気候に応じて勤務地を選ぶ? 看護師界の渡り鳥「トラベルナース」の働き方を聞いた

就労形態だけでなく働く土地をも自由に決めて働く看護師、「トラベルナース」。今回は日本縦断を目標に働く看護師の男性Cさんに、トラベルナースになった経緯と働き方、見知らぬ土地で働くうえでの心構えを聞きました。

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トラベルナースってどんな働き方?

トラベルナースとは、有期雇用で場所や時間を自身で調整しながら働く看護師のことです。働きたい場所を自由に選べるほか、就労した先々で観光を楽しめたり、働くタイミングやシフトなども決められたりするのが特徴です。1970年代から1980年代にかけて、アメリカで季節的に発生する看護師不足を補うため、一時的に就労する看護師を受け入れたことをきっかけに普及しました。日本では「応援ナース」とも呼ばれています。

就労するためには人材紹介会社に登録後、勤務地や給与など希望条件に合う施設や病院に応募します。応募条件には、病棟での勤務経験が3年程度必要とされており、内定が出ればアメリカの場合は6〜13週程度、日本の場合は6ヶ月などの有期契約を結んで働きます。

>トラベルナースに関する詳しい内容はこちらの記事でチェック

ドラマ化される「トラベルナース」とは? 働き方とメリット・デメリットを経験者に聞いてみた

トラベルナースとして日本縦断中のCさん

群馬県在住のCさんは翻訳の仕事から看護師に転職し、7年間病棟勤務を経験しました。3年前から看護師の仕事をしつつ日本中を見て回りたいという夢を叶えるため、トラベルナースに。これまでの働き方や就労先、そしてトラベルナースのメリットやデメリットを聞きました。

Cさんのプロフィール

就労期間や勤務地、給与は?

──トラベルナースはどのような働き方をするのでしょうか?

Cさん:基本的には6ヶ月単位で雇用先と直接契約を結んで働きます。3ヶ月のところもなかにはありますが、自分の場合6ヶ月の契約がほとんどです。契約期間が満了したらまた次の就労先を探して移動します。

──お仕事探しはどうやっているんですか?

派遣業ではないんですが、仲介会社がいるのでそこを経由して過疎地や離島などの応募先を探しています。自分の場合、勤務地や施設形態を重視して選んでいます。応募後はオンラインで面接して、だいたい1ヶ月後には勤務開始という流れですね。

──応募にあたって必要とされる条件はありますか?

基本的に3年程度の臨床経験が求められています。診療科目は問われませんが、経験上複数の診療科がある病棟での勤務が望ましいんじゃないかなって思っています。現場では即戦力が期待されるので。

──研修などもあるんでしょうか?

2〜3日くらい研修のようなものはありますが、以降は一人で業務を任されます。すぐ戦力になれるよう、早く業務や施設について把握しなければならないのですが、毎回最初の1ヶ月間くらいは慣れるまで大変です。

──引越しや家はどうしているんですか?

住むところは就労先が借りているアパートや寮があるので自分で探す必要はありません。引越し費用に関しても、金額は赴任先ごとに違いますが5〜10万円程度支給されます。自分の場合、実家に荷物を置いているので、車で運びきれるだけの荷物を載せて引越しています。

──期限なしの正職員と比べて、給与面での違いはありますか?

ちょっと高いくらいですが、正職員に与えられる福利厚生やボーナスがないので、年収ベースでならすと同じくらいかと。過疎地など人が集まらない土地は賃金が高めなんですが、沖縄や離島などは人気なので高待遇ではないです。

順調なスタートを切るもコロナによる影響が……

──もともとは翻訳のお仕事をされていたそうですが、なぜ看護師になろうと?

翻訳を4年くらいして30歳になったとき、柱となるような仕事に就きたいって思ったんです。翻訳は人と接しない仕事だったので、やるなら人と接して直接リアクションを受け取れる仕事がいいなと思って探していました。医療や福祉は仕事としてなくならないし、意義も感じられたので看護師を選びました。

──いつ頃からトラベルナースになろうと思っていたんですか?

看護師になってから7年間は病棟の急性期医療に携わってきました。本来の目的だった、人と接してリアクションを受け取るということが果たせて、業務にも飽きてきたんです。せっかく資格も取ったし、今度は資格を活かして日本各地を見て回りたいと思い始めました。

病院の中で透析とかオペ室とかやったことのない分野に挑戦するか、トラベルナースになろうか悩んで、辞める数ヶ月前にトラベルナースになろうと決意しました。

──職場が嫌だという気持ちはなかったんですね。

それまでの人生とはまったく違うことを経験させてもらい、道を広げてもらったので不満は一切ありませんでしたね。最初の職場には感謝しています。

インタビューを受けるCさん
資格を活かすことと、日本中を見て回るという目的が果たせるトラベルナースになったCさん

──日本縦断を目標とされていますが、最初に選んだ勤務地は三宅島です。

普通に考えれば沖縄か北海道から順に……って感じだと思うんですが、最初だったのでもし就労先が合わなくてもすぐに戻ってこれる距離にしようと思い、三宅島を選びました(笑)。

──トラベルナースとして初めての勤務はどうでしたか?

