いまさら聞けない「介護と介助」の違いをスッキリ整理!具体的な仕事内容、働くポイントを解説

介護と介助は、どちらも高齢者や障がいがある人の生活を支える仕事です。しかし、その意味と役割には違いがあります。この記事では、両者の違いや具体的な仕事内容、働くポイントを詳しく解説します。

いまさら聞けない「介護と介助」の違いをスッキリ整理!具体的な仕事内容、働くポイントを解説

目次

1.介護と介助の違いは?

介護と介助は、似ているようでそれぞれ意味合いが異なります。介護とは、高齢者や病気・ケガの療養中の人、心身に障がいがある人の日常生活全般をサポートする活動を指します。食事や排泄などの身体的なサポートだけでなく、掃除や買い物といった家事の援助、心のケアなど、暮らし全般を幅広く支える活動が「介護」です。

一方介助とは、日常生活動作を手助けする行為を指す言葉です。つまり、介助は介護の一部で、食事や入浴、排泄など、直接身体に触れておこなうサポートを指します。

tips|看護・介添え・支援の違いは?
介護や介助のほかにも、似たような言葉として「看護」「介添え」「支援」があります。主な違いは以下のとおりです。

看護:療養上の世話や、医師の指示に基づいて治療をサポートすること
介添え:そばに付き添って世話をすること
支援:力を貸して助けること。介護現場では、本人の力を活かす「自立支援」の意味合いで使われることが多い

2.介護の種類と仕事内容

介護現場で提供されるサービスは「身体介護」「生活援助」「その他の支援」の3つに分類できます。

身体介護

身体介護は、利用者の身体に直接触れておこなう介助サービスです。これらのサービスは、利用者のADL(日常生活動作)や意欲の向上を目的としています。また、専門的な知識や技術を用いて、利用者の日常生活や社会生活をサポートすることも身体介護に含まれます。

生活援助

生活援助は、利用者が日常生活を送るうえで必要な家事や買い物などを支援するサービスです。身体介護とは異なり、利用者の身体に直接触れることはなく、以下のようなサポートを提供します。

  • 掃除、洗濯、ゴミ出しなどの住環境の整備
  • 調理、配膳、後片付けなどの食事に関する援助
  • 日用品の買い物や薬の受け取り
  • 衣類の整理や補修

ただし、行事食(行楽弁当、おせちなど)の調理や、農作業などの生産活動、ペットの散歩など、本人の日常生活に直接関係のないサポートは生活援助に含まれません。

生活援助と身体介護の違いについて詳しくはこちら
>生活援助と身体介護とは?仕事内容や違いを解説

その他の支援・活動

介護現場では、身体介護や生活援助のほかに、利用者のQOL(生活の質)向上を目指した以下のような活動も実施されます。

  • レクリエーションや余暇活動の支援
  • 骨折・転倒予防のための運動教室の開催
  • 認知症の人の見守りや安全確保

利用者やその家族の相談に乗ったり、不安な気持ちに寄り添ったりする精神的な支援も、介護の重要な役割の一つです。

3.介助の種類と仕事内容

介助とは、利用者の日常生活動作(ADL)を支えるための支援行為を指します。代表的な介助の種類と仕事内容を紹介します。

食事介助

食事介助は、利用者が安全に楽しく食事をとるための介助です。高齢になると、嚥下(えんげ)機能の低下や、認知症などにより自力での食事が難しい場合があります。そのため、食べやすい形状で提供したり、利用者のペースに合わせて食事を口に運んだりするなど、細やかな配慮が求められます

食事介助の流れ

  1. リラックスできる空間を作り、周囲に気が散らないよう環境を整備
  2. 机の高さを両肘が乗る程度に調整。背筋を伸ばし、足底が地面につくように姿勢を整える
  3. 食べ物の見た目や、食器の色や配置にも気を配り、食べ物への関心を高めるよう配膳を工夫する
  4. 呼吸や口腔内の状態を確認
  5. ひと口量は少なめにして、声をかけながら提供する

