労働基準法とは?労働時間、有給、残業、休日、違反などわかりやすく解説

働くうえでのルールを定めている「労働基準法」。会社や労働者が内容を知っているかどうかにかかわらず、効力が生じる法律のひとつです。改めて守るべきルールをおさらいしましょう。

労働基準法とは?労働時間、有給、残業、休日、違反などわかりやすく解説

目次

1.労働基準法とは

すべての労働者に適用される労働条件の最低基準

労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めた法律です。労働組合法、労働関係調整法と合わせて「労働三法」と呼ばれており、働く前提となるルールや、各地の労働基準監督署の運営の根拠となっています。

同法で決められているのは最低限守られければならない基準であるため、それを下回る条件は法律違反となってしまいます。反対に有利な労働条件を設定すること(有給休暇日数を多くする、残業代の割増率を高く設定するなど)は問題ありません。

労働基準法は原則すべての労働者に適用されますが、一部適用が除外されるケースがあります。

労働基準法が一部または全部適用されない労働者・働き方の例

  • 船員(船員法が適用される)
  • 同居の親族のみが働く場合(いわゆる家族経営)
  • 家事使用人
  • 国家公務員(一般職、特別職)
  • 地方公務員(一般職)
  • 会社の役員
  • 個人事業主や請負契約で働いている人

労働基準法に違反する労働契約は無効(強行法規)

使用者や労働者が労働基準法の内容を知らなかった場合でも、労働基準法に違反する労働契約や取り決め、労使間合意は無効です。このような法律を「強行法規」といい、労働者の権利を守るため当事者の意思に関係なく効力があります。

*会社の経営者のほか、事業のために労働者を使役するすべての人

なお、契約内容のうち無効になる部分には、労働基準法による基準が適用されます。労働契約の全部ではなく一部分が労働基準法に満たない場合はその部分のみ無効となり、契約全体が無効になるわけではありません。

2.労働基準法で定められている主なルール

労働基準法では、働く多くの人にとって身近な決まりが定められています。労働者として知っていて損はありませんので、自身の働き方を振り返る参考にしてみてください。

労働基準法の代表的なルール

労働条件の明示(第15条)

使用者(会社側)は、労働者を雇うときに賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければなりません。もし実際の労働条件が明示された内容と違っている場合、労働者は即その労働契約を解除してよいことになっています。

以前は明示の方法が書面のみでしたが、2019年からはメールにPDFファイルを添付するなど電子的な方法も認められています。

解雇の制限、予告(第19条、20条)

使用者は、以下のタイミングで労働者を解雇することが禁止されています。

  • 労働者が労災で休業する期間と復帰後30日間
  • 労働者の産前産後休業期間とその後30日間

また、上記に該当しない場合でも、労働者を解雇するときは最低30日前に解雇を予告しなければなりません。予告から解雇までが30日より短い場合は、その分の給料(解雇予告手当)を支払う必要があります。

そのため解雇予告手当が支払われない「明日から来なくていい」といった即時解雇は労働基準法違反となります。ただし、災害などで事業の存続ができなくなった場合や、労働者が犯罪や業務上の重大な不正をしたために解雇する場合などは、即日解雇が認められることがあります。

賃金の支払い(第24条)

賃金については、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日で支払わなければならないと定められています。これを「賃金支払の5原則」といい、現物支給をもって給与とすることや、労働者本人以外に支払われてしまうことを防ぐ根拠となっています。

ただし、労使間協定があれば社会保険料などを天引きすることは可能です。また、賞与や臨時の手当については、一定の期日を定める必要はありません。

労働時間・休憩(第32〜35条)

労働基準法第4章(第32〜41条)では、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇について定められており、そのうち第32〜35条では、労働時間と休憩時間について記載されています。

労働基準法における労働時間と休憩のルール

  • 1週間に40時間を超える労働をさせてはいけない
  • 1日8時間を超えて労働させてはいけない
  • 労働時間6時間超に対し45分、8時間超に対し1時間の休憩
  • 休憩時間は自由に利用できるものでなければならない(待機は認められない)
  • 毎週少なくとも1日の休日を与えなければならない

例外として、曜日によって業務の繁閑が異なるような場合は、合計労働時間が1週間40時間におさまっていれば日によって8時間を超えて労働させることができます。また、休憩時間は一斉に付与することが原則ですが、労働者一人ひとりがばらばらに取得することも可能です。いずれも事前の労使間合意が必要であり、災害などやむを得ない事情で労働時間を超過した場合、使用者は事後速やかに報告することとされています。

時間外・休日労働(第36条)

いわゆる「36(サブロク)協定」の根拠となっている条文で、1日8時間・週40時間を超えて時間外・休日労働をさせるには労使間で協定を結ばなければならないというルールです。協定では超過分の労働時間だけでなく、該当する労働者の範囲や期間を決めておく必要があります。

