管理薬剤師とは? なるための要件や業務内容、給料・年収について調査しました

薬局やドラッグストアで配置義務のある管理薬剤師。通常の薬剤師とどのような違いがあるのでしょうか? 管理薬剤師にはどのようにしてなるのか、給料はどれくらいか、またどんな場所で活躍できるのかをご紹介します。

管理薬剤師のイメージ

1.管理薬剤師とは

管理薬剤師とは、その名の通り「医薬品」や「従業員」を管理する薬剤師で、薬局やドラッグストアの責任者として医薬品医療機器等法(通称:薬機法/旧薬事法)によって配置が義務付けられています

■管理薬剤師の仕事内容

その名前からもわかるように管理薬剤師は、その薬局や店舗において薬剤師やスタッフを「管理・監督」する役割を担っています。また勤務薬剤師と同様に医薬品の適正使用のための情報提供、医薬品などの情報活用・提供体制の整備、医薬品の有効性・安全性・副作用に関しての報告業務などもおこないます。

なかでもとくに「管理」業務は管理薬剤師にとっての中核的な業務です。具体的な業務内容として「従業員の監督」と「医薬品等の管理」が挙げられます。

厚生労働省は、管理薬剤師のおこなう「管理」業務について以下のように定めています。

従業員の監督 1. 管理薬剤師以外の薬剤師、薬剤師以外の従業員が、適切に業務をおこなっているかどうか(例:接客、法令遵守、情報提供の適否)の監督

2. 薬学の専門的な知識が必要な事例等、従業員等ができない場合への対応
医薬品等の管理 1. 店舗内の医薬品、その他の物品等(医薬部外品、化粧品等)を適正に管理

2. 医薬品と他の物品等(医薬部外品、化粧品等)を区別して貯蔵、陳列

3. 医薬品等が不良品とならないように、遮光、冷所等、適正な保管

4. 設備の不備等、問題があった場合、開設者に改善するよう意見具申

5. 不良品、不正表示品(例:有効期限切れ、表示不備品等)を発見し、処分

参照:厚生労働省/管理薬剤師等の責務の内容について


2.管理薬剤師の要件・なるには

実は、薬剤師から管理薬剤師にステップアップするために必要な試験や要件はありません。それぞれ勤務する薬局やドラッグストアなどで、任命を受け昇進することで管理薬剤師になることができます。

ただし、薬局においては「実務経験が5年以上」など、管理薬剤師になるにあたって推奨される事項がいくつか挙げられています。
参考:日本薬剤師会「薬局における法令遵守体制整備の手引き

管理薬剤師になるためには、薬剤師としての調剤業務だけでなく、管理職として「医薬品医療機器等法」や「薬剤師法」などの法律に関する深い知識も必要です。

また、調剤薬局であれば調剤報酬(レセプト)請求の仕組みや医療保険制度などの豊富な知識も必要です。管理職としての責任も負うことになるため薬剤師としてある程度の経験を積んでいることが望ましく、「キャリアアップしたい」という積極的な姿勢も欠かせません。

ほかにも、転職時に勤務薬剤師から管理薬剤師へとステップアップする方法もあります。

その場合は募集要件に「実務経験5年以上」などを求められることが多いので、これまでの経験などをしっかりとアピールできるよう準備しましょう。

3.管理薬剤師の給料・年収

管理薬剤師の給料について、2020年6月時点でジョブメドレーに掲載されている求人をみると、平均月給の下限が35万円、上限が48万円。下限と上限を平均すると41.5万円となります。

これには各種手当や残業代などが含まれていないため、実際に支給される額はこれ以上となりそうです。

年収に換算すると、「平均月収(41.5万円)×12ヶ月=498万円」にプラスして賞与なども支給されるため、単純計算で500万円を上回る金額となるでしょう。

4.薬局とドラッグストアでの業務の違い

管理薬剤師が活躍する場として多いのは調剤薬局やドラッグストアです。

調剤薬局では、医薬品の保管・管理や従業員の指導・監督といったいわゆる管理者としての業務はもちろん、近隣の医療機関が出す処方箋に対応できるようにするため、その医療機関の特徴や採用している医薬品に関する情報収集もおこないます。

ドラッグストアでは医薬品の管理だけでなく医薬部外品や日用品も管理し、広告や宣伝が法令に違反していないかなどのチェックもします。薬剤師だけでなく登録販売者や化粧品などの担当者(ビューティーアドバイザー)など、医療分野以外に関わる従業員の管理もおこなうため、幅広いスキルが身につく可能性があります。

これまで薬剤師としての実務未経験の人やブランクのある人でも管理薬剤師研修など制度の整った職場を選んで転職・復職すれば、管理薬剤師へキャリアアップが目指せます。

5.管理薬剤師は複数店舗で兼務・副業は可能?

