【コロナ禍インタビュー】幼稚園教諭 31歳 女性の場合

新型コロナウイルスの流行が医療や福祉、美容関係の仕事に就いている方にどのような影響を与えているのか、当事者の声を聞くインタビュー企画。今回は、2年前にもインタビュー に登場した幼稚園教諭のTさん。コロナ禍を経てどのような変化があったのか、園ではどのような対応を取っているのか、お話を聞きました。

コロナ禍インタビュー 31歳 幼稚園教諭

あれから2年──職場7年目は変化の年

31歳 幼稚園教諭

※取材は感染症対策に十分に配慮し実施しました

──お久しぶりです。前回の取材からもう2年も経つんですね。

そんなに前のことなんですね! なんというか、本当にあっという間でした。

前回のインタビューではTさんの転職経験やプライベートについて詳しく話を聞いています。 こちらもご覧ください!

【転職者インタビューvol.1】幼稚園教諭5年目29歳/転職1回(小学校教諭→幼稚園教諭)

──今回はこの2年間でどのような変化があったのかを聞かせてください。

わかりました。新型コロナもありましたしね。

個人的に2020年は変化の年でした。

主任になった直後に緊急事態宣言

31歳 幼稚園教諭の経歴

──「変化の年」と言うくらいですから、何か大きな出来事が?

立場が大きく変わったんです。具体的には2020年の4月から主任になりました

──おめでとうございます! でも前回のインタビュー時に「主任を打診されているけど、考えてない」って言ってませんでした?

──役職にはついていますか?


ついてないです。主任の打診を受けているんですけど、いまのところ具体的には考えていません。

──主任になると仕事内容は変わるんですか?

基本業務は変わらないんですけど、中心となって「保育」をつくる存在になるので責任が大きくなります。

── 前回インタビューより

そうなんですよね。

そのときは「主任は大変そうだし、やりたくないな」って思っていたんですが、当時の主任と話し合いを重ねて「保育業務をメインとする主任になってくれないか」という話に落ち着いたんです。

当時の主任は定年退職の予定だったんですが、パートとして運営周りの雑務などを担当してくれるということになって。

──なるほど。Tさんは、いわゆる「保育リーダー」のような主任を任されたということですね。

そうです。

ただ実際、主任になってみるとなかなかそうもいかず、結局従来の主任と同様の業務をすることになりまして。

小さい園なので責任の所在や主任業務の範囲もあいまいで「主任ってこんなこともやらなきゃいけないの!? 」って、大変なことばかりでした。

主任とはいえ、園で2番目に若いのでやりづらい部分もありますし、子育て経験もないので保護者からの相談事なども、どうしても説得力に欠けるというか……。

31歳 幼稚園教諭2

──年上の先生たちをまとめるのは大変そうですね。

それに主任という立場上、担任のクラスを持っていないんです。

なので「個々のクラスのことにどこまで口を出していいのか」とか「担任を持たない人は気楽でいいねって思われていないか」とか、悩みは尽きません……。

──確かに難しいですね。ほかの先生たちを取りまとめるうえで大事にしていることはありますか?

ほかの先生たちの提案や意見を、必ず一度は取り入れるようにしています。また、自分から提案する場合は「なぜそう思うのか」という理由も添えて、納得してもらえるようにしています。

最近よく言われるエビデンス(根拠)ってやつですね。すごく意識するようになりました。

あとは定期的に1対1での面談や、全体で話し合いをする時間を設けました。

──これまではそういう面談や会議の時間はなかったんですか?

まったくと言っていいほど。

面談するようになってからは、それぞれの先生の考えを知ることができたり、園全体で課題感を共有できるようになったりして、いい方向に向かっている感じがします。

──主任として大変なことが多そうですが、一方で良かったことは?

大事にしている保育観をみんなに提案したり、方針を決定できたりする立場になったので「園づくりをしている」という実感が得られるところはすごく面白いです。

あとは「この園にぴったりな保育はなんだろう」「自分の本当にやりたい保育はなんだろう」って深く考えるようになりました。

──なるほど。昇進によって給料は上がりましたか?

