目次
看護師の資格は、病院だけで活きるものではありません。介護施設、学校、企業など、活躍できる場所はさまざまです。
佐賀市の療育施設・ワンフラワー木原教室に勤務する華頂和さん(28)も、その可能性を体現している一人です。大阪のがんセンターに新卒で入職し、フェイシャルエステサロンを経て、現在は子どもたちの成長を見守る看護師として働いています。

ワンフラワーは、佐賀県内に複数の教室を展開する児童発達支援・放課後等デイサービスです。運動療育を軸に、子どもたち一人ひとりに寄り添った支援をおこなっています。現在は医療的ケアが必要な子どもたちの受け入れ拡大を進めており、看護師の採用を強化しています。華頂さんに、ワンフラワーに転職した理由と現在の仕事について聞きました。
話を聞いた人

ワンフラワー木原教室・看護師 華頂 和(かちょう のどか)さん
1997年生まれ、佐賀県出身。看護師の母の影響で同じ道を目指す。看護大学卒業後、大阪国際がんセンターに入職。2年間の勤務後、フェイシャルエステサロンを開業・廃業し、2025年6月よりワンフラワー木原教室に入職。
看護師を辞めてまでチャレンジしたエステ経営

──まずはワンフラワーで働くまでの経緯を聞かせてもらえますか?
華頂さん:福岡の看護大学を卒業後、大きな病院で働きたいと思い、新卒で大阪のがんセンターに就職しました。そこは西日本最大規模のがんセンターで、HCU(高度治療室)の患者さんの術後管理や緊急入院の対応を2年間経験しました。
ただ、家族との約束で卒業から4年後には佐賀に戻ることになっていたんです。就職して2年たったころ、「残りの2年は今しかできないことをやろう」と考えました。
元々美容が好きで、エステの経営に興味があったんです。ちょうどピーリングがはやっていたこともあって、大阪・心斎橋にフェイシャルエステサロンを1人で開業しました。病院の先輩にも家族にも止められましたけど、どうしてもやりたくて押し切った形です。
──看護師の経験はエステでも活きましたか?
すごく役立ちました! 肌や体の基礎的な知識があったので、エステ技術を学ぶ学校で勉強したとき頭に入ってきやすかったですし、元看護師ということでお客さまにも信頼してもらえて。そういう面でも看護師でよかったなと思いましたね。その後2年で廃業して佐賀に戻り、次の仕事を探し始めました。
ジョブメドレーで見つけた新たな選択肢

──佐賀に戻ってから、ワンフラワーにはどのようにたどり着いたんですか?
病院で働くのはちょっと疲れたなと思っていたので、ジョブメドレーで検索条件から「一般病院」や「診療所・クリニック」など、病院の募集を外してみたんです。そしたらワンフラワーが出てきました。
放課後等デイサービスという存在は知っていましたが、どんなことをしているかはあまり理解していなくて。子どもたちと関わる仕事ということはわかっていたので、まずは見学に来てみました。
──見学したときの印象はどうでしたか?
正直「看護師の自分はここで何ができるんだろう」と思いました。でも案内してくれたエリアマネージャーから「今は看護師さんがいないので医療的ケアが必要なお子さんを受け入れられていない。看護師さんに来てもらえたら受け入れられるようになる」という話を聞いたんです。
──それが決め手になったんですか?
看護師の自分がいることで利用できる子が1人でも増えるなら、その助けになりたいと思いました。子どもと関わる仕事は未経験でしたが、やりがいを感じられそうな場所にはとりあえず飛び込んでみるタイプなので(笑)。それがワンフラワーを選んだ一番の理由です。
看護師だからこそできることがある

──現在の仕事内容を教えてください。
入職時に「主に児童指導員と同じような仕事をしてほしい。それにプラスしてケガの対応や状態観察をお願いしたい」と説明を受けていたので、現在は送迎や子どもたちとの活動、記録業務などをおこなっています。

