話を伺ったのは27歳の介護職員Hさん

──よろしくお願いします。最初に簡単な自己紹介をお願いします。
年齢は27歳です。新卒から介護職員として働いていて、今年で6年目になります。旦那さんと一緒に神奈川県に住んでいます。
──ありがとうございます。新卒から同じところで働いているんですか?
はい! ずっと同じ介護付き有料老人ホームで働いています。私が働くホームでは7年目や9年目の先輩もいますよ。
──そうなんですね。入居者さんの数はどのくらいですか?
今は35人くらいですね。入居者さんの介護度はそれほど高くなく、自立の方もいらっしゃいます。
うちのホームは1階が共用スペースになっていて、2階と3階が入居スペースなんです。
満床だと2階22人・3階22人が入居できるんですが、今は新型コロナウイルスの影響もあって入居を見送る方が多いです。
──なるほど。既に入居されている方の面会時間なども、コロナの影響で変わっているんですか?
変わっていますね。面会は1日15分、ファミリールームという部屋で同時に3人までという制限があります。
コロナ前は入居者さんのお部屋の中まで入ってOKでしたし、時間にも制限は設けていませんでした。
ワクチンの接種が進んだら*また変わるかもしれませんね。
気になる夜勤の業務内容──1ヶ月のシフトと1日のスケジュール
──では夜勤について教えてください。Hさんが働く有料老人ホームでは、シフトに夜勤が組み込まれているんですか?
そうですね。勤務形態は夜勤ありの2交替制です。
日中は早番、日勤、遅番の3種類があります。
──早番、日勤、遅番、夜勤それぞれの勤務時間を教えてください。
早番が7時~16時、日勤が9時半~18時半、遅番が11時半~20時半、夜勤が17時~翌10時です。
──夜勤は月に何回くらいありますか?
だいたい月に4~5回ですね。
これは「シフトカイゴ」というアプリなんですが……1ヶ月のシフトはこんな感じです。

──この「明け」は夜勤明けという意味ですよね?
そうです!
私が勤める有料老人ホームでは、夜勤明けの翌日が必ず休みになっています。
──その辺の決まりは施設によって異なるんですね。
はい。施設によっては夜勤明けの翌日にシフトが入ることもあるようです。
──夜勤では何時頃にどんなお仕事をされるんですか?
17時から勤務開始なので、30分前の16時半くらいにはホームにいますね。
17時から日勤の人からの申し送りを受けて、それが終わったら夕食の準備をします。
18時から20時にかけて入居者さんが夕食をとり、食事が終わったらイブニングケアをします。
──イブニングケアってどんなことをするんですか?
主に就寝に向けての準備ですね。着替えや歯磨き、トイレの介助などをおこないます。
就寝前の服薬のお手伝いもしますよ。
イブニングケアのあとは、みなさんお部屋で好きなように過ごされます。
──なるほど。夜間の見回りのような業務はありますか?
夜間は約3時間ごとに巡視をします。21時、24時、3時、5時におこないます。
巡視はお部屋を伺っての安全確認ですね。入居者さんがトイレに行くタイミングだったら介助をします。
あとは90歳以上の方もいらっしゃいますので、静かに寝ているように見えたときでも、呼吸をしっかりしているかを確認していますよ。
──明け方にはどんなお仕事をされるんですか?
午前6時からモーニングケアをします。歯磨きや着替えのお手伝いをしたり、顔を洗ったり身体を拭いたり。
7時から9時にかけて入居者さんが朝食をとって、9時半くらいに日勤の人へ申し送りをして、10時に退勤ですね。
夜勤の流れ

