ブランクのある看護師の就職準備とおすすめ施設

ブランクを経て復職を考えている看護師を取り巻く環境はさまざまです。妊娠や出産で仕事を辞めてそろそろ働きたいと考える人、子どもを産み終えて子どもの手が離れてきたから復職したいと考える人もいると思います。ここでは、潜在看護師の現状や復職を目指す看護師が抱える不安、復職準備や研修、おすすめの施設などをご紹介します。

看護師の復職準備

潜在看護職の現状

厚生労働省の発表によると、2012年(平成24年)の潜在看護職員は71万人というデータが出されています。同年における就業中の看護職全体の人数は約154万人(1,537,813人)です。また、新規の看護職の資格取得者は5.1万人、離職者は16.1万人。過去10年間の平均で毎年3万人の看護職が増加しています。再就職者は14万人と発表されています。


日本看護協会の資料によると、2016年の看護職の就業者数は1,660,071人で前年より25,952人増加しています。


人数は看護師が一番多く、前年より1,646人増加しています。准看護師は看護職の中で2番目に多い人数ですが、前年からは就業人数が減っています。


2016年の離職率は常勤10.9%、新卒7.8%です。2012年の離職率は常勤11%、新卒7.9%なので少しだけ良い状況になっています。新卒については、新人看護師研修の実施など、病院定着対策が一定の効果を上げていると言われています。また、常勤の離職については、夜勤の長い看護師が多い施設ほど離職率が高い傾向があるようです。

ブランクを持つ看護師が復職時に抱える不安

ブランクを持っていても働きたいと考えている看護師たちは、以下の例のように、復職するときにさまざまな不安を感じています。


1. 業務内容に関する不安

「5年前まで臨床現場でバリバリ働いていたつもりでしたが、ブランクを経て復職したら、いろいろなことが変化していて、仕事のスピードについていけませんでした。」

これは求人サイト「ジョブメドレー」を利用した看護師さんからい寄せられた言葉です。


多くの人が心配するのは、「知識や技術が今でも通用するか」ということです。2〜3年ほどのブランクであれば、勉強することによりすぐ取り戻せそうですが、10年以上だとかなりの努力が必要かもしれません。なぜなら、紙のカルテが電子カルテに変わっていたり、5年前には当たり前だった処置方法や考え方が、今では「古い」とされているということも多くあったりするためです。


復職後に上記のようなギャップを目の当たりにして落ち込んでしまう方やそのような状況を恐れて復職をためらってしまう方もいるのではないでしょうか。


医療の進化はとどまることなく、日々変化し続けています。進歩している医療についていくための努力は、現役の看護職でも必要です。そのため、ブランクのある方はより多く情報収集し、勉強する必要がありますね。


また、知識や技術以外では、実際に生活とのバランスが取れるようになるか不安に思っている人も多いでしょう。初めは、久しぶりの現場に緊張し、その施設のやり方や職員との関係に戸惑うこともあるでしょう。勤務が終わったらぐったりとして、普段の生活パターンが崩れたり、生活の変化にスムーズに馴染めないこともしばしばです。子育て中の人は、とくに家族と共に子どもの送り迎えの時間や家事の分担を考えておく必要があるでしょう。


2. 子どもが小さい場合の葛藤

小さい子どもを持つ人が復職するうえで、「子どもを預けてまで働く意味があるのか」と自問して、苦しむことがあります。とくに女性は看護師にかかわらず、どの職業の人もそのように思ってしまう傾向があるようです。


子育てと仕事はどちらかを選ばなければならないことではありません。また「子どもは3歳まで常時家庭において母親の手で育てないと、その後の成長に悪影響を及ぼす」という「3歳児神話」にとらわれて悩んでしまうこともあるようです。


しかし、「3歳児神話」は平成10年の厚生白書で「合理的な根拠は認められない」と否定されました。その他、日本赤ちゃん学会や有識者の中で否定の意見が発表されています。


たしかに、幼少期は人間(他者)に対する基本的信頼感を形成する大事な時期とされていますが、必ずしも母親がそばにいなければ形成されないということではありません。家族はもちろん、親戚、近所の人々、保育園の先生など、多くの人の手で支えてもらいながら育まれていくのが理想だとされています。


大切なのは時間の量ではなく、時間の中身(質)です。このことは、さまざまな学会や子どもにかかわる有識者が訴えていることです。


日本では、今なお3歳児神話が根強く残っている印象があります。この考えにとらわれることなく、今は復職のときではないと考えているのなら、それで良いのです。でも、子どもがいるけど、自分は看護師として働きたいと考えている人は、一歩踏み出してみてもよいのではないでしょうか。

看護職として復職するための準備

看護職として復職するためには、どのような準備をすればよいのでしょうか? 以下で確認していきましょう。


1. 知識・看護技術の復習・更新

ニュースなどで話題になっている医療情報はもちろん、基本的な医療・看護の知識を仕入れておきましょう。看護の本を買うのも良し、アプリなどで勉強するもの良しです。最近は、ネット上に看護学生用のいろいろな学習サイトがあるので、就職するにあたって看護師としての基本をもう一度勉強しておきましょう。


また、看護技術の復習も必要です。地域の病院などでも行われている復職支援研修を活用するのもおすすめです。


2. 家族に相談

とくに子どもがいる人は、これまでの生活が変わってくる可能性が高いため、家族で家事を分担したり、お互いにサポートしたりしていくための話し合いが必要になります。


3. 具体的な勤務形態や診療科を考える

希望の勤務形態が決まっていればいいのですが、もし不安が大きい場合はパートタイムから始めて、常勤にシフトしていくという働き方も考えられます。また、病棟か外来か、どの診療科で仕事をするのか、一番重要な希望項目は何かを自分の中で明確にしておきましょう。

ナースセンターってどんなところ?

