
1.「オルト保育園」に行ってきた
2.施設紹介(エントランス、巨大スロープ)
3.施設紹介(トラットリア、リストランテ)
4.施設紹介(アトリエ)
5.「オルト」に込められたコンセプト
6.最後に
1.「オルト保育園」に行ってきた

東京都新宿区にある「オルト保育園」は、2010年に開園した認可保育園。
病院、介護施設、更生施設など幅広く手掛けている社会福祉法人新栄会が運営しています。
下落合駅から徒歩約5分、高田馬場駅から徒歩約10分のところに位置する、都会の真ん中にある保育園です。
2.施設紹介(エントランス、巨大スロープ)

2児の母でもある主任の舘さん
舘さん:主任の舘(たち)です。園内を紹介させていただきますね。
—よろしくお願いします。さっそくですが、エントランスにあるオブジェ?生物?は何でしょうか?

入り口で出迎えてくれた謎の生物の正体は?
「ジラクトパス」です。名前の由来は、「ジラフ(きりん)」と「オクトパス(タコ)」から。
—いきなりユニークですね。誰が作ったんですか?
開園のタイミングで新栄会の職員たちで一から作りました。木造です。
そのあと一度、数年前に子どもたちが塗り直しをしています。ちゃんと吸盤の模様もあるんですよ。

エントランスを抜けると……
—このスロープ、迫力がありますね!
1階から3階の部屋をつなぐスロープで、植物のツルに見立てています。
—ところどころに小さな窓がついているようですが。
子どもの目線の高さについている窓です。
各階の部屋はガラス張りなので、スロープにいる子どもと、部屋にいる子ども同士で手を振ったり、アイコンタクトをとったりして、離れていても交流が生まれる窓なんです。

スロープの途中から2階のランチルームを見た様子
あとは、たとえば3階から1階に下りるとき、「先生いってくる!」と声をかけてくれれば、下りていく様子を上から見守ることもできます。
スロープなので、0歳、1歳の子もハイハイで園内探索してます。
—園全体をつなぐ木の幹のような存在なんですね。
3.施設紹介(トラットリア、リストランテ)

こちらは2階のランチルーム「トラットリア」です。3歳と5歳の子どもたちが利用します。
給食はバイキング形式です。食べるごはんの量も、保育士と相談しながら子ども自身で決めます。
気持ちの表現が苦手な子にとっては、自分で食べる量を決めることで、相手に気持ちを伝える機会にもなっています。
あとは苦手な食べものがあっても、自分で決めた量を食べられることで「食べられた!」と喜びや自信にもつながっていきますね。

テーブルにあるお花やふきんは、給食当番の子がセッティングする
—きらいなものをまったく食べないのもOKなんですか?
乳児クラスだと好き嫌いはどうしてもある時期なので、嫌いなものを無理に食べさせることはしていません。食事の時間をいやな時間にはしたくないので。
ただ、となりの子が食べているところを見て「◯◯ちゃんは食べてるね、おいしいのかな?」とうまく興味を引き出しています。

こちらは1階のランチルーム「リストランテ」。4歳の子どもたちが利用します。
月に一度、「すてきな食卓」といって誕生月の子たちには特別なランチがあるんです。
子どもたちはお客さまで、職員がシェフ。
いつもはトレーにお皿を載せて並ぶんですけど、この日はランチョンマットを敷いて、空いたお皿にシェフがスープから順番に料理をサーブしてくれるんです。
—それは月に一度の特別なランチ体験ですね。
はい。音楽もオルゴールを流したり、スプーンやフォークもいつもより丁寧に気をつけて使ったりします。
4.施設紹介(アトリエ)

こちらは「アトリエ」です。

部屋は円形になっていて、絵の具や色鉛筆などの匂いに包まれている
子どもたちが自由に使える画材や素材を置いています。ここから別の部屋へ持っていくことも、この場で制作することもあります。
子どもたちが主体的に遊んだり、学んだりできる空間です。

子どもの興味が向くときが最大の学びのポイントだと思うので、子どもたちのやりたいタイミングを保育士がしっかり見ていて、「じゃあ作ってみようか」とはじめることを大切にしています。
このまえは、子どもたちがお祭りに行った経験から「オルトでも秋祭りをやろう」という話になって、盆踊りをしたり、屋台を出したりしたんです。

これは「焼きそば」。ちゃんと紅しょうがや青のりまでついています。
子どもたちは自分の中に作りたいイメージを持っているので、材料を手にとりながら、お友達と相談しながらできた一品なんです。
5.「オルト」に込められたコンセプト

インタビューでは1歳児クラス担任の長島さんにもお話を伺った
—オルト保育園の園名の由来はなんですか?
長島さん:「オルト」はイタリア語で「菜園」という意味で、子どもたちの成長にあわせた意味が込められています。
入園したばかりの子どもたちを「たね」に見立てた話なのですが、オルトにきた「たね」は「土」の中から「水」を受け、「陽」の光を浴びながら育ち、卒園に向かって大きな花や実をつけていく…というコンセプトです。
だから、クラスの名前も0,1歳は「つち組」、2歳は「みず組」、3,4,5歳は「ひ組」なんです。
—なるほど。それでスロープも「植物のツル」がモチーフなんですね。

各年齢の部屋の壁紙や椅子などは「つち」「みず」「ひ」ごとのカラーで統一されている
舘さん:こちらは園内の平面図です。

—「DO」や「FU」とはなんですか?
「DO」は「土(ど)」で1階のスロープのスペースのことです。「FU」は「風(ふう)」で2,3階のスペースを指しています。
—ここにも「菜園」らしさが表れているんですね。
6.最後に

—子どもとスタッフの人数構成を教えてください。
舘さん:子どもは0〜5歳までで、122人います。
職員は、非常勤のパートを含めて50人弱です。
—保育士以外の職員の方もいると思いますが、単純計算で子ども2〜3人にスタッフ1人は、多いですよね?
ゆとりをもった人員配置だと思います。
うちでは病後児保育もやっているので、看護師も常勤で2人います。
—改めて、オルト保育園の保育方針を教えてください。
長島さん:「子どもから出発する保育」を法人内保育園の方針として掲げています。
先ほどの「子どもの興味が向いたときが最大の学びのチャンス」の話にも通じますが、子どもたちが自分で考え、行動していくことが大切だと考えています。
大人がああだよこうだよと言うことは簡単ですが、子どもたちは言葉にできなくても思っていることはあるので、私たちはそれを汲み取り、受け止める。
0歳、1歳でも、泣き方や動きなどから何を思っているのかを感じ取ってあげることはできます。
—「たね」から少しずつ育っていく子どもたちを、あたたかく見守り導くような保育ですね。最後に、長島さんがこの保育園でいちばん好きな場所はどこですか?
1階のスロープがある、広場です。子どもたちはそこでお昼寝するんですが、いっしょに横になって上を見上げると、まるい窓から空が見えるんです。

—晴れた日は最高に気持ちよさそうなお昼寝スポットですね。本日はありがとうございました!