「この子がいるから今の自分がいる」5歳までしか生きられないと告げられた我が子を41年介護している母親が伝えたいこと

家族として日常的な世話を担う“介護経験者”にインタビューするシリーズ。今回は出生後5歳までしか生きられないと宣告された難病の子どもを介護してきた、母親であり看護師の方に話を聞きました。

「この子がいるから今の自分がいる」5歳までしか生きられないと告げられた我が子を41年介護している母親が伝えたいこと

介護経験者のプロフィール

介護経験者のプロフィール

誕生と同時に始まった介護生活

3歳頃のたみちゃん
3歳頃のたみちゃん

──娘さん出産時のお話から聞かせてください。

看護師として働いていた病院がある静岡県で、第一子となる長女を出産しました。1,650gで産まれ、コルネリア・デランゲ症候群という難病であることがわかり同県内にある小児病院のICUに移りました。

*成長遅延や乏指症、特有の顔貌などの特徴があるほか、先天的に心臓や胃腸の機能障害がある疾患で発症頻度は1〜3万人に1人といわれ、推計患者数は約4,000人

今は1,000g未満の超低出生体重児でも生きられるとされていますが、40年以上も前のことなので厳しい状況でした。小頭症、口蓋裂、難聴があり、原因もわからない状況に私だけでなく家族中に衝撃が走りました。

出産当時は看護師の仕事を辞めていたのですが、以前勤めていた病院で出産したこともあり、元同僚もみんな心配していましたね。

──医師からは何と説明されたんですか?

症例も少ないため、生きられても5歳くらいまでだろうと。

──そこから41年。手術などを経て良くなっていったのでしょうか。

口蓋裂のため授乳・水分摂取もうまくできない状態でしたが、5歳前に手術をしてからは少しずつ食べられるようになりました。私もなんとかこの子に食べさせてあげたくて、食べられそうなものをすりつぶしたり、ゼラチンと混ぜて与えたりしましたね。

ゼラチンって温まると溶けちゃうでしょう。だから持ち運びのときにも保冷剤を使うなど注意が必要で、寒天で固めたり自分なりにできることを必死にやっていましたね。

その後先天性心疾患のため経過を見て手術をすることになっていました。でも、食べられるようになったからか、次第に痙攣も少なくなり医師も様子を見てみようということに。手術しても生きられる保証はないと言われた子が、生きようとしている。

私は母親としてそのことを理解したんです。この子の生きる力を信じて見守ろうと思いました。

──たみちゃんの生命力ですね。状態が落ち着いてからはどのような生活に?

その頃には長男、次男も産まれ家の都合で千葉や都内を転々としていました。18歳で特別支援学校を卒業して、今は10代後半〜64歳までの方がいる生活介護事業所に、年間を通してほぼ休むことなく日中は通っています。

関わるヘルパーさんの数は10人以上! 一日の流れ

──今はたみちゃんとふたり暮らしとのことですが、一日の流れを教えてください。

今は大体こんな感じです。

介護の一日

──朝と夜では違うヘルパーさんですか?

そうですね。1ヶ月に10人以上のヘルパーさんに来てもらっていて、朝夕は4〜5人で交代、寝る前は2人で交代、土日はまた違う4人にお願いしています。どうしても誰も来られないときは私が家にいて看ています。

外出後も家にモニターがあるので、ヘルパーさんとどう過ごしているかなどいつでも見られます。

一番お世話になっているのは、ヘルパーさん!

甥っ子姪っ子と遊ぶたみちゃん
甥っ子姪っ子と遊ぶたみちゃん

──ヘルパーさん以外に関わりのある職種はいますか?

月に1回内科の訪問医の往診を受けているので、医師、看護師に加えて、家では横になっていることが多く目ヤニが溜まりやすいので眼科医に来てもらうほか、年に2回歯科を受診しています。また、生活介護事業所では介護福祉士がいます。

──いろんな職種との関わりがあるなかで、一番お世話になっているのは?

やはりヘルパーさんですね。「たみちゃんが看たい!」と言って長年来てくれる方もいるんですよ。みんな「たみちゃん! たみちゃん!」ってかわいがってくれるんです。

あと、これまで利用したことがなかったんですけれど、数年前私が骨折したことや、もしも自分がいなくなったら……と考えるようになったことをきっかけに、最近ではショートステイも利用する準備をしています。少しずつ、家以外の場所や人に接する機会を増やしていこうと思って。

介護があったから自分が変われることを知った

──介護・育児による長期のブランク後に復職されています。不安や大変さもあったことと思いますが。

そうですね。たみちゃんが10歳頃までは命に関わるような痙攣もあり、何度救急車に乗ったかわからないほどでした。でも、痙攣もなくなり、積極的に食事も摂れるようになったことで私も復職へと踏み切れました。