すごく上がりました! やっぱりそこはモチベーションに直結しますよね。

こっちが前回取材してもらったときの給料で……。

31歳 幼稚園教諭給与明細2年前

こっちが直近の給料です。

31歳 幼稚園教諭 給与明細

主任になると時間外手当や休日出勤手当がなくなることを知らなかったので、そこはちょっと損した気分になりました(笑)。

ちなみに前回取材してもらったころは、自転車通勤にしていたんで通勤手当は支給されていなかったんですが、やっぱり大変なので電車通勤に切り替えました。

──額面で10万円以上もアップしてますね! その分、残業は増えましたか?

多少増えましたね。だいたい月に20時間くらいかな。

加えて事務仕事が多くなったので、幼稚園には残らず家に仕事を持って帰っています。

資料やお便りの作成くらいなので自宅のパソコンでもできるんです。

コロナ禍がもたらした幼稚園のIT化

31歳 幼稚園教諭3

──2020年4月から主任になったということは、その直後に1回目の緊急事態宣言が?

そうなんですよ!

初めての主任業務でいっぱいいっぱいなのに、さらにこんな事態になるなんて、と。

──新型コロナウイルスの流行初期はどのような対応を取りましたか?

緊急事態宣言が発令される直前の3月中は春休みだったので、その期間は子どもだちの預かりに制限をかけていました。

「やむを得ぬ事情がある家庭のみ預かります」というような感じで。例えば医療従事者のご家庭などですね。

なので先生たちもシフト制にして、最低限の人数で子どもたちをみるようにしました。

ニュースや政府の発表を細かくチェックしたり、よその幼稚園を視察したりと、園長や副主任に助けてもらいながら手探りでコロナ対応を進めました。

──緊急事態宣言中は休園したんでしょうか?

そうですね。基本的には休園なんですけど、春休みと同じく「どうしても」という子どもだけ預かっていました。

平常時は60人くらい預かっているんですけど、緊急事態宣言中は10人以下でしたね。

──保護者から「保育料は返還されないのか」といった問い合わせはありませんでしたか?

何人かはいましたよ。

ただ、もともと「幼児教育・保育の無償化」が始まっていたので、「実質無料なんですよ」という説明をしました。

──確かに、もう無償化が始まっているんでしたね。先生たちは春休みと同じくシフト制で?

そうです。シフト制でリモートワークを導入しました。

だいたい週3日くらい幼稚園に出勤して、2日はリモートという感じで。

──幼稚園や保育園の先生のリモートワークって、イメージが湧かないんですが、自宅でどんな仕事をしていたんですか?

4月は新学期に向けた準備をそれぞれの先生に進めてもらいました。

例えば掲示物の作成だったり、ロッカーに貼る名前シールの作成だったり。

あとは、そうだ! 緊急事態宣言中に幼稚園のYouTubeも立ち上げたんです! なので、その動画を作ってもらったり。

──すごいですね! YouTubeはどんな内容を配信したんですか?

うちの園児に向けた内容です。

手遊びお歌新入園児のための幼稚園案内、外部の体操の先生にも協力してもらって体操の動画も作ったり。

少しでも幼稚園に来ている気分になってもらえたらいいなって試行錯誤しました。

なので不特定多数に向けたものではなく、保護者のみなさんにだけチャンネルのURLを共有していました。

──子どもたちや保護者の反応はどうでしたか?

すごく喜ばれましたよ!

「子どもが繰り返し見てます」とか「欠かさずチェックしています」とか、嬉しい言葉をいただきました。

今はもうYouTubeの更新はストップしているんですけど、せっかくなのでいずれは再開したいなと思っています。

31歳 幼稚園教諭4

──緊急事態宣言中に、先生たちの給料が減ったりはしませんでしたか?

ありがたいことに、それはなかったですね。

これまでと変わらずでした。

──それはよかったですね。そのほか、コロナ禍で業務上の変化はありましたか?

うーん、あとはIT化? っていうんですかね。それをものすごいスピードで進めました。

これまでは昔ながらのアナログな園で「資料はすべて紙ベース」「FAXもばりばり現役」「連絡・共有事項は園内の掲示板で」って感じだったんです。

これからリモートワークも始まるし、なんとかしなきゃって重い腰を上げて動き出しました。

──たしかにリモートワークだと、業務の進捗や情報を共有しづらいですもんね。

なので、そこからはGoogleをフル活用しました。

Googleカレンダーでスケジュールを共有して、Googleドキュメントで日報を作成したり、GoogleMeetで資料を画面共有しながらリモート会議をしたり。

私もITに疎いので、本当に一から調べて手探りで進めたので疲労感がすごかったです。

今さらですが本当にすごいですねGoogleって。

リモートワークじゃなくなった今も、しっかり活用しています。すごく効率的になりましたね。

──先生たちはみんな自宅にパソコンを持っていたんですか?それとも園から支給されていたんでしょうか?

