【コロナ禍インタビュー】スポーツインストラクター 31歳 男性の場合

新型コロナウイルスの流行が医療・福祉・美容・ヘルスケア関連の仕事にどんな影響を与えているのか、当事者の声を聞くインタビュー企画。今回お話を伺ったのはスポーツジムのインストラクターを務めるHさん。コロナ禍の影響により会社が傾き、遂にはリストラが始まってしまったそうです……。

31歳 男性 インストラクター コロナ禍での変化

今回話を聞いたのは元柔道整復師のインストラクター

31歳 男性 インストラクター

※取材は感染症対策に十分に配慮し実施しました

──前回の取材時にはあまり聞けなかったのですが、スポーツジムは新型コロナウイルスの影響をすごく受けていそうだなと思い、改めてお話を聞きに来ました。

前回は柔道整復師からインストラクターに転職しときの話がメインでしたもんね。

31歳 男性 インストラクター経歴
前回の取材ではHさんの転職経験について詳しく聞きました。

柔道整復師だったHさんが、なぜスポーツジムのインストラクターに転職したのか──。

ぜひこちらの記事もご覧ください。

【転職者インタビュー】スポーツインストラクター6年目31歳/転職1回(柔道整復師→インストラクター)

ご想像の通り、スポーツジムはめちゃめちゃ大打撃を受けましたよ。

正直、会社も潰れちゃうんじゃないかってレベルで……。

──それは大変ですね……。今も苦境は続いているんですか?

そうですね。あまり回復の兆しは見えないです……。

──なるほど。1回目の緊急事態宣言から振り返りつつ、詳しく教えてください。

緊急事態宣言の影響で会員数は半減

──コロナの影響はどんなところに出てきましたか?

もう思いつく限り全部って感じですね。

売り上げはもちろんのこと、スタッフのモチベーションや会社の経営状況などなど……。

──やはり会員数にも大きな影響が?

そりゃもう。ひどい時期は会員さんの半数が退会しちゃった店舗もありました。

──半分も! ちなみになん店舗くらい展開しているんでしたっけ?

全国にだいたい100店舗くらいだったと思います。

よくある24時間利用できるスポーツジムです。

──なるほど。1回目の緊急事態宣言時はどのような対応を?

全店舗休業にして会費は免除に。

どの社員も基本的にテレワークで、会社から出された課題をやっていました。

──具体的な課題の内容を教えてください。

会社が購入した研修用動画コンテンツをひたすら見てましたね。

マネジメントについて」「Excelの使い方」「クレーム対応のノウハウ」など。

動画の内容は、現場スタッフやマネージャーなど立場によって変わるみたいです。

そういった自己研鑽以外だと、週に1回は各店舗が荒らされてないか見回りして、営業再開に向けた準備をしてました。

あとは定期的にオンラインミーティングもありましたね。

私はエリアマネージャーという立場なので、上長とは「営業再開したらどのように店舗戦略を進めていくか」を相談したり、現場のスタッフとは「今どうしているか」「困っていることはないか」など、雑談を中心にコミュニケーションを取っていました。

──テレワーク中も給与は変わらず支給されていたんですか?

ありがたいことに給与は満額支給されました。

アルバイトの子も、本来シフトに入る予定だった日数分(打刻システムに登録されている日数分)は満額支給です。

──アルバイトでも満額支給ってすごいですね! 緊急事態宣言が解除されてからは、どのような感染対策を実施しましたか?

ジムの利用中はスタッフも会員さんもマスクの着用を義務付け。会員さんには利用前にヘルスチェックシートの記入と提出をお願いしました。項目としては自覚症状や体温などですね。

うちのジムはスタッフを極力減らして月会費を安くしているので受付などもなく、会員カードを機械に通すことで自由に入館できちゃうんです。

なので翌日とかに入館履歴をチェックして、ヘルスチェックシートが提出されていなかったら個別に連絡して「次回も書かなかったらもう利用できませんよ」って注意したり……。

スポーツジムの感染症対策

──結構厳しいんですね。マシンの利用に制限などは?

