薬剤師の人数・年齢・男女比率から考える働き方・職場環境

全国で働く薬剤師の人数や年齢の分布、男女比率などは最近どのように変化しているのでしょうか?これらの数値を調べることにより、どんな人たちが職場で活躍しているのかチェックしておきましょう。

薬剤師の男女比

現在、登録されている薬剤師の人数は?

厚生労働省の調査によると、平成28年(2016年)12月31日時点の薬剤師の登録数は、男性11万6,826人」、女性18万4,497人となっています。


男女の合計は30万1,323人。男女比率は男性38.8%、女性61.2%となるため、おおよそ4:6の割合だと理解することができます。


薬剤師の数は年々増加傾向にあり、平成26年(2014年)の調査と比較すると1万3,000人ほど増えている状況です。また、人口10万人に対する薬剤師の数は237.4人なので、こちらも前回の調査と比べて10.7人ほど増加しています。


ただし、あくまで登録者の人数なので、施設に従事していない(もしくは一時的に離職している)人の数も含まれます。

薬局や医療機関で働いている薬剤師の人数は?

薬剤師を目指す方は、どのような施設や職場で働くことが多いのでしょうか? 最も資格保有者のニーズが高く、働いている人数も多い施設は「薬局」です。現在は全国で17万2,142人が薬局で働いています。こちらは登録総数の57.1%となり、約6割の方が薬局で働いている計算となります。


次に多いのが「医療施設」です。こちらは5万8,044人。こちらは登録総数の19.3%となり、約2割の薬剤師が医療施設で働いていることになります。


薬局と医療施設の人数を合計すると、薬剤師のほとんどがどちらかの職場で働いていることになりますが、他にもニーズが高まっている職場をご紹介します。


「医薬品関係企業」で活躍する薬剤師は4万2,024人となり、登録総数の13.9%を占めています。


医薬品関係企業には、製薬会社やドラッグストアなどがあり、薬剤師の資格を活かした環境で働けるため、今でも就職先の1つとして選ぶ方がいます。


また「大学」や「衛生行政機関」「保健衛生施設」なども薬剤師を積極的に採用し、合計で約11,000人の方が各施設で活躍しています。

年齢分布から見る薬剤師が最も活躍している年代

施設や企業で活躍している薬剤師の最も多い年代は「30~39歳」で7万6,714人となり、登録総数の25.5%を占めています。


次に多いのは「40~49歳」の7万1,949人(23.9%)、「50~59歳」の6万514人(20.1%)となり、合計すると約7割の薬剤師がこの年代に集中している計算になります。


一方で、定年を迎える時期でもある「60~69歳」は、3万8,409人と他の年代に比べて減少していますが、「70歳以上」は1万4,243人とまだまだ現役で働いている方も多く、定年以降も需要のある資格として認められています。


また「29歳以下」の年齢層は3万9,494人と他の年代に比べて少ないことがわかります。この年代の人数が少ないため、薬剤師の平均年齢が「46.0歳」となっています。


これは、平成18年に薬剤師の教育課程が4年制から6年制に移行したことが影響したのかもしれません。もし18歳で6年制の薬学部に進学すれば、卒業時には24歳になるため、4年制の時と比べて必然的に20代の薬剤師が少なくなります。

20代の薬剤師が少ない原因のいろいろ

20代の薬剤師が少ないのは、教育課程が6年制に移行した他にもさまざまな要因があります。同じ6年制を卒業した医師、歯科医師、獣医師と比較して、薬剤師は女性に人気の高い職業です。


先にも述べたとおり、登録者数の男女比率は4:6なので、性別関係なく活躍できる職業といえるでしょう。一方で、20代の女性は「結婚」や「出産」などライフスタイルが大きく変わる時期。子育てが落ち着く年齢になるまで離職し、再び職場へ復帰したいと考える人も少なくないため、結果として30代と40代の薬剤師が多くなります。


近年では、厚生労働省により「次世代育成支援対策推進法」が施行されており、働き方改革の一環として、各職場が子育て支援に積極的に取り組んでいます。


とくに女性の比率が高い薬剤師という職業は、働きやすい環境づくりが課題となっており、仕事と子育てが両立できるようサポートする施設・企業が増えています。


みなさんも就職活動の際には、採用項目の福利厚生や待遇・制度などの内容をよく読み、安心して仕事ができる環境であるか調べておきましょう。

薬局・医療機関に従事する薬剤師の男女比率

最も多く薬剤師が働いている「薬局・医療機関」の男女比率を見てみましょう。現在、男性は全国で7万8,432人、女性は15万1,754人と男性と比較して約2倍の女性薬剤師が主要施設で働いています。