労働時間の上限規制
36協定とは? 残業の上限規制や罰則、特別条項をわかりやすく解説 より

また、時間外労働についても上限が定められており、36協定を締結した場合も制限なく労働時間を増やすことはできないようになっています。

割増賃金(第37条)

所定労働時間を超えて時間外、休日、深夜に働いた場合は、使用者は賃金を割増して払わなければなりません(いわゆる残業代)。それぞれの割増率は以下のとおりです。

  • 一日8時間を超えて時間外労働した場合:1.25倍  ※労働時間が月60時間を超えた分は1.5倍
  • 法定休日に労働した場合:1.35倍
  • 深夜労働(22時〜翌5時):1.25倍

これらのうち2つが同時に該当する場合もあり、例えば一日8時間を超え、かつ22時以降も労働した場合、時間外と深夜の割増で通常の賃金の1.5倍となります。ただし法定休日は法定労働時間の制限を受けないため、休日労働+時間外の割増にはなりません。

残業代についてさらに詳しくはこちらの記事で解説しています
残業代(残業手当)の計算方法、時間外手当との違い、未払いの場合の請求方法を解説 

年次有給休暇(第39条)

使用者は、半年以上勤続している労働者に対して、毎年一定の有給休暇を与えなければなりません。フルタイム勤務の場合、付与タイミングと日数は以下のようになっています。

有給休暇の付与日数
勤続年数 有給休暇
6ヶ月 10日
1年6ヶ月 11日
2年6ヶ月 12日
3年6ヶ月 14日
4年6ヶ月 16日
5年6ヶ月 18日
6年6ヶ月以降 20日

所定労働日が週4日以下の場合など、有給休暇についてさらに詳しくは「有給休暇とは? パートでも取れる? 有給日数の確認方法・義務化・買取・有効期限などを調査」をご覧ください。

tips|労働基準法改正で何が変わる?

労働基準法は1947年(昭和22年)の公布以来、時代の変化や関連法規の変更に合わせ、改正が重ねられています。2023年、2024年では、主に以下の改正がおこなわれています。

2023年施行

  • 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げ(大企業は2010年度から適用、中小企業の猶予が終了)
  • 賃金のデジタル払いが解禁(厚生労働省が認めた現金化可能な電子マネーで、事前に労使協定が必要)

2024年施行

  • 医師、バスやトラックの運転手、建設業など、労働時間の上限規制が猶予されてきた業界・職種も原則適用へ

また、労働条件明示のルール変更は労働基準法そのものではなく施行規則の改正ですが、入職時だけでなく転勤を含めた将来的な勤務地も明示が義務化されるなど、重要な変更として注目されています。

3.労働基準法に違反するとどうなる?

使用者に懲役または罰金が科される

労働基準法に違反すると、内容により最長10年の懲役または最大300万円以下の罰金が科されます。労働基準法違反は経営者や会社の代表者だけでなく、管理職や上司の立場にある人も該当することがあります。

通報や申告により労働基準監督署が調査をおこない、その結果により監督指導や、悪質な場合は刑事事件への移行などの対応がとられます。

これって労働基準法違反?

・雇用契約書や就業規則で罰金や損害賠償を定めている

業務がうまく遂行できなかった、期日までに納品できなかったといった場合(いわゆる労働者の労働契約不履行)に対し、使用者が違約金を払わせることや、ルールとして損害賠償額を決めておくことは禁止されています

・有給休暇を取得すると査定の評価を下げられる

労働基準法では、年次有給休暇を取得した労働者の賃金を減らすといった不利益な扱いをすることを禁止しています。したがって、有給休暇を取得した社員の査定を下げることは労働基準法違反です。

・求人票にあった待遇と実際の待遇が異なる

労働基準法では、使用者に労働条件の明示を義務付けています。ただし、募集時点での求人票に記載されている条件は目安であり、明示しなければならない情報には該当しません。そのため、求人票と実際の待遇が違っていること自体は問題ありません。

なお、入社・入職が決まり、労働条件通知書や雇用契約書で示された労働条件(勤務時間、賃金額など)と実際の条件が異なっている場合は労働基準法違反となり、労働者は雇用契約の解除を申し入れることができます。

労働基準法違反は労働基準監督署へ相談

労働基準行政
引用:厚生労働省「労働基準行政の組織」

労働基準法を土台に、厚生労働省、都道府県、各地の労働基準監督署が労働状況の監督や労働者の権利の保護をおこなっています。仕事上のトラブルのなかでも残業代や賃金の不払い、休暇が取得できない、聞いていた仕事内容と違うなど、労働基準法違反と思われるケースでは労働基準監督署への通報や相談が有効です。

労働基準監督署に相談できることやその方法、ほかの相談機関について詳しくはこちらの記事で解説しています
労働基準監督署には何を相談できる? 会社にバレない方法や事例も紹介

4.労働者を守る労働基準法

労働基準法は、労働者が安全に人間らしく働くためのルールです。就職や転職、雇用条件が変わったタイミングなど、自身の働く環境に問題がないか、今一度振り返ってみましょう。

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