マシンの利用に制限はないんですが、ランニングマシンやバイクは飛沫が懸念されるのでパーテーションを設置しました。

あとはいたるところに消毒用アルコールを設置して、スタッフがこまめに消毒したり、会員さんに自由に使ってもらったりしてました。

制限されていたのは、ヨガやダンスなどのスタジオプログラムですね。

プログラムの定員数を6割に制限して、プログラムとプログラムの間隔は換気のために45分空けています。

もちろんプログラム中もマスクは着用したままで。

コロナの影響はスタッフのメンタルにも……

31歳 男性 インストラクター2

──なるほど。なかなか大変そうですね。

自粛生活でストレスが溜まっちゃったり、利用者が少なくて暇だったりで、ある店舗のバイトスタッフたちがすごく荒れちゃってたんですよね。

シフトでめっちゃわがまま言ったり、社員がいないときにサボって漫画読んだり、自分のPCを持ち込んで作業したり……。

──売り上げ以外にも問題が出てきたんですね。

なので、その店舗のバイトの子一人ひとりと面談して「何がやりたくて入ってきたのか」「どんな仕事が好きなのか」などヒアリングして。

当たり前かもしれませんが、みんな掃除や入退会手続きじゃなくてインストラクションをやりたいんですよね。

やっぱり仕事にやりがいを見出せないと腐っていっちゃうんだなって、そのとき気付きました。

──コロナの影響でインストラクションの機会が減ってしまったんですね。

そうですね。会員さんが大幅に減りましたし、残った会員さんも接触を怖がってレクチャーを求めてこないので。

ただ、実は緊急事態宣言解除後の施策として「新規会員向けの初心者プログラムをやってください」って指示が、その店舗の社員から出てたはずなんです。

なのに、いざそういう指示を出されたら「こんなコロナ禍でやる意味あるんですか」とか「よその店舗はやってないのに、なんでうちだけやるんですか」とか不満を言ってたらしく……。

本来はやりたかったことのはずなのに、もう仕事に対しての意欲がなくなっちゃってたんですね。

──そこでエリアマネージャーのHさんが解決に向けて動いたと。

現場の社員からヘルプを出されたので、流石に見てられず……。

「新規会員向けの初心者プログラム」って本来は退会防止のための施策なんですが、私の中では完全に「スタッフのモチベーションの立て直し」が目的になってました(笑)。

──実際にどのようにしてモチベーションを立て直したんですか?

まずは「どんな環境が働きやすいのか」「どういうプログラムなら指導したくなるのか」を聞き出しました。

あとは、しつこいくらいコミュニケーションを取ってましたね。

それこそ一人ひとりに毎日電話して「調子どう?」とか「みんなが頑張ってるのを会議で報告したいから、今週の新規獲得数を教えて」とか。

とにかく「みんなの頑張りを見てるよ」ってことが伝わるようにしました。

──確かに頑張りをきちんと評価してくれる人がいるのは大事ですよね。

そうですよね。コロナ禍なのに、それを始めてからは継続率が伸びて退会率が大幅に下がったんですよ!

私が見始めたときはマシンをガッシャンガッシャンする音しか聞こえないような寂れた雰囲気だったのに、今では会員さんもスタッフもコロナ禍とは思えないくらい活気に溢れてます。

どんなキャンペーンよりも、ジム内の雰囲気作りが一番大事なのかもしれませんね。

──さすがエリアマネージャーですね! コロナ禍ではそのほかにもキャンペーンを打ち出したんですか?

コロナで遠のいた客足を取り戻すために試行錯誤しましたよ。

月会費2ヶ月半額とかくじ引きとかスタンプラリーとか。

でも正直、それほど大きな効果はなかったですね……。

2回目の緊急事態宣言でリストラが始まる

31歳 男性 インストラクター3

──2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発令されましたが、1回目の緊急事態宣言時との違いはありましたか?

2回目の緊急事態宣言では休業せず、引き続き感染症対策に気をつけて営業をしています。

でも一番の違いは、人件費削減のためにスタッフが削られているところですね。

──えっと……つまりリストラってことですか?

そうなります。

まず2回目の緊急事態宣言に入る1ヶ月前くらいに、予算組みをしていた人件費の上限額が減らされたので、アルバイトのシフトを削ることになったのが始まりでしたね。

次に勤務態度に問題のある契約社員が契約を打ち切られ……。

そして緊急事態宣言が発令されてからは希望退職者を募るようになりました。

──希望退職者には退職金などが出るんでしょうか?

一応出たみたいです。

名目としては「今後のキャリアステップを応援しますよ」という感じで、給料2ヶ月分の支給でした。

ただそれでも経営が苦しいらしく、今度は「あなた辞めませんか?」って、いわゆる肩たたきが始まりました。

その場合は退職金が4ヶ月分出るし、残った有休も買い取ってくれるみたいです。

──想像するだけで胃が痛くなります。そういう退職勧奨って拒否することもできるんですか?

