「スポーツとの関わり」を軸に就職先を決めたSさん
話を聞いた人
理学療法士2年目のSさん
理学療法士として働きながら、休日は中学校の野球チームでコーチを務める。料理が好きで、初任給で買ったのは低温調理器。
選考に落ちても芯を貫いた就活
──Sさんはもともと整形外科クリニックへの就職を志望していたんですか?
整形外科クリニックに限らず、整形外科が強い総合病院も探していました。長年野球をやっていたので、スポーツに関わりたいなと思って。
──「スポーツとの関わり」が軸だったんですね。就活を始めたのはいつ頃?
大学4年生の7月末から始めました。病院を探したり見学に行ったりして、一番最初に面接を受けたのが8月の頭ですね。
──それが今のクリニックですか?
いえ。最初は大学の附属病院や別の整形外科クリニックなどを3つ受けていたんですが、落ちてしまって……。周りがどんどん内定をもらっていくので正直焦りました。
──でもその後も「スポーツと関わる」という軸は変えずに?
はい。改めて探して、今のクリニックを見つけました。クリニック内に運動するスペースがあって、見学時には運動指導をしているところも見れたので「ここならやりたいことができるかもしれない」と思って応募しました。
結果的に10月末に内定をもらえて。軸をブラさずに就活を続けて良かったです。
膝からスタートした1年目の業務
──入職してから研修はありましたか?
大々的な研修期間はありませんでしたが、接遇面の注意など基本的なことを初めに教わりました。業務内容に関しては、OJTのようなかたちで随時教えてもらいました。
大きい病院だと研修プログラムに沿ってやると思うので、そこがクリニックとの違いのひとつかなと思います。
──なるほど。では4月に入職してからはすぐに現場に?
理学療法士の免許が届くのがゴールデンウィークくらいなので、それまでは先輩の見学がメインでした。あとは「免許が届いたら、膝のリハビリを担当するからね」って言われてたので膝の勉強をしましたね。
──デビューが「膝から」なのは何か理由が?
若干ですけどリスクが低いということと、膝って“全部”あるんですよね。
──全部?
半月板も骨も靭帯も、関節を包む関節包もある。例えば半月板みたいに「膝にはあるけどほかの関節にはないもの」はありますが、「ほかの関節にあって膝にはないもの」ってないんです。
まずは膝をしっかりリハビリできれば、ほかの部分にも応用していけるってことで、膝からスタートしたみたいです。
──論理的だ……! ほかに1年目ならではの働き方はありましたか?
クリニックが「ゆっくりで良いから、しっかりやっていこう」という方針で。1人の患者さんに対して通常20分のところを、40分かけてリハビリさせてもらいました。
1日の流れはこんな感じですね。
──話を聞いていると、1年目でも働きやすそうなのが伝わってきます。
先輩はみんな親身に教えてくれるので、人間関係で悩むこともありませんでした。
ただ僕の教育担当の先輩が、見た目がいかつい……? 体格が良い人で(笑)。入職した初日が初対面だったんですが「おっ!」って思いました。実際はすごく優しいですよ!
クリニックで働く特徴、就活の心構え
──クリニック勤務の特徴ってありますか?
クリニックでは週に1〜2回通うような患者さんを担当することがほとんどなので、病院と比べると回転が速いなと感じます。肩を診て、20分後に膝を診て、さらに20分後には腰、次は首、みたいに切り替えが求められるなと。
──患者さんの数が多く、それぞれ痛む部分も違うので幅広い知識も求められそうですね。
そうですね。さまざまな対応が求められるなと感じます。
友人の話だと、大きい病院ではフロアで疾患が決まっていて、配属先によっては「心臓系だけ診る」「呼吸器系だけ診る」という場合もあるみたいです。
──特定の疾患の経験を深めるか、幅広い疾患の経験を身につけるか、という違いもあるんですね。就活を頑張る後輩へメッセージをお願いします。
僕みたいにやりたいことが明確にある人は、しっかり貫いたら良いのかなと思います。
反対に何をしたいかわからない人もいるかもしれませんが、実際に働いてから見えてくることもあると思います。まずは飛び込んでみて、そこからどうするか考えても良いのかなと。
リハビリでは、治療してみてダメでも「この方法では良くならない」ってわかること自体に意味があるんですよね。就活も同じだと思います。まずは行動ありきかなと!
