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株式会社ほねごりとは
神奈川・東京・埼玉を中心に、業界トップクラスのスピードで成長を続ける鍼灸接骨院の注目企業が「株式会社ほねごり」です。なるほど!ジョブメドレーでは、2016年、2021年と過去2回にわたりその変遷を追ってきました。
今回2024年8月の取材時点では、創業から11年目を迎え、鍼灸接骨院44店に整形外科クリニック3院を傘下に抱え、昨年度グループ売上実績は56.3億円にものぼります。
コロナ禍でも躍進を続けるほねごりには、社外からの視察が絶えないといいます。その強さの秘訣は何なのか、そして今後の展望について、ヒューマンリソース部の前田さんと丸山さんに話を聞きました。
話を聞いた人
ヒューマンリソース部課長 前田哲也さん
大学卒業後、和太鼓奏者やバドミントンショップの店長として働いていたが、27歳のときに学生時代の後輩でもある代表取締役の阿部から誘いを受け、柔道整復師に転身。2013年には阿部と共にほねごりの前身である小山小学校前整骨院を創業。その後院長、マネージャーを経て採用担当となる。
ヒューマンリソース部次長 丸山洋生さん
柔道整復師の専門学生時代、創業期のほねごりにアルバイトとして入社。その魅力に惹かれ卒業後も新卒社員として勤続し、以来10年間ほねごり一筋。院長、マネージャーを経て採用責任者を務める。
業界の明暗を分けたコロナ禍を経て
──前回取材時の2021年は、新型コロナウイルスの流行真っ最中でした。当時の出店数は31店舗で、現在は44店舗まで拡大しています。コロナ禍で厳しい経営状況に立たされた治療院も多かったなか、どう乗り越えたのでしょうか?
コロナによる来店控えで客足が減り、経営難に苦しんでいる同業他社は少なくありません。一方、私たちは医療型の鍼灸接骨院として患者さまの悩みを解消するために、患者さま自身にも治療についての理解を深めてもらい、治療の“目標設定”を明確におこなっています。そのため「コロナだから来店を控える」という状況に陥りづらかったのだと思います。
ほねごりでは問診をとても大切にしています。初めて来店された患者さまには、専用の問診室で30〜40分程度ヒアリングをおこない、どんな症状があって来たのか、症状を改善した結果、どのような生活を送りたいのかというところまで踏み込んで話を聞きます。ジムのパーソナルトレーニングをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
目標をかなえるために、患者さま自身にも治療に対して主体的に関わっていただく。その結果、モチベーションが維持され、中長期で通われる患者さまが多くいらっしゃいます。
またコロナ禍では、在宅勤務による影響か30代サラリーマンの顧客が増えました。これに着目し、営業時間を調整したうえで、もともと定休日だった日曜も営業を開始したんです。すると今まで平日に来ることが難しかった客層が増え、結果的に来院数アップにつながりました。
前回取材時(2021年)の年商23.6億円から、2023年度は56.3億円まで伸ばすことができました。また、2024年度は70億円の着地予定となっています。さらに昨年は10周年を迎えましたが、神奈川県内にある創業10年目の全企業の売上ランキングで3位にランクインしました。
粗削りでもビジョンのある人と働きたい
──直近2年で売上倍増は大きなインパクトですね。ほねごりの成長を支える背景には、何があるのでしょうか?
私たちが提供する施術は形のないものなので、担当者次第でその質は大きく左右されます。つまり“人が商品”なんです。だからこそ、人材育成には何よりも力を入れています。
コロナ禍では社内体制を見直し、「採用」「教育」「リテンション*」の部署を再編しました。
まず採用ですが、応募される方のスキルや経験は重視していません。面接や面談で必ずお聞きしているのは、その方がこれからどうなっていきたいかという、将来のビジョンです。「治療家としてここを伸ばしたい」「家族とこんな生活を送りたい」といった目標に向かって、一緒に成長していこうと思える方と働きたいと思っています。
粗削りでもいいので、自分なりに目指す姿がある方であれば、その実現のために仲間や会社が伴走していきます。
*リテンション(retention)…「維持」「保持」の意。従業員の定着を目的に待遇の見直しや働きやすい環境づくりを実施すること
──反対に、ほねごりには向いていない人の特徴はありますか?
私たちは徹底的に患者さまに寄り添った治療を心がけています。そのため他人に関心がなく、自分の技術を高めることだけに注力したい方は向かないかもしれません。また、和気あいあいとした雰囲気の職場なので、チームで働くことに苦手意識がある方も向いていないかもしれませんね。
もちろん、技術の高さは我々の強みですので、入社理由として「技術を学びたい」という方は多くいます。ほねごりの理念に共感いただいたうえで、治療家として成長していきたいという方は大歓迎ですよ。
手厚い社内制度がパフォーマンス向上につながる
──続いて教育面について教えてください。入社後はどのような研修制度がありますか?
