話を聞いたのは児童養護施設で働く保育士Gさん

──Gさんは専門学校卒業後、保育園ではなく児童養護施設へ就職したんですね。
もともと保育園で働きたいと思ってたんですけど、専門学校の実習で児童自立支援施設へ行ったんです。そこで児童福祉施設で働くことに興味を持って、専門学校の先生に伝えると「保育園より施設のほうが向いてると思う!」って言われたのがきっかけです。
──先生はGさんのどこが施設に向いていると思ったんでしょうか。
どうなんでしょう……! 私は身体を動かすのが好きで。例えば保育園で預かるような小さい子だと、身体を動かすのにも限度があるじゃないですか。でも実習で行った自立支援施設や、今働いている児童養護施設だと小中学生もいるので活発に動くんですよね。
それに児童養護施設は“子どもたちの暮らしの場”なので、子どもたちとたくさん関わっていられるんです。先生はそういう施設の特徴をふまえて、「向いてる」って言ってくれたのかなって思います。
──Gさんは保育士として働くうえで、子どもたちと関わる時間を多く持ちたかったんですね。
そうですね。私が児童養護施設で働きたいなって思ったのも、一人ひとりの子と関わる期間が長いからなんです。
保育園だと長くても5年くらいで子どもたちが卒園しちゃいますけど、児童養護施設では長くて13〜15年一緒に過ごします。子どもたちの成長を長く見られる環境が、就職の決め手になりました。
一日の業務内容と一ヶ月のシフトから見る夜間の働き方
──保育園では未就学児を預かりますが、Gさんが勤務する児童養護施設で暮らす子どもたちの年齢層は?
今は一番下の子が3歳、一番上の子が18歳の高校3年生です。
施設は縦割りのユニット制で、私が担当しているユニットは4歳から高校1年生までいます。
──幅広い年齢の子を担当するんですね。職員はどんなシフトで働いているんですか?
シフトは基本的に宿直勤務と断続勤務の2つです。だいたい宿直勤務と断続勤務がセットになっています。
宿直勤務は午後から出勤して、施設に泊まって翌朝まで過ごすシフト。断続勤務は宿直勤務後に長い休憩を挟んで、そのまま夜まで働くシフト。遅番は15〜21時のシフトです。
──宿直勤務や断続勤務は1ヶ月に何回くらいあるんですか?
宿直勤務は1ヶ月に10回くらいですね。断続勤務も10回いかないくらいです。過去のものですが、月のシフトはこんな感じです。

──なかなか大変そうですね……! 宿直勤務と断続勤務の流れをそれぞれ教えてください。
長くなってしまいますが、宿直勤務はこんな感じです。

──見回りを挟んで睡眠の時間があるんですね。
はい。各ユニットの生活スペースに保護室と呼ばれる部屋があるのでそこで寝ます。
生活スペースは、ユニットごとに一つのお家みたいな間取りになっているんです。リビングやキッチン、トイレ、お風呂、子どもたちそれぞれの部屋があって──その中の一部屋が保護室ってイメージですね。保護室には机や書類をしまう棚、ベッドがあります。
──なるほど。続いて断続勤務の内容を教えてください。
9〜15時まで休憩をして、21時まで宿直勤務と同じような業務をします。

──断続勤務は6時間の休憩があるんですね。
そうなんです。子どもたちが学校や幼稚園に行っている時間は休憩になります。休憩中は自由に過ごせるので、こうやって取材を受けたり、出かけたり、家が近い人なんかは一回帰ったりできますね。
──施設外で過ごすこともできるんですね! 宿直勤務、断続勤務中の夕食はどうしてるんですか?
宿直勤務のときは子どもたちと同じメニューを食べます! 断続勤務や遅番のときも子どもたちと同じものを食べられるんですけど、量が結構ガッツリあるので食べるのに時間がかかっちゃうんですよね。なのでパパッと食べれるおにぎりとかパンを買って食べる職員もいます。
──夜間の業務でとくに意識していることはありますか?
小さい子の夜泣きがあったとき、なるべく早めに対応してあげることでしょうか。一人が泣いちゃうと、ほかの子も起きちゃったり泣いちゃったりするので(笑)。
──夜泣きの連鎖などは夜間の「あるある」なんですかね。
ほかにも、見回りのときに寝言が聞けたり、すごい寝相が見れたりするのもあるあるです。なかには寝ぼけて起きてくる子もいて! 本人は覚えてないんですけどね(笑)。
夜間の業務の大変さと、心の支えになっているもの
──夜間の業務は大変なイメージがありますが、Gさんがとくに大変だと感じるところは?
やっぱり睡眠時間が短いところです。仕事が終わらないと寝れないし、でも朝は毎日同じ時間に子どもたちを起こさないといけないし……「あ〜眠いな〜起きられないな〜」って思うことはいまだにあります(笑)。最初に比べたら慣れましたけどね!