──イブニングケア、モーニングケア、巡視以外に夜勤特有の業務はありますか?
日勤の時間にできないような雑務をやりますね。
記録だったり備品の補充だったり消毒だったり。消毒は日中に使う物、使う場所に対しておこなっています。
あとは私が働く有料老人ホームには洗濯機があるので、日勤中にやりきれなかった入居者さんの洗濯や、スタッフの制服の洗濯をしていますよ。
夜勤ならではのことと言えば、日中よりも長く入居者さんとお話をすることが多いですね。
──どのタイミングでお話をされるんですか?
巡視でお部屋へ伺ったタイミングで、「今日はどんな一日だった」とかコミュニケーションをとることが多いですね。
──巡視は遅い時間におこないますが、起きている入居者さんもいらっしゃるんですか?
それが意外と起きている方が多いんですよ! 3時の巡視でも起きている方がいらっしゃいます。
──それは意外でした。
夜勤は勤務時間が長いこともあって、私たち介護職員も日勤よりゆっくり入居者さんに向き合ってお話ができます。
ホームの入居プランには「21時の巡視の際に長めにお話の時間をとる」というものもありますよ。
入居者さん自身も、一日が終わった夜の時間は安心してお話しされている感じがします。
──夜は大切なコミュニケーションの時間でもあるんですね。夜勤ならではのエピソードはありますか?
たまに入居者さんの激しい寝相を見れたり、寝言を聞けることがあります。巡視がある夜勤で働いているからこそ見られる一面ですね。
──入居者さんは35人とのことでしたが、夜勤の介護職員は何人体制なんですか?
入居スペースの2階と3階で、それぞれ介護職員が1人ずつ働いています。
ちなみにナースはオンコール対応です。
──各階に介護職員が1人ずつとなると、とくに新人の頃は緊張しそうですね。
新人が一人立ちするまでは先輩がOJTとしてつきますよ!
なので新人が慣れるまでは新人1人+先輩職員2人の体制ですね。
私も初めての夜勤は緊張しました……でも1人じゃないし、わからないことは先輩に聞けるので安心です。
私自身、新人の頃は先輩から「雑務は私に任せて。とりあえずフロアを見てくれればいいからね!」って言われてました。
──新人はどのくらいで夜勤を一人立ちするんですか?
入社したての4月は夜勤に入らず日勤で慣れてもらって、5月から夜勤に入ってもらいます。そして6月頃には一人立ちですね。
夜勤は2人体制なので、バディというか相方というか、組み合わせが大事なんです。経験が浅い若手が夜勤に入るときには、ベテランの人が必ず一緒に入るようにシフトが組まれていますよ。
休憩時間の過ごし方──何時間休む?何をする?

──夜勤は勤務時間が長いですが、休憩や仮眠の時間はどのくらいありますか?
仮眠時間はなくて休憩時間が1時間あります。
介護職員同士で時間をずらして、24時半~1時半か、1時半~2時半のどちらかで休憩します。
──休憩スペースはどのくらいの広さですか?
どのくらいかなあ……だいたい10畳くらいですね。
ソファとテーブルとイスがあって。休憩専用の部屋はなくて、普段みんながお昼ごはんを食べるスタッフルームでの休憩です。
ホームによっては休憩室が設けられている場合もあるようです。
──休憩中は何をして過ごすことが多いですか?
休憩中は相方の介護職員が入居者さんの対応をしてくれているので、軽くごはんを食べたあとは書類作業など自分の仕事を済ませちゃうことが多いですね。
なかには休憩中に30分だけ寝る人もいます。
──ほかの施設では「夜勤のスタッフ同士でお菓子交換をする」という話も聞きますが、Hさんの施設ではどうですか?
うちのホームでもお菓子交換をしてるときがありますね! 若い女の子同士とか。
でもいつもやっているというより、「これから仲良くなりたいな、親睦を深めたいな」ってときに職員同士でやっているイメージです。
仲良くなると反対にやらなくなっちゃいます(笑)。
夜勤前後の過ごし方と体調管理のポイント
──夜勤前の睡眠はどうしてますか?
前の晩は夜の24時頃に寝て、昼の12時くらいまで寝ます。たっぷり12時間睡眠ですね。
──夜勤は体力がいりますもんね。夜勤前の食事はどうしてますか?
お昼に起きるのでお昼ごはんを食べてゆっくり準備して……。
夜ごはんは食べずに出勤して、休憩時間にちょっと食べるくらいです。休憩時間に食べるものは出勤途中に買っていくか、家にあるものを持って行くかですね。
中には休憩時間中ではごはんを食べずに、夜勤明けの朝にがっつり食べる! って人もいますよ。
──なるほど。反対に夜勤明けの睡眠や食事はどうしていますか?
夜勤明けは家に着くのがお昼近くなんですが、なんだか「日中に寝るのがもったいない!」って思っちゃうんです(笑)。なのですぐには寝ないですね。
帰宅してお昼ごはんを食べて、自由に過ごして夕方から寝て、3時間後に一回起きて、夜ごはんを食べてまた寝ます。
働き始めの頃は、夜勤明けの次の日にお昼まで寝ちゃうこともありましたが、最近はこのルーティンで体内時計をリセットできるようになりました。
──夜勤明けに、自分へのご褒美があったりしますか?
お昼ごはんを贅沢にすることです!
いいごはんを食べたり、いいお酒を飲んだり、ちょっと高いものを楽しむことでモチベーションを維持できていますね。夜勤明けの楽しみです。
──楽しみがあるとより頑張れそうですね。夜勤明けはアクティブに動くほうですか?
コロナ前は出かけるほうでした。「せっかくお休みだし!」って思って、ばんばん予定を入れてましたよ。
夜勤あるあるなのかもしれませんが、明け方になるとランナーズハイというか、テンションが上がります。なので夜勤明けも元気な人が多いですね。
──そうなんですね。夜勤は勤務時間が長いですが、体調管理で気をつけていることはありますか?
もともと身体は強いほうなんですが、食事と睡眠を大事にしています。やっぱりちゃんと食べてちゃんと寝ることが大切ですね。
夜勤以外のシフトのときは、6時間は寝るように心がけています。
あとは体力を使う仕事なので、ゆっくりお風呂の湯船に浸かって疲れをとることも重要ですね。
夜勤の大切さ──入居者さんとご家族、ホームを支える重要なお仕事

