目次
1. 御侍史・御机下は医師への宛名に添える言葉
御侍史・御机下は、医師宛ての手紙や紹介状などで使用される表現です。「御侍史」は「おんじし」「ごじし」、「御机下」は「おんきか」「ごきか」と読み、いずれも医師のみに使う脇付にあたります。脇付とは、宛名に添えて敬意を示し、宛名の人物に対してへりくだった気持ちを表す言葉です。
若手の医師のなかには、かしこまった表現に違和感を感じる人もいるようですが、医療・福祉業界の慣習となっているので、使っておいたほうが良いでしょう。なお、「先生」と呼ばれる職業であっても、薬剤師や弁護士、教員には使用しません。また、医師宛てであっても、私信やメールには用いない表現です。
2. 御侍史・御机下の意味
御侍史の意味
もともと、侍史とは身分の高い人のそばで秘書の役割をする人を指します。これが転じて「手紙を秘書から取り次いでいただきたい」という意味の脇付になりました。
御机下の意味
一方、机下は医師が使う机の下を意味しています。「机の上に置くのは恐れ多いため、机の下に置かせていただきます」という謙譲の気持ちと、相手への敬意が込められています。
3. 御侍史・御机下の使い方
ここからは、御侍史と御机下の使い分けや、どのように使用するかみていきましょう。
御侍史・御机下の使い分け
御侍史と御机下は、脇付としての役割は同じですが、使用できるシーンが異なります。秘書を通じて手紙を取り次いでもらう意味を持つ「御侍史」は医師の名前がわからない場合に使用します。一方、医師本人に届ける場合に使われる「御机下」は、名前がわかっているときに適しています。また、若い医師に送付する際は、脇付に御机下を使用する傾向があるようです。
封筒への書き方と注意点
送付先の医師の名前がわかっている場合は、名前の後に「先生」と書き、御侍史か御机下を続けます。名前がわからない場合は、「担当医先生」と書き、脇付は御侍史を使用します。
なお、御侍史・御机下のいずれの場合でも、名前の後に「先生」は必要です。名前の直後に、御侍史・御机下を付けないように注意しましょう。
送付先の医師の名前 |
使用できる脇付 |
書き方 |
---|---|---|
わかる |
御侍史 |
〇〇先生 御侍史 |
御机下 |
〇〇先生 御机下 |
|
わからない |
御侍史 |
担当医先生 御侍史 |

御侍史・御机下を書かないとどうなる?
実際の医療・福祉の現場では「〇〇先生」だけの記載でも、手紙・紹介状が粗末に扱われる可能性は低いといえます。ただし、ビジネスマナーが備わっていない印象を与えてしまう可能性があるため、適切に脇付を使いましょう。
メールでは不要
脇付そのものが封筒に書くことを前提としたマナーであるため、メールで連絡する際は不要です。脇付を記載したい場合は、メールは医師本人が開封するものなので、御机下を使用しましょう。
4. 御侍史・御机下に関するよくある質問と回答
Q.「御中」や「様」と一緒に使う?
「御中」は会社や団体に使う敬称です。そのため、医師個人に使う御侍史・御机下と組み合わせて使うことはありません。また医師の敬称には「先生」を使うため、「様」は重ねません。「〇〇病院 御中 担当医先生 御侍史」「〇〇先生 様 御机下」のような書き方にならないよう注意しましょう。
Q.「拝」は必要?
医師に手紙や紹介状を送る際、差出人の名前に「拝」と付け加える必要はありません。敬語が過剰な印象を与える可能性もあります。
Q.二重敬語ではない?
「先生」の後に御侍史・御机下を続けても、二重敬語にはなりません。「担当医 御侍史」などとせず、「担当医先生 御侍史」と書きましょう。
Q.女性の医師にも使用できる表現?
御侍史・御机下は相手の性別に関係なく使用できる言葉です。そのため、女性の医師に手紙や紹介状を送る際にも使用できます。
5. 適切に脇付を使おう
御侍史と御机下は医師のみに使う脇付です。医師以外の職種であっても、医師に手紙を送るシーンはあるかもしれません。「御待史」「御枕下」などと書き間違えてしまうと、医療・福祉業界のマナーを理解していない印象を与えてしまいます。御侍史・御机下の役割を理解し、適切に使えるようにしましょう。