「親代わりとなって子どもたちを見守る夜間の業務は大切な仕事です!」
──新人の頃はとくに大変ですよね。慣れるまでは先輩と一緒に宿直業務をやるんですか?
そうですね! たしか1ヶ月間くらいかな? 先輩方が一緒に泊まってくれて、いろいろ教えてくれました。
それこそ新人の頃なんかは、自分自身が若いじゃないですか。そうすると歳が近い高校生の子を朝起こすのがすっごい大変で! なかなか起きてくれないし機嫌悪いし、なんなら暴言吐かれるし……!
──歳が近いが故の大変さもあるんですね。
当時はそういう高校生の子に注意しにくかったり話しかけにくかったり、距離の縮め方に戸惑いました。もう関係性が築けているのでなんてことないですが!
──担当の子が成長するにつれて、反抗期なんかも?
ありますあります。中学生……いや小学校高学年くらいからが反抗期ですかね。一回、夕食の煮物を投げつけられたことがあります(笑)。
──煮物!
ほんと「え?! どういうこと?!」って感じでした(笑)。ガンモとか柔らかい具だったので痛くはなかったですが……!
──本当にいろんな大変さがあるんですね。反対にGさんが思う、夜間の業務の良いところは?
どんなに反抗期の子やトラブルを起こす子でも、寝顔を見ると「ああ可愛いな」って思えるところですね(笑)。
あと、これは良いところって言えるかわからないですが、私は職場が自宅から遠いんです。なので宿直勤務で職場に泊まると、通勤回数が減って楽だなと感じることがあります。
──なるほど。そういえば、宿直勤務には手当がつくんですか?
つきますね。でも看護師さんがもらっているような夜勤手当と比べると低いんじゃないかな?
宿直勤務1回につき3千円、宿直勤務が月に10回程度なので合計で3万円くらいになります。
──Gさんにとって、夜間の業務を頑張る糧となっているものは?
新型コロナウイルスが流行する前は、休みの度に大好きなディズニーに行ってました! 年パスも持ってたくらいで。
でもコロナ禍になってからは、職場から「県外に出ないで」って言われちゃってて、今でもぜんぜん行けてないんですよね(泣)。
──それは悲しい……ディズニーに代わる心の支えは見つかりましたか?
ステイホーム期間に、今までぜんぜん見てなかったYouTubeにハマりまして! 今はグループのYouTuberを推してます。

「県外に行けるようになったら、前みたいにディズニーに行ったり、YouTuberのイベントに行ったり、旅行もしたいです」
子どもたちの成長を長く実感できることが児童養護施設の魅力
──現場の職員目線で見て、児童養護施設で働く保育士はもっと必要だと感じますか?
そうですね〜。うちの施設では、求人を出しても新人さんが入ってこない状況が続いてて……。うちはとくに宿直勤務・断続勤務って特殊なシフトなのもあると思いますが、もうちょっとどうにかならないかなと思います。
でも難しいですよね。ちょうど保育士の給料が低いって話題にもなってますし。
──児童養護施設で働く保育士さんを増やすには、やはり働く環境や待遇を整えることが重要?
ですね。もうちょっと働きやすくなれば、児童養護施設で働く保育士が増えるんじゃないかなと思います。あとは児童養護施設で働く魅力が伝わることも大切ですね。
──Gさんが思う児童養護施設で働く魅力は?
やっぱり、就職の決め手と同じで「子どもと長く関われること」です!
──同じ子と長年関わっていると、成長に感極まることもあるのでは……!
いやほんとに! 卒業式とか卒園式とか運動会とか見てると、なんか泣けてきちゃいますもん(笑)。周りの保護者に紛れて一緒に泣いちゃうみたいな(笑)。
でもこうやって保護者の目線で学校の行事に参加できることも、保育園で働く保育士さんとはまた違った魅力なのかな。
──では最後に、夜間の業務を伴う職場で働こうと思っている保育士の方へメッセージをお願いします!
えっなんだろう! 大変ですけど、やりがいはあります!
私の職場は宿直勤務・断続勤務のシフトですが、早番・日勤・遅番・夜勤といった分け方をしている職場も多いかと思います。求人を見るときは、勤務時間をしっかり確認するのがポイントです。
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