【コロナ禍インタビュー】生活支援員 30歳 男性の場合

新型コロナウイルスの流行が医療・福祉・美容関係の仕事に就いている方にどのような影響を与えているのか、当事者の声を聞くインタビュー企画。今回は、都内の福祉施設で働くRさんです。感染者が出てしまった際の施設の対応や、コロナ禍での結婚事情などを伺いました。

30歳 生活支援員 コロナ禍での変化

お話を伺ったのは、コロナ禍に結婚をした生活支援員

30歳 生活支援員 男性

取材はオンラインで実施。写真は取材中の様子をご家族が撮影し提供してくれました

──約2年ぶりですね。この2年間を振り返ってみてどうでしたか?

やっぱり新型コロナウイルスもあったので、仕事もプライベートも変化は結構ありましたね。

前回のインタビューではRさんの転職経験やプライベートについて詳しく話を聞いています。 こちらもご覧ください!

【転職者インタビューvol.10】生活支援員5年目28歳/転職1回(アパレル→生活支援員)

──前回から転職はしていないんですよね? 改めて今のお仕事の内容を簡単に教えてもらえますか?

障がいのある方を対象とした、福祉サービス施設で働いています。

施設が提供しているサービスは「就労支援B型」と「生活介護」の2つで、僕は生活支援員として生活介護をおこなっています。

基本的に利用者さんは成人の方です。

支援内容としては、障がい者向けのデイサービスですね。リハビリやレクリエーションなどの活動をおこなっています。

──ありがとうございます。次に、前回の取材からコロナの流行を経てどのような変化があったのかを聞かせてください。

コロナ禍でリーダーに昇進

30歳 生活支援員 経歴

──2年前と比べて、職場で変化はありましたか?

一応ちょっとだけ出世しました。

施設内で8グループに分かれているんですけど、そのうちの1つのグループリーダーに。

1グループにつき利用者さんが10〜15人、職員が4〜5人ずつくらい配置されています。

──昇進おめでとうございます! リーダーになって仕事内容は変わりましたか?

仕事内容はこれまでやってきた食事介助、排泄介助、リハビリ、レクリエーションなどに加えて、代表者会議に出席して意見交換をしたり、チーム内のシフトを調整したり、まあそういうリーダーっぽい業務が増えました。

──なるほど。それじゃあ給与も増えたのでは?

はい、少しだけ。

役職手当とかはないんですけど、基本給が1万円くらい増えましたね。

前回取材時の給与明細
30歳 生活支援員 給与明細 2年前
直近の給与明細
30歳 生活支援員 給与明細

例年なら今くらい(2〜3月)の時期に宿泊行事があって、その勤務分が残業代と夜勤代として入るんです。

それがプチボーナス的な感覚で嬉しいんですが、今年はコロナの影響で中止になったので、そこは寂しいですね。

──それは仕方ないですよね。コロナの影響は大きいですか?

そうですね。やっぱり何事も「これまで通り」ってわけにはいかなくて。

1回目の緊急事態宣言時は、基本的には施設の利用を控えてもらっていました。

──サービスの提供を停止していたんですね。困ってしまう利用者やご家族も多かったのでは?

クレームってほどじゃないんですけど「施設が利用できないと困ります!」っていうご相談は多かったです。

そういう場合は個別に話を聞いて、必要に応じて利用者さんを受け入れていました。

なので1日の利用者さんは1グループに2〜3人程度ってところでしたね。

──その間、職員は通常通りの勤務ですか?

いや、だいたい週2〜3日くらいは在宅勤務でした。

通常8グループあるところ、半分の4グループにして、現場の職員も半分以下に減らしていました。

──人数が極端に減って、仕事が大変になったりはしませんでしたか?

大変なことはなかったですね。むしろ時間を持て余しちゃって、仕事を探すのが大変でした(笑)。

ただ、利用者さん一人ひとりとしっかり向き合うことができたので、そういう部分ではいい機会だったなと。

「この利用者さんはこういうクセがあるんだな」とか「こういう表情のときはこういうことを考えているんだな」とか、いろんな発見がありましたね。

30歳 生活支援員 男性 2

──平時よりも一人ひとりに寄り添って対応できたんですね。在宅勤務の職員はどんなことをしていたんですか?

正直なところ「仕事」と呼べるようなことを家では何もできないので、自己研鑽の時間に当てられました。

スキルアップに繋がる動画を見たり、本を読んだり。

──その動画や本は会社から指定されるんですか?

