目次
1.児童扶養手当とは
ひとり親など子どもを養育する人に支払われる手当
児童扶養手当とは、ひとり親などの養育者を対象に、子どもの養育のために都道府県や市、福祉事務所設置町村から支給される手当です。子どもの養育者の生活安定と自立促進、子どもの福祉増進を目的としています。
支給要件と対象者
支給対象は、0〜18歳までの子どもを育てる母または父、父母に代わり養育にあたる祖父母などの養育者も含まれます。対象となる子どもは以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 父母が婚姻を解消
- 父または母が死亡
- 父または母が生死不明
- 父または母が一定程度の障がいの状態にある
- 父または母が1年以上子どもを遺棄している
- 父または母が裁判所からのDV保護命令を受けている
- 父または母が1年以上拘禁されている
- 婚姻によらないで生まれた
- 棄児などで父母の存在が明らかでない子ども
ただし、親子が日本国内に住んでいない場合や子どもが里親に委託された場合、児童福祉施設に入所した場合、事実上の配偶者に養育されている、または生計を同じくしている場合などは対象外となります。
各自治体によっても条件が異なりますので、住んでいる地域のウェブサイトなどで確認してみてください。
児童手当、特別児童扶養手当との違い
児童扶養手当と似たような制度に「児童手当」「特別児童扶養手当」があります。主な違いは対象者と子どもの年齢と金額です。
児童扶養手当 | 児童手当 | 特別児童扶養手当 | |
---|---|---|---|
対象者 | ひとり親または父母に代わり子どもを養育している人 | 子どもを養育している人 | 身体、知的、または精神に障がいがある子どもを養育している人 |
子どもの年齢 | 0〜18歳、障害児の場合は19歳まで(18歳になった年の3月31日まで) | 0〜15歳(15歳になった年の3月31日まで) | 0〜19歳(20歳になる前日まで) |
所得制限 | 全部支給:49万〜239万円 一部支給:192万〜382万円 ※扶養親族が0人〜5人の場合 |
622万〜812万円 ※扶養親族が0人〜5人の場合 |
459万6,000円〜649万6,000円 ※扶養親族が0人〜5人の場合 |
金額 (月額/1人あたり) |
全部支給:4万5,500円 一部支給:1万740円〜4万5,490円 |
0歳~2歳:1万5,000円(一律) 3歳~小学校修了前:1万円 (第3子以降は1万5,000円) 中学生:1万円(一律) |
1級:5万5,350円 2級:3万6,860円 |
2.所得制限と金額の計算方法
所得と子どもの人数に応じて異なる
児童扶養手当には全部支給と一部支給の2種類あり、前年の所得と扶養する子どもの数に応じて金額が異なります。
所得には下記制限があり、申請者および申請者と生計を同じくする同居家族の前年の所得が限度額を超えた場合は、手当の全部または一部が支給停止となります。
扶養人数 | 受給資格者本人の所得制限 | |
---|---|---|
全部支給 | 一部支給 | |
0人 | 49万円(122万円) | 192万円(311.4万円) |
1人 | 87万円(160万円) | 230万円(365万円) |
2人 | 125万円(215.7万円) | 268万円(412.5万円) |
3人 | 163万円(270万円) | 306万円(460万円) |
*カッコ内の数字は収入ベース。2024年11月以降、所得制限の限度額が収入ベースで引き上げられる予定。子ども1人で全部支給の場合の収入限度額は190万(現状160万)、一部支給の場合は385万(現状365万)に変更となる
前年の所得が限度額未満で子どもが一人の場合、全部支給は月額4万5,500円、一部支給の場合は月額1万740円〜4万5,490円まで所得に応じて異なります。2人目以降は所得に応じて加算されます。
子どもの数 | 全部支給(月額) | 一部支給(月額) | 1人 | 4万5,500円 | 1万740円〜4万5,490円 | 2人 | 5万6,250円 ※1万750円の加算 |
1万6,120円〜5万6,230円 ※5,380円〜1万740円の加算 |
3人以降 | 6万2,700円〜 ※一人につき6,450円の加算 ※2024年11月以降は2人目と同額の1万750円の加算 |
1万9,350円〜6万2,670円 ※一人につき3,230円〜6,440円の加算 ※2024年11月以降は2人目と同額の5,380円〜1万740円の加算 |
---|
なお、受給資格者や児童が公的年金を受給していても、その額が児童扶養手当の金額より低い場合は差額分の手当が支給されます。
所得の計算方法
児童扶養手当の金額を算出するうえで審査の対象となる「所得」は、以下の式で算出できます。なお、算出の際に必要となる給与所得控除後の金額は、会社勤めで給与所得がある人は、源泉徴収票にある「給与所得控除後の金額」が、自営業で確定申告をおこなっている場合は確定申告書にある「所得金額の合計」が該当します。