就労経験のない特別養護老人ホームで、シフト制勤務でした。物品の所在や、利用者さんの情報についてなど、わからないことだらけでしたが、想定内だったのでとくに悩むようなことはなかったです。同僚も利用者さんも受け入れ慣れていたので、普通に接してくれましたね。

──三宅島の次に選んだのが大分県ですね。

三宅島で半年ほど病棟勤務から離れていたので、ブランクにならないようまた病棟で働けるところを探していました。日本縦断計画いよいよ開始というところで、土地と交通のアクセスの良さで大分を選びました。そこまで都会ではなかったのですが、それまで島にいたのでコンビニやチェーン店があるだけで衝撃でした(笑)。

──順を追って北上するのかと思いきや、その次の勤務地は兵庫県と関西圏になっています。

最初は四国あたりで探していたんですが、求人がなくて。関西圏にはほとんど行ったことないし、いいかなと思って決めました。ここは未経験の療養型病院でした。

──土地勘がないばかりか、未経験の施設形態で苦労はありませんでしたか?

大分でも兵庫でも同じようにトラベルナースとして働く人はいたので、一人だけの不安やストレスはなかったですし、関西弁で気持ちが和みました。療養という形態に関しては、一人で受け持つ患者数が2倍になったことや、一人で夜勤を担当しないといけないことは大変でしたね。看護のスキルに関して困ったことはなかったです。

──そこからいったん、群馬の実家に戻ったんですね。

兵庫にいた頃にコロナが流行り始めて、他県からの看護師受け入れに厳しい時期が続いたんです。なので他県への移動はできなかったんですけど、ちょうど勤務先の病院で人手が足りていなかったので、半年期間を延長してもらって1年いさせてもらいました。

だんだんコロナが落ち着いてオリンピックが開催されるとなったとき、選手村で働きたいと思い、東京の選手村に通うために地元である群馬に戻りました。選手村では、各国の選手ごとに合わせた食事や飲料の提供など看護業務以外に携わっていましたが、一緒に働くスタッフが体調を崩したときは、看護師として呼ばれることもありましたね。

インタビュー中のCさん
コロナによる影響で思いがけず契約期間を延長したCさん

──これまた珍しい経験をされたんですね。そこからまた再開した先が沖縄県にある久米島です。

まだ沖縄行ってないし、これから冬だし暖かい所で過ごそうと思ったことと、賃金面がほかより良かったので選びました。同じ島でも、三宅島と違ったのはコンビニとスーパー、ドラッグストアがあったことです。チェーン店があるだけで物価が統制されますので(笑)。

トラベルナースのメリット・デメリット

──トラベルナースのメリットは何でしょうか?

就労先が合わないなと感じても、半年とか期限付きなので半年頑張れば終わる。期限があるから頑張れるというのはメリットかと思います。病棟会や研修など煩わしいものもないですし。

あとはなんと言っても行く先々で地域の人と触れ合えて、ローカルな文化や行事が見られる。各地の元気な人に出会えるというのは楽しいですよ。

──では、デメリットは?

赴任当初は何もわからない状態なので、どこに行っても最初のストレスは生じることですかね。

相手のシャッターを開ける努力が必要

──トラベルナースをするうえで必要なことはありますか?

応募条件では臨床経験3年程度とかありますが、それ以外にも人と人との関わりがどうしても発生するので、合う合わないはあります。地域によっては心のシャッターを閉ざしている人が多いところもありますが、自分できちんと相手のシャッターを開けようと努力できるかが重要かと。

一緒に働く人や、その土地で暮らす人とのコミュニケーションを避けて過ごすつもりなら、トラベルナースはしないほうがいいと思っています。半年は働くのだから、自分がその場を楽しもうとする姿勢は大事ですね。心を開かなくても過ごせるけど、「そこへ何しに行ったの?」ということになっちゃうので。

インタビューに答えるCさん
人見知りがないわけではないが、毎回打ち解ける努力は欠かせないという

──見知らぬ街での生活を始める前に下調べは入念にしますか?

ほとんどしないですね。サイトで調べても情報が古いこともあるので、とりあえず現地入りして入り浸れそうなお店を探して現地の人に情報をもらいます。

──地元の人との関係をせっかく築いても、また次の所へ赴任となると寂しくないですか?

それはもちろんあります。地元の人に「もっといてよ」って言ってもらえたこともありました。別れは毎回寂しいですが関係が続く人とは離れても続きますし、いつまでいたとしても、離れるときは絶対に寂しくなるので。

──今はトラベルナースを休止してコロナの宿泊療養施設で働かれています。今後また再開予定はありますか?

早ければ年内(2022年10月現在)、遅くても年始あたりには再開しようと思っています。久米島で暖かい冬を過ごしてみて、暑いより寒いほうが好きだったと改めて気づいたので、今度は北海道に行きたいです。

──最後に、トラベルナースを目指している人にメッセージがあればお願いします。

とりあえず一歩踏み出すのが大事ですね。考えるよりも動き出したほうがわかることもあるので。悩んでいるよりも大変じゃないし、動き出したら意外とやれるよって言いたいです。

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