
1.外国人を雇用するメリットと注意点は?
2.どんな職種でも外国人を雇用できるの?
2-1.よく耳にする就労ビザとは
2-2. 就労可能な在留資格(就労ビザ)の種類と主な職種
3. 外国人を雇用するための4ステップ
STEP1. まずは雇用可能な外国人かを見極めよう
STEP2. 内定→雇用契約書の取り交わし
STEP3. 在留資格の申請
STEP4. 受け入れ準備から入社
4.雇用後にやらなければならないこと
5.外国人雇用で注意すべきこと
6.最後に
1.外国人を雇用するメリットと注意点は?
近年、飛躍的に増えてきている外国人労働者の数ですが、実際に外国人労働者を雇うにあたって、どのようなメリットと注意点があるのでしょうか。
■雇用におけるメリット
1:人手不足の解消
少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口の低下が深刻な問題となりました。そのあおりを受け、さまざまな業種でも人手不足が叫ばれています。
そこで、仕事を求め海外から日本にやってくる人材を確保することが、人手不足問題を解決する一手となりえるでしょう。
2:職場のグローバル化
外国人を雇用することで、事業によっては対応できる言語が増えます。例えば、海外との取引や外国人顧客への対応などです。また、日本人は外国人や外国語に苦手意識を持つ人が多いといいます。職場に外国人が在籍していることで、外国語や海外の文化に触れる機会も増え、日本人スタッフが外国人とも積極的にコミニュケーションを取れるようになることが期待できます。
3:職場の活性化
これは前項の「職場のグローバル化」に付随する部分でもあります。「家族のため」「技術習得のため」など理由はさまざまですが、日本で働く目的が明確となっている外国人労働者は勤労意欲が高いことが多く、職場全体に良い刺激をもたらしてくれるでしょう。
また、外国人ならではの目線によって、日本人だけでは気づけなかった業務の問題点にも気づかされるかもしれません。
■雇用における注意点
1:文化や言語の違いによるトラブル
異文化交流によって良い刺激がもたらされる一方で、文化や言語の違いにより、予想をしていなかった衝突が起きてしまうことも考えられます。
こういったトラブルに備え、相手の母国の文化や風習に対して理解を深めなければなりません。それと同時に日本の文化と常識を、時には英語なども交えながら懇切丁寧に伝えていく必要があるでしょう。
2:雇用するための手続きや法律などへの知識が必要
外国人を雇用するためには、入管法などの法律を踏まえたうえでさまざまな手続きを行う必要があります。当然、日本人を雇う場合に比べて手間や時間がかかるでしょう。また、雇用主も外国人雇用に関する法律知識を持っていないと、「気付かないうちに不法就労をさせていてた」なんてことも。なので、外国人労働者を雇う際には入管法や手続きに伴った十分な知識が必要です。
2.どんな職種でも外国人を雇用できるの?
日本で働く外国人は、「在留資格」という制度によって活動できる範囲が制限され、「在留期間」によって活動できる期間が定められています。この「在留資格」には現在30種類あり、就労可能なものと就労が認められていないものがあります。
外国人を雇用する場合には、「在留資格」によって定められた活動範囲内で雇用しなければなりません。在留資格や在留期間については在留資格(就労ビザ)とは?種類と取り方、永住権、社会保険の取り扱いについての記事もご参考ください。
2-1.よく耳にする就労ビザとは
「在留資格」という言葉が出てきましたが、外国人就労に関連してよく耳にする「就労ビザ」とはいったい何が違うのでしょうか?
そもそも「ビザ(査証)」という用語は「このパスポートは有効であり、この人が入国しても問題はありません」ということを証明するもので、一般的に耳にする「就労ビザ」とは別物です。
そしてさらに言うと、「就労ビザ」という法律用語は存在しません。一般的に「就労ビザ」と呼ばれているものは「就労が可能な在留資格全般」のことを指します。
2-2.就労可能な在留資格(就労ビザ)の種類と主な職種
現在ある、30種類の在留資格のなかで就労可能なものと、それぞれの在留資格の活動範囲内とされている主な職種をピックアップしました。なお、このうちジョブメドレーで取り扱っている職種は主に「医療」と「介護」になります。
在留資格 | 代表的職業 |
---|---|
外交 | 外国政府の大使、外交官 |
公用 | 大使館や領事館の職員 |
教授 | 大学教授 |
芸術 | 作曲家、文筆家、画家、彫刻家 |
宗教 | 牧師、宣教師 |
報道 | 報道カメラマン、ジャーナリスト、記者 |
経営・管理 | 企業などの経営者 |
法律・会計事務 | 弁護士、公認会計士 |
医療 | 医師、看護師、薬剤師、理学療法士 |
介護 | 介護福祉士 |
研究 | 政府機関や企業などの研究者 |
教育 | 小学校・中学校・高等学校などの外国語教師 |
技術 | 機械技師、システムエンジニア、自動車設計技師 |
人文知識・国際業務 | 通訳、塾などの語学教師、デザイナー |
企業内転勤 | 国際間の企業内転勤(業務は「技術」「人文知識・国際業務」の活動のみ該当) |
興行 | 演劇、ミュージカル、オーケストラ指揮者、芸能活動 |
