目次
1.プリセプター制度(プリセプターシップ)とは?
プリセプター制度(プリセプターシップ)とは、ある程度の経験を積んだ先輩ナースが、新人を一定期間マンツーマンで指導にあたる教育制度のことです。先輩看護師を「プリセプター」、新人看護師を「プリセプティ」と呼びます。新人が臨床現場に出てすぐなど、ごく初期の段階での実施が効果的だとされています。
プリセプターは、自分が担当する患者さんの看護ケアをプリセプティとともにおこないます。そのなかで看護技術やアセスメント、対人関係、自己管理の方法など、広範囲にわたって手本を示していきます。プリセプティはプリセプターを模範として看護や業務を実践し、フォローを受けながら知識や技術の定着を目指します。またプリセプターには、一人で悩みを抱え込んでしまいがちな新人ナースの一番身近な相談相手としての役割も期待されます。
2.プリセプターはいつから任される?
プリセプターになるために必須の資格や認定などはありません。厚生労働省がまとめた新人看護職員研修ガイドラインによると、プリセプターを含む新人指導の担当者(実地指導者)は「看護職員として必要な基本的知識、技術、態度を有し、教育的指導ができる者であることが望ましい」とされています。
そのため、医療機関ごとに独自の基準を設けていることがほとんどです。一般的には、おおむね3年以上の経験を積んだ看護師が任されることが多いようです。
新人看護職員研修ガイドラインには、実地指導者に求められる能力として次の5つが挙げられています。
実地指導者に求められる5つの能力
- 新人看護職員に教育的に関わる能力
- 新人看護職員と適切な関係性を築くコミュニケーション能力
- 新人看護職員の置かれている状況を把握し、一緒に問題を解決する能力
- 新人看護職員研修の個々のプログラムを立案できる能力
- 新人看護職員の臨床実践能力を評価する能力
3.プリセプターは通常業務をこなしながら教育・指導もおこなう
プリセプターとして新人ナースの教育・指導を任されることは、一人前の看護師として期待されている証。しかし、プリセプターは教育・指導をおこないながら、同時に通常の業務もこなさなければなりません。
どんなに忙しくても新人に目を配り、仕事を教えていく役割を担っています。患者の命を預かる責任と後輩を育てる責任の両方を持つことになりますから、これまで以上に緊張感を抱えることでしょう。ただでさえ多忙な看護師にとって、プリセプターもこなさなければならないのは、とても大変なことだといえます。
ただ、新人教育の責任はプリセプターだけが負うものではありません。新人看護職員研修ガイドラインでも「部署スタッフ全員が新人を見守り、幾重ものサポート体制を組織として構築することが望ましい」とされています。
プリセプターのフォロー役として教育担当者やアソシエイトナースが配置されている職場もあります。教育担当者や看護師長に助言を仰いだり、うまくいっているプリセプターに相談してみるなど、周囲を巻き込みながら解決策を探ることが大切です。
また、院内のプリセプター向けの研修に参加したり、各都道府県の看護協会や教育機関などが実施する実地指導者研修プログラムを活用したりすることも助けになるでしょう。
4.プリセプターに求められる指導力
ひとくくりに新人といっても、仕事の覚えが早い人もいれば遅い人もいます。ですからそれぞれのペースに合わせて教育・指導をおこなう必要があります。
ほかのプリセプターが担当している新人は飲み込みが早く、一度教えたことをしっかり身につけているのに、自分が担当している新人はマイペースといったこともあるでしょう。そんなときには「ほかの新人はできているのに!」「この程度はできて当たり前なのに!」といった思いから、プリセプティに強く当たってしまいがち。しかし、厳しく責めるだけではプリセプティが萎縮してしまい、かえって業務に悪影響が出る可能性もあります。
そのような場合にはコミュニケーションを積極的にとりながら、一つひとつの課題をどうすれば解決できるのか、一緒に考えていくのがよいでしょう。とくに新人が初めてミスをしてしまったときは、ひどく落ち込んでしまうもの。そんなときは同じ失敗を繰り返さないための対策を考えるとともに、精神的なフォローも重要です。
5.プリセプターは新人と共に成長できるチャンス!
指導者の立場とはいえ、プリセプター自身も看護師となって3~4年程度。ひと通りの業務スキルや知識を身につけ、ようやく仕事に慣れてきた頃でしょう。この段階でプリセプターとなり、新人教育を担当することによって気付くこと、見直すべきことはたくさんあります。
プリセプティにわかりやすい指導をするために学び直したり、普段の処置の方法や器材の取り扱い、患者さんへの応対などを一緒に振り返ったりすることは、自身の知識・技術のさらなる向上につながります。
また、新人に近い立場から教えるので、互いに理解しやすく助け合えるというメリットも。担当するプリセプティのできることが増え、一人前に近づけば指導力も評価されます。そして何より、チームの一員として頼られる存在になることに大きなやりがいを感じるでしょう。
一般的には約1年という限られたプリセプター期間のなかで、後輩と良い関係を築き指導していくことは、プリセプター自身も成長するチャンスです。二人三脚で一歩ずつ進んでいきましょう!