2026年度診療報酬改定で現場はどう変わる?訪問看護ステーションの事務長に聞いてみた

2026年6月から診療報酬改定がおこなわれます。訪問看護の分野では、これまで以上にケアの質と提供サービスの適正化が問われる内容となっています。「現場で何が変わる?」「どう対応すべき?」という疑問を感じている従事者もいることでしょう。この記事では、訪問看護にかかわる改定ポイントと現場への影響を、訪問看護ステーションの事務長の意見とともに紹介します。

2026年度診療報酬改定で現場はどう変わる?訪問看護ステーションの事務長に聞いてみた_KV

目次

1.訪問看護は量から質へシフト

今回の訪問看護に関する改定の背景には、医療資源・人材不足、国が推進する「病院から在宅へ」の流れがあります。現在、日本は2040年問題を控え、高齢者人口がピークに向かっています。一方、病院のベッド数には限りがあるため、住み慣れた地域で療養しながら暮らせるよう、国は在宅医療・看護を推進してきました。その結果、まずは「量」を確保する必要があり、訪問看護ステーションの数は右肩上がりに増えました。

しかし、2026年度からは限られた人員で、いかに質の高い医療を提供するかという変化が見られます。

▽2026年度診療報酬改定のポイントはこちら

2.2026年度の改定で重視される3つのポイント

2026年度改定 訪問看護で重視される3つのポイント

今回の改定では、次の3点がポイントです。

  1. 適正な時間・運用の管理:短時間訪問が頻繁におこなわれるケースへの適正化が進み、実際の訪問開始・終了時刻などの記録が求められます。
  2. 「住まいの特性」に応じた評価:高齢者向け施設などへの効率的な巡回訪問に対する報酬が細分化され、一般在宅への訪問の価値が見直されています。
  3. 処遇改善(賃上げ)の実施:医療従事者の確保に向け、「ベースアップ評価料」の拡充など、人への投資が強く求められています。

▽訪問看護について詳しくはこちら

3.改定で現場はどうなる?訪看の事務長に聞いた「これから求められる働き方」

制度の変更点は多岐にわたりますが、「自分たちの現場では何が変わるのか」がわかりにくいという声も多くあります。ここからは、実際に改定準備を進めている訪問看護ステーションの事務長に「現場スタッフへの影響」「事業所の対応」について聞きました。

話を聞いた人

訪問看護リハビリステーション白樺 事務長 松本さんイメージ画像

訪問看護リハビリステーション白樺 事務長 松本伸幸さん

新卒で病院の看護助手(約2年半)を経験後、デイサービスの相談員、介護施設での施設長を約15年務める。2022年に東京都足立区で訪問看護ステーション事業と居宅介護支援事業を展開するしらかば株式会社に入社し、現職。

記録・事務作業の厳格化:実態に沿った記載がより重要に

変わること

今回の改定では、訪問看護の時間区分について適正化が進み、訪問開始・終了時刻など、実際の訪問時間を正確に記録する重要性が高まっています。また、短時間訪問が頻繁におこなわれるケースについても、利用者の状態に応じた適切な訪問内容・時間設定が求められるようになりました。

現場スタッフへの影響

松本さん:実際のところ、記録の内容自体は大きく変わりません。特別管理加算を取っている患者さんであれば、ストーマに関する記載など必要な内容はもともと書いていることなので。

今回の主な変更点は、訪問の「開始時刻と終了時刻」を実際の時間で正確に記録することです。これまでは訪問予定どおりの時間で記録していたケースもありましたが、今後は実際に訪問した時間をそのまま残す必要があります。

1日5〜6件回っていると、終わったらすぐ次の訪問に向かうことが多く、あとから入力する際に時間がずれてしまうことがあります。スタッフには実態に即した記録をおこなうよう周知しました。

