力やコミュニケーションスキルを磨き、具体的な再発防止策の構築につながるような支援をしています。
──なるほど。そのなかでサビ管はどのような役割を担っていますか?

サビ管は、利用者さまとの面談とスタッフの教育がメイン業務ですね。各センターには、サビ管1人と生活支援員が5〜6人在籍していて、15〜30人ほどの登録利用者さまがいます。


個別支援計画の作成と振り返りはサビ管にしかできないので、プログラムの合間に面談を入れています。
──利用者さまの通所期間はどれくらいでしょうか?

復職や再就職だけがゴールではないので、最低でも3ヶ月は通っていただくのが理想です。ただ、休職の方は復帰のタイミングが決まっていたり、経済的な理由から早く再就職を目指していたりと利用期間には幅があり、3〜6ヶ月の通所となる方が多いです。なお障害福祉サービスの制度上は、上限2年と決まっています。
──人によって状況が異なるからこそ、柔軟な対応が求められそうですね。支援は担当制ですか?

どのセンターも担当制ではなく、利用者さまにスタッフ全員で関わるチーム制を採用しています。というのも、社会にはいろんな人がいて、環境も常に変化します。だからこそ、特定のスタッフだけが関わるのではなく、いろんな人と接することで環境の変化にも適応できる力を養ってほしいと考えています。
同時に、わずかな変化にも気づけるよう心がけています。たとえば「いつもより表情が硬いな」「声のトーンが少し下がり気味かもしれない」といった違いを敏感に捉えることをスタッフ全員で意識しています。
リワークセンターは「心理的に安全な場所」であることが何より大事なんです。職場でつらい思いをしてきた方にとって、そこへ戻るための準備をするこの場所までストレスになってしまったら、必要な支援が届けられませんから。

リーディングカンパニーならではの強み
──これまで経験してきた障がい者向けの就労支援サービスとRodinaの支援は、どのような点で違いますか?

より柔軟性と幅広い知識が求められていると感じます。リワーク支援を利用する方のバックグランドはさまざまで、経験してきた職種や業界、離職理由も異なります。
人によっては傷病手当の申請手続きをサポートするなど、社会保障制度の知識や行政との連携が必要なシーンもあり、専門的な知識が求められます。大変さはありますが、日々成長を実感しますし、利用者さまが新たな一歩を踏み出し、継続して就労している様子を見聞きすると何よりもやりがいを感じます。
──支援方法に悩んだ場合は、どのように対処していますか?

毎週金曜の午後におこなうセンターミーティングでスタッフに相談したり、ほかのセンターのサビ管に相談したりしています。いろんなケースに触れることで、支援の引き出しが増えていく実感があり、「こういう方法もあるのか」という気づきも多いです。対面以外にもチャットですぐに質問できるので、悩みを抱え込むことはありません。

リワーク支援というまだ歴史が浅い分野において、ここまで全国的に展開しているのはRodinaだけです。各センターでこれまで蓄えた知見を、日々の支援に活かせるのは心強いと思います。
また、運営面での相談ごとは、マネージャーやスーパーバイザーに声をかけてもらい、必要に応じて面談を設定しています。
──連携体制があるのは安心ですね。働き方についても教えてください。残業や繁忙期はありますか?

通常、福祉施設では現場の職員が月末に請求業務をおこなうことが一般的ですが、Rodinaでは専門の部署があるため、私たちは支援業務に集中できます。月の平均残業時間も16時間未満と、ワークライフバランスが取りやすい職場だと思います。

請求業務は正確性を求められるので、支援業務と並行しておこなうと現場の負担になってしまいます。社内にはコンプライアンスグループもあるため法的な相談もできますし、年に1回は内部監査も実施しています。
また、リワーク事業を手がけている弊社だからこそ、スタッフの心身の健康も重要視しています。月に1回従業員の満足度やストレスを測る「パルスサーベイ」をおこなっており、結果が気になるスタッフや希望者には、個別に面談を設けているのも特徴的です。

リワーク支援をあたり前の選択肢へ
──Rodinaではどんな職種の人が働いていますか? また、この仕事に必要なスキルがあれば教えてください。

同じセンターで働く支援員スタッフには、医療・福祉業界出身者もいれば、金融など異業種からの転職者もいます。看護師や保育士などの国家資格を持つ人もいますし、無資格・未経験者も少なくありません。
リワーク支援はまだ歴史の浅い仕事なので、サビ管にも経験者がほとんどいません。基本的なパソコンスキルさえあれば、具体的な支援方法や利用者さまとの接し方は入社後に十分身につけられると思います。
何よりも、利用者さまに向き合いたいという熱意が大切です。

そうですね。主体的に仕事に取り組む姿勢を重視しているので、自分で考えて行動できる人が活躍しています。特別な支援スキルは入社時点では問いません。それよりも、利用者さまと同じ目線に立って信頼関係を築こうとする姿勢が大切です。
キャリアパスの面でも柔軟性があります。サビ管として現職で専門性を深めることもできますし、複数のセンターを統括するポジションにチャレンジしたり、新たな拠点の立ち上げに関わったりと、さまざまな選択肢が用意されています。
──ここまでリワーク事業やRodinaでの働き方について伺ってきました。最後に、おふたりが目指していることがあればお聞かせください。

休職や離職にはネガティブな印象があるかもしれませんが、リワーク支援を通じて、それを“前向きな転機”として捉えられるような支援を届けていきたいです。

私は、リワーク支援を社会のインフラとして、誰もがあたり前に利用できるサービスにしていきたいです。そのためには、さまざまな経験・スキルを持つ人の力が欠かせません。
いまRodinaは変革期にあります。より良い教育体制や働きやすさを目指し、社員みんなで取り組んでいる段階です。社内で出た要望をもとに、事例検討会が始まったりと声や意見を反映しやすい環境です。一緒に挑戦してくれる方のご応募をお待ちしています。