訪問歯科事業でまもなく30年目を迎える高輪会
東京、神奈川、千葉、埼玉のエリアにて、訪問歯科ブランド「デンタルクルーズ」の名で親しまれている医療法人社団高輪会。業界の先駆けとして1993年より訪問歯科診療を開始し、まもなく30年目を迎えようとしています。
高輪会に編集部が訪れるのは今回で2回目。前回は訪問歯科全般について話を聞きましたが、今回は“自宅”への訪問歯科診療が本格スタートしたということから、再び高輪会の本部を訪れました。
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>[PR]訪問歯科のパイオニア「高輪会」で働く歯科衛生士に聞いた「訪問ならではの魅力とやりがい」
話を聞いた人
チーフ歯科衛生士 渡辺さん
歯科衛生士歴22年目。外来歯科医院、デイサービス職員を経て、2005年に高輪会入職。歯科衛生士の採用や人事、教育に携わる。趣味は観葉植物の育成やアロマでリラックスすること。
歯科衛生士 佐野さん
歯科衛生士歴18年目。複数の外来歯科医院での勤務、産休・育休を経て、2018年に高輪会入職。診療所を新規オープンした経験が評価され、在宅訪問チームの初期スタッフに抜擢される。趣味は旅行で、自宅近くの温泉地には気軽に足を運ぶ。
本部エリアマネージャー 住江さん
企業にて営業、人事を経験したあと、超高齢社会における歯科診療問題に関心を抱き、2020年1月に高輪会入職。
“自宅”への訪問歯科を新たにスタート
──前回取材時には介護施設や病院などの“施設”への訪問がメインと聞きましたが、新たに“自宅”への訪問診療も開始されたんですね。
渡辺さん:はい、2020年2月から本格的に自宅を対象にした訪問歯科をスタートしました。
成り立ちの話をすると、高輪会は1979年に外来歯科医院を開業したのが始まりです。そこから創業者の深井が「歯科医院に来られない患者さまの存在」に気付き、すべての歯科診療を必要とする人たちにサービスを届けるために、1993年から診療車を使った訪問歯科事業を開始しました。
以来28年間は施設への訪問診療が中心でしたが、高齢化が進む現代では自宅で介護を受けられる高齢の方が増えていますよね。実際に私たちのもとにも「自宅に来てもらえないか」という相談はここ数年で増えています。
──たしかに日本では2042年をピークに今後も高齢化が進むと言われていますし、国も地域包括ケアシステムを推進して、病院から在宅へと高齢者の住まいが移ってきていますね。
はい。こういった状況を見て、長年訪問歯科に携わってきた私たちに貢献できることをしようというのが、今回新たに自宅への訪問歯科を始めた経緯になります。
──現在はどういった体制で訪問診療をおこなっているんですか?
佐野さん:ドクター(歯科医師)、歯科衛生士の2名体制です。自宅訪問用の診療車を使って訪問します。
──ドクターも同行するんですね。ほかの院ですと、歯科衛生士が単独で訪問に回るところもあると聞きます。
渡辺さん:そうですよね。うちの場合は基本ドクターも同行するので「1人で対応するのは心配」「車の運転はちょっと苦手」という衛生士の方でも安心できると思います。
──それは心強い。では一日の仕事の流れを教えてもらえますか?
佐野さん:だいたいこんなスケジュールになります。
1日あたりの訪問件数は5〜6件。訪問先が遠かったり交通状況が悪かったりすると、診療所に戻る時間が押してしまうこともありますね。
患者や家族との距離の近さがもたらすこと
──佐野さんはこれまでずっと外来の歯科衛生士だったとのことですが、外来と訪問で異なる点や、自宅への訪問ならではの魅力を感じる点はありますか?