結論から言うと、基本的には管理薬剤師の兼業や副業は認められていません

そのことについて医薬品医療機器等法(通称:薬機法/旧薬事法)第7条3項では次のように書かれています。

【医薬品医療機器等法(薬局の管理)第7条‐3】
薬局の管理者(第1項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第1項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない

上記の通り、薬局の管理者(管理薬剤師)は勤めている薬局以外では薬事に関する仕事をしてはいけないとされています。

しかし、2019年3月に管理薬剤師の兼務について一部緩和され、地域における必要な医薬品提供体制の確保を目的とした以下の場合には兼務が許可されることとなりました。

・薬局の営業時間外である夜間休日に、当該薬局の管理者がその薬局以外の場所で地域の輪番制の調剤業務に従事する場合

・へき地における薬局の管理者の確保が困難であると認められる場合において、当該地域に所在する薬局の営業時間外に、当該薬局の管理者が他の薬局に勤務する場合



■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による兼業規制の緩和

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、薬剤師や管理薬剤師が不足することを想定し、厚生労働省は2020年4月に「管理薬剤師の常勤の扱い」「管理薬剤師の兼務」などについて通知を出しました。

具体的な内容は次の通りです。

【管理薬剤師の常勤の扱い】

管理薬剤師がテレワークをおこなう場合、その代行者を薬局開設者等が指定して、現場で管理させる。またこの場合、管理薬剤師はテレワークの勤務時間も勘案して常勤として扱える。また、管理薬剤師が新型コロナウイルスの感染などにより、業務をおこなえない場合、同じくその代行者を薬局開設者等が指定して、現場で管理させる。

【管理薬剤師の兼務】

感染拡大防止策などにより薬局が閉鎖された場合(複合施設内に設置されている薬局など)、そこで務める管理薬剤師が他の薬局で業務を継続させる必要があり、薬局開設者等が管理薬剤師の業務を遂行するに当たって支障が生じないと認められる場合に限って一時的に管理薬剤師の兼務が認められ得る。

そのほかの詳細は厚生労働省の、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた薬局及び医薬品の販売業に係る取扱いについてをご確認ください。

6.こんなところでも管理薬剤師が活躍しています!

前項で紹介したような薬局やドラッグストア以外でも、医薬品卸企業製薬企業で活躍する管理薬剤師もいます。

医薬品卸企業では、管理業務のほかに製薬企業と取引先をつなぐ役割を担うこともあります。また、医薬品販売における可否(適否)判断をおこなうなど、医薬品の流通やその法的準拠など幅広い知識が求められます。医薬品関連の多岐にわたる管理業務を担うため、その責任は大きいですがやりがいのあるポジションともいえます。

そして製薬企業では医薬品管理や行政機関への対応、新薬に関する申請、医薬品に関する問い合わせ対応が主な業務です。

この2つの職場で働く管理薬剤師は、医薬品卸企業ではMS(医薬品卸販売担当者)、製薬企業ではMR(医薬情報担当者)と呼ばれる営業担当者へ教育や指導をおこなう業務を担うことがあります。身につけた幅広い知識を十分に活かすことができ、多くの人に還元できる点もやりがいといえます。

このように、管理薬剤師は自身の知識や経験を活かすことができ、さらに給与水準も高めの職種です。管理能力の向上や幅広い知識の習得などスキルアップを目指したい人はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


読者の方へのメッセージ

薬局・薬店におけるマエストロ的存在!?

本文にもあるように、管理薬剤師は薬局や薬店(ドラッグストア)において、そこで従事するスタッフの管理・監督業務をおこないます。店舗の規模はさまざまですが、管理薬剤師は、従事するスタッフがより良いパフォーマンス(仕事)を発揮できるように日々、指示を出します。広い視野でつねに全体を見渡しながら指示するその姿は、さながらオーケストラでタクトをふるう指揮者であり、一段ステップアップした薬剤師像でもあるのです。

中澤 巧 (薬剤師) 2023/12/19

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