目次
- 1. ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?
- 介護保険サービスの根幹を担う専門職
- 2. ケアマネジャー(介護支援専門員)になるには?
- 一定の実務経験を満たしたうえで、ケアマネジャー試験の合格と実務研修の修了が必要
- ケアマネジャー試験の受験要件
- ケアマネジャー試験の概要
- ケアマネジャー試験の合格率の推移
- ケアマネジャー実務研修の内容
- 3. ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事内容
- 要支援・要介護認定に関する業務
- 介護保険サービスに関する業務
- 給付管理に関する業務
- 4. ケアマネジャー(介護支援専門員)の勤務先
- 居宅ケアマネ
- 施設ケアマネ
- そのほか
- 5. ケアマネジャー(介護支援専門員)の働き方
- ケアマネジャーの一日
- ケアマネジャーの休日
- 6. ケアマネジャー(介護支援専門員)の給料
- 【全国平均】ケアマネジャーの月給・時給・年収の相場
- 7. ケアマネジャー(介護支援専門員)の将来性
1. ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?
介護保険サービスの根幹を担う専門職
ケアマネジャー(正式名称:介護支援専門員)は、2000年の介護保険制度の開始に伴い誕生し、介護保険法によって定められた専門職です。
介護保険サービスを利用するために必要なケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、関係する事業者や医療機関、自治体などと連携しながら、利用者一人ひとりに最適な介護サービスを提供できるようマネジメントします。
ケアマネジャーは介護職員をはじめとした福祉関係者、医療従事者、行政担当者など幅広い人たちと関わりを持ち、介護保険サービスを提供するうえでの中心的存在として重要な役割を担っています。
2. ケアマネジャー(介護支援専門員)になるには?
一定の実務経験を満たしたうえで、ケアマネジャー試験の合格と実務研修の修了が必要
ケアマネジャーは国家資格ではなく都道府県ごとに登録・管理されている公的資格です。
ケアマネジャーになるには、各都道府県で実施されるケアマネジャー試験に合格し、実務研修を修了する必要があります。この試験を受けるためには、医療福祉系の国家資格や一定の実務経験が求められます。
ケアマネジャー試験の受験要件
ケアマネジャー試験は都道府県ごとに実施されますが、受験要件は全国一律で、次のとおりです。
ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)の受験要件
次の1または2の業務に通算5年以上かつ900日以上従事することで、介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を得られる。
(1)以下の国家資格等に基づく業務
医師/歯科医師/薬剤師/保健師/助産師/看護師/准看護師/理学療法士/作業療法士/社会福祉士/介護福祉士/視能訓練士/義肢装具士/歯科衛生士/言語聴覚士/あん摩マッサージ指圧師/はり師/きゅう師/柔道整復師/栄養士/管理栄養士/精神保健福祉士
(2)以下の職種で該当する施設等でおこなう相談援助業務
- 生活相談員…特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム、養護老人ホーム、一部のサービス付き高齢者向け住宅)/地域密着型特定施設入居者生活介護/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護/介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)/介護予防特定施設入居者生活介護
- 支援相談員…介護老人保健施設
- 相談支援専門員…計画相談支援/障害児相談支援
- 主任相談支援員…生活困窮者自立相談支援事業
※2018年の制度改定により、それまで受験資格として認められていた「5年以上の実務経験を持つ介護職員初任者研修修了者」等や「10年以上の実務経験を持つ無資格者」は受験要件から削除されました
なお2020年度(第23回)までにケアマネジャー試験に合格した人の職種別の内訳を見ると、介護福祉士がもっとも多く、次いで看護師・准看護師、相談援助業務等従事者となっています。
ケアマネジャー試験の概要
ケアマネジャー試験は、ケアマネジャーの業務に必要な専門知識と技術を習得する目的のもと、都道府県ごとに実施されます。受験地は勤務先のある都道府県(受験資格に該当する仕事に従事していない場合は現住所のある都道府県)と決められており、自由に選ぶことはできません。
試験日と合格発表日は全国共通ですが、受験の申込み期間は各都道府県ごとに異なります。例年のスケジュールは次のとおりです。
- 6月〜7月:申込書類の提出期間 ※都道府県により異なる
- 10月中旬:試験日
- 12月上旬:合格発表日
申込み期間のほか、申込方法や受験料なども地域によって異なりますので、詳細は各都道府県のWebサイトで確認してください。
>社会福祉振興・試験センター|各都道府県の実施案内
なお、ケアマネジャー試験の配点は次のとおりです。合格基準点となる正答率は例年70%前後となっています。
- 介護支援分野:25問(1問1点)
- 保健医療福祉サービス分野:35問(1問1点)
- 計60問(60点満点)
ケアマネジャー試験の合格率の推移
ケアマネジャー試験の合格率は、受験要件改定後の直近5年間で10〜20%台で推移しています。これは医療福祉系の国家資格の合格率(介護福祉士約70%、看護師約90%)と比べても低い水準となっています。
ケアマネジャー実務研修の内容
ケアマネジャー試験の合格後、次に待っているのは実務研修です。実務研修は87時間以上の講義・演習、および3日間の実習から成るカリキュラムで、全日程を修了する必要があります。
研修の内容は全国一律ですが、日程は実施団体によって異なり、年に数回実施している都道府県もあります。また講義の一部を動画視聴により自宅で受講できる場合もあります。
ケアマネジャー実務研修(介護支援専門員実務研修)の内容
研修内容 |
研修期間 |
|
前期課程 (講義・演習) |
ケアマネジメント*に必要な視点や専門的知識、技術について講義形式を中心に習得する |
49時間 |
実習 |
ケアマネジメントの基礎技術として、居宅介護支援事業所でアセスメントシートやケアプランなどを作成する |
3日間 |
後期課程 (講義・演習) |
実習で得た気づきや課題を振り返りながら、グループワークを中心に演習をおこない、必要な知識や技術、倫理観を習得する |
38時間 |
*ケアマネジメント…ケアマネジャーがケアプランを作成し、さまざまな関係機関と連携しながら利用者にサービスが提供され、定期的なモニタリングを繰り返し改善を図っていく一連のプロセスのこと
実務研修を終えると研修修了証明書が発行されますので、各都道府県の担当窓口で介護支援専門員の登録申請をおこないます。登録が完了し介護支援専門員証が交付されると、晴れてケアマネジャーの仲間入りとなります。
tips|5年ごとの更新研修を忘れずに!
