美容雑誌などで注目されている百貨店化粧品の「カバーマーク」「アクセ―ヌ」、ドラッグストアに並ぶ「ハトムギ化粧水」「塗るつけまつげ」。これらを手がけるのは、美容業界大手のピアスグループです。

同社では2024年10月より、社員の奨学金返還を会社が負担する「奨学金返還支援制度」を開始しました。導入に至るまでの経緯と制度の詳細について、アテンダントスタッフ人事部部長 関久美さんに伺いました。
話を聞いた人
アテンダントスタッフ人事部部長 関 久美さん
新卒で入社。カバーマークのアテンダントスタッフ(美容部員)としてキャリアをスタートし、入社3年目で店舗のチーフ、7年目で主任に昇進。キャリアを積み重ね、28年間にわたりカバーマークに従事。その後、ケサランパサランに異動し、ショップオペレーションディレクターとして店舗運営や経営に関わる。現在はアテンダントスタッフ人事部の部長を務める。
会社が奨学金を負担する理由とは
──ピアスグループでは2024年10月より、社員の奨学金の返還を支援する「奨学金返還支援制度」を導入しました。その背景を教えてください。
関さん:すべての社員が平等な環境で働くために、会社として何ができるかを検討した結果、奨学金の代理返還が一つの有効な手段であるとの結論に至りました。
奨学金制度は私たちの学生時代から存在していましたが、その頃とはだいぶ様変わりしていて、多くの若者が奨学金を利用しています。
若いうちから債務を背負うことは、金銭的にも精神的にも大きな負担です。仕事に集中できず、接客の質にも影響が出てしまいます。そうした状況を改善するため、奨学金返還支援制度の導入を決めました。

──すでに奨学金支援制度を導入している企業もありますが、このタイミングで導入を決めた理由は何でしょう?
当社の調査によると、大手企業で導入しているケースはそれほど多くはありません。
奨学金の最大の貸し手は日本学生支援機構で、およそ95%の人がここからお金を借りています。同機構では、2021年から奨学金返還支援(代理返還)制度を始めています。これは企業が社員に代わり、返還額の一部または全額を返還できる制度ですが、日本学生支援機構の仕組みでは、企業の規模が大きくなればなるほど利用が難しいことがわかりました。
しかし、調査を進めるなかで、規模の大きい企業でも導入できる方法が見えてきたため、社内制度を整えながら本格導入のタイミングを見計らっていました。
返還額の最大8割を完済まで支援
──奨学金返還支援制度の具体的な内容を教えてください。
新卒・中途採用に関わらず、ピアスグループで働く正社員のアテンダントスタッフ(美容に関するサービスを提供するスタッフ)を対象としています。
月々の返還額の最大8割を会社が負担し、その上限が月額1万2,000円となります。例えば、月に1万5,000円を返還している人には、1万2,000円を支援します。返還額が1万円の人には8,000円を支援する仕組みです。
ピアスグループに在籍している間であれば、返還が完了するまでずっと支援し続けます。完済まで支援する企業は多くはありません。
──返還対象となる団体は日本学生支援機構のほかにもあるのでしょうか。
奨学金を返還中であることと、返還額を示す公的書類を提出できる団体であれば対象となります。例えば、あしなが育英会や社会福祉協議会などの奨学金制度も対象です。

美容の仕事を諦めてほしくない
奨学金制度を調べるなかで、奨学金を利用せざるを得ない学生たちの厳しい現実が見えました。とくに美容専門学校の学生には、経済的に困難な状況で進学し、苦労して資格を取得している人もいます。
しかし、アシスタント時代は低賃金なんですよね。さらに奨学金の返還が負担となり、金銭的な理由で業界を離れてしまう人が多くいます。いま、美容業界の人材不足は深刻です。仕事にやりがいを感じながらも、美容以外の仕事に転職せざるを得ない人をこれ以上増やしてはいけないという思いがあるんです。
──資格を取るためにお金を借りたのに、経済的な理由で資格を活かせないのは残念です。
美容師やアイリスト・アイブロウリストは、お客さまを美しくして幸せを実感いただける素敵なお仕事です。しかし、先ほど申し上げた理由から、美容は好きなのにせっかくの資格を活かすことなく、ほかの仕事に転向せざるを得ない人もいます。
こうした現実を踏まえ、奨学金返還支援制度の導入を進めてまいりました。当社は、住宅費用や転居費用の補助といった福利厚生も充実しており、何より長く安定して働ける環境を用意しています。興味のある方からのご応募をお待ちしております。