各都道府県にはナースセンターが1つずつあり、就職希望の看護師を施設に無料で紹介してくれます。以下で代表的なサービスを紹介しますが、各都道府県によって内容が異なることもあるため、詳細はホームページなどで確認してみてください。


1. 復職の相談と無料紹介

ナースセンターの相談員が、キャリアプランを含めて相談にのってくれます。無料で施設紹介もしてくれるので、相談しながら復職活動が進められます。看護師に特化したセンターのため、看護師の復職事情に詳しいスタッフが対応してくれます。


2. 復職支援研修

新しい医学や看護に関する情報の提供をしてくれます。また、復職を目指す看護師に対して、新しい看護の知識・技術を習得するための研修を開催しています。最近の医療の話題はもちろん、基本的な看護技術や演習、実習もプログラムされている研修もあるのは嬉しいですね。


3. 交流会(交流カフェ)

子育て中や定年退職した方など、ナースセンターに訪れるさまざまな看護師と交流できます。すぐに復職を希望していない方も利用できるので、まずは話をしたり聞いたりすることから始めてみてもよいかもしれません。似た環境の人や、違う立場の人と話して刺激を受けてみましょう。


4. e-ナースセンター

ナースセンターに行かなくても、インターネットで登録すると、求人検索ができるようになっているのも嬉しいサービスです。気になる求人情報は早めにチェックしましょう。


5. ハローワークとの連携

都道府県のナースセンターでは、地域のハローワークでナースセンターの相談員による巡回相談を行っています。ナースセンターから遠いところに住んでいる場合は、場所や日時を確認して利用できます。スケジュールは各都道府県のナースセンターに問い合わせてくださいね。


6. 離職時の届け出

知らない看護師の方も多いかもしれませんが、離職時の届け出をする制度があります。「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が改正され、平成27年10月1日から施行された法律で、離職時に都道府県のナースセンターに氏名や連絡先などを届ける制度です。


届出は努力義務ですが、情報をもとに離職中の看護師とつながりをもって、個々の状況に応じて、復職に向けた研修や支援、相談によるアドバイスや情報提供を受けることができます。


ご覧のように、ナースセンターはさまざまな復職支援をしています。復職にまつわる相談や研修だけでなく、交流カフェもあり、同じような境遇の人との情報交換の場にもなりそうです。ハローワークとの連携で求人を探すこともでき、復職を考えている人には心強い存在です。ぜひ地元のナースセンターのホームページをのぞいてみてください。

復職するのにおすすめの施設は?

看護師が復職するにあたって、どのような職場が適しているのでしょうか? 選択肢を5つ挙げてご紹介します。


1. クリニックや診療所

総合病院と比べて規模の小さい、診療所やクリニックを選ぶのも1つの方法です。スタッフが少人数のため、クリニック全体で指導にあたる傾向にあり、目が行き届きやすいというメリットがあります。診療科によっては、人数が少ない分忙しいということもあるかもしれないので、慣れるまではすこし時間がかかるかもしれません。


2. 慢性期病棟

急性期看護は、看護技術の実践や判断にスピード感が求められる部分が多くありますが、慢性期病棟や療養型の施設は比較的ゆっくりとしたペースで看護が行われる傾向にあります。そのため、復職にあたって技術や知識をじっくり掘り起こしたいという方に適していると言えます。看護師の人数や勤務体制、サポートしてくれる人がいるかどうかなどを確認しておきましょう。


3. 健診センター

健康診断センターや人間ドックでの看護師の仕事は、健康な方への採血や視力検査などを行います。勤務形態によっては残業がほとんどなく、土日も休みなどの好条件もありますが、病院勤務に比べると給料が安い傾向があります。


4. デイサービスなどの介護施設

基本的に自宅で過ごされている方で、デイサービスに通所できる方が利用するため、看護ケアがそれほど必要ない方も多くいます。デイサービスの看護師の仕事は、バイタルサインを測って記録したり、食事介助を手伝ったりします。場合によっては褥瘡(じょくそう)がある方への傷の処置、湿布貼付や軟膏塗布などの業務もあります。


介護職の方が、入浴介助や運動、リハビリを誘導しますので、看護師は利用者さんの健康状態や安全の確認、転倒防止などについて気をつけておく必要があります。認知症の方は、不安を訴える方もいますので、落ち着いて過ごしてもらえるような配慮も必要です。


介護施設は看護職が一人など少ないことも多く、さまざまな判断を自分でしたり、責任も一人に集中してしまったりということがあるため、事前にサポート体制の確認をしておくといいでしょう。


5.「ブランクOK」「ブランク大歓迎」の職場

ジョブメドレーでも、ブランク可の求人を多く出しています。このような求人はブランクを考慮したフォロー体制があったり、ブランクがある人を実際に雇用した実績があったりするなど、ブランクのある復職者への対応がスムーズであると考えられるので、ぜひ検討してみてくださいね。

読者の方へのメッセージ

「ブランク可」と記載がなくとも受け入れ可能なケースも

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名原 史織 (看護師・鍼灸師) 2017/07/28

プロフィール

「なるほど!ジョブメドレー」は、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が運営するメディアです。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に就いている人や就きたい人のために、キャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。仕事や転職にまつわるご自身の経験について話を聞かせていただける方も随時募集中。詳しくは「取材協力者募集」の記事をご覧ください!
2003年よりNTT東日本関東病院の手術室にて看護師として勤務する。2012年より東京医療専門学校に入学し、看護師の傍らはり師きゅう師の国家資格取得を目指す。2015年NTTを退職、同年はり師きゅう師国家資格を取得。

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