いや、YouTubeで自分で探したり、なんでもいいんです。

それで一日の終わりに「今日はこの動画を見て、こんな勉強をしました」っていう報告を上げます。

まあ誰も言葉には出さないけど、実質休みって感じで捉えてましたね……。

1回目の緊急事態宣言中はずっとそんな感じでした。

──在宅勤務でも給料は変わらなかったんですか?

変わりませんでした。

僕もあまり詳しくないんですが、区から運営を委託されている施設なので、売り上げなど関係なく給与は保障されているらしいんですよね。

半公務員みたいな感じで。

──それは安心ですね! 2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発令されましたが、1回目との違いはありましたか?

1回目のときはサービスの提供を止めていたんですが、2回目の現在は完全に止めるのではなく利用回数を抑えてもらってます。

例えば、通常は週4〜5回のペースで通ってくださっていた利用者さんは、週2〜3回に減らしてもらうとか。

──なるほど。職員の働き方はどうでしょう?

在宅勤務はなくなったんですが、フレックス制度が導入されました。

ざっくり早番と遅番に分かれる感じですね。

あと感染リスクを下げるために車での通勤もOKになったので、僕は車通勤に切り替えました。

電車通勤の場合は向こう半年分の定期代がまるっと支給されるんですが、1月に半年分の定期代を受け取って、その翌月に車通勤の許可が出たんです。

なので、定期代およそ10万円と車通勤のガソリン代の二重取りでホクホクでした。もちろん会社も公認で。

30歳 生活支援員 男性3

──コロナ関連の補助金や慰労金などは給付されましたか?

たしか慰労金という形で給付されました。

うちの職場は感染者が出たので20万円でした。

「介護サービス事業所・施設等における感染症対策支援事業等及び職員に対する慰労金の支給事業」

介護保険による介護サービスを提供する全事業者を対象に、慰労を目的として最大20万円の給付がおこなわれた。

新型コロナウイルスに感染した利用者、もしくは濃厚接触者である利用者がいた事業所の職員には20万円、それ以外の事業所の職員には5万円が給付された。

──施設内で感染者が出てしまったんですね……。

そうなんです。利用者さんの一人が感染してしまって。

そのときは、施設を1週間ほど閉鎖しました。

──1週間の閉鎖は行政からの指示で?

そうですね。

感染発覚から3日ほどさかのぼって濃厚接触者を割り出し、該当者は施設にてPCR検査を実施しました。

──営業再開に向けて、施設内の消毒などはおこないましたか?

保健所や区からは「時間を空ければ消毒の必要はない」とのことだったので、業者を使っての消毒はおこないませんでした。

通所が始まってからは職員の手作業にて、手すり等できるかぎり施設全体を消毒しました。

──なるほど。それは大変でしたね……。

コロナ禍でなければ1週間の休みは嬉しいところなんですが、ちょうどその頃に自分も咳が出たり、だるさがあったり。

なんかもう、ベッドから起き上がることもできませんでした。なので、これは感染しちゃったかもなと。

PCR検査を受けて陰性だったときは、大学受験に合格したときよりも嬉しかったです。

──それは怖かったですね。Rさんは濃厚接触者に該当したんですか?

いや、濃厚接触者にはならなかったので、個人的にPCR検査を受けました。

区のコロナ相談所に状況を説明したら、無料で受けられました。

──無料で受けられるんですね! その後、施設ではどのような感染症対策を?

基本的なことしかしてませんよ。

職員も利用者さんもマスクの着用・検温・消毒を徹底です。職員一人ひとりに小型の消毒用のスプレーが支給されたので、気になるところはとにかく消毒しました。

施設に入る前に車椅子のタイヤやハンドルを消毒したり、施設内の手すりやドアノブを頻繁に消毒したり。

換気もしっかりしてました。30分おきくらいにこまめに。ちょっと寒いんですが送迎バスの窓も常に開放した状態にしていました。

あとは利用者さん同士がなるべく密にならないよう、気を配ってたくらいですかね。食事のときは席を離したり。

──介護現場は利用者さんとの距離が近いので、かなり気をつけなきゃいけませんよね。

利用者さんが感染してたら、僕たちも絶対に感染する距離ですからね。医療機関のように防護服を着るわけにもいかないし。

あと、そうだ! ご家族との接触もなるべく減らすために、介護記録用のアプリを職場に導入したんです。

なのでご家族からの引き継ぎや、こちらからの連絡事項などはそのアプリを介してやりとりしました。

それまでは手書きの連絡帳でやりとりしていたんですけど。

福祉施設の感染症対策

──少しIT化が進んだんですね。

最初は面倒臭いなーと思ったんですが、ご家族との連絡以外にも、勤怠管理や業務上の記録の入力・保管などもすごく楽になったので助かってます。

40代〜50代くらいの職員も最初は猛反発していたんですが、今ではみんな使いこなしていて業務効率が上がってますね。

──どうしても最初は抵抗感がありますよね。コロナが原因で退職した職員はいませんでしたか?

