
1.「あまねの杜保育園」に行ってきた
2.デザインに込められたコンセプト
3.施設紹介(2階:デッキテラス・屋上)
4.施設紹介(1階:保育室・中庭・ランチルーム)
5.あまねの杜保育園で働くスタッフに聞いてみた
1.「あまねの杜保育園」に行ってきた

出迎えてくれた椎名先生(写真左)と竹村先生(写真右)
今回は社会福祉法人 南生会さんが運営する「あまねの杜保育園」にお伺いしました。
あまねの杜保育園は2015年8月に認可保育園として開園。
千葉県船橋市に位置し、西船橋駅からバスで10分ほどの距離にあります。
2.デザインに込められたコンセプト

あまねの杜公式HPより引用
ーすごく特徴的な見た目の園ですよね。どのようなコンセプトがあるんですか?
椎名先生:この園舎は、中庭を囲んだ“ロの字”になっています。その中庭を中心に、デッキ・スロープ・階段・ブリッジなどが設置されており、中庭を立体的に“周(めぐ)る”構造が大きな特徴です。
この少し変わった造りが、子どもたちにとってはすごく面白いみたいで、毎日ぐるぐる走り回ってますよ。
建築家の方は「立体回遊導線」とおっしゃっていました。漢字にすると、ちょっと仰々しいですよね(笑)。
ーたしかに、中庭をめぐる回廊のような見た目になっていますね。
竹村先生:中庭を囲うひさし付きの外廊下は、夏の日差しや雨風を防ぎますし、保育士にとっては見守りもしやすく避難路にもなる。デザイン性だけでなく、機能性も優れているんです。
ーおしゃれなだけではないんですね。
もうひとつ、この園舎には「自然の恵みを“周(あまね)く”感じて欲しい」という想いも込められており、日光・緑・木々など、随所で自然を感じられるつくりになっています。
ーもしかして、園の名前と掛けているんですか?
実は、園の名前でもある「あまね」は「周」の読み方のひとつでもあるんです。
つまり、この園舎は園の名前をそのまま表したデザインということですね。
ー“あまねく”に“めぐる”。2つの意味が込められたデザインなんですね。
3.施設紹介(2階:デッキテラス・屋上)

あまねの杜公式HPより引用
ー実際に園内を見させていただいてもいいですか?
竹村先生:もちろんです!まずは2階と屋上からご案内しますね。園舎の特徴を1番感じられる部分だと思うので。

園内は竹村先生が案内してくれた
2階には3〜5歳児のクラスとお遊戯室があります。
大きな特徴としては、広々としたデッキテラスがあることですね。
デッキテラスから1階の中庭へと滑り台で降りられたり、スロープや階段で屋上へ行くことができたりと、先ほどご説明したような立体構造になっています。

あまねの杜公式HPより引用
ーなんだかワクワクするつくりですね。
入り組んだ構造によって、高いひさし・低い軒下・坂や階段・日陰や日なたが生み出され、365日を通してさまざまな変化を楽しめるようになっています。
子どもたちもこのデッキテラスで遊ぶのが大好きで、毎年おこなわれる運動会もここで実施しているんです。
屋上へ続くひな壇が、ちょうど観客席(保護者席)のようになるんですよ。
ーHPで拝見したんですが、屋上には畑があるとか。
そうなんです。屋上の畑もその“変化”のうちの1つで、年間を通していろいろな野菜を栽培・収穫しています。
遊びのなかに「畑仕事」を取り入れることで、自然と生命をより身近に感じることができますし、食のありがたみなども実感しやすい。食育の1つですね。
夏場には、この畑による熱の遮断効果も期待できるそうです。

屋上:あまねの杜公式HPより引用

収穫した野菜で子どもたちと漬物や切り干し大根などを作るそう
4.施設紹介(1階:保育室・中庭・ランチルーム)


あまねの杜公式HPより引用
竹村先生:次に1階部分をご紹介しますね。1階には保育室のほか、中庭、ランチルーム、多目的室があります。
保育室には0〜2歳児さんのクラスがあり、各クラスには蜜柑や林檎など、果物の名前がついています。

保育室の内観:あまねの杜公式HPより引用
ー広くてスッキリとした保育室ですね。
これは2つの保育室が繋がっている状態なんです。普段は手前の部屋と奥の部屋の間を仕切りで隔てて、2つの部屋として使っています。
また、これは園長の方針なのですが、長い時間を保育園で過ごす子どもたちのため、保育室が落ち着いた空間・環境となるよう努力しています。その取り組みのひとつとして、大きな目で描かれたキャラクターものの絵や人形は置かないようにしています。
ーなぜですか?
「人からの視線」って、けっこうストレスになりますよね?それは子どもでも同じだと思うんです。
たとえ、それが「キャラクターからの視線」でも無意識のうちにストレスが掛かると園長は考えています。
保育室にいる間は少しでもストレスなく過ごして欲しいので、そのような対応を。
ですので、登園時の服装にはなるべくキャラクターが描かれていないものをお願いしています。
ーなるほど、徹底していますね。
ほかにも設計者のこだわりもあり、子どもたちには“本物の質感”に触れて欲しいと、木材には塗料やニスを塗らないでおいたり、壁のコンクリートがむき出しのままだったりもします。
ーそうすると維持・管理が大変そうですね。
私もそう思っていたんですが、意外とほったらかしでもなんとかなっています(笑)。
そしてこちらが中庭ですね。

中庭にある小川や池には、貯めた雨水を再利用しています。
普段はこの中庭に亀の夫婦を放し飼いにしているんですが、最近は寒くなってきたので室内に移動させました。
ー中庭の小山の中はトンネルになっているんですね。

実は、このトンネルと室内を繋ぐように地下チューブが通っていて、トンネル内の冷気を室内に送り込める仕組みになっているんです。
さきほどの池の水などもそうですが、この園舎は自然の力を存分に活用する設計になっています。

あまねの杜保育園パンフレットより引用
ーなるほど。こちらは調理室ですか?