所得の計算式
所得 = 給与所得控除後の金額(収入 − 給与所得控除額*1) − 10万円*2 − 8万円*3 + 養育費 × 0.8
*1 給与所得控除額…収入に応じて控除される金額
*2 10万円…給与所得または公的年金所得がある場合に控除される金額。下回る場合はその金額
*3 8万円…請求者全員に対して社会保険料相当額として一律控除される金額
以下に年間収入が180万円あり、子ども1人を扶養している人の控除後所得の計算例を挙げます。なお、養育費が月に3万円(年間36万円)支払われており、ひとり親控除の要件を満たしているものと想定します。
所得の計算例
118万円(年間収入180万円の給与所得控除後の金額) − 10万円 − 8万円 −35万円(ひとり親控除の金額)+ 36万円 × 0.8 = 93万8,000円
上記の計算では所得が93万8,000円となり、児童扶養手当の所得制限に照らし合わせると一部支給の対象となります。
もし、所得が87万円未満(子ども1人の場合)であれば全部支給となります。
月にいくら支給されるかは以下の計算式で求められます。
児童扶養手当一部支給の計算式
支給金額(月額)= 4万5,500円*1 − (年間所得 – 全部支給の所得制限限度額)× 0.0235804*2
*1 子ども1人扶養の場合の一部支給限度額
*2 手当の支給の制限に関する係数。扶養する子どもの数が1人の場合は「0.0235804」、2人目は「0.0036364」、3人目以降は「0.0021748」をかける
先ほどの控除後所得93万8,000円の例に当てはめて計算すると、一部支給の月額は以下のとおりです。
一部支給月額の計算例
4万5,500円 – (93万8,000円 – 87万円)× 0.0235804 = 4万3,897円(10円未満四捨五入)
なお、控除にはいくつか種類があります。該当するものがないか確認してみましょう。
- 障害者控除…27万円
- 特別障害者控除…40万円
- 勤労学生控除…27万円
- 小規模企業共済等掛金控除…地方税法で控除された額
- 配偶者特別控除…地方税法で控除された額(最高33万円)
- 医療費控除…地方税法で控除された額
- 雑損控除等…地方税法で控除された額
- 寡婦控除…27万円
- ひとり親控除…35万円
また、扶養親族が下記に該当する場合は以下の金額が限度額に加算されます。
請求者本人
- 70歳以上の同一生計配偶者または老人扶養親族がいる場合…1人あたり10万円
- 特定扶養親族または16歳以上18歳以下の扶養親族がある場合…1人あたり15万円
扶養義務者・配偶者、孤児等の養育者の場合
- 老人扶養親族がいる場合…1人あたり6万円(扶養親族がすべて老人扶養親族の場合は2人目以降)
3.申請方法と必要書類
児童扶養手当の申請は、居住地の自治体にある福祉課や子育て支援課などの窓口でおこない、審査を通れば申請の翌月分から支給開始となります。審査には数ヶ月かかることもあるため、なるべく早く手続きしましょう。
申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 申請者の本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- 申請者と支給対象児童、扶養義務者および配偶者(重度の障がいで申請した場合)の個人番号確認書類(マイナンバーカード・通知カード)
- 申請者および児童の戸籍謄本*
- 申請者の口座番号がわかるもの
- 公的年金受給者は年金等給付額がわかる書類
上記以外にも、自治体によっては印鑑、賃貸契約書の写し、前年に受け取った養育費の額がわかるもの、住民票、所得証明書などが必要になることもあります。住んでいる自治体にあらかじめ確認するのがおすすめです。
また、支給開始後も毎年8月に現況届を提出する必要があります。現況届は引き続き児童扶養手当の支給要件を満たしているかを確認するための書類で、自治体から郵送されます。現況届の提出を忘れると支給の一時停止や受給資格の喪失につながりますので、忘れずに手続きをおこないましょう。
4.児童扶養手当に関するQ&A
Q.児童扶養手当はいくら稼ぐともらえない?
児童扶養手当には所得制限があります。子ども1人を扶養している場合、全部支給であれば年間所得が87万円、一部支給であれば230万円の上限があります。
Q.児童扶養手当はいつもらえる?
児童扶養手当は1月、3月、5月、7月、9月、11月の年6回、それぞれ2ヶ月分がまとめて支給されます。振り込み日は各自治体ごとに異なり、それぞれの前月分までの手当が支給されます。
Q.児童扶養手当は子どもが何歳までもらえる?
0〜18歳までの子どもが対象です。しかし、満20歳まで特別児童扶養手当を受けるひとり親家庭は児童扶養手当も20歳まで延長されます。また、上限所得を超えた、養育する父母の婚姻や子どもが児童福祉施設に入所した、里親に預けられたなど支給要件を満たさなくなったら支給停止となります。
参考
- 厚生労働省|児童扶養手当について
- e-GOV|児童扶養手当法