目次
1.身元保証人とは?
対象者の信用を保証する人
就職や転職、または入院時や高齢者施設に入所する際、「身元保証書」の提出を求められることがあります。身元保証書は、対象者の身元や、社会的に信用できる人物であることを第三者が保証する書類です。身元を保証する第三者を身元保証人と呼びます。この記事では、就職・転職時の身元保証人について解説します。
企業が身元保証人を求める4つの理由
1)身分や経歴の証明
対象者が氏名や住所、過去の経歴などを偽っていないことを保証するため提出を求めます。
2)不正の抑止力
横領や情報漏えいなどの不正行為、コンプライアンス違反や無断欠勤など、意図的な職務規程違反によって企業に不利益や損害を与える可能性も考えられます。こういったリスクの抑止力として身元保証人を求めます。
3)損害賠償請求
対象者の責任により企業が損害を被った場合、身元保証人に損害賠償を請求することがあります。
4)緊急連絡先
何らかの事情により対象者と連絡が取れなくなったとき、安否を確認するために身元保証人に連絡することがあります。
身元保証人と連帯保証人の違い
身元保証人と似た言葉に「連帯保証人」があります。両者の違いは責任の範囲です。
身元保証人は、対象者が企業に損害を与えた場合に賠償する義務がありますが、損害賠償の極度額(上限額のこと)が定められています。これは、身元保証人が負う最大の責任額を明確にするためです。一方、連帯保証人も極度額を設定できますが、法律上の義務ではありません。連帯保証人は、債務者が返済できない場合に同等の賠償責任を負い、極度額が設定されていない場合は全額を返済しなければなりません。
また、対象者の素行などが原因で損害賠償が発生しそうな場合、企業はその旨を身元保証人に通知する義務があります。身元保証人は通知内容を確認したうえで契約を解除できます。一方、連帯保証人には同様の解除権が認められません。
一般的に、就職時に連帯保証人を求められることはありません。ただし、特定の職種や企業によっては例外がある場合もあります。
2.身元保証人の条件
企業によって条件は異なる
身元保証人は、対象者を理解し、社会的に信用がある人物である必要があります。また、万が一の場合に損害賠償に応じる義務も負います。そのため、一般的に「経済的に自立している成人」2名を指定する企業が多く、親や配偶者といった親族が身元保証人となるケースがみられます。
仲の良い友人や恋人などへの依頼もできますが、賠償責任を負うことから、人間関係に影響が出る可能性もあります。親族以外にお願いする場合は、内容を丁寧に説明し、納得してもらったうえで依頼することが大切です。
身元保証人になれない人
「経済的に自立していない人」は身元保証人として認められないことがあります。例えば、未成年のきょうだいや年金で生活している親がこれに該当します。また、反社会的勢力でないことも条件として設けられます。
3.身元保証人がいない場合の対処法
身元保証人がいないことを相談する
家族関係が複雑な人や、身内がいないため親族に依頼できない人も存在します。そのような場合は採用担当者に事情を伝えましょう。適切な人がいないと認められた場合、身元保証人なしでも入社を認めてくれる可能性があります。なお、採用条件に身元保証書の提出が明示されていない限り、一方的に採用を取り消されることはありません。
親元を離れて暮らしていて、提出期限内にサインをもらうのが困難な場合は、企業に期限の延期を相談しましょう。ただし、自分で代筆するのは絶対に避けてください。代筆は法的に無効であり、文書偽造として法的責任を問われる可能性があります。
身元保証人代行サービスを利用する
親族や友人にお願いできない場合、代替手段として身元保証人代行サービスを利用するのもひとつの手です。身元保証人代行サービスとは、その名のとおり身元保証人を請け負ってくれる有料サービスです。就職先にはあらかじめ、代行サービスの利用について了承を取ることをお勧めします。
代行サービスの会社はたくさんあり、サービス内容や料金もさまざまです。一般的に正社員であれば3〜5万円が適正価格とされています。
4.身元保証書のチェックポイント
身元保証書は、企業側が用意した書類に記入する方式がほとんどです。その際、以下の2つのポイントが明確にされているかを確認し、疑問があれば採用担当者に問い合わせましょう。

1)極度額が定められているか
極度額とは、損害賠償額の上限額のことです。2020年4月1日以降、身元保証契約において極度額の記載が義務付けられました。極限度が記載されていない身元保証書は無効となります。
2)期間が定められているか
身元保証契約の期間は最長5年と定められています。期間を定めない場合、契約は成立日から3年間有効です。なお、5年より長い期間を定められていた場合は5年間に短縮されます。
身元保証契約は自動更新されず、契約期間が終了した場合には新たに契約を締結する必要があります。
5.よくある質問
Q. 身元保証人になるのは誰でもいいの?
A.身元保証人には一定の条件が求められます。一般的には、経済的に自立しており、社会的に信用がある成人が条件です。また、反社会的勢力でないことが設けられることもあります。詳細は、依頼する企業や状況により異なりますので、企業に確認してください。
Q. 身元保証人がいない場合はどうする?
A.身元保証人が見つからない場合、以下の対処法があります。
- 家族関係が複雑であるなどの理由を企業に説明し、例外対応を求める
- 企業に事前に了承を得たうえで身元保証人代行サービスを利用する
Q. 身元保証人の責任範囲はどこまでですか?
A.身元保証人の責任範囲は、対象者が企業に損害を与えた場合の賠償義務に限られます。ただし、契約書に極度額(損害賠償額の上限額)が明記され、極度額以上の賠償責任は負いません。また、一定条件を満たせば身元保証人契約の解除も可能です。