- 1. 退職願・退職届を書く前に
- ・退職願・退職届・辞表の違い
- ・退職までの流れ
- 2. 退職願・退職届の書き方
- ・用紙・封筒・筆記具の選び方
- ・縦書きの退職願・退職届の見本(サンプル)
- ・横書きの退職願・退職届の見本(サンプル)
- 3. 退職願・退職届の封筒の書き方
- ・退職願・退職届の封筒の見本(サンプル)
- ・退職願・退職届の折り方・入れ方
- 4. 退職願・退職届の渡し方
- 5. 退職願・退職届に関するよくある質問
- Q. 一度提出した退職願や退職届を撤回することはできる?
- Q. いきなり退職届を渡してもいい?
- Q. 上司が退職交渉に応じてくれない場合は?
- Q. 退職理由が会社都合でも退職届は必要?
- Q. パート・アルバイトでも退職届は必要?
- 6. 退職手続きはルール・マナーを守ってスムーズに
1. 退職願・退職届を書く前に
退職願・退職届・辞表の違いや、退職までの流れについて確認しておきましょう。
・退職願・退職届・辞表の違い
退職願・退職届・辞表には次のような違いがあります。
・退職願
退職(労働契約の解除)を申し入れるために提出する文書です。退職の意向は口頭で伝えることが一般的で、退職願は必ずしも必要ではありません。ただし「◯月×日付で退職したい旨を□月△日に申し入れた」という事実の証明になりますので、退職の意思が固い場合には用意しておくとよいでしょう。
・退職届
退職(労働契約の解除)を承認されたあとに提出する文書です。あくまで退職について合意形成したあとに提出する書類ですので、いきなり退職届を提出するのはNGです。勤務先によって書式や提出先が異なりますので、ルールを確認したうえで用意しましょう。
・辞表
社長や役員などの立場にある場合にその役職を辞するときに提出する文書です。役職を辞したあとも引き続き一般の従業員として働く場合もあります。また、公務員が退職するときに提出する文書も辞表ですので、公立の病院や保育園、幼稚園などにお勤めの方は退職届ではなく辞表を提出することになります。
・退職までの流れ
退職の意思を固めたあと、退職までの流れは一般的に次のようになります。
退職前後の手続きについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
>退職前後の手続きを解説! 社会保険、税金はどうすればいい?
tips|退職の意思が固まったら就業規則を確認!
円満退社のためにも退職の準備はルールに従って計画的に進めることが大切です。退職の意思が固まったらまず勤務先の就業規則を確認しましょう。
法的には「退職したい」旨を伝えてから2週間で退職できることになっていますが、後任の配置や業務の引継ぎ、各種事務手続きを考えるとその期間では難しいのが実情です。そのため多くの事業主は就業規則で退職の予告期間(退職の意向を伝える期限)を定めています。
一般的には退職希望日の1〜2ヶ月前までとされていることが多いようですが、必ず勤務先の就業規則で確認してください。また、その期間で退職の意向を伝えなければならないのか(上記の「3」)、退職を承認されなければならないのか(同「4」)、退職届の提出を完了しなければならないのか(同「5」)も併せて確認しておきましょう。
保育士や幼稚園教諭の場合は、クラスの変わる年度末での退職を考えている方が多いかと思います。年度末で退職する場合、クラス編成前の11〜12月頃など来年度の意向を確認されるタイミングで伝えるとスムーズです。ただし、退職によって保育士の配置基準が満たせなくなるような場合は、新卒採用が本格化する前の6〜7月頃に伝えたほうがいいでしょう。保育士も人材不足、採用難の時代です。早目に伝えることに越したことはありません。