技能 | 外国料理専門店の調理師、専門技術を要する職人 |
技能実習 | 技能実習生 |
特定活動 | インターンシップ、ワーキングホリデー |
特定技能1号・2号 | 人材不足が深刻な分野(介護など)において、一定の技術を有する外国人を受け入れる制度 |
これらの在留資格に加え、「永住者」「定住者」などには在留資格による職種の制限はありません。
3.外国人を雇用するための4ステップ
外国人を雇用することを決め、実際に雇用するまでにはさまざまな手続きが待っています。ここでは、外国人を雇うために必要な手順を4つに分けて確認していきましょう。
【STEP1】まずは雇用可能な外国人かを見極めよう
内定を決めた後に「日本で働くための要件を満たしていない」なんてことが発覚してしまっては、今までの苦労が水の泡となってしまいます。ですから可能であれば、面接を行う前までに雇用対象者が「雇用する職場で働くことができる状態なのか」を見極めたいところです。見極めるポイントとして、「在留資格取得見込み」と「在留資格取得済み」の場合でそれぞれ確認してみましょう。
■「在留資格取得見込み」の場合
外国人がまだ在留資格を持っていない場合(主に外国人が海外在住)の重要な見極めポイントは、外国人本人の「学歴や職歴」です。雇用を考えている職種に関して、「学歴や職歴」が在留資格の取得要件と合致しているのかを確認します。
「就労が可能な在留資格」にはそれぞれ、「4年制大学の卒業」や「10年以上の実務経験」などの要件が定められています。各在留資格の詳細な取得要件については入国管理局へお問い合わせください。
■「在留資格取得済み」の場合
すでに日本にいる外国人を面接する場合は、保有している在留資格が業務に対応しているものかを必ず確認しましょう。確認する際には、在留している外国人に交付される「在留カード」をチェックするのが良いでしょう。在留カードは以下の4点に注意して確認してください。
- ・在留資格の種類
- ・就労制限の有無
- ・在留期間の満了日
- ・裏面の資格外活動許可欄
就労期間の満了日を超過している場合は、不法滞在である可能性が高いです。また「就労不可」と記載されていても、裏面の資格外活動許可欄に「原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載されている場合は制限内(主にアルバイト)での就労が可能です。
在留カードの例
※入局管理局ホームページより引用

表面

裏面
在留カードの詳しい確認方法や、不法就労の注意点については入国管理局の外国人を雇用する事業主の皆様へをご覧ください
【STEP2】内定→雇用契約書の取り交わし
内定が決まったら雇用契約書を作成しましょう。基本的に日本人に対する雇用契約書と同内容になります。注意点としては、「業務内容は取得予定の在留資格に適応したものであること」と「内定者の母国語や英語を用いてコピーを作成すること」です。業務内容に関しては、在留資格に適応していなければ、在留資格取得申請をした際に却下されてしまうからです。母国語でのコピー作成は必須ではありませんが、お互いに納得できる書面で契約を交わすことで後々のトラブル回避に繋がります。
このように雇用契約書は、雇用主と外国人内定者の双方にとって、非常に大切な書類なので決して後回しにせず作成しましょう。
【STEP3】在留資格の申請
在留資格の取得申請は、管轄の入国管理局で行います。在留資格取得に関する流れは主に、「内定者を海外から呼び寄せる場合」「日本にいる内定者を異職種から中途採用する場合」「日本にいる内定者を同職種から中途採用する場合」「留学生を新卒採用する場合」の4つに分けられます。それぞれのパターンを見ていきましょう。
パターン1:内定者を海外から呼び寄せる場合
まず、雇用主が代理人となって「在留資格認定証明書」の交付を入国管理局へ申請します。その後、交付された「在留資格認定証明書」を海外にいる内定者へと送付。内定者は受け取った証明書を持って、日本の在外公館でビザを申請し、証明書とビザを提示して日本へ入国します。
「在留資格認定証明書」の交付申請に必要な書類や手続き詳細は法務省ホームページ在留資格認定証明書交付申請をご確認ください。

パターン2:日本にいる内定者を異職種から中途採用する場合
内定者がすでに日本で働いている場合は、何かしらの在留資格を保有しているはずです。しかし異職種などからの転職により、今後任せたい業務が在留資格の適応外である場合は、入国管理局への「在留資格変更許可申請」が必要になります。
申請に必要な書類や手続きについては法務省ホームページ在留資格変更許可申請をご確認ください。
パターン3:日本にいる内定者を同職種から中途採用する場合
転職前から取得していた在留資格によって、今後の業務範囲もカバーできる(同職種である)場合は、法的な手続きは特に必要ありません。しかし、本当にその在留資格が新しい職種と合致しているかをどうかをしっかりと確認したい場合は、入国管理局に「就労資格認定証明書交付申請」を行うという方法があります。
就労資格認定証明書とは、「その外国人が保有する在留資格で、転職後も続けて働くことができる」ということを証明したものです。