「断ってもいいけど、次は退職金も有給買い取りもない状態で退職をお願いしちゃいますけど、どうします?」って交渉されると聞きました。

──怖いですね……。Hさんは声を掛けられなかったんですよね?

なんとか声を掛けられずに済みました。

でも全体で社員を半分くらいに減らす予定らしいので、残された側は業務負担も増えるし、今後は何を求められるのかと不安になるし、安心はできないですね。

──確かに人員を半分も減らしたら一人当たりの業務量は跳ね上がりますよね。

そうなんです。

それに今までは上からの要望に対して「こうしたい」とか「それは違うと思う」って意見を出せてたんですが、今後は首を切られるかもって思うと意見できないですよね。

──次は自分の番かもって思うと萎縮しちゃいますね。

現場の子からは「上の人たちは現場のことを何も考えてくれない!」って不満をぶつけられますし、かと言って現場の不満を解消しているだけじゃ売り上げは伸びないし……。

私自身、今後の身の振り方に悩んでいます。

──残った人の給与は減額されていないんですか?

減額されませんでしたが、今後は上がる見込みがないって言われています。

ちなみに冬のボーナスは4割カットで、次のボーナスは出せるか検討中らしいです。

──つらいですね……。

それに最近はすべての店舗でスタジオプログラムがなくなりました。

やっぱりスタジオプログラムってお金がかかるんですよ。

通常はスタッフが2人で足りるところ、スタジオプログラムがあると4人になったり、フリーの先生に委託したり。

ほかにもそのプログラムの製作者への使用料みたいなものも払わなきゃいけないので。

──スタッフのモチベーションがまた下がりそうですね。

コロナ禍での会員層の変化

31歳 男性 インストラクター4

──ひどい店舗は会員数が半分に減ったと話してくれましたが、今も会員数は回復せず?

店舗によって徐々に回復しているところもある一方で、減り続けているところもあるので、全体で見るとそれほど変わってないと思います。

──会員さんが増えている店舗と減っている店舗って何が違うんでしょう?

実施しているキャンペーンや雰囲気の違いもあると思いますが、一番大きいのは立地ですね。

やっぱり周りに競合店のない店舗が強いです。競合店が近くにあると会員さんが分散しちゃうので。

──なるほど。コロナ禍を経て、会員さんのモチベーションや利用目的などに変化を感じますか?

そうですね。まず、入会してもほとんど来ないような幽霊会員はどんどん退会してます。

一方でヘビーユーザーだった方は、一度は退会したけどまた戻ってきてくれてますね。

あとは大学生くらいの若年層がすごく増えました

──若い人が増えたんですね。それはなぜですかね?

私の予測でしかないんですが、リモート授業が増えたり遊びに行けなかったりで自分の時間が余っているからかなと。

あとこれは偏見かもしれませんが、10代後半から20代前半くらいの子のほうがコロナをあまり気にしてないのかな。悲観的になってないというか。

プライベートの変化と今後について

31歳 男性 インストラクター5

──コロナ禍でプライベートに変化はありましたか?

コロナ前は私生活が仕事に侵食されてたんですよね。

家でもずっと仕事してたり、ストレスで寝れなくて馬鹿みたいにお酒飲んで気絶するように寝たり。

でも今はわりと時間に余裕ができたので、自炊をしたりしっかり睡眠時間を確保できたり、人間らしい生活を送れてるなって思います(笑)。

そこだけはコロナに感謝してもいいかな。

──今回は悲観的な話が多かったと思いますが、転職を考えてはいないんですか?

考えはしたけど、今ではないかなと踏みとどまってます。

今回のコロナ禍で痛感したのは「これまで自分の力でやってると思っていたことは、会社が用意してくれたレールに乗ってるだけだった」ってことですね。

今回みたいにまったく前例のない境遇に立たされたときには、何も打開策が出てこなかったんです。

これまではなんとなくの雰囲気とか、前例に則ってやってただけだったんですね。

ここで逃げるように辞めるのは悔しいし、転職するなら「私はこれをやってきました!」って自信を持って言える実績を積んでからかなと。

スポーツジムの需要は今後もなくならないはずだし、むしろ世間はコロナ禍で健康志向が高まっていると思うので、今の仕事を頑張りたいです!

──素晴らしい志ですね! 本日はありがとうございました!

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