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昭和4年から愛される福岡の老舗病院
福岡県大野城市に位置する「秦病院」(現ハピタル)は、創立から90年以上にわたり地域医療を支えてきた歴史ある病院です。長年にわたり、地域の患者さんと職員に親しまれてきた一方で、昔ながらの働き方や老朽化した設備に課題を抱えていました。
こうした背景を受け、近年は職員の意見を取り入れながら働き方改革を積極的に推進しています。そして、2025年4月、病院の建て替えにともない「街のひかり病院 ハピタル」として新たなスタートを切りました。長く愛されてきた温かさはそのままに、新しい時代にふさわしい職場へと生まれ変わりつつあります。
今回は、ハピタルで働く看護部長と2人の看護師に働き方についてインタビューを実施。働き方改革の経緯や、建て替えを機に変わったこと、変わらないことを伺いました。

話を聞いた人
看護部長 田中佳枝さん
急性期の病院で約10年勤務したのち、出産を機に退職。復職後は、ハピタルの前身である秦病院で10年間勤務した。さらなる成長を求めて他院に転職し、副看護部長まで経験を積む。2024年、再び秦病院に戻り、現在は看護部長を務めている。
看護師 高津美紗貴さん
新卒で滋賀県内の病院に入職。結婚を機に福岡県に移住し、出産・育児を経験した。託児所のある精神科病院で5年ほど勤務したのち、子どもの小学校進学を機に秦病院に入職。現在は療養病棟で長期療養や看取りまで担う。
看護師 岸本翔大さん
准看護師としてキャリアをスタート。福岡市内の眼科や久留米市の病院で勤務しながら、看護師免許を取得。秦病院では建て替えの準備にも携わった。現在は地域包括ケア病棟で、在宅復帰を目指す患者を支えている。
“夜勤なし”も選べる? 看護師の働き方は8通りに

──まずはハピタルについて教えていただきたいのですが、どのような病棟があるのでしょうか?

ハピタルには外来のほか、地域包括ケア病棟と療養病棟があります。看護部全体では約60人が在籍しており、30〜40代を中心に、子育て世代や経験豊富な中途入職者も多く働いています。それぞれが自身のキャリアやライフスタイルに合わせて活躍できる職場です。
──田中さんも中途入職とのことですが、どのような経緯でハピタルに?

実は、まだ「秦病院」だったころに一度勤務していたんです。子育てがひと段落したあと、さらに経験を積もうと考えて他院に転職しました。子どもが進学し、自分のキャリアを見直していたときに、秦病院の看護部長が体調不良でお休みされていると伺いました。スタッフが困っていると知り、何か力になれればと思い、昨年ふたたび戻ってきました。
──いわゆる“出戻り”ですね。戻る際に抵抗感はありませんでしたか?

全くありませんでした。子どもが小さいころは病院や同僚にサポートしていただいたので、その感謝の気持ちでいっぱいです。以前は設備が古くて苦労もありましたが、人間関係はとても良く、今のハピタルにもその空気感はしっかりと引き継がれていると感じます。
──ハピタルでは建て替え以前から、働き方改革に取り組まれていたそうですね。何がきっかけだったのでしょう?

どの病院もそうでしたが、看護師の勤務形態といえば、常勤かパートかの区別くらいで、常勤であれば夜勤が必須という働き方でした。結婚や出産など、ライフステージの変化を機に辞めざるを得ない人も多くいたんです。
そのような課題があったため、2019年に職員満足度アンケートを実施しました。その結果が厳しいもので、委員会を立ち上げたと聞いています。それから職員の声をていねいに拾い上げ、柔軟な働き方ができるよう対応したり、職員の声を取り入れた福利厚生を充実させたりと、さまざまな見直しが進められてきました。
──柔軟な働き方とは?

ハピタルではさまざまな勤務コースを用意しています。夜勤や残業の有無、曜日の指定、部署限定といった条件の異なる、8つの働き方から選べるんです。これにより、夜勤なしで曜日を固定する働き方も可能になります。年に1回はコースの変更もできるので、ライフステージや家庭の都合に応じて自分らしく勤務できるようになっています。

──曜日や部署も選べるんですね。高津さんはどういったコースで働かれていますか?

私は曜日限定コースで勤務しています。子どもがまだ小さかったので、仕事と子育てを両立できる職場を探していました。そのなかで、秦病院(当時)では、働き方が選べて、子育て世代が多く活躍していると聞き、興味を持ったんです。
また、病院の理念に「職員のやりがいと幸せの追求」を掲げていて、実際に職員を大切にしていると感じられる職場だと感じました。

──実際に働き始めて、いかがでしたか?

先ほど看護部長が「人間関係の良い職場」とおっしゃっていましたが、私もそう感じました。子どもの急な体調不良のときも、周囲の理解と協力があり、早めに帰らせてもらえる体制が整っています。また、多忙な時期には上長が「大丈夫?」と声をかけてくれるので、心の余裕をもって働ける環境です。

──岸本さんは職場の雰囲気をどのように感じていますか?