全体の登録者数の男女比率は4:6ですが、従事する施設に限れば、現場では女性が多く在籍していることがこの数値から伺い知れます。


また、男性で働く世代の多いのは「30~39歳」、女性は「40~49歳」となっており、一般の男性スタッフが管理職もしくはベテランの女性スタッフと連携しながら仕事を進めることが多いようです。


ただし、これはあくまで全国の薬局・医療機関の統計であるため、地域によっては人手不足が深刻化していることもあり、一概に女性ばかりの職場になるとは限りません。


最も薬剤師が多く活躍している都道府県は、人口10万人に対して220.9人が従事している徳島県。次いで218.3人の東京都となるため、さまざまな地域で活躍できる職業といえます。


東京都のような都市部は人口密度が高いため、統計の結果に近い男女比率になる可能性が考えられるでしょう。対して最も少ないのが沖縄県の134.7人、青森県の143.5人、福井県の145.1人となります。

年代別から見る薬剤師の給与

年代別による薬剤師の給与額は以下のとおりです。

政府統計ポータルサイト「e-Stat」より

※男性薬剤師・女性薬剤師ともに2017年度の統計


<男性薬剤師の「所定内給与額」および「年間賞与その他特別給与額」>


・25~29歳:30万1,700円/68万3,000円
・30~34歳:35万8,900円/91万4,100円
・35~39歳:41万3,300円/109万4,500円
・40~44歳:44万9,400円/116万5,100円
・45~49歳:47万900円/92万3,800円
・50~54歳:44万5,600円/107万700円
・55~59歳:39万7,900円/84万6,700円
・60~64歳:45万400円/53万2,600円
・65~69歳:40万1,100円/20万6,100円
・70歳以上:36万8,600円/119万9,600円

・年齢計:37万7,800円/83万900円
・男性の平均年収:377,800×12+830,900=536万4,500円

<女性薬剤師の「所定内給与額」および「年間賞与その他特別給与額」>


・25~29歳:30万9,400円/65万1,400円
・30~34歳:32万2,800円/72万2,400円
・35~39歳:35万4,200円/87万5,700円
・40~44歳:38万7,400円/75万5,500円
・45~49歳:39万6,600円/78万3,600円
・50~54歳:40万6,800円/81万6,300円
・55~59歳:40万9,600円/101万2,200円
・60~64歳:38万6,400円/111万8,400円
・65~69歳:39万5,400円/30万9,400円
・70歳以上:27万7,600円/85万円

・年齢計:35万1,200円/74万9,000円
・女性の平均年収:377,800×12+830,900=504万5,300円

他の職種と違い、薬剤師の平均年収は男女の差があまりないのが特徴的です。職種によっては100万円ほど差が生じる場合もあるため、性別関係なく収入を得られる資格といえるでしょう。また、薬剤師は職場での女性比率が高いため、能力が認められれば管理職として活躍する方も多く、平均年収が自然と底上げされます。

まだまだ広がりを見せる薬剤師のニーズ

教育課程が6年制へ移行したことにより、全国の大学で「薬学部」が数多く新設されました。その影響から、数年前に薬剤師の過剰要員が懸念されていましたが、いまだに人材不足が解消されない状況です。雇用形態の多様化から就職難に陥る薬剤師も増えており、長く安定して続けるためには相応のスキルを身につける必要があります。


薬剤師は薬局・医療機関だけではなく、介護現場や在宅医療などでも専門知識を活かして働くことができます。また一部の薬局でも、「正しい薬の飲み方」や「飲み合わせ」の指導などを行い、在宅医療への関心を高めるサービス展開を行っています。


他にも、薬剤師を医療チームの一員として加える病院も増えており、高度な知識を持つ薬剤師であれば、専門的な診療にも携わることができます。


近年では、より専門性を高めるための資格取得を推進しており、以下のような認定資格を日本医療薬学会、日本病院薬剤師会などが設けています。


・がん専門薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師(悪性腫瘍)
・感染制御認定薬剤師、HIV感染症薬物療法認定薬剤師(感染症)
・腎臓病薬物療法認定薬剤師、腎臓病薬物療法専門薬剤師(腎疾患)

これらの資格は「実務経験5年」や「実技研修」など、さまざまな条件を満たした後に取得が可能なので、難易度が高いことが理解できます。大学を卒業した後も決して安泰だとは思わず、常に技術とスキルを磨き続けながら、より専門的な仕事を選べるよう成長することが大切ですね。

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