密着した人
保育士 鈴木涼太さん
人に興味があり、生まれてすぐの赤ちゃんから幼児になるまで長期的に成長が見られると思い、保育士になることを決意。経験を問わず自分のやりたい保育に挑戦できる環境に惹かれ、心羽えみの保育園石神井台に入職し6年目。現在は3〜5歳のクラスを担当している。
▼動画で密着インタビューを見る!
【9:15】出勤
取材当日の出勤時刻は9時15分の遅番で、徒歩で出勤します。通勤時はラフな格好で、出勤したらすぐに着替えます。この日はプール開きということで、水着と濡れても良い上着に着替えてきました。

着替え後は職員室で連絡事項を確認してから、園児たちのにぎやかな声が響く保育室へ向かいます。
勤務先の保育園では、0〜2歳までがすくすく・ぐんぐんクラス、3〜5歳までがわくわくクラスと分かれており異年齢合同保育をおこなっています。

まずはほかの先生たちや看護師との申し送りです。園児の出席状況や予定の確認などをしたあとは、朝の会を始めます。
【10:00】朝の会

朝の会では挨拶、歌に続き、係の確認をおこないます。園児たちは異年齢で構成されるグループに分かれており、毎日違う係や日直が任されます。
【10:15】プール

園児たちとプールに入る準備をします。着替えが終わった園児を集めてケロポンズの「エビカニクス」を踊る鈴木先生。しかし、園児は誰も踊っていない……! 心が折れそうな状況ではありますが、そこには元気に踊り続けるプロの保育士さんの姿がありました。
プールには、レベルや目標に合わせて園児自身が選んだコースごとに入ります。今年初となるプールではしゃぐ子どもたちのかたわら、「プールは外気温と水温を合計して50度にならないと入れないので入水は中止です……」と、鈴木先生。
不満そうな表情を浮かべる園児もいるなか、代わりにすぐさまスライダーと、水を張った大きなたらい付近での水遊びを提案します。

まだ水に慣れていない子たちへは控えめに水を掛け、少し慣れている子や泳げる子たちは思いっきりスライダーを滑らせてあげるなど、発達に応じた遊びを促します。
【12:00】午睡
プールが終わった園児たちは順次昼食をとり、先生はその間にプールの後片付けです。何十人も入れそうな大きなプールも、「都度片付けて、毎日水を替えて清掃しています」とのこと。
昼食を終えた子たちが再び保育室へ戻ってくるタイミングで、入眠誘導に移ります。まだ眠らなさそうな子たちを誘って、本の読み聞かせを始めました。

すでに寝ている園児もいることから、少し離れた場所で声のトーンを落としての読み聞かせ。取材している大人まで眠気を感じてきました。
その後は泣いている子や、なかなか眠れない子の元へ行くなど状況をよく見て、声をかけたり抱っこしたりと忙しそうです。

先生にお腹をトントンとされると、不思議なことに皆まどろんでいきます。にぎやかだった部屋も次第に静かになり、あたりを見渡すとトントンしている先生たちばかり。左右同時に別の子をトントンしている先生までいました。
【13:00】昼休憩

13時になると、休憩を終えた先生と交代して昼休憩に入り、園児と同じ食事をいただきます。
【14:00】スタッフミーティング

すやすやと気持ちよさそうに眠る子どもたちの脇で5〜6名の先生が集まり、午前中の活動内容や気になった園児の様子などを共有します。
【15:00】おやつ

昼寝が終わると、ダイニングルームに移動しておやつの取り分けをします。この日のおやつはパンナコッタです。
【15:30】室内遊び

昼寝用のコットをみんなで片付けたあとは、室内遊びをします。大きなマットと大縄を取り出し、ダッシュや縄跳びでたくさん体を動かします。
「子どもの”好き”を掴む引き出しの多さが強みです」との言葉どおり、園児たちは夢中になって遊びに興じていました。
【16:30】帰りの会〜自由遊びタイム

