やりたい“看護”は見つかった? 看護師1年目のリアル

就活や新卒1年目は誰もが通る道であり、そこには不安や悩みがつきものです。先輩たちは大変な時期をどう過ごしたのか、異なる選択をした2人の2年目看護師に話を聞きました。今回は休職や転職を経てやりたい看護を見つけた先輩の話です。

就活と新卒1年目のリアル 看護師編(素材:PIXTA)

話を聞いた人

2年目看護師Kさん プロフィール写真

看護師2年目のKさん

小学生の頃、祖母の急な入院にショックを受け落ち込んでいたところ「私のところに来ていっぱいお話ししてくださった」看護師さんに憧れ、その道を志すことになったKさん。しかし、大学卒業後に入職した病院を4ヶ月で退職することに。それから1年、紆余曲折を経て秋からは新たな一歩を踏み出す。

教育体制を重視して入職を決めたはずが

──Kさんは地元の九州の大学を卒業後、東京の病院に就職したんですね。コロナ禍で遠距離就活は大変だったのではないでしょうか?

Kさん:インターンシップには参加できなかったんですけど、面接は現地まで受けに行けたので、それほど大きな影響は感じませんでした。5月末に願書を出して、6月半ばに面接、7月頭には内定をもらいました。

看護師Kさんの就活メモ

──就活のときに重視したポイントは?

新人教育の内容が充実しているかどうかと、あとはお給料とか……。私の場合、第一志望の病院に就職している先輩が大学にいたので、その方に人間関係のことだったり、いろいろお話を聞いたうえで「ここに行きたいな」と思っていました。

──どんな病院でしたか?

病床数300床以上の急性期病院で、同期も150人くらいいました。

──大きな病院だったんですね。確かに規模が大きいほど教育体制がしっかりしていそうな印象はあります。4月からはどのように仕事をしましたか?

最初は週1で研修があったんですが、4月の後半からは受け持ちが始まって、入院も取ってみたいな感じになって……。最初は先輩に付いてシャドーイングさせてもらっていたんですけど、4月後半にはもう一人で動いてました

*先輩に同行し、仕事の流れを観察して学ぶ方法

自立までのスピード感にギャップ

──自立までが早いですね。だってまだ20日も働いてないですよね?

はい、思ったより早かったです。「わからないことがあったら聞いてね」って言われてるんですけど、もうほとんどわからないので(笑)。技術もそんなにないなかで、先輩に一回一回声をかけに行くのはやりづらかったと言えばやりづらかったですね。夜勤が始まると(患者さんを)何十人も持たされるので「えっ!」って感じでした。

──夜勤はいつから?

4月の終わりに一回入って、そのときはシャドーイングだったんですけど、次からはもう受け持ちが始まりました。

──基本的に「一回で覚えて」という感じなんですね。

そうです。

──ギャップは感じましたか?
はい。私としては一つひとつの技術を理解してから次に進みたいなっていう思いがあったので。研修は内容も充実していたし、すごくしっかり教えてくださったんですけど、病棟での新人育成は自分が思っていたスピードの倍以上の速さだったので、そこはすごくギャップを感じました

新人看護師Kさんの一日
技術に自信が持てない一方で受け持ちはどんどん増え、Kさんは次第に追い詰められていく

動悸、食欲不振、夜勤中に思わず涙

──最初に辞めたいと思ったのはいつ頃でしたか?

5月の終わりくらい……? そうですね、そのくらいだったと思います。

──何か決定的な出来事はありましたか?

これっていうのはないんですけど、本当に病院に行くのがだんだんだんだんつらくなってきて。ご飯がぜんぜん食べられなかったり仕事に行く前に動悸がしたりする日が続いて。なのに受け持つ患者さんが増えて余裕もなくなって。そういうことが重なって「もう辞めたいな」って。

お休みの日も心がぜんぜん休まらなかったです。仕事のことを延々考えて一日中引きこもって病んでる感じだったので、今思うとひどい状態だったと思います。

──「辞めたい」という気持ちはいつ伝えましたか?

6月上旬に深夜勤で苦手なチーフとペアになって。始業前に情報を取るためにパソコンを見るんですけど何も頭に入ってこなくて。情報がぜんぜん取れていないまま、“発表”が始まって。

──“発表”?

動き始める前にその日のスケジュールと受け持ち患者さんのどういうところに気をつけて看護するかを発表しなくちゃいけないんですけど、そのチーフにはいつも詰められていて。

今考えたらおかしかったなと思うんですけど、その日は情報も取れていないし言われていることも頭に入ってこないし。当然きついことも言われて……。それで泣いてしまって。

チーフもさすがに「あれ?」って思ったみたいで、その場でカウンセリングを勧められました。だから初めて「辞めたい」って伝えた相手はカウンセラーさんですね。カウンセリングを受けて、その日から休職することになりました。

看護師Kさん 取材中の様子
その後、Kさんはカウンセラーに紹介してもらった心療内科で適応障害と診断された

退職交渉は難航、やむを得ず使った奥の手とは?

──退職に向けての話し合いはどのように進みましたか?