そうです。調理室もガラス張りになっており、外から中の様子を覗けるようになっています。
子どもの目線に合わせて、調理室の床が少し低くなっているんです。最近はこういう造りの園が増えてきているみたいですね。
子どもたちの話を聞いていると、以前に比べて出来合いのレトルト食品を食べる子が増えてきた気がします。
冷凍食品やコンビニのお惣菜のクオリティも非常に高くなってきて、電子レンジさえあれば美味しい食卓はできあがってしまう。そんな時代だからこそ、子どもたちには本物の食材を目で見てたくさん触れて欲しいなと。
ーランチルームも広々として開放的ですね。

そうですね。天井は高く設計されてますし、日光もふんだんに取り入れられるようになっています。
ちなみに、私たち保育士も子どもたちと同じ給食を食べています。

取材日の献立は豚肉と野菜の炒め物と、ほうれん草とポテトのサラダ
ー美味しそうな給食ですね。
調理師さんの作る給食は毎日すごく美味しくて、日々感謝しています。
これで園内のご案内は以上になります。
ーお忙しいところありがとうございました。
5.あまねの杜保育園で働くスタッフに聞いてみた

インタビューに応じてくれた服部美琴先生
ー先生のプロフィールを簡単に教えてください。
服部先生:新卒2年目の保育士です。短大卒なので22歳ですね。
ー服部先生はなぜ保育士に?
小学生の頃からちっちゃい子たちの面倒を見るのが好きで、町内会の行事などでも積極的に子どもたちと遊んでいたんです。
自分は好きで面倒を見ていただけなのに、お母さん方にすごく感謝される。やりたいことをやっているだけなのに褒められるなら、保育士が天職かな?と(笑)。
なので、小学生の頃からずっと保育士を目指していました。
ーあまねの杜保育園に就職した理由はなんですか?
すごく長くなるんですけどいいですか?
大学の時にお世話になった先生が、ここの園長先生の元同僚だったんです。
その先生に「この園はすごくいいんだよ」と紹介されて、見学させてもらったら本当にすごくよかったので。
ーけっこう短かったですね。
もっといろいろあったんですが、割愛したんです!
ー割愛した部分を教えてください。
まず、もともとの希望として縦割り保育をおこなっている園に行きたかった、という気持ちがありました。
ー縦割り保育というと、あまねの杜保育園のように異年齢で合同保育をしているところですか?
まさしくそうです。子どもたちにとっても、年齢が異なる子と一緒に生活するほうが良い刺激をたくさん得ることができるんじゃないかなと。
あと、そういう環境では子どもがどういう風に育つのかを知りたかったんです。

ー実際にこの園に来てみてどうですか?
同じクラスでも年齢によって“目指したい姿”や“目標”が異なってくるので、そういった部分は縦割り保育ならではの難しさかなと。
ですが、子どもの定員が160名と比較的多いこともあり、毎日が賑やかですごく楽しいんです。あまねの杜に来てよかったなと心から思います。
ー定員が多い分、先生方の負担が大きくなるのでは?
職員の数も多いので、人員の問題で負担に感じたことはないですね。
特に今年はフリーの先生がいっぱい入ってくださったので、すごくありがたかったです。各クラス、担任プラス1名でみられるようサポートに入ってくださいました。
給食の先生や常駐の看護師さんなども入れたら、職員は45名くらいになるんじゃないでしょうか。
ー看護師さんが常駐しているんですね。
そうなんです。看護師さんが子どもたちの健康面をサポートしてくださるので、私たちも全力で保育と向き合えています。
ーこの園舎が、保育の現場に与えている良い影響はありますか?
最初は園庭がない分、子どもたちにとって少し窮屈なのかな?と思っていたんですが、そんなこともなく、屋上やウッドデッキで毎日元気に走り回っています。
園庭のある保育園と同じくらいおもいっきり遊び回れるのは、この建物のつくりのおかげですよね。
ー最後に、今後の課題や目標があれば。
私自身、まだ保育士2年目で至らない点はたくさんあるんですが、まずは保育のアイディアや引き出しを増やしたいなと。
いまはまだ先輩たちの保育をみて「こんなやり方があるんだ〜」って真似してるだけなので。
ーそのあたりは経験を積んでいけば自然と実力が付いていきそうですね。
あと、将来的には障害児の保育に関わりたいなと考えています。
もともと障害児保育にもすごく興味があったんですが、まずは保育園で基礎を学んでからかなと。
なので、いまは将来を見据えながら、保育士としての地盤をしっかりと固めていきたいです。
ー影ながら応援させていただきますね。本日はありがとうございました。
※記事内で使用している写真の一部は、あまねの杜保育園公式HPより許可を得て引用しています