ケアマネジャー(介護支援専門員)とは
介護保険サービスの根幹を担う専門職です。ケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、介護事業者や医療機関などと連携しながら、利用者一人ひとりに合った介護サービスを提供できるようマネジメントします。
ケアマネジャーとして働くには、実務研修を修了し勤務地となる都道府県で資格登録をおこなう必要があります。この研修を受講するには介護支援専門員実務研修受講試験(通称「ケアマネ試験」)にパスしなければいけませんが、合格率20%程度の狭き門となっています。
ケアマネジャーの試験や仕事内容について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
受験のきっかけはケースワーク

──Uさんは現在、コミュニティソーシャルワーカー(CSW)として働いているんですね。
福祉拠点のCSWとして働いて4年目になります。地域の相談員のような感じですね。
──“福祉拠点”というのは?
子どもから高齢者まで全世代を対象として、福祉に限らずなんでも相談できる施設です。地域包括支援センターの全世代版、どんな相談でもOKといったイメージでしょうか。
──あらゆる人のあらゆる相談に対応しているんですね。CSWとして働くUさんがケアマネ取得を目指したきっかけは何だったんでしょうか。
ケースワークの知識や経験をもっと深めたかったんです。
今働いている福祉拠点では、「地域のためになにかしたい」と思っている方を地域のボランティア活動につなぐなど、地域全体に関わる相談が多いんですが……「なんでも相談」ですから、個人を援助するようなケースワーク寄りの相談も受けるわけです。それに対して「ちゃんと応えられているのか自信がないな……」と思い始めて。
ケアマネは一人ひとりに必要なサービスをマネジメントする資格なので、試験対策や研修を通してケースワークを学べそうだなと思って受験を決めました。
試験対策のスケジュールと一日の勉強時間
──ケアマネ試験は例年10月頃ですが、どのくらいの時期から勉強を始めましたか?
受験を決意したのが2019年の4月で、その頃から勉強してはいたんですけど、本気でやり始めたのは試験3ヶ月前の7月頃ですかね。
でも、10月の試験は台風で中止になってしまったんですよ!

──なんと! では試験は延期に?
年明けの2020年3月に延期されました。
10月をゴールに見据えて頑張ってたので、延期になったときはモチベーションが下がっちゃいました(笑)。
──それは大変でしたね。試験対策のスケジュールはどんな感じでしたか?
購入したワークブックを最後まで読むのを6月末までにやって、7月からは過去問も解いてました。
10月以降はあまり勉強が手につかなかったんですが、年明けに意外と勉強内容を忘れていることに焦って、もう1回エンジンかけて頑張りました。

──一日の勉強時間は?
7月までは、仕事がある日は寝る前に1時間ワークブックを読んで、休みの日は寝る前に2時間ワークブックを読んでいました。
7月からは、仕事がある日は仕事終わりにファミレスに寄って3時間勉強して、終わったらビール飲んで帰って(笑)。休みの日は家・ファミレス・カフェなど、3ヶ所くらいを移動しながら5〜6時間勉強してました。ずっと同じ場所だと疲れちゃうので、気分転換として外を歩きながら。
ワークブックに知識を凝縮! 書き込み型の勉強スタイル
──ケアマネ試験の合格率は20%程度とかなり低いですが、どんな勉強方法を?
とにかくワークブックに書き込んでました。過去問で間違えたところとか、追加して覚えた知識とかをひたすら。何か一冊に知識がまとまっているほうが自分的にわかりやすいなと思って。

──ワークブックを選ぶときに重視したポイントは?
文字ばかりじゃなく図表が載っていて、勉強した内容を書き込むスペースがあることですね。
これは社会福祉士対策で使ったワークブックなんですが……こんな感じで見た目がわかりやすいものを選びました。

自分で書き込んでカスタマイズするため、ページ数は気にしなかったそう
──一冊に書き込む勉強スタイルは学生時代からなんですか?
そうですね、自分の勉強方法として定着していました。書き込む際のマイルールは、蛍光ペンの色分けです。
──どんなふうに色分けを?
見出しの大きい順に青→紫→緑→黄色って決めてました。見出し部分を目立たせて、パッと見でわかるようにしたくて。

色分けすることで、情報をフォルダ分けしながら頭の引き出しに入れていけるってイメージです。大事なところだけ同じ色でマーカーしていると、いろんな領域の情報がごっちゃになっちゃうので。
例えばもともと知識があまりない領域──私の場合は医療や病気に関してですが、勉強した内容を整理しにくいんですよね。そういったときにこの色分けが役立ちました。
──なるほど。そういえばケアマネ試験は出題方式が“五肢複択”と独特ですよね。その点も対策をしましたか?
そうですね。各問題に5つくらい選択肢があるんですけど、問題によって「正しいものを1つ選べ」だったり「2つ選べ」だったりするんですよ。あれが怖くって!
だから過去問を解くときは、問題文を読んで「いくつ選ぶのか」が書いてある部分に丸を付けてました。「この問題は“2つ選べ”だな。よし!」って感じで。
──本番を意識して癖をつけていたんですね。
本当は「2つ選べ」なのに「1つ選べ」だと思って解くと、思考がロックされちゃって2つ目の解答に気付けないので。
それに「2つ選べ」の問題は1つだけ解答が合っていてもダメで、2つ合っていて初めて点が取れるんですよね。
──それは慎重になりますね。勉強にはアプリやYouTubeなども活用しましたか?
アプリもやろうとしたんですけど、やっぱり書き込む勉強スタイルが自分に合っていたので、アプリじゃなくて一問一答の問題集をやっていました。

