テレワークとは? 医療福祉業界での普及状況、導入事例と効果、テレワークできる業務・できない業務を紹介

新型コロナウイルスの影響で急速な広まりを見せたテレワーク。出勤を前提とした働き方が多い医療福祉の現場では、どの程度実施されているのでしょうか? 実際にテレワークを導入した事例やその効果を見ながら、今後の展望を考えてみましょう。

医療福祉業界のテレワークとは

1.テレワークとは?

1-1.テレワークの意味、リモートワークとの違い


「テレワーク(telework)」とは、インターネットなどのICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことです。和製英語だと思われることもあるようですが、「tele=離れた所」+「work=働く」の複合語から成り立つ英語です。

テレワークの働き方には、以下の3つの種類があります。

■3つのテレワーク形態


・在宅勤務
自宅を作業場所とする働き方

・モバイル勤務
外出先や移動中の交通機関内、カフェなどを就業場所とする働き方
外出後にオフィスに戻る必要がないため、移動時間を有効活用できる

・サテライトオフィス(施設利用型)勤務
オフィス以外の施設を就業場所とする働き方
より自宅に近い場所やオフィスよりも集中しやすい環境で働くことができる


また、よく似た言葉として「リモートワーク(remotework)」があります。これも複合語の「remote=遠隔・遠い」+「work=働く」から成るとおり、テレワークとほぼ同じ意味の言葉です。テレワークと同様に、インターネットなどを活用してオフィス以外で仕事をする働き方のことを指します。

1-2.テレワークの効果

テレワークの効果とメリット

(出典:東京都|テレワーク導入のモデル実証事業

上のグラフは、東京都が2018年におこなったテレワーク導入のモデル実証事業の結果で、「テレワークで感じられた効果」として得られた回答です。

1位は「通勤・移動時間を効率化・削減できている」、2位は「集中して仕事を進めることができている」、3位は「身体的・精神的負担が軽減され、気持ちに余裕ができている」でした。物理的な時間削減だけでなく、働く環境が変わることで精神面においてもプラスの効果があることがわかります。

また育児や介護などの事情から、仕事の両立に難しさを感じる人が多いなかで「育児・介護等と両立しやすくなっている」という回答もありました。

従業員にとって身体的・精神的に働きやすい環境を整えることは、ワークライフバランスが改善し、仕事の満足度向上につながります。これは雇用主にとっても人材確保・離職防止の意味で非常に重要です。

■テレワークに期待される効果・意義まとめ


・ワークライフバランスの実現
・有能・多様な人材の確保、生産性の向上
・営業効率の向上、顧客満足度の向上
・少子高齢化対策の推進
 多様な働き方を可能にすることで、少子高齢化による労働力人口の減少をカバーする
・地域活性化の推進
 UJIターン・2地域居住や企業等を通じた地域活性化
・環境負荷軽減
 交通代替によるCO2の削減、地球温暖化防止への寄与
・コスト削減
 オフィス利用・維持や従業員の出勤にかかるコストの削減
・非常災害時の事業継続
 オフィスの分散化により災害時などに迅速な対応が可能

(出典:総務省|テレワークの推進|テレワークの意義・効果


1-3.テレワークの普及状況

総務省が毎年発表している「通信利用動向調査」によると、企業のテレワーク導入率は近年増加を続けています。2019年9月時点での導入率(全業種)は、20.2%でした。

その後、新型コロナウイルスの影響により働き方が大きく変わった2020年の就業者データを見てみましょう。内閣府が同年6月に発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、テレワークを利用したことがある人の割合は全業種で34.6%の結果になりました。

業種別テレワーク実施状況

(出典:内閣府|新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

業種別の実施状況を見ると、実施率が最も高いのは「教育、学習支援業」の50.7%でした。一方で「医療・福祉・保育関係」は9.8%と、全業種のうち最も低い結果となりました。

医療福祉業界で普及が進んでいない要因としては、患者や利用者と接する業務が多いこと、個人情報などの外部持ち出しが難しい情報を扱っていること、書類の電子化が進んでいないことなどが挙げられます。

2.医療福祉業界におけるテレワーク

2-1.テレワーク導入が期待される背景


テレワーク導入率が低い医療福祉業界ですが、政府や自治体、業界の関係機関ではICTの活用やテレワークを取り入れた働き方の推進を始めています。

その背景のひとつには、ジョブメドレーのミッションでもある「医療福祉業界全体を通じた人材不足の解消」があります。とくに医療福祉業界では全産業の平均よりも高い有効求人倍率が続いており、慢性的な人材不足が課題となっています。テレワークが労働環境を改善する一助となり、人材の確保と定着につながることが期待されています。

2-2.テレワークができる業務・できない業務

テレワークは単に離れた場所で仕事をするだけではなく、“ICTを利用する”点が肝となります。とくに医療福祉業界はICT化が進んでいないとも言われますが、具体的にテレワークを導入できる業務、できない業務にはどのようなものがあるか見てみましょう。

