精神保健福祉士とは?
精神保健福祉士は心の病や悩みを抱えた人の日常生活や社会復帰を援助する専門職です。相談者が抱える課題を明らかにし、課題を解決するための情報提供やアドバイス、訓練、各種機関との連携などをおこないます。
精神保健福祉士は国家資格であり、受験するには所定科目の履修に加え、必要に応じて相談援助の実務経験や養成施設の修了が求められます。
精神保健福祉士の仕事内容や試験情報について詳しくはこちらをご覧ください。
二度目の挑戦! 精神&社福のW受験に挑む

──Yさんは初受験では残念ながら不合格だったんですね。
Yさん:そうなんです。初受験では不合格でした、2点足りなくて!
──2点! それは惜しい……。
不合格は私にとって初めての挫折で、相当ショックでした。今まで高校受験とかでも落ちたことがなかったので……。
なので正直、もう国家資格はなくてもいいかなと思いました。卒業と同時に社会福祉主事の資格を持っていたので、さらに経験を積めば児童発達支援管理責任者にもなれるし、十分かなって。
──でも結果的に5年後に再受験を決めたのは、どんなきっかけがあって?
初受験のとき一緒に受けて一緒に落ちた親友がいるんですけど、その子がリベンジして受かったんですよね。勉強が苦手な子なんですけど、仕事を辞めてまで本気で勉強して受かった姿を見て「かっこいい」と思って。「私もやるか!」って。
あとは私、今年結婚して引っ越したんです。そういったライフイベントがあっても国家資格があれば転職や再就職にも有利かなと考えたのも理由の一つでした。

ちなみに社会福祉士も同じ年に受けて合格しました。
──W受験でW合格ってすごいですね! しかし、それまたどうしてですか?
社会福祉士って精神保健福祉士よりも合格率が低いじゃないですか。だからまずは精神保健福祉士に受かって、共通科目が免除*されたうえで社会福祉士も取ればいいかなと思ってたんです。
それを専門学校の先生に相談したら「どうせなら2つとも一気に受けちゃいなよ。受かったらラッキーだと思って!」って言われて。じゃあ受けてみるかって。
災害時でも勉強し続けた受験スケジュール
──受験までのスケジュールを教えてもらえますか?

こんな感じで、勉強を開始したのは試験の1年前からでした。
──1年前だとなかなかの長期戦ですね。
なので「まずは勉強を習慣づけるところから」と思って、一日30分でもいいって感じで始めました。
試験日が近づくにつれて徐々に勉強時間を増やしていって、最終的には仕事のある日でも5時間くらい勉強してましたね。
そんな感じで1年間、毎日ひたすら勉強し続けました。
──毎日ですか? 一日も休むことなく?
はい、お正月休みとかも関係なく。一日だけ台風が上陸して避難しなきゃいけなかった日があったんですけど、そのときも避難場所にテキストを持っていって勉強してました(笑)。
──す、すごい……! ちなみに普段の勉強場所はどちらで?
カフェでやることがほとんどでしたね。自宅だとなかなか集中できないんですけど、カフェだと周りにも勉強している人たちがいて、やる気が出やすいんです。
読んで、聴いて、書いて覚える勉強法
──勉強で使用したテキスト類を教えてください。

Yさんが使用したテキスト類(写真左上から)
- 『精神保健福祉士国家試験過去問解説集2021』中央法規出版
- 『精神保健福祉士国家試験受験ワークブック2021(専門科目編)』中央法規出版
- 『社会福祉士・精神保健福祉士国家試験受験ワークブック2021(共通科目編)』中央法規出版
- 『2020年版 ユーキャンの社会福祉士 書いて覚える! ワークノート』U-CAN
- 『見て覚える!精神保健福祉士国試ナビ(専門科目)2021』中央法規出版
- 『福祉教科書 精神保健福祉士 出る!出る!一問一答 専門科目 第3版』翔泳社
- 『らくらく暗記マスター 精神保健福祉士国家試験2014』中央法規出版
一部、初受験のときに使ってたものも混ざってるんですけど(笑)。
勉強し始めたころは、先に合格した親友から借りたユーキャンのワークノートから始めました。社会福祉士のものなんですけど、精神保健福祉士との共通科目の部分だけ使う形で。ユーキャンのテキストは解説が易しくてわかりやすいので、一冊目にはちょうど良かったです。
そのあとは中央法規のワークブックに移って、こっちは何周もしましたね。5周くらいしたかな……?
──精神保健福祉士や社会福祉士は科目数が多いですが、どう進めましたか?
科目単位で進めてました。1科目理解したら問題解くみたいな感じで。苦手な科目は重点的に何度も繰り返しました。

あと私は車通勤なんですけど、移動中は社会福祉士の解説音声をひたすら流してました。

──耳から覚える方法って定着しますか?
定着しましたね。このCDはずっと聞いていたので、ある単語を聞いたらその解説が空で言えるくらいにはなってました。
逆に言うと、社会福祉士の勉強(共通科目以外)はこのCDくらいしかやってないんです。結局、精神保健福祉士の勉強でいっぱいいっぱいになってしまって……!
──えっ、社会福祉士はほとんど勉強しなかったんですか?
そうなんですよ。間に合わなくて、もう諦め半分でした。
ただ社会福祉士は児童とか就労支援とか実務経験のある分野も出題されるので、ある程度勉強しなくても得点できたんですよね。それで結果的になんとか合格できました。
──なるほど。ちなみに書く勉強法も実践されましたか?
たくさん書きましたよ! 途中ノートの5冊セットを買い足したくらい(笑)。あんまり効率良くはないかもしれないんですけど、私はまずは自分の言葉でノートにまとめないと身につかないタイプで。