事業所の対応

松本さん:弊社で使用している訪問看護専用ソフトの場合、医療・介護の保険区分の判断や加算の算定チェックはソフト側が対応してくれるため、追加の対応はありませんでした

一方で、事業所によって使用ソフトが異なると思いますので、今回の改定内容に対応しているか、ベンダーへ確認しておくと安心かと思います。

同一建物・短時間訪問の適正化:施設系訪問看護へ影響

変わること

今回の改定では、同一建物の利用者へ複数回訪問するケースについて、訪問看護の評価体系が見直されました。訪問看護基本療養費(Ⅱ)では、30分以上の訪問を標準とし、20分未満の訪問は算定対象外となります。

また、同一建物内に複数の利用者がいる場合の訪問看護について、利用者数や訪問日数に応じた報酬区分の見直しがおこなわれました。これは、同じ建物内を効率的に訪問できるケースと、一般住宅へ個別に訪問するケースとの違いを踏まえ、評価をより実態に合わせる目的があります。

とくに、住宅型有料老人ホームなどに併設された訪問看護ステーションなど、同一建物内の利用者へ短時間・高頻度で訪問する運営形態では、影響を受ける可能性があります。

現場スタッフへの影響

松本さん:通常の訪問看護ステーションで30分未満で終わるというのは、あまりないので、現場への影響はありません。バイタルチェック、必要な処置、利用者さん・ご家族とのコミュニケーションなどを含めると、どうしても30分はかかります。利用者さんの体調不良で30分未満で切り上げることもありますが、まれですね。

事業所の対応

松本さん:弊社ではもともと30分を切る訪問は組まれていなかったので、影響はありません。同一建物減算が入るケースもほとんどないですね。団地などで同じ棟に2人利用者さんがいることはありますが、何人もまとまっているわけではありませんので。

おそらく一般的な訪問看護ステーションも同様だと思います。今回の改定は訪問看護全体というよりも、特定の運営形態に対する適正化の意味合いが強いといえます。

ただ、国が病院治療から在宅医療への移行を推進した結果、足立区では訪問看護事業所が増加し、利用者さんの奪い合いが激化しています。弊社だけでなくどこの事業所でも営業活動を迫られるのではないでしょうか。

賃上げの実施:ベースアップ評価料と処遇改善加算が拡充

変わること

2026年度改定では、訪問看護ステーションでも「ベースアップ評価料」や「処遇改善加算」による賃上げ施策が進められています。一定の要件を満たした事業所では、スタッフの給与引き上げを目的とした加算を算定できるようになりました。

一方で、加算を取得するには、賃上げ実績の報告や賃金台帳での管理など、継続的な事務対応も求められます。

現場スタッフへの影響

松本さん:弊社ではベースアップ評価料を4月から算定しています。6月から始まる処遇改善加算と合わせると、常勤スタッフで月1万円ほど給与が増える見込みです。

ただ、地域の競争が激化して利用者さんが減ってしまえば、入ってくる加算も減ることは、スタッフにも理解いただければと思っています。

事業所の対応

松本さん:加算には中間報告や実績報告など毎年の提出業務があります。弊社は事務スタッフが4人いるので対応できますが、小規模事業所では事務作業が負担になるのではと思います。

4.これからの在宅医療に求められる力

診療報酬改定への対応は、事業所の運営体制を見直すきっかけになります。ただし、制度への対応だけでなく、利用者に選ばれ続けるためのケアの質も欠かせません。松本さんは、「事業所が選ばれ続けるかどうかが、これからの本質的な課題」と話します。では、これからの訪問看護の現場ではどのような力が求められるのでしょうか。

松本さん:在宅では、利用者の状態を見てその場で判断し、必要に応じて医師やケアマネジャーへ提案・連携する力が欠かせません。病院では医師の指示で動く場面が多いですが、在宅では自分でアセスメントして動く必要があります。診療科の垣根もないので、消化器、整形、皮膚科、泌尿器など幅広い知識と経験も求められます。やる気と体力、そして自分で判断できる力があれば、やりがいはとても大きい仕事です。

参考

厚生労働省|令和8年度診療報酬改定説明資料等について

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