今では、たみちゃんぜんぜん休まないんですよ!(笑)施設通所するようになり20数年休んだのは過去数回くらいかな? たみちゃんも私の仕事をずっと応援してくれているように感じます。

私が帰宅後、家事やら仕事やらで忙しくしていると、「いつ話かけてくれるのよ?」って表情でたみちゃんが私のほうをじっと見ているときもあるけれど(笑)。

──復職後は訪問看護ステーション所長、看護部長や区議会議員など幅広いご経験を積まれています。

介護の経験をしたおかげで、自分が何をすべきか見えてきた気がしたんです。手探り状態で始めた介護、誰にも相談できる人がいなかった環境、そんな経験があるからこそ自分は何をすべきか考えて動き、いつの間にかいろんなことをしていました。

──ものすごいバイタリティーを感じます。

自分がやりたいこと以外にも、周りから「明石さんやってよ!」と頼まれることがあって何でも引き受けていったっていうのもあります。「なんで私?」って思うこともありましたけどね(笑)。

でも、人間って生まれながらにやるべきことを何か持って生まれてきているように思うんです。それはたみちゃんから教わったし、周りの人からも教えてもらいました。

──介護でつらかったこと、良かったことを教えてください。

良かったことばっかりよ(笑)、今思えばね。たみちゃんが10歳くらいまでは一人で抱え込んでいたこともあって、「何でこんなことになったんだろう」とか回避したい気持ちがあったんだけれど、10歳過ぎたあたりから「この子と一緒にいるから私は変われるんだ」って思うようになったの。

──たみちゃんの存在が原動力になったんですね。

たみちゃんと一緒に生きていくんだって思ったら、この子といろんなことやりたい! って思い始めてね。自分の人生の中に常にたみちゃんがいて、気づいたら看護部長やら区議会議員やら訪問看護やらいろんな仕事につながってた。どれ一つとっても無駄なんてなかったし、たみちゃんがいたから今の自分がいると思ってます。

──たみちゃんや明石さんからパワーをもらえるので、周りの人がいろんなことを頼む気持ちがわかります。

たみちゃんと生きていくなかで、困難があることがあたり前だったからね。困難を乗り越える強さや課題から逃げないことを学んだ気がするの。私が元気にしているとね、たみちゃんはとっても嬉しそうにニコニコするのよ。私もたみちゃんが元気だから仕事を頑張れる。

出産・育児期に訪問看護なんて存在しなくて一人で抱え込んでしまって、あのときこんなサービスがあればって思い続けてきたからこそ、「訪問看護を自分がやろう!」って今にもつながっているんだと思う。

笑顔のたみちゃん
食への興味が強く大好物はカレー。
料理番組がお気に入りのたみちゃん。

ヘルパーさんへ伝えたいこと

──ヘルパーさんに要望はありますか?

これまで嫌な人って一人もいなくて感謝ばかり。強いて言うなら担当変更するときは前もって言ってほしいことかな。たみちゃんは突然知らない人が来ると人見知りしちゃうし、引き継ぎの期間も欲しい。

以前は同じ人が長く勤めてくれたけれど、ここ数年は人手不足からか人の移り変わりが以前より多くなりました。誰でもいきなり対応できる子というわけではないので、自分でたみちゃんの介護マニュアルを作っています。

マニュアルだけではわかりにくいことや細かい注意点もあって、一人ひとりにじっくり教えたいのですが、私も働いているので難しいのが現状です。なので、なるべく前任者と十分な引き継ぎをおこなってくれるとありがたいなと感じています。

あとは、家族が長い時間付き合って最善と思ったケア方法をまずは受け入れてほしいです。経歴が長いと自己流のケア方法がある人もいるけれど、まずは家族のリクエストに耳を傾けて試してみてほしい。信頼関係ができあがってからいろいろ提案してほしいなと思います。

──ヘルパーさんに感謝していることはありますか?

やっぱり時間どおりに来てくれること! だからこそ一人で抱え込まず、働いたり自分の仕事や交友関係も保てて子どもにとっても良い循環ができていると思います。

同じように家族のケアをされている方へ

──今、明石さんと同じご経験をされている方にメッセージがあれば。

情報をとにかく集めてほしいですね。40年前と違って今は探せばたくさんの情報が出てくるでしょう。私も数年前ね、コルネリア・デランゲ症候群の家族会があることを知ったの。

同じような境遇の人はいます。だから絶対に孤立しないで友達を作って輪を広げていってほしい。40年前は本当に何もなかったけれど、今はネットやSNSですぐにつながれるし、医療も介護も充実している。一人で抱え込んでいた時期も決して無駄にはならないけれど、時代は変わった。いろんな人やモノ、サービスを活用してほしい。

そして、この人と一緒に生きていて楽しいって感じてほしいな。

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