パソコンの支給はなかったです。パソコンを持っていない人はスマホでできる範囲の作業をしていました。

──急にIT化を進めて、ほかの先生たちから反発はありませんでしたか?

多少ありましたね。「Wordじゃダメなのか」とか「一から覚える時間がない」とか。

でもやっぱりみんなも危機感があったようで、わりと受け入れてもらえました。

「FAXは絶対に必要!」って言っていた古株の先生も、今では「メールで十分だし、FAXなんかいらないね」って言うように。

──慣れないうちは抵抗感ありますもんね。2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発令されましたが、前回との変化はありますか?

2回目の緊急事態宣言では、休園はしていませんし、先生たちも従来の働き方に戻しました。

子どもたちもコロナ前と変わらないくらいの人数が登園していますね。

ただ、やっぱり先生たちや保護者のみなさんの戸惑いや疲弊感は感じます。

「ネットでこんな感染症対策をおすすめしてた」とか「どこそこの学校ではこんなことをしてる」とか、いろんな情報に右往左往しているような状態です。

──園では具体的にどのような感染症対策を?

基本的な消毒手洗い検温マスク着用の徹底食事中はフェイスシールドをつける、などですね。これらは職員だけじゃなく、子どもたちにも徹底してもらいました。

──子どもたちにとってフェイスシールドなどは大変そうですね。

なかには嫌がる子もいますね。

ただ、園で使用しているフェイスシールドはプラスチック製の硬いやつではなく、ビニールっぽい素材でできた柔らかいやつなので、多少は扱いやすいのかなと。

──感染症対策の方針はTさんが決めたんですか?

あれもしたほうがいい、これもしたほうがいいって挙げだしたらきりがないので、園医さんと相談して方針を決めています。

私が「こうします!」って決めるよりも「園医さんと相談して決めました」って言うほうがみんな安心しますし、すんなり受け入れてくれると思うので。

コロナ禍での採用シーンの変化

31歳 幼稚園教諭5

──今は1月後半でちょうど採用シーズンですが、Tさんの幼稚園で新しい職員の採用予定は?

つい先日、正職員の募集をかけましたよ。

あとは半年ほど前に、パートさんも1人採用しました。

コロナによって状況が目まぐるしく変わるので、みんなで話し合ったりする時間をもう少し取りたいんです。でも、前回の緊急事態宣言時と違い、今は登園児も多いのでなかなか時間が取れず、現場で子どもたちを見てくれる人手がもう少し欲しいなと。

──なるほど。コロナ禍で採用シーンに変化はありましたか?

求職者さんの生活様式が変わったことで、職場選びの基準や希望も変わってきているような気がします。

「コロナの感染リスクを下げるためにフルタイムではなく週2くらいで働きたい」とか「夫が在宅勤務で家事をしてくれるので遅くまで働けます」とか。

半年前に採用したパートさんは「感染症対策がしっかりしているので、ここで働きたい」と言ってくれました。

──With コロナを見据えた転職になってきているんですね。コロナ禍の面接で、よくする質問や大事にしていることはありますか?

私たちの園でおこなっている感染症対策や働き方を説明して、「不安な点はないか」ということはしっかり聞くようにしています。

──なるほど。では最後にコロナ禍の転職において、求職者の方に何かアドバイスはありますか?

先ほどの話とも繋がってくるんですが、やっぱりコロナが心配であれば「どういう対策をしているか」「コロナに対してどういう方針か」といったところをしっかり確認したほうがいいんじゃないでしょうか。

園の規模などによって、取っている対応にかなり違いがあるんです。

入職してから「こんなことまで気を付けなきゃいけないなんて疲れる」とか「これだけの対策だと不安」なんてギャップを感じちゃうかもしれないので、コロナに対する考え方が、自分と合っている職場を選ぶのがいいんじゃないかと。

──これからはそういった職場選びも大事かもしれませんね。本日はありがとうございました!

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