申請する際に提出する書類などは法務省ホームページ就労資格証明書交付申請をご確認ください。
パターン4:留学生を新卒採用する場合
外国人留学生を日本で新卒採用する場合は、在留資格「留学」から新たな在留資格へと変更しなくてはなりません。変更に際して「日本にいる内定者を異職種から中途採用する場合」と同様に在留資格変更許可申請を行います。
番外編:アルバイトとして雇う場合
日本にいる外国人をアルバイトとして雇う場合は、特に在留資格に関する手続きは必要ありませんが、注意点があります。
それは外国人本人が「資格外活動許可を得ているか」という点です。「資格外活動許可」を得ることで、現在の在留資格で認められた範囲以外での活動(本業を妨げない範囲での活動)を行えるようになります。
ただし、在留資格「留学」「家族滞在」の場合は「原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」という制限が設けられています。
【STEP4】 受け入れ準備から入社
お疲れ様です。ここまできたらあと一息。外国人労働者を受け入れるための準備を必要に応じて行いましょう。
例えば、借り上げ社宅などの手配や来日するためのフライト手配、既存従業員への周知、教育体制の確保などが考えられます。準備を万全にして、気持ちよく迎え入れましょう。
4.雇用後にやらなければならないこと
■ハローワークへの届出
外国人を無事に雇用後は、速やかにハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行うことが義務付けられています。ただし、雇用した外国人が雇用保険へ加入する場合は、雇用保険の手続きをもって、これを省略することができます。またこの届出は、外国人が離職した際にも必要になります。
■社会保険とローマ字氏名届の手続き
例え外国人労働者でも社会保険の適用となる場合は、日本人と同じく加入が義務付けられています。なので、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」は当然必要です。また、雇用保険や労災保険も同様に適用となり、ここまでは日本人と同じ手続きになります。
しかし、日本人と異なる点として「ローマ字氏名届」があります。
2012年から外国人にも住民票が与えられ、原則として氏名はアルファベット表記となりました。この手続きによって氏名のローマ字登録を行います。これは日本年金機構によって義務付けられています。
■在留期間の更新が近い→更新する場合
「同職種で転勤してきたけど、もうすぐ在留期間が満了になりそう」、「長期雇用のため、さらに在留期間を更新したい」。そのような場合には、入国管理局へ「在留期間更新許可申請」を提出しましょう。必要な書類などは法務省ホームページ在留期間更新許可申請をご確認ください。
5.外国人雇用で注意すべきこと
外国人を無事に雇用できても、安心しきってはいけません。日本人を雇用した場合と違って、注意すべき点がいくつかあります。
注意点1:在留期間の更新は忘れずに余裕を持って
在留期間の更新は、満了日の3ヶ月前から行えます。在留期間の更新審査には、約2週間~1ヶ月かかることもあるので、余裕を持って更新手続きを行いましょう。
また、在留期間の更新申請は企業側が代理で行うことができません。本人もしくは行政書士が申請可能です。しかし、不法就労になってしまうことを防ぐためにも企業側でも在留期間の把握と管理を怠らないようにしましょう。
注意点2:家族を海外から呼び寄せたいと言われたら
外国人従業員が日本に家族を呼び寄る場合は、在留資格「家族滞在」を取得して呼び寄せます。
具体的な方法は「内定者を海外から呼び寄せる場合」とほとんど同じです。在留資格認定証明書交付申請を行い、交付された証明書を海外(家族のいる国)へ送ります。その後、家族は送られた認定書を持って日本大使館でビザの取得を行います。なお、「家族滞在」は配偶者とその子どもしか取得できず、両親や兄弟は認められていません。
在留資格認定証明書交付申請には、企業から発行しなければならない書類もあるので、企業側の協力も必要になります。
注意点3:在留資格が不許可になってしまったら
在留資格は、取得申請をすれば必ず審査が通るというわけではありません。行政書士に依頼せず、自身で申請した場合は要件を満たせていなかったり書類の不備であったり、さまざまな理由で不許可となるケースが見受けられるそうです。
不許可となった場合はその理由を調査し、修正後に再申請することで在留資格を取得することができます。しかし、不備のある部分を自身で完璧にリカバリーすることは存外に困難です。費用がかかってしまいますが、不許可となった場合の再申請は行政書士に依頼する方が確実と言えます。
6.最後に
日本で働く外国人の数は年々増加し、今では彼らがいなければ社会が回らなくなってしまうほどではないでしょうか。
そんな中、外国人労働者を低賃金で働かせたり、サービス残業を強要するなどの問題も散見されています。外国人労働者は決して「安価な労働力」ではありません。時には文化の違いから衝突してしまうこともあるでしょう。しかしお互いの考えや文化を尊重することで、外国人就労者に関する問題も自然と解決でき、今後もよりよいビジネスパートナーとして付き合っていけるのではないでしょうか。