患者として通っていたクリニックに就職したMさん
話を聞いた人
理学療法士2年目のMさん
中学時代に接骨院の先生に憧れ、調べるうちに理学療法士という職種を知る。働くモチベーションは、愛車と愛猫をかわいがること。
病院だけじゃない? 広がる理学療法士の就職先
──Mさんは自身が通っていたクリニックに就職したんですね。
高校の野球部時代には湿布をもらいに行ってましたし、受験で腰が痛くなったときにもお世話になりました。
ある日、院長先生に「どんな学校に行くの?」って聞かれて「理学療法士の専門学校に行きたいんです」って言ったら「受験が終わったらうちでアルバイトしなよ!」って誘われて。
──院長先生からのスカウトだったんですね! 就職先を決める際、ほかのクリニックや病院は考えませんでしたか?
考えました。2年目になった今でも考えます。「病院で働いてたら?」とか。
そもそも専門学校1年生のときは、自分を含めて「就職するなら大きい病院」と考える人が多かったです。大きな病院には理学療法士協会の大御所の方がいて、学ぶ機会があるのも理由のひとつかもしれません。
それが4年生になる頃には、病院以外を希望する人が半分くらいになっていました。
──希望が変わっていったのはなぜ?
僕たちの代で言うと、コロナの影響が考えられます。実習に行けなくて病院とのコネクションが作れなかったり、病院の採用人数が減ったり。
あとは理学療法士の人口が増えて、就職先が広がったことも関係しているかなと思います。クリニックや介護施設以外にも、歯科医院や動物病院で働く理学療法士もいるんですよ。
──本当に幅広いんですね。中でもMさんがアルバイト先のクリニックを選んだ決め手は?
院長先生の人柄がすごく良かったのと、自分自身がお世話になった恩もあるので「働かせてください」って思いもありました。
あと、働いてみて思うんですが、就職先を探すときは実働時間と給与形態をチェックすると良いかなと。
「社会人ってしんどい」と感じた1年目
──アルバイト歴が長いですが、入職後に研修はありましたか?
実は入職前から研修がありました。国試の合格発表があった3月半ばから、先輩のリハビリを見学したり業務の流れの説明を受けたりしてました。
──では4月からはさっそく業務に?
そうですね、先輩に付いて「この患者さんの膝曲げてみて」とか慣れていきつつ。20年目の女性が教育担当でした。
──働いてみての感想は?
社会人しんどいなって(笑)。親が当たり前のように働いて家事もしててすごいなって思いましたね。
入職したての頃は、疲れちゃって休みの日でもずっと寝てました。1年目はとくに気を張ってるのもありますし。
──1年目の仕事で印象に残っていることはありますか?
アルバイト時代からよく見かけてた患者さんがいるんですけど、「なんか調子がおかしいな」って日があったんですよ。ろれつが回ってないというか。
院長に報告して救急車を呼ぶことになって。あとから聞いたら脳梗塞だったらしくて、倒れる前に発見できたのが良かったみたいです。
Mさんが思うクリニックで働くやりがい、1年目がやるべきこと
──クリニックで働いてみて、やりがいを感じることは?
やっぱり患者さんから「痛くなくなった」とか「リハビリをして、これができるようになったよ」とか小さな達成を報告してもらえることですね。
クリニックに来る患者さんは、日常生活は送れるうえで「腰が痛い」「肩が痛い」という方が多いです。元気に話せる患者さんが多い分、コミュニケーションが大切になってくるなと感じます。
──患者さんごとに接し方を変えたり?
そうですね。患者さんの人柄や、その日の雰囲気を感じ取りながら「この人はワイワイ楽しく喋るほうが良いな」とか「今日はリハビリの話を持ちかけよう」とか意識しています。自分も美容院で「あんま喋りかけてほしくないな」って思うときもあるので(笑)。
──最後に、1年目として働く後輩へアドバイスをお願いします。
職業柄、専門的な知識を知りたがるというか、マニアックなところに目をつけがちです。知識をつけるのも大事ですが、1年目だったらカルテを完璧に読めるようになるのが成長につながるんじゃないかなって思います。カルテに書かれている患者さんの情報を、しっかり理解できるようになってほしいですね。
そのためにも大学や専門学校で使った教科書を今一度読み返してほしいなと。大事なことがたくさん書いてあるので!