クラスの半分ずつに分かれて帰りの会を始めます。歌や明日の係の確認、予定などを園児に伝え、閉会後は残っている園児と自由遊びです。
自由遊びの間は、ほかの先生がついていない子どもたちに話しかけたり、教室内の掃除をしたりと臨機応変に動きます。
18時近くなると、残っている子どもたちを集めて紙芝居タイムが始まります。この日は恐竜の話を2つ読み、最後に延長保育の園児たちを階下のダイニングルームへ誘導します。
【19:00】退勤
帰りの会終了後の17時前後に園児も先生の数も少なくなります。保育室の掃除と、残っている先生たちと翌日の予定を確認したら職員室へ向かいます。週に1回出勤する公認心理士と子どもの様子や保護者との面談内容について共有をしたら、着替えにロッカーへ。

19時頃、勤務終了です! お疲れ様でした!
園ならではの魅力と心がけていること
主体的に行動できる環境がある
鈴木先生に、園ならではの魅力や保育への想いを聞いてみました。
「子どもの主体性を大切にすることはもちろん、保育士も主体性を持って動けるところは、園ならではの点かと思います。自分がやってみたいと思う保育や遊びに挑戦させてもらえる環境があるほか、臨床発達心理士でもある園長や公認心理士、看護師などの専門スタッフがアドバイスをくれたりサポートしてくれたりするところが魅力です」
実際に園児に遊びを次々と提案し、園児が目を輝かせて先生と一緒に遊んでいました。
「異年齢保育では、体を使う遊びなどでは年上の子が勝ってしまうこともありますが、ゲームの説明を年下の子にしてあげるなど良い影響もたくさんあります」
遊んでいる子たちを見ると同じ遊びを異年齢の子同士が楽しんでいて、中には遊びで勝った子に対し「こぶし(5歳)だから!」と言っている子もいましたが、年齢関係なく話す姿もそこかしこで見られ、異年齢保育ならではの刺激や学びが得られそうでした。
上から威圧的にならないように
保育をするうえで心がけていることはあるのでしょうか。
「ただでさえ大きい(背が高い)ので、子どもたちに何か伝えるときも上から物を言っているような、威圧的な態度にならないよう心がけています」

「あと、子どもたちには、園の目標でもある“自立と自律”をサポートすることを意識して接しています。1歳頃から自分でエプロンが着けられるようにするとか、物の管理は園児自身がおこなうように教えています」
保育士に求められることと今後の目標
保育士は子どもの健康や安全を守るため常に気を配り、一緒に遊ぶのに体力も使います。毎日の保育で疲れやストレスを感じることはないのでしょうか。
「どんな仕事でもストレスは感じると思います。それを“何かのせい”にしないことが肝心だと思っています」
ストレスに関しても、他人や環境のせいにすることなく原因と対処法を自分なりに考察することを大切にしているようです。
保育士にとって必要なこととは?
「学び続ける姿勢と主体性だと思っています。今後少子化の影響により保育園の数は過剰になると予想され、生き残る保育園とそうでないところが出てくることが考えられます。従来の『子どもを見ていればよい』という考えでは生き残りは難しく、保育士が学び続け主体的に動く必要性を感じています」
鈴木先生は、読書や園でおこなわれている専門職によるセミナーを通してインプットし、保育の場で実践し結果を考察するという学習方法をとっているそうです。
「思うような結果にならずやめてしまうのではなく、なぜそうなったのかを考え、またチャレンジするようにしています」
学びにも保育にも自らが考え行動することを大切にしている鈴木先生。最後に今後の目標を聞きました。
「保育の場におけるICTの導入を進めていきたいです! 保育園はまだICTが普及しているとは言い切れません。でも、そのうち子どもたちのほうがデバイスやテクノロジーに強い時代がやってきます。職員の間で苦手意識を持たず便利なものは取り入れて、保育の現場と労働環境の改善につなげていくことを目指しています」
▼動画では子どもたちの賑やかな声とともに、元気な保育をおこなう鈴木先生の様子が見られます! ぜひご覧ください