佐野さん:やっぱり「来てくれてありがとう」の一言を頂けると、訪問できて良かったなって思いますね。
外来では「痛みがあるから」ですとか「面倒だけど健診で仕方なく」という感じで受診される方もいらっしゃいますが、訪問の場合はご病気や障がいなどの理由で通院が困難な方が対象なので、本当に困っている方が多いんですよね。ご本人だけでなく、ご家族も「なかなか食事が取れなくて……」と悩まれていたり。
その分、私たちが診療に入ることで「食べられるようになりました」「以前より調子が良くなりました」って報告を頂けると、行ったかいがあったなって嬉しくなりますね。
──「通院が困難」というと、例えばどんな患者さんがいるのでしょうか。
佐野さん:私が担当している患者さまですと、90代の女性で、認知症、骨粗鬆症、尿管結石の既往歴があります。退院後にお一人での歩行が難しく、同居されている80代の妹さんが中心となって介護をされている状況で訪問依頼を受けました。
訪問当初は歯周病がかなり進行していて、歯折して残根だけになっていたりグラグラな状態の歯ばかりでした。そこでまず週1回の頻度で口腔ケアを実施し、ある程度状態が落ち着いたところで義歯を製作しました。
それからお口の中の状況はだいぶ改善されましたが、その状態を維持するためにも、現在も週1回の頻度で訪問を続けています。
渡辺さん:自宅への訪問の場合ですと、ご家族に直接指導や助言ができる点も大きいと思います。ご自宅に患者さまがいる場合、普段の口腔ケアをされるのはそのご家族になりますよね。そこに私たちが伺うことで、ご家族がケアしているところを直接見ながら「もっとこうするといいですよ」とアドバイスもできますから。
佐野さん:これが施設の場合だと介護職の方って忙しいので、なかなかそういった時間が取りづらいんですけど、ご家族なら聞いてもらいやすいです。
──自宅訪問の場合だと患者さん本人だけでなく、ご家族とのコミュニケーションも増えるんですね。
渡辺さん:施設の場合だと施設スタッフを通してご家族に連絡することが多いのですが、ご自宅に行く場合は直接コミュニケーションが取れるので、診療内容などを説明する際もやりやすいですね。
──訪問先での患者さんやご家族とのやりとりで、印象に残っていることはありますか?
佐野さん:そうですね……。先ほどの90代の患者さまの話ですが、実はもともとその方のご家族を訪問診療していたんですね。それで「今度もう一人家族が退院してくるから一緒に診てほしい」と言ってもらった経緯があります。
渡辺さん:そうそう、そのあとさらに「老人ホームに入所している親族もお願いできますか?」って広がっていったよね(笑)。
──すごい、それだけご親族の間で信頼を得られたということですね。
佐野さん:そうなんです。なので今ではそのご親族3名の歯科診療を担当させてもらっていて。多いときには週に2回もそのお宅に伺うような状況で(笑)。
それだけ距離が近いので、私たちは家族ではないですけど、患者さまのことがすごく身近で気になる存在になっていくんですよね。いつまでも元気でいてほしいですし、健康のためのお手伝いができているという実感がやりがいにも繋がっていると思います。
自宅訪問する歯科衛生士に必要なこと
──患者さんとの信頼関係が築ければやりがいが大きい反面、どうしても訪問はハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。
渡辺さん:そうですね、私が実際に面接をしていても、そういった不安の声はよく聞きます。
確かに外来や施設訪問のように、周りにいる先輩の衛生士にすぐに相談できる環境ではないので、自宅へ訪問する歯科衛生士はある程度自分一人で対応できるだけのスキルが求められると思います。
──自宅への訪問経験がない場合、研修などの機会はあるのでしょうか?
渡辺さん:そこは先輩衛生士がOJTとして現場へ同行・指導する体制にしています。個人差もありますが、最低でも1ヶ月程度でしょうか。
経験のある方であっても、医院ごとに診療のやり方は少しずつ違うので、その期間にしっかりすり合わせができますよ。
──現在はコロナ禍ですが、通常と比べて対応に違いはありますか?