それはいなかったですね。辞めた人もいないけど入ってくる人もいないって感じです。

うちはいつも人手不足なので通年で求人を出しているんですが、コロナ禍はまったく応募がなく。

妻は医療福祉系の人材派遣会社に勤めているんですが、今は無資格の介護職を希望する求職者が例年の倍以上らしいです。

なのに、なぜかうちには少しも応募が来ないんですよね……。

コロナの影響で結婚式を2度も延期に

30歳 生活支援員 男性 4

──「妻」ということは、ご結婚されたんですね! 前回の取材時はまだ結婚してませんでしたよね?

あ、そうなんです。2020年1月に籍を入れました。

1回目の緊急事態宣言前ですね。ちょうど中国でコロナが話題になってた頃です。

歩いている人が突然倒れる動画とか、ゴーストタウンみたいになっちゃった街並みの映像とか。フェイク動画なのかもしれないけど、すごく怖かった記憶があります。

ある意味思い出深い年になりました……。

──ご結婚結婚式は挙げられましたか?

こんな状況になるとは思わなかったので、当初は2020年の8月に式を挙げる予定だったんです。

8月なので緊急事態宣言は明けていたんですが、それでもやっぱり結婚式なんて雰囲気にならないじゃないですか? 世間的にも僕らの心情的にも。

なので2021年の2月に延期したんです。

──でも、2度目の緊急事態宣言が発令されましたよね?

そうなんですが、実は緊急事態宣言が発令される数ヶ月前から諸々のスケジュールが合わなくて、結局2月から5月に再び延期したんです。

本当は1回しか延期できなかったんですが、ゴネにゴネてなんとかOKしてもらいました(笑)。

プランナーさんには感謝しかないです。

──結婚式の延期にあたって、料金は取られましたか?

当初予定していた日取りから1年以内の延期であれば無料でした。

もちろんコロナが理由の場合に限りますけど。

あと、延期じゃなくてキャンセルにする場合はお金を支払わなければいけなかったみたいですね。

延期するには100万円単位のお金がかかると思ってたので、すごく助かりました。

──それは良かった。では結婚式まであと2〜3ヶ月ですね!

そうなんですよ。あっという間です。

もともと準備は進めていたので、いまさら忙しくなるようなことはないんですが。

──素敵な式になるといいですね。結婚とコロナの流行を経て、普段の生活はどのように変化しましたか?

以前から同棲をしていたので、結婚を機に何かが変わったっていうことはそれほどないですね。

コロナでドタバタしていて結婚式もまだなので、それほど実感が湧いてないのかも。

変化と言う意味では結婚よりコロナの影響が大きいですね。

家にいる時間が長いので、たまに料理をするようになりました。それまでは包丁すらほとんど握ったことがなく、結婚前は完全に任せっきりだったんですが。

──おお、素晴らしい!

YouTubeで料理動画見てたら作ってみたくなったんです。

でも自分が興味を持ったものしか作らないのでレパートリーがめっちゃ偏ってます。

ジンジャーエール、レモネード、野菜ジュース、サングリアとか。

──ジュースばっかりですね(笑)。

料理とは言えないか……。

そのほかの変化で言うと、今までは都心で遊んでいたのが、田舎のほうで遊ぶようになりましたね。

車で静岡や千葉まで行って釣りをしてます。

30歳 生活支援員 男性 5

写真はRさん提供

──釣りですか! with コロナ時代にぴったりの趣味ですね。

どハマりしちゃって、平日も仕事終わりに夜釣りをしたり、出勤前の早朝3時から釣りをしたり。エクストリーム出社ってやつですね。

コロナの慰労金も釣り具に消えました。

──バイタリティがすごい……。では最後に、これから介護職で転職・就職を考えている人へアドバイスをお願いします!

もともと介護現場はどこも慢性的な人手不足なんですが、コロナの影響でそれがより顕著になっていると思います。

売り手市場なので、いい条件の職場にも転職しやすい状況なんじゃないでしょうか。

でも、だからと言って給与や福利厚生などの目先の条件で決めずに、いろんな面から総合的に判断してほしいですね。条件が良くても労働環境や人間関係が悪いと続かないし、身体も壊しちゃうので。

見学してみるなり、施設の口コミをチェックするなり、事前リサーチをしっかりするこをおすすめします。

──入職前のリサーチは大事ですね。本日は以上になります。ありがとうございました。

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