ケアマネジャーの資格は5年単位の更新制となっており、更新するには「更新研修」の受講が必要です。研修時間は88時間や56時間など、ケアマネジャーとしての実務経験の有無や長さによって異なります。有効期限ぎりぎりになって「研修に行く時間がない!」とならないように、余裕を持って計画的に更新研修を受けるようにしましょう。
3. ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事内容
ケアマネジャーの仕事内容はケアマネジャーの勤務先によっても多少異なりますが、主な業務として以下が挙げられます。
要支援・要介護認定に関する業務
<要支援・要介護認定の申請代行>
介護保険サービスを利用するには、要支援または要介護の認定を受ける必要があります。認定調査を受けるための申請手続きは利用者本人やその家族が市区町村の窓口でおこなうのが基本ですが、なんらかの事情で難しい場合は、ケアマネジャーが申請を代行することがあります。
<要支援・要介護認定の訪問調査>
要支援・要介護認定の申請を受けると、市区町村の職員または訪問調査員が利用者の自宅などを訪れ、利用者の心身の状態や生活状況などを確認したうえで認定をおこないます。ケアマネジャーは市区町村からの委託を受け、この訪問調査をおこなうことがあります。
介護保険サービスに関する業務
<ケアプランの作成>
利用者の要介護度や生活状況などを踏まえ、一人ひとりにあった介護保険サービスを提供するためのケアプラン(介護サービス計画書)を作成します。
ケアプランについての詳しい情報は、こちらの記事でも解説しています。
>ケアプラン(介護サービス計画書)とは?
<利用者からの相談業務>
ケアプラン作成時におこなうアセスメントやモニタリング以外にも、ケアマネジャーは利用者と家族からのさまざまな相談に応じ、サービスの提供事業者や行政機関との橋渡し役となります。
<関係機関との連携>
サービス提供が決まった事業者への依頼やサービス担当者会議の開催、サービス提供開始後の定期的な状況確認など、関係機関と連携しながら介護サービスが適切に提供されるよう働きかけます。
給付管理に関する業務
介護保険サービスは要介護度に応じて月ごとの利用上限額が設けられており、ケアマネジャーはその範囲内に収まるようサービス量を調整します。また毎月10日までに前月に利用したサービス内容をまとめた書類を作成し、国民健康保険団体連合会(国保連)に請求します。
給付管理業務について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>ケアマネジャーがおこなう「給付管理」とは?
4. ケアマネジャー(介護支援専門員)の勤務先
ケアマネジャーが働く場所は、利用者がどこで生活するかを基準に2つに大別されます。自宅で暮らす利用者向けに支援をおこなうケアマネジャーのことを「居宅ケアマネ」、特養などの介護施設で暮らす利用者向けに支援をおこなうケアマネジャーのことを「施設ケアマネ」と呼び、それぞれの仕事内容にも多少の違いがあります。
居宅ケアマネ
自宅で暮らす利用者向けの支援をおこなうケアマネジャーは居宅介護支援事業所(ケアプランセンター)で働きます。居宅介護支援事業所はケアプラン作成をはじめとしたケアマネジメントを専門におこなう事業所のことです。
居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーは、訪問介護や訪問入浴介助といった訪問サービス、デイサービスなどの通所サービス、ショートステイなどの短期入所サービスなど扱うサービスが多岐に渡るため、多くの外部サービス事業者との連携が求められます。
施設ケアマネ
介護施設で暮らす利用者向けの支援をおこなうケアマネジャーは、その施設に入所している利用者のケアマネジメントを担当します。ケアプランの内容も居宅向けとはやや異なるため、区別して施設ケアプラン(施設サービス計画書)と呼びます。施設内で提供しているサービスを中心にケアプランを作成するのが特徴です。
施設ケアマネは利用者が生活する施設に常駐することになるため、必然的に距離も近くなりやすいです。また施設によっては介護業務をおこなうこともあります。
ケアマネジャーの配置が義務付けられている主な施設は次のとおりです。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設 *
- 介護医療院
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム、軽費老人ホーム、養護老人ホーム、一部のサービス付き高齢者向け住宅) など
*2024年3月末に制度廃止予定
居宅と施設のケアマネジャーの違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
>居宅ケアマネと施設ケアマネの違いとは?