佐野さん:私たちは外からご自宅に伺うわけなので、出勤前には体温などの体調確認を徹底しています。感染対策としてはフェイスシールドとマスクを着用していますが、そのほかの手洗いや消毒などはコロナに関係なくおこなうことなので、大きな違いはありません。
──ずばり、自宅へ訪問する歯科衛生士に求められる資質やマインドには、何があると思いますか?
佐野さん:やっぱり人と関わることが好きな方が向いているのではないかなと思います。
訪問先のお宅はそれぞれさまざまな事情を抱えていて……老老介護をされているご家庭や独居の方、介護に疲れてしまっているご家族もいます。そういった環境に私たちが入っていくので、気遣いや配慮は大切ですね。
もしご家族が介護疲れをしているようだったら、そのご苦労を察してねぎらったりだとか、ちょっとした雑談をしたりするだけでも、息抜きになると思うんです。
渡辺さん:私たちは単に口の中だけを診て終わりではなくて、患者さまの全身状態まで診る必要がありますね。例えば食事が取れないと痩せて入れ歯が合わなくなり、ますます食事量が減ってしまいます。じゃあどうして食事が取れていないのか? という原因を知るためには、その方の身体面と精神面を包括的に診ていくことが大切なんです。
そういった情報を引き出していく意味でも、やっぱりコミュニケーションは欠かせないですね。
──しっかりコミュニケーションを取ることは信頼関係を築くだけではなく、結果的に良い診療にも繋がっていくのですね。
豊富な研修・福利厚生で働きやすい環境
──ここからは、本部スタッフの住江さんに制度面について聞いていきます。前回の取材では勉強会やセミナーなどの教育に力を入れていると聞きましたが、現在のコロナ禍でなにか変化はありましたか?
住江さん:コロナ以前からおこなっている院内での口腔衛生管理・口腔機能管理セミナー、月1回の外部講師を招いての講習会、どちらも継続していますが、密を避けるために対面ではなくオンライン上の動画配信という形で受講できるようにしています。
……ただそうは言っても、歯科衛生士の手技などについては動画で伝えるにも限界があるので、感染状況の様子を見ながら、少しずつ対面での研修を増やしていこうと検討しているところですね。
──状況に合わせて対応策を変えているんですね。福利厚生についても、前回から変わった点はありますか?
2021年7月から、スタッフのワーク・ライフ・バランスを重視した新しい福利厚生サービスを導入しました。宿泊や食事、映画館やスポーツクラブなどの各種レジャーを会員価格で利用できたり、一時保育や月極保育などの補助制度、介護支援サービスなどを利用できるサービスです。
ほかにも以前からある社会保険完備や休暇制度、退職金制度、結婚祝い金などは変わっていません。
院内制度・福利厚生
- 社会保険完備
- 1分単位での残業代支給
- 昇給年1回
- 有給休暇(初年度10日、最大20日)
- 出産・育児・介護休暇制度
- 退職金制度
- 結婚・出産祝いなどの慶弔見舞金制度
- 健康診断・インフルエンザ予防接種 など
※適用の各種条件あり
──それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします!
訪問──とくに自宅への訪問の場合は、外来と比べて給与手当も手厚くなります。でもそういった報酬以上に、外来とはまた違った成長ができる環境が魅力の一つではないかなと思っています。
「これまで外来経験のみで不安だけど、訪問歯科で頑張ってみようかな」という方は、その気持ちさえあれば技術や体制面は先輩の衛生士や本部のスタッフがフォローしていきます! なので、安心して来てくださいね。
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自宅で介護を必要とする高齢者が増えていることから、今後もますますの活躍が期待される訪問での歯科衛生士。外来の経験を活かして次のステップへ進んでみたいという方、患者さんとより丁寧なコミュニケーションを取りたいという方には、挑戦しがいのある環境だと思います。ぜひ高輪会への応募を考えてみては?