テレワークができる業務の例

医療 ・一部の認められたオンライン診療
・オンライン上の健康相談や指導
・画像やビデオ解析が可能な業務
・電子カルテによる情報管理
介護 ・レセプト業務
・介護計画書の作成・評価
・利用者に関する記録書・報告書の作成
・利用者や利用者族との相談援助業務
保育 ・保育計画や保育記録、行事の企画書、掲示物・配布物などの資料作成
・教材や手作りおもちゃの準備・作成
・オンライン連絡帳の更新、保護者対応
共通 ・職員間の報告・連絡・相談
・職員会議、カンファレンスの実施
・管理・マネジメント業務
・労務関連の届け出・管理、稟議の申請・決済
・事務作業

テレワークができない業務の例

医療 ・医療的処置や診察などの直接患者と接する業務
・機材や医薬品などを扱う業務
介護 ・生活援助や身体介助などの直接支援が必要な業務
保育 ・子どもたちの直接保育全般
共通 ・清掃や備品・郵送物の管理などの施設の機能を維持する業務

テレワークが難しいと考えられる主な業務は、患者や利用者と直接接する必要があるものです。一方で、患者や利用者と必ずしも接する必要のない業務や、単独でおこなえる業務、職員間だけでおこなえる業務に関しては、オンライン上の連絡ツールや情報管理システムを導入することで、遠隔でも業務可能になるものが多そうです。

※上記は一例であり、事業内容や職場環境によって実現できる業務・できない業務は異なります。

2-3.テレワークの導入事例

ここからは、実際にテレワークを導入したことで、従業員の労働環境の改善や事業全体でプラスの効果を得られた事例を紹介します(出典:東京都「TELEWORK活用ヒント 医療・福祉」)。

【病院】在宅勤務を導入し、放射線科の読影業務作業を効率化


学校法人兵庫医科大学では、育児中の放射線科医師の要望を受けて在宅勤務制度を開始しました。これまで1日約200件の読影業務を16名の医師で分担していましたが、在宅勤務の医師が集中して診断することで、内勤医師の負担軽減に成功。医師はキャリアを続けることができ、内勤医師は医療処置や研究などに時間を充てられるようになりました。

在宅勤務に必要なパソコンやモニター、セキュリティの高い回線は法人負担で用意。パソコンにはデータがローカル上に残らないように改造し、在宅勤務中のコミュニケーションは携帯電話でおこなっています。

【保育園】在宅勤務とICT化で現場の負担を軽減。子どもと触れ合う時間を最大限確保


東京都調布市にある飯野おやこ保育園では、在宅勤務制度を週に1回、3時間を目安に利用できます。在宅勤務は園内よりも作業に集中でき、書類作成や手遊びなどの下準備を効率的におこなうことで、現場の業務量軽減につながっています。

また連絡帳の作成や保護者連絡、写真販売などをシステム化することで、電話対応や手作業にかかる時間削減に成功。システム上の情報共有により引き継ぎや急ぎの対応もスムーズにおこなえるようになりました。

【介護事業所】ホームヘルパーのスマートフォン活用で業務時間を30%カット


訪問介護事業をおこなう株式会社アイケアは、全ヘルパーに貸し出したスマートフォンの介護保険ソフトを利用することで、手書きの報告書を作成・提出する手間を削減。報告書提出のために事業所に立ち寄る時間がなくなったことで、1日の業務時間を30%カットし効率化できました。

さらに利用者の健康状態などをソフトを通じて共有することで、担当者が変わっても均質なサービス提供を可能にしています。またチャットツールを利用することでヘルパー間のコミュニケーションが活発になり、職員の心理的負担が緩和され離職率の低下にもつながりました。

2-4.医療福祉業界におけるテレワークの今後

医療福祉業界におけるテレワークの今後

実際にテレワークを導入するとなると、多くのコストや労力がかかることも事実です。安全にツールを使ってテレワークを実現するには、パソコンやスマートフォンなどの機器の貸し出しのほか、通信環境やシステムの整備、セキュリティ対策なども必要です。さらに新しい制度のルール作りや、従業員への説明や指導も求められます。

また人と人との関わりが重要な医療福祉業界では、テレワークやICT化を進めることが必ずしも正解ではない場面もあると思います。職場の状況や課題を俯瞰し、導入した場合としなかった場合のメリット・デメリットを比較してみることが重要です。

人材不足などのさまざまな課題を抱える医療福祉業界において、テレワークやICT化はひとつの解決策となるかもしれません。どんな働き方をするにしても、より良い医療や福祉サービスを提供するために優先すべきことや効率化できることは何かを考え、柔軟な対応を続けていくことが大切なのではないでしょうか。

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