
多様な勤務形態に対応するための「常勤換算」
医療や介護の質を保つため、国は事業所規模やサービス内容に応じた、人員配置基準を定めています。しかし、正社員やパートなど、労働時間が異なる人を同じ1人と考えると、実際の現場では基準を下回っていたということになりかねません。
そこで、その事業所の労働者の平均を表すのが「常勤換算」なのです。基本的には、すべての従業員の労働時間を足し、フルタイムの労働時間で割ることで、「通常何人で働いているか」を示します。
具体的な常勤換算の計算方法事例
常勤換算は、1ヶ月(4週間)を基本とし、非常勤職員の勤務時間をすべて足し、常勤職員が勤務したとして何人になるかを計算します。
◆常勤換算の計算方法
「常勤職員の人数」+「非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間」
常勤とは雇用形態に関係なく、「正社員が勤務すべき時間に達している」こと。所定勤務時間が週40時間(4週160時間)の事業所では、週20時間(4週80時間)の非常勤職員の人は常勤職員にはなりません(所定勤務時間が週32時間を下回る場合は週32時間で計算)。
例えば、勤務時間が40時間の事業所で、以下の4名が働くケースを考えてみましょう。
・週40時間の正社員Aさん
・週40時間の正社員Bさん
・週30時間の非常勤Cさん
・週20時間の非常勤Dさん
(勤務時間は小数点第2位以下切り捨て)
この事業所の常勤換算は、以下の計算式のとおり3.2人(小数点第2位以下は切り捨て)となります。
2+{(30+20)÷40}= 2+1.25 = 3.2
休暇や兼務がある場合の常勤換算の考え方
常勤換算は、「実際に仕事に従事している時間」を計算するものです。なので、非常勤職員の場合は、休暇や出張など、本来の業務に携わっていない場合は、常勤換算上の勤務時間に含みません。
常勤職員の場合は、有給や出張の場合も勤務時間に含まれます。ただし、育児休暇などその期間が1ヶ月を超える場合は、勤務していないものとして扱います。育児休業明けで短時間勤務の常勤職員も、常勤換算では、非常勤職員と同じく、実際に勤務した時間で計算します。
では、併設する施設や、複数の業種を兼務している場合の常勤換算はどう考えるのでしょうか。基準は市町村等によって異なりますが、同一敷地で同一法人が運営し「並行的に行われることが差し支えない」場合のみ、勤務時間を合計して常勤換算できます。別の場所にある事業所や、介護と看護など、並行が難しいと考えられる業務は、時間をわけて計算します。
常勤換算が理解できると、その事業所が人員要件を満たしているかどうかだけでなく、事業規模や常勤換算人数を見比べることで、どんな人員体制なのかも判断できるようになります。求人情報でこの記載を見たら、気をつけて見てみるとよいでしょう。