そのほか
居宅と施設に分類されないケアマネジャーの勤務先も紹介します。通所・訪問・宿泊と複合的にサービスを提供する小規模多機能型居宅介護(小多機)や看護小規模多機能型居宅介護(看多機)、地域で暮らす高齢者を支援する地域包括支援センター、病院、自治体の役所をはじめとした行政機関などが挙げられます。
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 地域包括支援センター
- 病院
- 自治体の役所 など
5. ケアマネジャー(介護支援専門員)の働き方
ケアマネジャーの一日
ケアマネジャーの一日の過ごし方は勤務先によって異なります。居宅ケアマネは利用者宅や関係機関への訪問で外出が多く、施設ケアマネは施設内で過ごす時間が長くなります。
またケアマネジャーが主に従事する業務は月の上旬・中旬・下旬でも変化します。1日〜10日は前月のサービス利用実績に基づきおこなう給付管理業務、11日〜25日前後は利用者のモニタリングのための訪問業務、25日前後〜月末は翌月分のサービス内容を決定し各事業者へサービス提供票を交付をする業務が中心となります。
時期によって忙しさに波はあるものの、業務量を自分でコントロールしやすい点や勤務時間を固定しやすい点は、ケアマネジャーとして働く魅力の一つです。
▼居宅ケアマネの一日密着動画を見る
居宅介護支援事業所のケアマネジャーの仕事って? 丸一日密着してわかったケアマネの心構えより
ケアマネジャーの休日
ケアマネジャーの休日は、勤務先の営業日次第で決まることが一般的です。
<居宅ケアマネの場合>
土日祝休みの完全週休2日制、日祝休みの週休2日制、4週8休、月9休などのケースがあります。また事務作業の増える月末月初の労働時間を調整できるよう1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している事業所もあります。介護業務がないため、勤務時間は基本的に日勤となります。
<施設ケアマネの場合>
年中無休で運営しているため、居宅介護支援事業所と比べて土日祝も出勤が必要な施設が多くなります。またケアマネジャーも介護業務をおこなう場合は、シフト制で早番や夜勤がある施設もあります。居宅介護支援事業所と同様、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している職場も多いです。
<そのほか>
地域包括支援センターは土日祝休みの完全週休2日制、または日祝休みの週休2日制のところが多く、自治体などの行政機関は概ねカレンダーどおりの休みとなっています。
6. ケアマネジャー(介護支援専門員)の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人からケアマネジャーの賃金相場を算出しました。なお、処遇改善加算や残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】ケアマネジャーの月給・時給・年収の相場
2023年11月時点の全国のケアマネジャーの時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
パート・アルバイトの時給 |
1,342円 |
1,498円 |
1,408円 |
正職員の月給 |
23万7,896円 |
28万9,031円 |
25万9,892円 |
正職員の年収* |
333万544円 |
404万6,434円 |
363万8,488円 |
*年収は「月給の総平均 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
都道府県別、職場別、勤続年数別などより詳しい内容はこちらの記事をチェック!
>【都道府県別】ケアマネジャーの給料ランキング!月収・年収・賞与すべて上位に入った県は?
7. ケアマネジャー(介護支援専門員)の将来性
ケアマネジャーを取り巻く環境は近年大きな変化が見られます。2018年にケアマネジャーの質向上を目指して受験要件が厳格化されたことにより、それ以降新たにケアマネジャーとなった人数は半数以下に激減しました。これによりケアマネジャー不足が深刻になり、ケアマネジャーの需要は高まり続けています。
さらに現在は地域包括ケアシステムが目指すとおり、在宅を中心に地域全体で介護をおこなう体制が主流となってきています。地域包括ケアシステム実現の中心的人物としてケアマネジャーが担う役割は大きく、今後ますますの活躍が期待されます。
またケアマネジャーには上位資格となる主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)も存在します。ケアマネジャーとしての実務経験5年以上などの要件で取得でき、地域包括支援センターでの配置が義務付けられている資格です。ケアマネジャーの資格取得後さらなるキャリアアップを考えている方は、一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
参考
- e-Gov法令検索|介護保険法
- WAM NET|介護支援専門員(ケアマネジャー)関連情報
- 一般社団法人日本介護支援専門員協会