2. 退職願・退職届の書き方
退職願や退職届は縦書き・手書きが基本ですが、横書きやパソコンで作成しても構いません。ただし、勤務先から「縦書きで」「手書きで」と指定がある場合はそれに従いましょう。
では、一般的な退職願や退職届の書き方について解説します。
・用紙・封筒・筆記具の選び方
用紙・封筒・筆記具は次のものを使いましょう。
・用紙
B5かA4の白い無地便箋を使用します。罫線入りでもOKですが、シンプルなフォーマルタイプを使用しましょう。
・封筒
白い無地封筒を使用します(郵便番号欄のないもの)。用紙サイズがB5の場合は長形4号、A4の場合は長形3号が三つ折りにしたときちょうど収まるサイズです。
・筆記具
黒のボールペンか万年筆を使用します。ボールペンは水性でも油性でも構いませんが、退職願や退職届はフォーマルな文書ですので、鉛筆やシャープペンシル、「こすると消える」タイプのペンは使用を控えましょう。
・縦書きの退職願・退職届の見本(サンプル)
縦書きの場合は次のように書きます。
縦書きの場合の書き方のポイントは次のとおりです。
1. 標題
大きく「退職願」「退職届」と書きます。
2. 書き出し
1行目に下詰めで「私儀(読み:わたくしぎ)」と書きます。「私事ですが〜」という意味になります。
3. 退職理由
自己都合で退職する場合は「一身上の都合により」とし、具体的な理由に触れる必要はありません。会社都合で退職する場合は「事業所閉鎖のため」「部門縮小のため」「早期退職のため」など理由を具体的に書きましょう。
4. 退職日
退職願の場合は退職希望日、退職届の場合は勤務先から承認された退職予定日を書きます。
5. 文末
退職願は退職の意向を申し入れる文書のため「お願い申し上げます」、退職届は退職の事実を報告する文書のため「退職いたします」と書きます。
6. 提出日
退職願や退職届を提出する日を書きます。
7. 所属部署・氏名・印鑑
宛名より低い位置に所属部署と氏名を書き、氏名の下に捺印します。シャチハタではなく認印を使いましょう。
8. 宛名
宛名には直属の上司ではなく代表者の氏名を書きます。大きな組織の場合、代表者といっても施設の代表者(院長、施設長、園長)なのか、法人の代表者(理事長、社長)なのか迷うかもしれません。退職願では施設代表者宛てとし、退職届を提出する前に施設代表者宛てか法人代表者宛てか確認するとよいでしょう。また、役職名と氏名は誤字のないようお気をつけください。
・横書きの退職願・退職届の見本(サンプル)
横書きの場合は書く順番が「標題→提出日→宛名→所属部署・氏名・印鑑→本文」となり、文末を「以上。」で締めます。それ以外の書き方のポイントは縦書きと同様です。
3. 退職願・退職届の封筒の書き方・便箋の入れ方
退職願や退職届は封筒に入れて提出します。
・ 退職願・退職届の封筒の見本(サンプル)
封筒の表に「退職願」または「退職届」、裏に所属部署と氏名を書きます。便箋を封入したら、糊付けのうえ「〆」と記します。
・ 退職願・退職届の折り方・入れ方
退職願・退職届は長辺で下から順に三つ折りにし、右上(★印)が上部になるように封筒に入れます。
4. 退職願・退職届の渡し方
退職願や退職届の宛名は代表者ですが、提出先は直属の上司や人事部となります。
退職願は退職の意向を直属の上司に伝える際に手渡しします。退職届は退職の承認を得られたあとに人事部へ提出することが一般的ですが、勤務先によって提出先が異なることがありますので、必ず提出前にご確認ください。
けがや病気のために出社できない場合は、事前に相談したうえで郵送しましょう。郵送する際はさらにひと回り大きな封筒に入れて送ります。退職願や退職届の封筒に直接宛先を書き込んで送らないようにしてください。