テキストで学んだことを、あとで自分が読み返したときに理解できるようにまとめました。人物名は水色、制度名は黄色みたいな感じで色分けしながら。
まとめたあとは、ノートの下側のスペースで一問一答をするという使い方をしてましたね。
──アプリなどは利用しましたか?
アプリは一つだけ「スマ単」っていうのを使ってました。専用のノートに自分で書いた暗記カードをカメラで読み取ると、アプリ内で出題されるっていうものです。
解答できた問題は出題されなくなって、逆に間違えた問題は繰り返し出題してくれる感じで、アプリが出題傾向をコントロールしてくれるのが良かったです。これは私の勉強法では効率的なほうかも(笑)。
──そのほか、予備校などの利用は?
卒業した専門学校の受験対策講座に参加させてもらってました。仕事が休みのタイミングで月2回くらい。追加の受講料とかもなかったので、卒業生の特権ですね。
「最後のチャンスだから」を念頭に一人でも頑張れた
──1年間も毎日勉強を続けていたら、モチベーションを維持できないときもありそうですよね。
めっちゃありましたよ! とくに秋に受けた模試の結果が悪かったときは落ち込みました。「半年以上も勉強してきたのになんで」って。でも毎日勉強するって決めたし、もう意地でしたね。
あとは私、今回がラストチャンスで、再受験はしないって決めてたんです。だからこの1年間やり切れば終わりだと思って頑張れたんだと思います。
──受験期間中、周囲からのサポートはありましたか?
当時は一人暮らしだったので、家族や彼から応援はありましたけど、サポートはとくになかったですね。
不合格だった場合を考えると怖くて、周りの友達には受験の話はしてなかったんです。だから普通に遊びにも誘われたので行ってました。解散したらすぐカフェに駆け込んで勉強するような感じで。

──ほとんど誰にも頼らず、自分一人で頑張ってきたんですね。ちなみに当時の職場では?
職場の人たちにもあまり話はしてなくて。ただ受験対策講座や模試があるときには、受けられるようにシフト調整をしてもらってました。
時間配分に失敗? 試験当日の様子
──では試験当日について教えてください。試験は順調に終わりましたか?
ハプニングとかはなかったんですけど、めちゃくちゃ緊張しましたね! もう手が震えちゃって。
できるだけリラックスできるように、普段使ってるブランケットに好きな香りを吹きかけて持っていきました。休憩中にはその香りを嗅いで少し緊張を緩めたり。
──試験本番は寒い時期ですし、防寒グッズや緊張をほぐすアイテムがあるといいんですね。
あとは緊張のせいか、時間配分で失敗しました。いつもだったら時間が余るくらいなんですけど、本番では見直す時間がなくなってしまって……。
自己採点では合格点に達してたんですが、「もし一問ずつずれて書いてたらどうしよう……」と考えると不安で不安で。
──時間配分には要注意ですね。休憩時間はどう過ごしましたか?
休憩中は、わりと周りの受験生と話してましたね。「午前の試験どうでしたか?」「あの問題が駄目でしたー!」みたいな感じで。
なかには休憩時間も黙々と勉強してる人もいて、そういう人は“話しかけるなオーラ”が出ていたので、そうじゃない人同士で集まってました。
──気になる得点を教えてください。
精神保健福祉士が163点満点中122点。合格ラインは94点でした。
社会福祉士は150点満点中113点。合格ラインは93点ですね。

──社会福祉士のほうが例年合格率が低いですが、実際に受けてみて難しいとは感じましたか?
たしかに社会福祉士は精神保健福祉士より難しいと思いました。精神保健福祉士は、なんというか勉強してなくても解けるような事例問題が比較的多いんですよね。
例えば「こういったシチュエーションのときに、相談者に対してどう声がけをすべきか」みたいな問題。「◯◯しなさいと言う」って選択肢は、意見尊重の観点からもまずないだろうと除外できますよね。
対して社会福祉士は感覚的には解けないというか、勉強して内容を理解していないと選べないような出題が多い気がしますね。
資格取得後の求職活動で感じること
──合格から間もなく1年が経ちますが、資格取得してみての感想は?
結婚、引っ越しが終わって今ちょうど求職活動中なんですけど……なかなか難しいなって思っているところです。
せっかく資格を取得したからにはその専門性が活かせる職場──病院や行政で働きたいんですが、最近はコロナの影響もあってかほとんど募集されてないんですよね。
放デイなどの福祉施設なら求人はあるんですけど、無資格OKなところが多いので、これじゃあ今までの職場と変わらないなぁっていうのが正直なところです。
──資格を取得したら転職で有利になると考えていたのに、実際はそうではなかったと?
もちろん資格を得たことで挑戦できる求人の数や幅は広がったんですけど、その職場で本当に資格を活かした仕事ができるのか見極めるのが大変だと思っていて。ジョブメドレーさんを使ってスカウトもいただきますが、すべて職場見学するわけにもいきませんし……。
自分の理想とする支援の形がある分、それができる職場をちゃんと見つけるっていうのが、今の課題ですね。
──資格取得というゴールの次には、その資格を活かせる仕事探しという新たな課題が出てきたのですね。