IT×福祉で実現する新しい働き方
2015年に沖縄県で創業されたサンクスラボ株式会社は、就労継続支援A・B型や放課後等デイサービスを中心とした障害福祉事業と、スマホアプリ開発などのIT事業を展開しています。
一見異なる事業ですが、「IT×福祉」を軸に、障がいの有無に関わらず活躍できる社会を目指しています。
就労継続支援A型は、障害や病気により一般就労や就労移行支援の利用が難しい人を対象に、就労機会の提供や訓練を実施するサービスです。一般的なA型事業所に通う事業所では、軽作業やパン・お菓子の製造などをおこなっていますが、サンクスラボでは、エクセルを使ったリスト作成やデータ送信など、パソコン業務に特化している点が特徴です。そこで働く利用者をサポートするのが生活支援員の役割です。

サンクスラボの生活支援員の仕事内容と、必要なスキルとは何でしょうか。長崎県にある「長崎西浜町オフィス」に、福祉業界未経験で入社した手束さんに、業務内容と働く魅力を聞きました。
話を聞いた人
活躍部門 就労支援部 長崎西浜町オフィス
チーフ 手束 若菜さん
専門学校卒業後、ブライダル関連企業2社で経験を積む。障がいのある弟が働く姿に感銘を受け、2023年11月にサンクスラボに入社。生活支援員として利用者の生活面・精神面のサポートに従事し、2025年1月から、拠点の運営を担う現職に就任。
会社の理念と弟への思いが重なり入社

──もともと手束さんはブライダル業界で経験を積んでいたそうですね。まったく別の分野に転職した理由は何でしょうか?
手束さん:知的障がいと自閉症のある弟の就職がきっかけです。働く姿を見て「すごいな」と思う一方、職場で十分な理解が得られていないように感じました。
弟は小学校3〜4年生くらいの知能レベルで、集中しているときに話しかけられたり、別のことを頼まれたりするのが苦手なんです。職場での配慮があったら、もっと安心して働けるのではと感じるようになりました。同時に自分にも何かできることがあるのでは、と思ったんです。
──入社前も障害福祉は身近にあったんですね。
そうですね。幼いころから、弟の支援学校との関わりやボランティアを通じて障害福祉を身近に感じていました。
ちょうど結婚を機に福岡から長崎に引っ越し、前職を辞めたタイミングで、障がい者の就労を支える仕事に就こうと決めました。
──障がい者の就労支援に携わる仕事が数多くあるなか、なぜサンクスラボを選んだのでしょうか?
理念に共感したことと、職場の雰囲気に惹かれたことが理由です。サンクスラボの「ヒトとギジュツの無限の力を信じ、公私物心の豊かさを実現する。」という理念が、自分の価値観と合っていると感じました。とくに「無限の力を信じる」という部分は、就職した弟への思いと重なりました。
また、長崎西浜町オフィスで面接を受けたときに、職場環境の良さを感じたんです。アットホームな雰囲気でしたし、スタッフが働き方や業務内容について気さくに教えてくださって、「未経験だけどここで頑張りたい」と思ったのを覚えています。
チームで取り組む支援内容
──入社後はどのような研修を受けましたか?
博多オフィスで会社に関する説明を受けたのち、各事業所に配属されます。その後2ヶ月ほどOJT期間があり、最初の1ヶ月間は先輩がおこなう利用者面談への同席や、支援方法を見て学びました。そこから徐々に担当を持ち始め、5人から10人程度の支援を担当するようになりました。
独り立ち後も、月に一度の全事業所が参加するオンラインミーティングで、事例共有や相談を通じて知識を深めていきます。
──生活支援員の業務内容と一日の流れを教えてください。
利用者さんとの面談と支援内容の見直しがメイン業務です。面談の合間に利用者さんへの業務指導や支援記録、ミーティングなどをおこなっています。

