目次
1.えるぼし認定とは
えるぼし認定とは、女性の採用や管理職登用に積極的な企業を国が認める制度です。認定企業数は3,329社あります(2025年5月時点)。認定を受けた企業は、求人票や自社ウェブサイトなどに専用のマークを使用でき、女性が働きやすい職場であることをアピールできます。
えるぼし認定創設の背景
年々、女性の就業率は上昇し男女間の賃金格差も改善しているものの、管理職への登用や継続就業の面では、依然として格差が残っているのが現状です。
こうした状況を踏まえ、女性の活躍を後押しするため、2016年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(通称:女性活躍推進法)」が施行され、女性の活躍を後押しする行動計画の策定や実績の公表などが義務付けられました。その一環として創設されたのが「えるぼし認定」です。
名称と認定マークの由来

「えるぼし」の名称は、企業や社会で活躍し、星のように輝く女性への「エール」と、そのような女性が増えるようにとの願いから名付けられました。認定マークにある「L」には、Lady(女性)、Labour(働く・取り組む)、Lead(手本)などさまざまな意味が込められています。
えるぼし認定は、「認定基準」をいくつ満たしているかによって、1〜3段階目までのいずれかのマークが付与されます。また、2020年にはより高い水準を満たした企業に与えられる「プラチナえるぼし認定」も設けられました。
tips|くるみん認定との違い
くるみん認定とは、子育て支援に関する要件を満たした事業主が認められる制度で、えるぼし認定とは、認定の要件と根拠となる法律が異なります。
えるぼし認定が、社会における女性の活躍を後押しするための認定制度として女性活躍推進法に基づいているのに対し、くるみん認定は仕事と育児の両立をサポートするための制度として、次世代育成支援対策推進法に基づいています。くるみん認定は、男性の育休取得状況も要件に含まれるなど、男性も対象としている点が特徴です。
くるみん認定について詳しくはこちら
>くるみんマークとは? 認定基準・働く際のメリット・プラチナくるみんについて解説
2.認定を受けた事業所で働く3つのメリット
(1)キャリアアップのチャンスがある
女性を積極的に管理職に登用している企業が認定されるため、キャリアアップしやすい環境が整っています。管理職育成のための目標設定面談や研修の実施、希望に応じてパートから正職員への転換などをおこなっている認定企業もあります。
(2)家庭と両立しやすい
認定基準では、時間外労働時間や休日労働時間が定められているため、育児や介護など家庭との両立が取りやすい環境です。両立支援の例として、週休3日制の導入や、夜勤免除、子連れ出勤を認める制度などがあります。
(3)長期的に働ける
認定を受けるには継続就業についての指標も満たす必要があるため、女性が長く働く環境が整っています。安定的に働ける職場づくりの例として、有期雇用の雇い止め年齢の撤廃や、シニア層を中心とした短時間勤務の拡大、女性特有の疾患の健診費補助などが挙げられます。
3.えるぼしの認定基準と認定状況
えるぼし認定は、まず一般事業主行動計画の策定・届出をおこなったうえで、認定基準を満たす必要があります。基準をクリアした事業主は、厚生労働大臣から認定を受けることができます。
認定基準
ここでは、えるぼし認定の基準を紹介します。基準には、以下5つの項目があり、直近の事業年度における実績が評価対象となります。
- 採用:男女の採用倍率が同程度、または女性比率が全産業の平均値以上
- 継続就業:女性の平均勤続年数や雇用割合が男性の平均値の7〜8割以上、または全産業の平均値以上
- 労働時間などの働き方:法定時間外労働・休日労働の合計の平均が、各月45時間未満
- 管理職比率:管理職の女性の割合が全産業の平均値以上、または昇進率が男性の8割以上
- 多様なキャリアコース:非正社員から正社員への転換、再雇用などを実施
認定の段階ごとに、それぞれ上記の項目をいくつ満たすべきか決められています。
段階 |
満たす項目数 |
---|---|
1段階目 |
1〜2項目 |
2段階目 |
3〜4項目 |
3段階目・プラチナ |
5つすべて |
一度認定を受けても、基準を満たさなくなった場合や、法律に違反した場合には認定が取り消されます。
えるぼしの認定状況
2025年5月時点でえるぼし認定を受けている企業数は3,329社あり、一般事業主行動計画の届出をおこなった全事業所のうち約6%に該当します。プラチナえるぼしの認定数は全体の0.13%となっており、より厳しい基準を満たす必要があることがわかります。業種ごとの認定率を高い順に見ていきましょう。
業種 | えるぼし認定企業数と割合 | |
