1.こども家庭庁が保育士等の人件費の10.7%引き上げを発表
三原じゅん子こども政策担当大臣は11月22日、2024年度の保育士等の人件費を前年度から10.7%引き上げると発表しました。2023年度まで、引き上げ幅はマイナス0.3%〜5.2%で推移してきましたが、今年度は保育士の処遇の抜本的改善を目指すため、現在の制度で過去最大の引き上げ率としました。
また、この措置は公務員の人件費について改定を促す「人事院勧告」を踏まえた対応で、政府の総合経済対策に盛り込まれました。補正予算が成立すれば、2024年4月分にさかのぼって支払われます。
大幅な引き上げの必要性について、三原大臣は保育施設を視察した際に「保育士はもとより、利用する保護者からも処遇改善が必要だとの意見をいただいた」と説明しています。また、子どもに最も身近な保育士の抜本的な処遇改善が、保育の質の向上につながるとしています。
tips|保育士の年収は実際いくら?
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、保育士の年収は男性が448万5,200円、女性は393万2,300円です。また、都道府県によって年収には幅があり、全国平均では385万3,600円、最も高い東京都では445万3,500円となっています。
保育士の平均年収について、詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>保育士の平均年収は安い?公務員の給料や処遇改善で上がるのか解説
2.補正予算に1,150億円を計上
政府は11月29日、総合経済対策を実施するための補正予算案を決定しました。この補正予算に、保育士等の人件費引き上げのための1,150億円が盛り込まれています。こども家庭庁の補正予算は全体で4,335億円です。このうち、人件費の引き上げは最大の項目で、全体の約27%を占めます。補正予算案は12月上旬にも臨時国会に提出され、年内の成立が見込まれています。
3.保育士の処遇改善等加算の現状
今回発表された処遇改善は、基本的な人件費に関するものです。一方、2022年までに「処遇改善等加算」として3つの制度が導入されており、要件を満たした認可保育所に支給され、一般的に職員には手当として還元されてきました。
加算 |
内容 |
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処遇改善等加算Ⅰ |
すべての職員を対象に、経験年数などに応じて加算される |
処遇改善等加算Ⅱ |
副主任保育士やリーダー職員を対象に、技能・経験に応じて月額5,000円〜4万円支給される |
処遇改善等加算Ⅲ |
すべての職員を対象に、月額9,000円が支給される |
こども家庭庁によれば、処遇改善等加算や人件費引き上げの効果により、2024年度の保育士の収入は、処遇改善が始まる前の2012年度と比較して、3割以上増加するとされています。なお、これらの加算については、手続きの複雑さや事務負担の大きさが指摘されており、簡素化・一本化も議論されています。
4.保育士の月収は増加傾向
2013年度以降、処遇改善の効果などで保育士の月収は着実に増加しています。2014年の平均月収が21.6万円であったのに対し、2023年には27.1万円となり、約6万円増加しています。
深刻な人手不足の解消や保育環境の向上を目的とし、国は保育士の処遇改善に取り組んでいますが、実際の給与にどの程度反映されるかについては、引き続き注目が必要です。また、2025年からは改正子ども・子育て支援法により、保育所ごとに保育士のモデル賃金を公表するよう義務づけられる予定です。このような取り組みが進むことで、保育士の処遇改善が今後さらに期待されます。
参考
- こども家庭庁|国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策の重点事項
- こども家庭庁|三原大臣記者会見(令和6年11月22日)
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