私も高津さんと同じように感じています。上司との距離が近く、困ったことがあればすぐ相談できる関係性が自然と築けています。また、リニューアル後、1階は各病棟や外来がつながっているので、部門間のコミュニケーションも取りやすいですね。
定時退勤もしやすく、職員同士で自然に「何か残ってることはない?」と助け合える雰囲気があるのは、働き続けたいと思える大きな理由です。

建て替えで患者ケアもアップデート
──建物はリニューアルされましたが、院内の設備にも変化があったのでしょうか?

はい、設備も刷新されて、ケアの質が向上したと感じています。たとえば「眠りスキャン」を導入したことで、患者さまの睡眠状態をモニターできるようになりました。夜勤中でも「寝たきりのはずの方が動いている」「長時間覚醒しているけどトイレで転倒していないだろうか」といった懸念があればすぐに対応でき、安全面の向上に役立っています。
また、患者さまの枕元に設置されたベッドサイド情報端末では、ピクトグラムで状態が表示されるようになりました。どの職種のスタッフでも一目で患者さまの状況を把握できるんです。

安全面では、ICカード式のセキュリティが導入されたことも大きな変化です。セキュリティが強化されたことで、安心して業務に集中できるようになりました。
──患者さんも、働く皆さんも安心感が高まったんですね。

そう思います。それに、私たち職員が使う仮眠室や休憩室もきれいに整備されて快適になりました。リニューアル後は「夜勤のときによく眠れるようになった」と話すスタッフもいて、環境の変化を実感しています。


患者さまからの満足度も上がっていると思います。例えば、バリアフリー設計の入浴設備の導入で、無理な姿勢での入浴や立ち上がりが不要になり、より安全かつ快適になっただけでなく、患者さまの尊厳の確保にもつながりました。ほかの面でも「いいケアを提供しよう」という意識が高まっているように感じます。

患者さまへの質の高いケアを実現するには、職員の働きやすさも欠かせません。たとえば、建て替えの際に床を医療用カーペットに変えたことで、立ち仕事による足腰への負担が軽減されました。
環境が改善されたことでゆとりが生まれ、患者さまへのケアに今まで以上に集中できています。看護師たちのなかで、良い循環が生まれ始めていると感じます。
職員の声から生まれたユニークな福利厚生
──職員の声から福利厚生を充実させたとお聞きしましたが、実際にどのような制度があるのでしょう?

結婚祝い金や出産祝い金は一般的なものだと思いますが、アニバーサリー休暇やペット死亡休暇など個性的な制度もあるんです。

──とても充実していますね! 中でも職員の方がよく利用されている制度はありますか?

「いいね!ポイント制度(ピアボーナス制度)」はよく利用されていますね。「この人の働き方が素敵」「こういうところが尊敬できる」といった気持ちを、システム上でポイントとして送り合える制度なんです。他職種にも気軽に「いいね」を送れるので、職種の垣根を越えたコミュニケーションにもつながっています。


今は多様性の時代ですから、どんな制度が職員に響くのか、やってみないとわからないところもあります。だからこそ、ほかの病院にはないような制度も含めて、さまざまな福利厚生を試行しながら整えてきました。
こうした取り組みの積み重ねが、職場への信頼感や定着にもつながっているのではないかと思います。
こんな看護師さんと働きたい! ハピタルの未来
──それぞれの仕事でやりがいを感じるのは、どんなときですか?

寝たきりで全介助だった患者さんが、リハビリ職や多職種と連携しながらケアすることで、歩けるようになって退院していったときは、本当にやりがいを感じました。今後も、もっとケアを充実させていきたいですね。
また、療養病棟には「しっかりケアをしたい」という思いのある看護師が多く、カンファレンスが活発になってきたことも、やりがいのひとつだと思います。

私は病院の建て替えに関わったことです。新しい病院の建築委員会にも参加させていただいて、ハピタルと一緒に成長してきたという実感があります。なかなか経験できないことですし、これからも患者さまや仲間に貢献していきたいという思いが強くなりました。

スタッフがいきいきと働いてくれることが何よりうれしいです。以前は、自分たちで考えて動くことが難しかったスタッフも、今では「患者さんのケアをどう充実させるか」と主体的に話し合えるようになってきました。
4月からは新卒の職員も加わりました。そうした職員をしっかり支えられるよう、今後も働きやすい環境や良好な人間関係を大切にしていきたいと考えています。
また、今活躍している職員の中から、委員会やプロジェクトの運営も担うようなリーダー人材を育てていきたいです。チームを活性化してくれる存在を増やしていけたらと考えています。
──ありがとうございます。最後に、どんな人がハピタルの看護師に向いていると思いますか?

看護に意欲的な方は、周囲に良い影響を与えてくれるので、大歓迎です。人と関わることが好きな方であれば、ハピタルの環境にはきっとなじみやすいと思います。

看護を学び続けたい方、成長したい方、そして患者さんのケアを大切にしたい方にぴったりの環境だと思います。新卒の職員と接するうえで、自分自身の学習は欠かせません。eラーニングや研修でスキルアップもできるので、向上心がある方に向いている職場ですね。

二人の意見に加えて、私は「思いやりの心」と「自ら知識や技術を高めていこうとする姿勢」を兼ね備えた方に、ぜひ仲間になっていただきたいと思います。
※掲載内容・所属・肩書はインタビュー時点のものです