
1.地域薬学ケア専門薬剤師とは
2.地域薬学ケア専門薬剤師になるには
2-1.「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定要件
2-2.「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」の認定要件
2-2.認定研修の流れ
3.過渡的措置について
■暫定認定の申請要件
4.今後のスケジュール
1.地域薬学ケア専門薬剤師とは
地域薬学ケア専門薬剤師制度は、地域包括ケアシステムなどの地域医療や介護福祉における幅広い薬学ケアに対応するため、2020年1月に新たに作られました。
薬物療法における高度な知識と技術を有するスペシャリストとして、他職種と連携しながら地域医療・介護領域の現場で活躍することが期待されています。
また同時に、地域医療・介護領域における薬学ケアの研究者という側面も求められています。
2020年9〜10月に申請受付を開始し、2021年1月から認定が開始される予定です。
2.地域薬学ケア専門薬剤師になるには
2-1.「地域薬学ケア専門薬剤師」の認定要件
地域薬学ケア専門薬剤師になるためには、⽇本医療薬学会の求める認定要件を満たさなければいけません。
認定要件とされているものは次の通りです(2020年6月3日時点)。
2.実務経験を5年以上有すること
3.5年以上継続して⽇本医療薬学会の会員であること
4.日本薬剤師研修センター「研修認定薬剤師」、日本病院薬剤師会「病院薬学認定薬師」、日本薬剤師会「生涯学習支援システム(JPALS)」「クリニカルラダー5」以上、そのほか日本医療薬学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること
5.研修施設において、研修ガイドラインに従って地域薬学ケアに関する5年以上の研修歴を有すること(カンファレンスへの参加を含む)
6.別に定めるクレジット(※)を5年で50単位以上履修していること
7.薬物療法専門薬剤師集中講義に1回以上参加していること
8.日本医療薬学会の年会に1回以上参加していること
9.自ら薬学的管理をおこなった、5年間の症例報告50症例(4領域以上の疾患)を提出すること
10.医療薬学に関する全国学会あるいは国際学会での発表が2回以上(日本医療薬学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含む)または論文発表1回(筆頭)
11.専門薬剤師認定試験に合格すること
参考:日本医薬学会/地域薬学ケア専門薬剤師制度の概要
※クレジットについては、地域薬学ケア専門薬剤師制度の概要を参照ください
2-2.「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」の認定要件
地域薬学ケア専門薬剤師制度では、前項で挙げた要件のほか、がん領域においても一定の要件を満たすことで「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」という認定を受けることができます。
認定要件は次の通りです。
2.実務経験を5年以上有すること
3.5年以上継続して日本医療薬学会の会員であること
4.日本薬剤師研修センター「研修認定薬剤師」、日本病院薬剤師会「病院薬学認定薬剤師」、日本薬剤師会「生涯学習支援システム(JPALS)」「クリニカルラダー5」以上、そのほか日本医療薬学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること
5.研修施設において、がん領域の研修ガイドラインに従って地域薬学ケアに関する5年以上の研修歴を有すること(カンファレンスへの参加を含む)
6.別に定めるクレジット(※)を5年で50単位以上履修していること
7.薬物療法専門薬剤師集中講義およびがん専門薬剤師集中講座にそれぞれ1回以上参加していること
8.日本医療薬学会の年会に1回以上参加していること
9.自ら薬学的管理をおこなった、5年間の症例報告50症例(4領域以上の疾患)+がん領域20症例
10.10.医療薬学に関する全国学会あるいは国際学会での発表が2回以上(日本医療薬学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含む)または論文発表1回(筆頭)(がんに関係したものを含む)
11.専門薬剤師認定試験に合格すること
参照:日本医薬学会/地域薬学ケア専門薬剤師制度の概要
※クレジットについては、地域薬学ケア専門薬剤師制度の概要を参照ください
2-3.認定研修の流れ

引用:日本医薬学会/地域薬学ケア専門薬剤師制度の概要
前項の要件に含まれているように、地域薬学ケア専門薬剤師になるには5年間の研修が必要です。
基本的な薬物療法や地域薬学ケアに関する研修は所属する薬局(連携施設)にて実施。コアカリキュラムに沿った研修は薬局内の指導薬剤師(医療薬学専門薬剤師など)がおこないます。
また、月に3〜4回は基幹施設(要件を満たした病院)で開かれるカンファレンスに参加し、指導薬剤師からの指導を受ける必要があります。
3.過渡的措置について
地域薬学ケア専門薬剤師の認定開始は2021年ですが、そこから5年以上の研修を受けなければいけないため、通常であれば最初の地域薬学ケア専門薬剤師の誕生は2026年となってしまいます。
そこで、一定の条件を満たした希望者については、過渡的措置として「暫定認定」がおこなわれます。
この過渡的措置では、暫定的に地域薬学ケア専門薬剤師としての認定を受けたのちに、5年間の研修がスタートされます。
■暫定認定の申請要件
地域薬学ケア専門薬剤師の暫定認定における要件は、症例報告やクレジットの履修などが緩和されています。
暫定認定の詳しい要件は次の通りです。
(1)以下のいずれかを有していること
- 日本薬剤師会「JPALS認定薬剤師」
- 日本薬剤師研修センター「研修認定薬剤師」
- 日本病院薬剤師会「日病薬病院薬学認定薬剤師」「日病薬生涯研修履修認定薬剤師」
- 日本医療薬学会「認定薬剤師」
(2)実務歴が5年以上
(3)申請時に日本医療薬学会の会員であること
(4)学会発表(筆頭)が1回以上、もしくは論文(筆頭)が1報以上あること
(5)学会等参加・発表単位を、20単位以上取得していること
(6)上記の1から5の条件を全て満たす者で、本学会委員会の選考を経て、理事会で承認された者
なお、この暫定措置は2020年〜2024年までの申請が対象となっています。初回の更新までに、地域薬学ケア専門薬剤師としての正式な要件を満たしていないと、認定資格は消失するので注意しましょう。
4.今後のスケジュール
最後に、あらためて地域薬学ケア専門薬剤師制度の今後のスケジュールを確認しておきましょう。
まず、2020年9〜10月に暫定認定申請の受付が開始され、委員会の審査を経て、2021年1月には最初の地域薬学ケア専門薬剤師が暫定的に誕生します。
その後、2021年4月から5年間の研修がスタートする予定となっています。

地域薬学ケア専門薬剤師として正式な認定を受けるには、5年もの間ほぼ週1回のペースで病院のカンファレンスに参加しなければいけないので、働きながら認定を目指す薬剤師にとっては少し高いハードルと言えます。
しかし超高齢社会となった日本において、地域医療と介護ケアにおける薬剤師の連携は必須となるため、これらの専門知識を持った「地域薬学ケア専門薬剤師」は重宝されることでしょう。
薬剤師としての今後の可能性を広げるためにも、目指してみてはいかがでしょうか?