ワークブックの各章の終わりにも「理解度チェック」の問題が載っているんですが、それだけじゃ足りなくて。ワークブックを読む、ワークブックの問題を解く、一問一答の問題集や過去問を解くって流れで勉強してました。

──毎日勉強していると集中力が切れることもあると思います。Uさんはどうしてましたか?
いったん環境を変えるようにしていました。ちょっと散歩に出て外の空気を吸うとか、コンビニでお菓子買ってくるとか(笑)。家・ファミレス・カフェを移動しながら勉強してたのもそうですね。

あとは勉強しない日も決めてました。本当に勉強のことをなんにも気にしない日。
──完全なオフですね。
例えば友達と会う日に勉強のことが頭にあると「何時までに帰らなきゃ……」とか考えちゃって存分に楽しめないじゃないですか。だからそういう日はなにもやらない!って決めてました。

「完全に勉強をしない日は、月に2日くらい設けていました」
──そういった息抜きが心の支えになっていたんですね。
はい。あとは職場に同じタイミングで受験する仲間がいたのも大きかったです。
お互い愚痴ったりとか、「どこまで勉強した?」「そんなにやってないよ〜」「そんなこと言って実はやってるんでしょ」みたいに刺激し合ったり。
──なんだかテスト前のクラスみたいですね!
本当に(笑)。そういう仲間がいるのって大事だなって思いました。
試験当日は“自信につながるもの”と共に
──3月の試験当日に持って行ったものを教えてください。
私の場合は延期があったので例年とは違うと思うんですが、「暖かい格好で来てください」って案内があったのでカイロをめっちゃ貼って行きました。温かい飲み物も持って行って。
──勉強道具も持っていきましたか?
職場の人に教えてもらったサイトを印刷して持っていきました。覚えるべきところが載っていたので!
Uさんが参考にしたサイト
- 介護・福祉の応援サイト ケアさぽ|林先生の受験対策講座
ほかにはワークブックなど、確実に覚えているもの・直前に覚えられそうなものに絞って持って行きました。自分の自信につながるように。
あと「試験が終わったら買い物にいく!」 って決めていたので荷物を最小限にするためにも(笑)。
受験を振り返って「自信を糧に根拠のある支援を提供したい」
──今回の受験を振り返って、ご自身でよくできたなと思うところは?
「やるときはやる!」 って自分をうまくコントロールできてたのかなって思います。
しんどくなりすぎる瞬間がなかったって感じでしたね。「もうやりたくない」ってなる前にやらないみたいな。
──自分のキャパに合わせたコントロールができていたんですね。反対にもう少しこうしたかったと思うところは?
受験の過程で得た知識を、もっと仕事に反映できたら良かったなって思います。
仕事をしながら「あのとき勉強した内容はこの支援につながるんだ」っていうのを考えられたら、仕事にも活かせて勉強の理解も深まったんじゃないかなって。
──実際にケアマネ資格を取得して、どんな部分が今のお仕事に活きていると感じますか?
受験のきっかけにもなったケースワークの基礎が身に付いたことが大きいですね。もともと個人の相談を受けることに対して苦手意識があったので。
相談を受ける側の判断によって相談者の人生が変わっちゃうことが怖かったし、「自信がない状態で相談に乗るのは相手にすごい失礼なことだな」って思ってたんです。

受験をとおして「こういう根拠があってこういう支援をしている」ってきちんと考えられるようになったのが自分の中で自信になりました。
──根拠のあるケースワークが自信につながったんですね。今後はどんなことを目標に?
CSWの仕事──“地域”を見るということは、“人”を見るということなんですよね。
だからちゃんと地域に住んでいる一人ひとりを見るっていうのはすごく大事だなって、やればやるほど感じているところで……。
今回のケアマネ受験をとおしてケースワークに自信がついたので、地域に住んでいる人がどんなことに困っているのかしっかり見ながら支援していきたいですね。
──これからケアマネ試験を受ける人へアドバイスをお願いします。
お仕事をしながら受験される方が多いと思うんですけど、お仕事もして勉強もしてってすごい大変だと思うんです。家庭との両立もあると余計に。
なので切り替えをうまくやってほしいなって思います。1時間とかまとまった時間が取れなくても、「40分だけここをやる!」みたいに決めて、そこをクリアしたら終わりとか、うまくバランスを取りながらやれたらいいかなって。

働きながら学ぶメリット
「仕事と勉強の両立は大変」と言いましたが、働きながら勉強するからこそ得られるメリットもあるなって思うんです。
私は社会人になる前に社会福祉士を取得しましたが、同じ試験対策でも社会人になる前とあとでは知識が身に付く感じが全然違うなって感じました。
──と言うと?
社会に出る前の試験対策は、平たく言うと学校の「歴史」「国語」みたいな感覚だったんです。
でも社会に出たあとの試験対策は「生活に必要なことを学んでる」って意識がすごく高かったんですよね。
学生時代には学問だったのが、社会人になってからは生活の糧になるって感じですかね。
──確かに生活や仕事に直結するので当事者意識を持てそうです。
ケアマネを受験する人の職業っていろいろだと思うんですが、勉強する内容はそれぞれのお仕事とすごく直結するものなんですよね。結果的にケアマネとして働かなくても、大事な視点や知識が詰まっているんです。
なので「資格を取らなきゃいけないからやる」じゃなくて「自分の役に立つからやろう!」って気持ちで取り組んでもらいたいですね。まずは自分の知識と経験が積み重なって、そこに見合った資格がついてくるみたいなイメージです。
そうやって前向きに取り組めると楽しく勉強できるんじゃないでしょうか!