面談では主に、健康面、精神面、業務面について確認します。一人あたり15分から20分を週に1回おこないますが、もう少し詳しく聞いたほうが良いと判断すれば、延長したり複数回実施したりすることもあります。
未経験で支援内容の見直しや利用者からの相談に応じることは難しいですが、事業所にはサービス管理責任者やほかの支援員などが計10人ほどいるので、相談しながらチームみんなで一人の利用者さんを支えます。
また、利用者さんの意向を尊重することも大切です。利用者さんとほかのスタッフの橋渡し役として、それぞれに向き合うことが求められます。

──利用者さんはパソコンを使った業務に特化していると聞きました。就労訓練をおこなう生活支援員も、ある程度のIT知識やスキルは必要でしょうか?
もちろん、できるに越したことはありませんが、タイピングができれば問題ありません! 私も最初はプログラミングやデザインなどの高度な知識が必要なのかと不安でしたが、利用者さんの業務は、リスト作成やデータ送信などの基礎的な内容のため、教える立場であっても専門的な知識は求められません。
柔軟さと支え合いの風土が強み
──障害福祉未経験・無資格で入社してみて、どのようなことを感じましたか?
支援内容と働く環境に対して、良い意味で驚きがありました。入社前は就労継続支援A型とB型の違いすらわからず、どの利用者さんにも同じ支援をおこなうものと想像していました。でも実際は、一人ひとりの特性に合ったきめ細やかな支援をおこないます。
利用者さんの数だけアプローチ方法があり、それぞれの意向も異なるので大変ですが、利用者さんが長期的に幸せに働くためにどうしたらいいかを、スタッフ全員で考えています。本当に毎日が学びの連続ですね。
また、オンラインで事業所同士がすぐにつながれる環境があるため、沖縄県名護市の拠点チーフにはよくリモートで相談に乗ってもらっています。体調や家庭の事情に応じて柔軟に働けるのもサンクスラボの強みだと思います。

──入社から約1年で拠点のチーフにキャリアアップしています。ご自身で希望したのでしょうか?
きっかけは、上司から声をかけられたことです。事業所を管理する拠点長に次ぐポジションなので、やる気はあるものの自分で務まるのか不安もあり、なかなか踏み出せずにいました。でも、サンクスラボでは、現場を信頼して任せる風土がありながら、チームで支え合う環境が整っているので、頑張ってみようと思ったんです。
以前より利用者さんと接する機会は減りましたが、その分市役所での就労支援部会や研修への参加、ほかの就労支援事業所とのパイプづくりなどがあり、交流の幅はぐんと広がりました。
自分に期待してくれて、挑戦を後押ししてくれる環境があったおかげで、入社前には想像できなかったキャリアを歩み始めていると感じます。
知識や技術よりも大切なこと
──いま感じている課題や目標があれば教えてください。
利用者さんと直接関わりたいという気持ちは変わらないので、コミュニケーションの機会をできる限り持ちながら、運営面とのバランスをどう取るかが課題です。
正直なところ、運営面に関して求められている役割が果たせているのか自信が持てません。ただ、私がすべきことは、スタッフがいきいきと働ける環境を整えることだと考えています。
まずは健康でないと支援できないので、よく観察して変化を感じたら適切なタイミングで声をかけるよう心がけています。利用者さんも同僚も、対話を大切にその人に合った接し方をしていきたいです。
──最後に、サンクスラボに合う人の特徴を教えてください。
技術や知識より、温かい心を持って寄り添える人、困っている人がいたら手を差し伸べられるような人はサンクスラボにフィットすると思います。
休みがちで勤怠が安定しない利用者さんでも、面談を重ねていくうちに少しずつ来られるようになり、一般就労につながるケースもたくさんあります。
送り出すときは親のような気持ちで寂しいですが、就労先でも頑張っているという話を聞くと、この仕事を選んで良かったと心から思います。
障がい者の就労支援に興味があり、自他の成長を楽しみたい方はぜひ飛び込んできてほしいです。