休職中も師長さんと定期的に面談があったんですが、初めに「辞めます」って伝えたときは「また違う道でも頑張れるよ」って言ってくださっていたんですけど、その次の面談からコロッと変わって「今辞めても行くところがないでしょう?」って引き留めがすごかったです。

──なぜ態度が急変したんでしょうか?
看護部長さんとかもっと上の方から何か指示があったのかもしれません。何度か「辞めたい」と伝えていたのに、8月から「日勤だけでも」って復職する方向で話を進められていたので、やむを得ず退職代行を使うことにしました

看護師Kさん 取材中の様子
「正常な判断ができないのではないか」と病院がKさんの意志を尊重しなかった結果、代行サービスに頼ることに

──最近増えているサービスですね。どうやって利用したんですか?

(復職が目前に迫った)7月末にネットで調べて依頼しました。料金は2万円ちょっとだったかな? 代行業者から病院に「本人に連絡しないように」って連絡が行くので、それ以降は病院側と一切やりとりすることなく退職できました。寮に住んでいたので病院の人が来るんじゃないかって怖かったんですけど……。誰も来なかったです。

──気持ちのほうは?

もうすっきりしてました(笑)。寮を出てとりあえず実家に戻ったのが大きかったかもしれないです。

1年前の自分にけりをつける

──その後はどうしました?

夏の間は実家で過ごして、秋には以前からお付き合いしていた方と同棲することになり、そこから仕事を探し始めました。

以前から興味があった美容クリニックに8社くらい応募したんですが、内定は一つももらえませんでした。不合格通知の中に「ほかの候補者の方のほうが経験が豊富だった」っていう理由が何度かありましたし……。それにやっぱり「すぐに辞められてしまうのでは?」って思われているんだろうなとは思いました。

──それで病院に戻る決意を?

はい、美容には経験を積んだうえでまたチャレンジしようと。あと、漠然と──。理由はわからないんですけど「もう一度病棟で働きたいな」って考えるようになっていました

──病棟でやり残したことがある、という気持ちがあったんでしょうか?

技術もあまり習得できてないままというのもあったし、本当に中途半端なところで辞めてしまったので「また病棟に」と思いました。本当になぜかはわからないんですけど。

──病院はどうやって探しましたか?

(医療従事者向けの)病院の口コミサイトで人間関係とか教育の仕方を確認したうえで、見学にも行きました。今働いている病院は、声を掛け合ってお仕事をされていたり、見学者の私にも声を掛けてくださったり、病棟もせかせかしている感じがなくて、温かい雰囲気だったのが決め手になりました

看護師Kさん 取材中の様子
思えば最初の病院は「インターンシップに参加できなかった」というKさん
やはり実際に自分の目で職場を確かめることがポイント?

──4月から仕事を始めてみてどうですか?

スピード感はすごく合ってるなと思います。前の病院は技術の自立を急かされてる感じがあったんですけど、今の病院は先輩が一回一回しっかり見てくれて「ゆっくりでいいから、しっかり身に付けていこうね」って。受け持ちも最初からたくさん持たされることもないので、余裕を持って仕事ができています。

周囲の目は気にせず、自分と向き合ってほしい

──それで、あの、せっかく良い病院に出会ったのに、脱毛クリニックに内定をもらったそうですね。

あっ、そうです(笑)。

──やっぱり美容への思いが捨てられず?

そうですね、なかなか諦めきれず。去年転職活動をしているときに求人を出していなかった脱毛クリニックが出しているのを見つけて「ハッ!」と思って。

それに最近「やっぱり看護師が嫌なのかな」って思ったりもして。自分の中で大切にしていた患者さんと関わる時間もずっとイライラしていることもありますし、ここまで環境が良い病院でこう思ってしまうなら「病棟で看護師するのがもうあれなのかな」って。

──面接はスムーズに進みましたか?

はい、去年めっちゃ落ちてたのが嘘みたいにスムーズに進みました

私ともう一人候補者の方がいて、2対1のオンライン面接でした。志望動機と美容を目指したきっかけ、美容で働くうえで大切なことは何だと思いますか、趣味はありますか、ホームページはどんなところ見ましたかっていうことを聞かれました。

看護師Kさん 取材中の様子
Kさんが美容看護師を目指したのは、自分で脱毛や二重術を経験して「きれいになれる手伝いをできるのがすごい!」と思ったから

──ちなみに美容クリニックと病院では待遇は違いますか?

月給は美容クリニックのほうが良いんですが、ボーナスは病院のほうが多いので、年収で考えたらそんなに大きな差はないんじゃないかなと思います。

──最後に新人さんに対してアドバイスはありますか?

自分の体調の変化は気にしてほしいなと思います。自分のためでもありますが、無理して働いてもミスを起こせば患者さんに迷惑をかけてしまう可能性があるので、体調管理はしっかりしたほうがいいなって思います。

──時間を巻き戻すことはできないのですが、振り返ってみてもっと早めにSOSを出せば良かった、休んでおけば良かったと思うことはありますか?

そうですね、親身になってくれるプリセプターの方もいたのでもっと早く相談すれば良かったなと思いますし……。

私の場合「休みたい」「辞めたい」って言えなかったのは、周りの目を気にしていたんだと思います。恥ずかしくて言えないって。私が言うことではないのかもしれないんですけど、しっかり働いていくうえでは自分のやりたいこと、自分と向き合うことが大事なんじゃないかなと思います。

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