目次
1.退職証明書とは
退職証明書は、従業員が退職したことを証明するために会社が発行する書類です。労働基準法第22条により、会社は退職者から請求があった場合、発行を義務付けられています。

一般的に退職証明書には、以下の内容が記載されます。
退職証明書の記載事項
- 勤務期間
- 業務の種類や内容
- その事業における地位
- 賃金
- 退職理由(解雇の場合は解雇理由)
なお、労働基準法では、「労働者の請求しない事項を記入してはならない」と定めています。例えば、「在籍期間を証明するために退職証明書を発行してほしい」という場合、賃金や退職理由などの不必要な情報を記載してはいけません。
2.退職証明書の取得方法・もらえる時期
退職証明書の取得方法
退職証明書は、退職した会社に依頼して発行してもらいます。会社を辞める前後に、前職の人事や総務の担当者に連絡し、必要な情報を明確に伝えましょう。会社によって申請方法が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
退職証明書がもらえる時期
退職証明書は、退職日以降に発行されるのが原則です。なお、労働基準法では「遅滞なく」交付することを定めていますが、具体的な期日は明記していません。そのため、請求後に即日発行してくれる会社もあれば、数日かかる会社もあります。早急に必要な場合は、あらかじめ会社にその旨を伝え、交付予定日を確認しておきましょう。
3.退職証明書が必要になるシーン
健康保険や年金の手続き
退職後、健康保険や国民年金に新たに加入する場合に、退職した事実を証明する書類として退職証明書の提出が求められる場合があります。
転職先への提出
転職先の会社が、前職での仕事内容や労働条件を確認する目的で提出を求めることがあります。
4.退職証明書の発行ルール
退職者が希望したら必ず発行する
退職者が退職証明書の発行を希望した場合、会社は必ず応じなければなりません。申請に応じなかった場合、労働基準法第22条違反となり、30万円以下の罰金が科されます。
申請期限は2年以内
退職証明書を申請できる期限は退職日から2年以内と定められています。これを超えると会社が発行に応じる義務がなくなるため、証明書が必要な場合は注意しましょう。また、この期間内であれば再発行の請求も可能です。
記載内容は退職者が決められる
退職証明書に記載する内容について、退職者が希望しない項目は記載できない決まりとなっています。例えば「在籍期間を証明するために退職証明書を発行してほしい」という場合、会社は賃金や退職理由などの不必要な情報を記載できません。
5.退職証明書をもらえない場合の対処法
まずは転職先に相談する
退職証明書を取得できない場合、まずは転職先の会社に相談してみましょう。退職証明書は公的な書類ではないため、ほかの書類で代用できる可能性があります。
前の職場に発行の義務を伝える
退職日から2年以内であれば、退職証明書の発行は会社の義務です。発行してもらえない場合は、前職の担当者に法律で定められていることを伝えてみましょう。
労働基準監督署・弁護士への相談
発行の義務を伝えても発行してらえない場合は、労働基準監督署への相談をおすすめします。労働基準監督署からの指導があっても発行されなければ、弁護士などの法律の専門家に相談しましょう。
6.ほかの書類との違い
会社を辞める際には退職証明書のほかにも、離職票や離職証明書、解雇理由証明書などの書類が発行されます。退職証明書は退職した事実を証明する書類として、会社が退職者に発行する書類ですが、ほかの書類は目的や発行者、受け取る人が異なります。
離職票 |
離職証明書 |
解雇理由証明書 |
|
---|---|---|---|
正式名称 |
雇用保険被保険者離職票 |
雇用保険被保険者離職証明書 |
なし |
使用目的 |
失業手当の受給手続き |
離職票の発行 |
従業員が解雇された理由を明確にする |
発行者 |
ハローワーク |
会社 |
会社 |
受領者 |
退職者(会社を介すことが一般的) |
ハローワーク |
退職者 |
離職票との違い
退職証明書と離職票は、発行目的や公的な書類かどうかが異なります。離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、退職者が失業手当の給付を受ける際に必要な公的書類です。一般的にハローワークが発行し、会社を介して退職者に交付されます。一方、退職証明書は会社が発行する書類で、公的な書類ではありません。
離職証明書との違い
退職証明書と離職証明書も、発行目的や公的な書類かどうかが異なります。離職証明書は正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、離職票の発行のために必要な書類です。会社が離職証明書を発行し、ハローワークに提出することで離職票が発行されます。
解雇理由証明書との違い
退職証明書と解雇理由証明書とは、発行の目的が異なります。解雇理由証明書は会社から解雇された場合に、その理由などを明らかにする書類です。いずれも労働基準法22条に基づく書類ですが、解雇理由証明書は解雇以外の理由では発行されません。
7.退職証明書に関するよくある質問
Q.パートやアルバイト、契約社員でももらえる?
退職証明書は正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員など雇用形態に関わらず、退職した従業員が請求すれば発行されます。
Q.本人以外でも発行してもらえる?
本人が署名捺印した委任状があれば第三者が申請することも可能です。退職証明書には個人的な情報が含まれるため、本人以外への発行には委任状が必要となります。
参考
- e-Gov法令検索|労働基準法