---|---|---|
1 | 金融業、保険業 | 220(24.15%) |
2 | 情報通信業 | 470(16.48%) |
3 | 学術研究、専門・技術サービス業 | 334(16.32%) |
4 | 石油製品・石炭製品製造業 | 3(15.79%) |
5 | 化学工業 | 76(14.96%) |
6 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 29(12.66%) |
7 | 公務(ほかに分類されるものを除く) | 6(12.50%) |
8 | 情報通信機械器具製造業 | 82(9.64%) |
9 | 輸送用機械器具製造業 | 48(7.22%) |
10 | 不動産業、物品賃貸業 | 76(7.15%) |
11 | 鉱業、採石業、砂利採取業 | 3(7.14%) |
12 | 繊維工業 | 12(7.10%) |
13 | サービス業(ほかに分類されないもの) | 508(6.79%) |
14 | 業務用機械器具製造業 | 28(6.41%) |
15 | 全業種 | 3,329(5.88%) |
16 | パルプ・紙・紙加工品製造業、印刷業・印刷関連業 | 20(5.88%) |
17 | 鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業 | 42(5.36%) |
18 | プラスチック製品製造業、ゴム製品製造業 | 15(5.08%) |
19 | 食料品、飲料・たばこ・飼料製造業 | 55(4.88%) |
20 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 61(4.88%) |
21 | 卸売業、小売業 | 341(4.55%) |
22 | 教育、学習支援業 | 48(4.52%) |
23 | 医療、福祉 | 323(4.46%) |
24 | 建設業 | 237(3.77%) |
25 | 複合サービス事業 | 18(3.69%) |
26 | 分類不能の産業 | 18(3.35%) |
27 | 報道 | 20(3.13%) |
28 | 宿泊業、飲食サービス業 | 51(2.30%) |
29 | その他製造業 | 134(2.05%) |
30 | 木材・木製品、家具・装備品製造業 | 2(2.02%) |
31 | 運輸業、郵便業 | 48(1.87%) |
32 | 農業、林業 | 1(0.36%) |
33 | 漁業 | 0(0%) |
厚生労働省|女性の活躍推進企業データベースオープンデータより作成
えるぼし認定企業の一覧
えるぼしに認定されている企業は、「女性の活躍推進企業データベース」で確認できます。全体版、企業規模別、業種別など用途に応じて閲覧可能です。
4.えるぼし認定の申請方法

えるぼし認定を受けた事業主は、毎年1回以上、厚生労働省のウェブサイト「⼥性の活躍推進企業データベース」で「認定基準5項目」について公表する必要があります。
5.えるぼし認定を受けるメリット
えるぼし認定を受けると、事業主は以下のようなメリットが得られます。
イメージ向上につながる
認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを求人票や自社ウェブサイトなどに掲載することができます。女性にとって働きやすい職場であることが広くアピールできるため、企業イメージの向上につながります。
人材確保につながる
認定基準では、管理職比率や希望に応じたキャリア形成のサポートが定められています。そのため、これらを満たすことで優秀な人材の確保・定着につながる可能性があります。
公共調達・融資で優遇がある
認定企業は、省庁の入札や企画競争による調達に参加する際、加算評価が受けられ有利になる場合があります。また、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強貸付)」を通常よりも低金利で利用できます。
6.女性のスキルや経験が活かせる社会へ
えるぼし認定は、女性の活躍を推進している企業を国が認定する制度です。少子高齢化や労働力不足が進むなか、女性の活躍は今後ますます重要になってきます。えるぼし認定制度は、性別や年齢、学歴、地域などにかかわらず、一人ひとりがスキルや経験を発揮できる社会を実現するための取り組みを後押ししています。
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参考
- 厚生労働省|女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
- 厚生労働省|女性の活躍推進企業データベース