──いわゆる看護師業務というものはあまりないんですか?
そうですね、木原教室には主にADHDや自閉症の子が通っていますが、バイタルの計測や吸引が必要な子はいないので、看護師らしい業務は多くありません。ただ、病院で培った観察力があるので「顔が赤い、熱がありそう」など、体の不調や状態の変化に気づきやすいです。
熱が出たらほかの子どもから隔離して保護者に連絡するのですが、その判断をするのが私の役割です。ケガをした子がいたらほかの先生から「華頂先生に見てもらって」と声がかかります。子どもたちも、看護師がいる意味をわかってくれているのかなと感じています。
──多職種と一緒に働く中で、看護師としての視点はどう活きていますか?
私が担うのは「安全に療育できるかどうか」という目線です。活動中にリスクにつながるものはないか、ケガが起きないかを常に気にしながら現場に立っています。
PT・OT・STなど、それぞれの専門職が子どもたちの動作や言語、発達の側面から意見を出してくれるので、いろんな面から療育につなげられるのはすごく素敵だなと思いますね。
頑張りが評価される職場で子どもの成長を見届ける

──入職後はどのように仕事を覚えていきましたか?
初めの1ヶ月間は研修期間で、マニュアルを見たり、研修動画を視聴したりしました。あとは子どもたちと一緒に遊んで過ごしましたね。看護師でいうプリセプターはないのですが、先輩たちがプールの見守りなど施設のルールや子どもたちとの関わり方を教えてくれたので安心感がありました。
──病院とは随分違う環境だと思いますが、職場の雰囲気はどうですか?
すごく明るいです! 新卒で勤めた病院では厳しい指導もあったため、隠れて泣いたこともありました。今の職場はギスギスした雰囲気がなくて意見も言いやすいですし、困ったときは周りの人たちが助けてくれるので、私はここがすごく好きですね。
──では、病院とは違うと感じた制度や仕組みはありますか?
病院は年齢や経験、持っている資格などが給料に反映されますよね。ワンフラワーはポイント制で、頑張った分だけ給料が上がる仕組みなんです。月1回のテストの点数や活動の担当件数、個別支援計画の作成数などがポイント化されて給与に反映されます。ざっくりとした「頑張ってるよね」ではなく、数字で評価されるので、若い世代にはとくにわかりやすいんじゃないかなと思います。

──そういった環境のなかで、やりがいを感じる瞬間はありますか?
やはり子どもたちの成長がやりがいです。入職当初、1人で端っこで積み木をしているようなおとなしい1年生の子がいたんです。スタッフにもお友達にも声をかけられないような子だったので、最初は私から話しかけていたんです。でも、声をかけ続けることがその子の負担になっているんじゃないかと思い、先輩スタッフに相談して、どうしても必要な時だけ声をかけるようにしてみたんです。そしたら、最近は自分からスタッフに話しかけてくれるようになって、ボール遊びも活発にやるようになって。あんなに輪に入るのが苦手だった子がこんなに変わって、本当にうれしいです。
医療的ケアが必要な子どもたちの受け入れに向けて
──これからどのように成長していきたいですか?
ほかの教室で医療的ケアが必要なお子さんを受け入れている実績ができたので、木原教室でもそうしたお子さんを受け入れられるようになったら、また別のやりがいが生まれると思っています。それを楽しみにしながら、今は療育の知識を増やすことに集中しています。
九州大学医学部の元教授によるオンライン講座や月1回の外部講義、療育研修に参加して、子どもたちの特性に応じた対応の仕方などを学んでいます。自分の引き出しをたくさん作れるようにしていったら、よい療育につながるんじゃないかなと思っています。
──ワンフラワーの看護師に向いているのはどんな人だと思いますか?
子どもたちと同じ目線で一緒に喜んだり、悲しんだりできる人だと思います。逆に、看護師としてバリバリ働きたいとか、医療知識をもっと身につけたいという方は、ギャップが生じてしまうかもしれません。現時点では、いわゆる看護師業務は多くないので。
病院以外で看護師として働きたい方や、子どもと関わる仕事がしたい方には、きっと居心地のいい場所だと思います。ぜひ一度見学に来てほしいです。
※掲載内容・所属・肩書はインタビュー時点のものです