──大変そうなイメージがある夜勤ですが、いいところを教えてください。
さっきお伝えしたように、入居者さんとゆっくりお話をできるところですかね。
日勤だと呼ばれたらすぐ動けるように中腰でお話することが多いんですが、夜だとお互いに腰を落ち着けてしっかり向き合えるので。それもあって私は夜勤が好きです。
あとはうちのホームでは夜勤明けが必ず休みなので、予定が立てやすいのもいいところですね。
──日中よりもじっくりお話できるのはいいですね。ちなみに手当ってどのくらい出るんですか?
1回の夜勤で5千円の手当が出ます。夜勤は月に4回くらいなので、合計で月に2万円ほどですね。
──なるほど。では夜勤の大変なところを教えてください。
そうですね……もともと夜型だったので、時間帯のキツさはそんなにありません。
周りからは「大変そう」とか「身体に良くないんじゃない?」とか言われることもあります。たしかに疲れはしますが、つらさは感じていないですね。
ただ夜間はナースがいないので、入居者さんになにかあったときの緊急対応が難しいと感じます。
夜間ではオンコールがありますが、ナースがいる日中よりも判断や指示をもらうまでに時間がかかることもあるので……。
──オンコールの頻度はどのくらいなんですか?
難しいですね……。入居者さんの状態が落ち着いている時期であれば、1週間に1度もかけないこともあります。
お看取り状態の方や転倒を繰り返す方がいらっしゃれば、その分頻度は上がりますね。入居者さんの状態によります。
高齢の入居者さんもいらっしゃって、何があってもおかしくない状況なので、オンコールがあるとは言え人数が少ない夜勤ではプレッシャーを感じることがありますね。
──実際に緊急を要する場面に遭遇したことはありますか?
ありますよ。転倒されて大量出血で救急搬送したり、巡視したら呼吸が止まっていたり。
これを聞くと不安に思うかもしれませんが「入居者さんが自分のおじいちゃんおばあちゃんだったら」と考えて行動すれば間違いはないと思っています。
オンコールをかけたとしても判断して行動するのはその場にいる介護職員なので、やっぱりプレッシャーはありますけどね。
──それだけ夜勤は責任のある大切なお仕事なんですね。
そうなんです。
夜勤は体力も要りますし緊急時にはとても責任の重い仕事ですが、夜勤がなければホームは成り立ちません。
夜勤のおかげで入居者さんは安心して生活できますし、ご家族も安心して入居を決めてくださっていると言っても過言ではないと思っています。
──夜勤はホーム、入居者さん、ご家族を支えているんですね。最後に、これから夜勤に挑戦しようと思っている方へメッセージをお願いします。
最初は誰でも慣れずに大変かと思いますが、だんだんと慣れてきます。
どうしても「身体に合う・合わない」の問題はありますが、睡眠や食事などの体調管理をしっかり心がけていただきたいです。
夜勤の勤務時間は長いですが、その分入居者さんのことを知れる時間や関われる時間も長いです。
それこそ入居者さんの寝相を見れたり、寝言を聞けたり、昼間よりもゆっくりお話できたり……というのは夜にしか経験できないことです。
次の日がやって来ることは当たり前ではありません。だからこそ入居者さんが当たり前のように次の日を迎えられ楽しく過ごせるように、私は夜も全力で動いています!
一緒に頑張りましょう!応援しています。
──ありがとうございました!