排泄介助

排泄介助とは、利用者が快適に生活できるよう排泄をサポートする介助です。実施する際は、利用者の尊厳を守るための配慮が欠かせません。プライバシーを確保し、素早く丁寧におこなうことが求められます

排泄介助の流れ(トイレ利用の場合)

  1. 足元の安全や手すりの位置を確認し、トイレットペーパーを準備する
  2. トイレに入ったら、利用者に手すりを掴んでもらい、うしろからゆっくりと衣服を下げる
  3. 利用者の両腕を介助者の首に回してもらい、抱きかかえるような姿勢で体を支えながらゆっくりと便器に座らせる
  4. 排泄後は、手すりを使いながら中腰の姿勢になってもらい、便を前から後ろへ拭き取る
  5. 利用者の両腕を介護者の首に回してもらい、体を支えながらゆっくりと立ち上がらせ、衣服を元に戻す

入浴介助

入浴介助は、清潔を保つだけでなく、血行促進やリラクゼーション効果も期待できる支援です。利用者と一対一でのコミュニケーションをとれる機会でもあるので、作業に集中しすぎず、気持ちに寄り添い、耳を傾けることも意識してください。

実施時は、急激な温度変化による血圧変動に注意が必要です。室温を調整し、入浴時間は15分程度、浴槽に浸かるのは5分程度を目安にします。

入浴介助の流れ

  1. バイタルを確認
  2. 室温を24℃前後、湯温は38〜42℃程度に調整し安全を確認
  3. 脱衣の介助と皮膚状態の観察
  4. 声をかけながら体の末端からお湯をかける
  5. 指の腹を使って揉むように洗髪する
  6. 目と口の周囲を避けて洗顔する
  7. 湯温に注意しながら洗体をおこなう。背中・臀部・腿裏を洗う際は、ふらつきに注意して利用者に立ち上がらせる
  8. 転倒に注意しながら浴槽への入浴を補助。5分程度で湯船からあげる
  9. 体を拭く介助と着衣の補助
  10. 水分補給と体調確認

移乗介助

移乗介助は、ベッドから車椅子、車椅子からトイレなど、別の場所へ移る際の支援です。移乗時の転倒を防ぐための安全確認や体勢のサポートをおこないます。利用者が立ち上がる際に、起立性低血圧により、めまいや立ちくらみを起こす可能性もあるため、移乗後にも注意が必要です。

移乗介助の流れ(ベッドから車椅子の場合)

  1. ブレーキの確認、フットレストの位置調整
  2. 車椅子をベッドに向かって約20度の位置に置く
  3. ベッドに浅く座ってもらい、介助者の腰に掴まってもらいながら利用者の体を支える
  4. 体を支えながら利用者の動きに合わせて立ち上がらせる
  5. 利用者が前傾姿勢を取れるように支えながら、ゆっくりと車椅子に腰を下ろす
  6. 座位が安定しているか確認

更衣介助

更衣介助は、衣類の着脱をサポートする支援です。清潔を保ち、利用者の気分転換や生活にメリハリをつけることを目的とします

実施時は、室温への配慮(23〜25℃が目安)やプライバシーの保護も重要です。利用者の好みを尊重した衣類選びも、より快適に過ごしてもらうためのポイントになります。

更衣介助の流れ(Tシャツ・トレーナーなどの場合)

  1. 片方の袖をとおす
    ※拘縮や痛みがある場合は、患部側の腕から先にとおす
  2. 頭を少し前に倒してもらい、頭に服をとおす
  3. もう一方の腕に袖をとおす
  4. 上半身を支えながら、前傾姿勢をとってもらい背中側から服を下ろす
  5. 袖部分や腕周りを整える

歩行介助

歩行介助では、利用者が安全に歩けるようにサポートします。高齢になると下肢の筋力が衰え、転倒のリスクが高まります。利用者の身体の状態に合わせたサポートを見極めることが大切です。

