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介護従事者全般へ支援を実施
2025年度補正予算が12月16日の参院本会議で可決・成立し、介護分野の処遇改善には1,920億円が計上されました。介護従事者の賃上げについては「3階建て」の仕組みで、介護職は最大1万9,000円、他職種は1万円が支給されます。
従来の介護職員等処遇改善加算は介護職のみが対象で、ケアマネや訪問看護、訪問リハビリの従事者は含まれておらず、見直しを求める声が上がっていました。そのため、今回の支援では対象範囲がこれらの職種にも拡大します。
補正予算での賃上げは2025年12月から2026年5月までの半年分で、地方自治体の予算編成などを経て、2026年2月前後から現場に届く見込みです。また、他産業との賃金格差の改善に向け、2026年には介護報酬の臨時改定も実施が決まっており、今後も賃上げが続くかどうかに注目が集まっています。
「3階建て」の賃上げの内容は?
今回の賃上げは3階建てで構成され、各段階で対象や条件が異なります。

1階:幅広い職種に月1万円
1階部分はケアマネや訪問看護などを含む、幅広い職種に月1万円を支給します。
この支援は処遇改善加算を取得していることが条件で、加算対象外のサービスについては、これに準ずる条件が設けられます。
2階:条件ありで“介護職”に月5,000円
2階部分は“介護職のみ”への月5,000円の支援で、事業所が生産性向上に取り組むことが条件です。具体的には、事業所形態に応じて以下の条件を満たす必要があります。
- 訪問・通所サービスなど
ケアプランデータ連携システムに加入(見込みでも可)
- 施設・居住サービス・多機能サービスなど
生産性向上加算ⅠまたはⅡを取得(見込みでも可)
3階:人件費以外にも活用できる月4,000円の支援
3階部分も介護職のみが対象で、事業所が職場環境の改善に取り組むことが条件です。支給額は介護職1人あたり月4,000円で、使途は事業所に委ねられるため、人件費のほか職場環境の改善にも充てることが可能です。
専門家「処遇改善の継続を」
今回の補正予算での賃上げについて、介護職の労働環境や国の政策に詳しい、介護人材政策研究会代表理事の天野尊明さんにお話を聞きました。
天野さん:まず1万9,000円という金額は評価できるものだと考えています。他産業と比較するとまだまだ「足りない」という意見もあるでしょうが、2026年に実施される臨時の介護報酬改定で処遇改善を継続し、1万9,000円から上積みできるかどうかが重要になってきます。
また、3階建ての支給方法については、現場からは条件なしを求める声があるのも事実です。この点についても、介護職員等処遇改善加算を改定する際に、シンプルな形にしていけるかどうかが注目されます。
事業者は着実に支援を得ることが重要
補正予算での支援では2階・3階部分には条件が設けられました。この点について、天野さんは次のように語ります。
天野さん:2階部分では「ケアプランデータ連携システムへの加入」や「生産性向上加算ⅠまたはⅡ」の取得が条件になっています。今後の処遇改善加算でも、クローズアップされる可能性が高いため、事業者は機器やテクノロジーの導入に対応していく必要があるといえるでしょう。
3階部分は、2024年度補正予算の「介護人材確保・職場環境改善等事業」と同様の条件です。職場環境改善というと難しく感じるかもしれませんが、実際には「課題の見える化」や「職員間の適切な役割分担」など、取り組みやすい内容も多く、申請も難しくありません。事業者は支援を着実に受け取って、処遇改善につなげることが重要です。
他産業に追いつく賃上げを
処遇改善加算を取得している事業所で働く介護職の平均給与は、過去1年間で約2%上昇していますが、全職種の正社員は5.25%の上昇で、まだ格差が残ります。今後、必要になる支援について天野さんは2つの点を指摘しています。
天野さん:他産業の賃金は上がり続けていくでしょうから、そこに追いつく必要があります。そのために、まず、2026年の臨時改定で処遇改善加算を拡大していくことが重要です。金額としては月額3万円は必要になるのではないでしょうか。
次に処遇改善のあり方です。いつまでも補助金や加算に頼った賃上げでは限界があります。事業者が継続的に賃上げの財源を捻出できるようにするには、いつかは基本報酬の引き上げが必要になるでしょう。
応急処置のような賃上げで、これからの社会保障を維持していけるのか。政治や行政だけでなく、介護業界内でも活発に議論してほしいと願ってやみません。
- 厚生労働省|令和7年度 補正予算案の主要施策集
- 厚生労働省|「「強い経済」を実現する総合経済対策」について
- 厚生労働省|介護職員等の職場環境や処遇に関する実態調査結果のポイント