5. 退職願・退職届に関するよくある質問
最後に退職願や退職届に関する「よくある質問」に回答します。
Q. 一度提出した退職願や退職届を撤回することはできる?
一度提出した退職願や退職届の撤回は原則できないと考えてください。
退職願や退職届を受理した時点で、事業主は後任の採用や異動、社会保険等の事務手続きをおこなわなくてはなりません。それらの対応が既に始まっていると撤回は現実的に難しいでしょう。退職願の場合、直属の上司を通して人事部へ正式に申し入れがされていない段階であれば撤回できることもありますが、一度「仕事を辞めたい」と伝えてしまったことで心証を損ねる可能性も否めません。
もし仕事を辞めることに対して迷いがあるのであれば、退職を願い出る前に「相談」という形で話を進めることをおすすめします。職場環境や雇用条件など仕事を続けることが難しい理由を伝え、解決の方法がないか話し合いましょう。そこで前向きな回答が得られなければ、そのあとで退職願を提出しても遅くはないはずです。
Q. いきなり退職届を渡してもいい?
退職届は退職が承認され、退職日が確定したあとに提出する文書ですので、事前の相談なく渡すのはNGです。
退職の意向が固まったらまずは「今後についてご相談したいことがあるのですが」と直属の上司に声をかけ、進退について相談する時間を作ってもらいましょう。退職の意志が固いことを示したい場合や、次の仕事が決まっているなど確実に退職したい場合は、その場に退職願を持参するとよいでしょう。
Q. 上司が退職交渉に応じてくれない場合は?
直属の上司から引き止めにあうなどして退職交渉が進まない場合は、さらに上の上司に「直属の上司に退職の意向を伝えたが取り合ってもらえない」旨を伝えましょう。
このときに注意したいのが相談の順序です。「直属の上司との関係が悪く話しづらい」などの理由でいきなりその上の上司に相談すると、話を差し戻されたり、管理体制に問題が飛び火したりと退職交渉にかえって時間がかかる恐れがあります。上長への相談(エスカレーション)は順序を守りましょう。適切にエスカレーションをおこなったにもかかわらず状況が改善しない場合には、人事部に相談することをおすすめします。
それでもダメなときや、クリニックや歯科医院など「ほかに相談できる人が職場にいない」ときの相談窓口に、総合労働相談コーナーや労働基準監督署(労基)があります。
>厚生労働省|総合労働相談コーナーのご案内
>厚生労働省|全国労働基準監督署の所在案内
自らの意思で仕事を辞めることは労働者の権利として守られています。「後任が決まるまで待ってほしい」「代わりを紹介してほしい」といった要求に答える義務はありませんし、「懲戒解雇にする」「損害賠償請求する」といった脅しも違法です。泣き寝入りせず周囲に助けを求めてみましょう。
Q. 退職理由が会社都合でも退職届は必要?
就業規則で「退職理由にかかわらず退職届が必要」とされている場合もありますので、勤務先のルールに従いましょう。
会社都合の場合は、退職届に書く退職理由に注意してください。自己都合の場合は「一身上の都合により」とするところ、会社都合の場合は「事業所の閉鎖(縮小)のため」「早期退職のため」など理由を明記しましょう。
次の仕事が決まっておらず失業手当を受け取る場合、退職理由が会社都合か自己都合かによって失業手当を受け取れない期間(給付制限期間)や受け取れる日数(給付日数)が変わってきます。退職届に「一身上の都合により」と書いてしまうと、実際は会社都合退職であるにもかかわらず自己都合退職として処理される恐れがありますのでご注意ください。
Q. パート・アルバイトでも退職届は必要?
パートやアルバイトの場合「退職届は不要」とされていることが多いようですが、勤務先によりますので、退職の意向を伝える際に確認するとよいでしょう。
6. 退職手続きはルール・マナーを守ってスムーズに
退職願や退職届の書き方や渡し方を誤ると、退職交渉が難航するなど思わぬ落とし穴があります。職場に迷惑をかけないよう、退職手続きはルール・マナーを守ったうえで余裕をもって進めましょう。
また、一度提出した退職願や退職届は基本的に取り下げられません。もし退職について迷いがあるようでしたら、退職願を提出する前に別の解決策がないか一度同僚や上司に相談してみることをおすすめします。結果がどうあれ、できることをおこなったうえで心残りなく次のステップに進めるようにしたいですね。