歩行介助の種類

  • 見守り歩行:安全確認のみ実施。必要に応じて体を支える介助をおこなう
  • 寄り添い歩行:並んで歩き、いつでも支えられる態勢をとる
  • 手引き歩行:常に利用者の肘や腰に手を添えて支える
  • 杖・歩行器使用時の介助:適切な使い方の指導と転倒防止

寝返り介助

寝返りの介助は、自力で体の向きを変えるのが難しい利用者に対し、体位変換をおこないます。褥瘡(床ずれ)予防や血行促進、肺炎予防などに効果的です。

ただし、介助者の腰への負担も大きいため、重心を下げ、できる限り利用者の体に近づくなど、小さな力で安全におこなえるよう工夫が必要です。

寝返り介助の流れ

  1. 利用者の腰あたりで寝返る側に立つ
  2. 利用者の両膝を立てる
  3. 利用者の両腕を体の上に乗せる
  4. クッションなどを使い、利用者に頭を上げてもらう。難しい場合は利用者の顔と視線を寝返る側へ向ける
  5. 腰と肩を持って、手前に回転させる
  6. クッションやタオルを使用し、楽な姿勢に整える

4.介護・介助をおこなう際の注意点

介護・介助をおこなう際には、いくつかの重要な注意点があります。ここでは主に2つのポイントについて解説します。

(1)過剰に支援しない

利用者のADL(日常生活動作)の維持・向上や、意欲を妨げないよう、過剰な支援には注意が必要です。例えば、「食事は自分でできるものの、入浴は部分的な介助が必要」のように、必要な支援の範囲は一人ひとり異なります。適切なサービスを提供できるよう、以下の4段階のレベルを意識してください。

動作ごとに必要な介助レベル

  • 自立:自力でできる状態。介助を必要としない状態
  • 一部介助:基本的に自分でできるが、部分的に介助や見守りが必要な状態
  • 介助あり(半介助):介助があれば自分でできる状態。部分的に自分でできる状態
  • 完全介助:自力では特定の動作をおこなえず、全面的な介助が必要な状態

これらの状態は日々変動することもあります。そのため介助者は、利用者に残された能力(残存機能)を活かす視点を常に持つことが求められます。

(2)介助者自身のケガにも注意

介助は、介助者の身体にも負担がかかります。無理な体勢でおこなうと、腰痛などのケガの原因になりかねません。ボディメカニクスなどの技術や、福祉用具などを活用して、介助者自身の身体も守りながら安全に介助をおこないましょう

tips|ボディメカニクスの8原則
ボディメカニクスとは、身体の動き(Body)と力学の原理(Mechanics)を応用した技術や考え方です。この技術を活用すると、最小限の力で安全に介助ができ、ケガや疲労のリスクを減らせます。

  1. 重心を近づける
  2. 対象者を小さくまとめる
  3. 支持基底面積を広くとる
  4. 重心を下げ骨盤を安定させる
  5. 身体はねじらない
  6. 全身(大きな筋群)を使う
  7. 水平に移動する
  8. てこの原理を利用する

5.介護用語に関するよくある疑問

Q.介助者・介護者の意味の違いは?

A.「介護者」は介護をおこなう人全般を意味する言葉で、家族や介護サービスを提供する専門職などを指します。一方、「介助者」は、食事や排泄などの介助をする人を指します

Q.サービス介助士(ケアフィッター)とは?

A.サービス介助士は高齢者や障がいがある人に対し、おもてなしの心を持ってサポートするための資格です。講習を受けることで、介助のスキルだけでなく、バリアフリーサービスや商品の設計、ボランティア活動など、幅広い分野で活用できる知識を学習できます。

6.適切な知識と技術で利用者の自立を支えよう

介護は、支援が必要な人の日常生活全般をサポートすることを指します。一方介助は、その支援のなかでも特定の動作を手助けする行為を指す言葉です。それぞれの意味や具体的な仕事内容を理解し、適切なサポートを提供していきましょう。

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