入社後は、新卒・中途を問わず新人研修を受けてもらいます。治療家として患者さまにとってどうあるべきか、信頼される先生になるために、技術はもちろんのこと大切になる考え方も含めて学べる環境です。
また月に10回程度、社内外の講師を招いた研修を定期的に開講しています。例えば、海外の足病科専門ドクターを講師に招いた「インソール塾」では、足病学についての専門知識や技術を学ぶことができます。そのスキルを活かし、店舗でオーダーメイドのインソールを製作・提供することで、足から身体の不調の改善を目指すことができます。
──充実した研修制度ですね。では、社員の定着を目指すリテンション面ではどのような取り組みがありますか?
現場の声をしっかりと吸い上げ社内に反映させる目的で、年に一度「社員実態調査」をおこなっています。「残業をなくして早く退勤したい」「手当を拡充してほしい」などさまざまな意見をもとに、昨年は新たに13の制度が誕生しました。
一部を紹介すると、昨今の物価上昇を受けて、住宅手当の金額を月額1万円から1万5,000円に増額。また飲食店で毎月5,000円を利用できる「チケットレストラン制度」を新設しました。
年間休日も毎年増えていて、今では年間最大125日あります。
ただこういった新しい制度は、無条件で実現するものばかりではありません。皆で協力して目標予算を達成できたらという条件を設けることもあります。そのほうが働くモチベーションにもつながりますから。
──社員の努力や実績も反映される仕組みなんですね。
ええ。それから施術スタッフが本来の業務に専念できるよう、業務の効率化にも力を入れています。例えば店舗では毎日レジ締め作業がありますが、精算金額にズレが生じて退勤が30分遅くなる……なんてことがざらにあります。この無駄な時間コストを削減するために、自動精算機を自社で開発し、精算金額にズレが出ない仕組みを作りました。
またこの業界では、保険の請求に誤りがあると行政から指導が入り、免許返納のリスクがあります。この管理を徹底するために、本社に保険受付課を設置し、正しい保険請求をおこない社員の資格を守る取り組みもしています。
こういった課題一つひとつに対処していくことで、社員全体のパフォーマンスが向上していると感じますし、従業員満足度も上がり、離職率の改善にもつながっています。
新卒1年目で院長も目指せる
──ほねごりでは役職が細かく分かれており、描けるキャリアの幅も広そうですね。
頑張り次第では、年齢も経験も関係なくスピード感を持ってキャリアアップが可能です。例えば昨年の新卒社員では、入社から1年以内に院長になったケースもありますし、中途ならより早く院長やマネージャーになるケースも珍しくありません。
逆に一度院長に抜擢されたあと、副院長に降格するケースだってあります。ただそれはまったくネガティブではないと思っていて。一度役職を下げて広い視野で学び直してから、実力をつけて再び院長に挑戦してみると、以前よりもずっと成長しているなんてこともありますから。
さらにほねごりの特徴として、女性社員の活躍があります。柔道整復師は8:2くらいで男性が多い業界ですが、店舗には先生をサポートしてくれる受付や施術補助スタッフがいるため、ほねごり全体の男女比は5:5です。
女性の院長やマネージャーも多く、結婚や出産といったライフステージの変化があっても勤務形態や役職を調整するなどして、柔軟に対応しています。
ほねごりの目指すゴールは“まちづくり”!?
──急成長を遂げるなか、今後の動向についても気になるところです。ほねごりが目指す将来像について教えてもらえますか?
急に大きな話になって驚かれるかもしれませんが、私たちの最終的な目標は“まちづくり”なんです。医療、ヘルスケア、教育分野にまたがった“健康のプラットフォーム”をほねごりが中心となって創造することを目指しています。
今はまだその道程の3合目くらいですが、着実に登っている途中です。整形外科クリニックは来年度4院目を開院し、総合病院の立ち上げも視野に入れつつあります。鍼灸の訪問サービスも始まっており、今後は訪問介護の領域にも進出する予定です。
昨年には相模原市にある私立北総合体育館のネーミングライツスポンサーとなり、「ほねごりアリーナ」として各種スポーツやイベントをおこなえる拠点を開設しました。さらに今年度はバドミントンの実業団チームを創設し、S/JリーグⅢへの参入も決まっています。こうして人が集まる場所をつくると、教育や健康関連のサービスが必要となり、街全体の人口と税収入も高まり、新たなプラットフォームとしての循環が生まれます。
社外の方から「ほねごりはぶっ飛んでる」と言われることもありますが、私たちはこれくらい高い視座で地域のステークホルダー(関係者)と協力しながら、地域社会に貢献する大きな未来を描いています。ほかの自治体の参考となるまちづくりの先行事例を作れば、結果的に治療家の社会的立場も上がっていくと考えています。
──壮大な未来像で驚きましたが、その一端を担えると考えるとわくわくした気持ちも湧いてきますね。では最後に、ここまで読まれた読者の方へメッセージをお願いします!