1. 准看護師とは?
看護や診療の補助を通して医療を支える
准看護師は医師や歯科医師、看護師の指示のもと、看護や診療の補助をおこなう専門職です。
准看護師の誕生は第二次世界大戦後にさかのぼります。戦後復興のなか病院の整備が急ピッチで進められ、そこで働く看護師も多く必要とされました。しかし当時は高校へ進学する女性が少なく、高卒資格が必要な看護師は思うように増えなかったことから、学歴要件を中学校卒業に緩和した准看護師が創設されたのです。
厚生労働省の調査によると、准看護師の就業者数は約28.5万人です。男女共に減少が続いていますが、男女比で見ると男性の割合がわずかに増加しています。
准看護師と看護師の違い
准看護師と看護師の大きな違いは免許と業務の進め方です。看護師は国家試験の合格を経て厚生労働大臣から免許を受けるのに対して、准看護師は都道府県試験の合格を経て都道府県知事から免許を受けます。
准看護師と看護師では要求される能力の水準が異なります。日本看護協会の「看護業務基準」によると、看護師には「科学的根拠に基づき、看護を計画的に実践する基礎的能力」が、准看護師には「医師、歯科医師、又は看護師の指示のもとに、療養上の世話や診療の補助を、対象者の安楽を配慮し安全に実施することができる能力」が必要とされています。
そのため「保健師助産師看護師法 第六条」にも定義されているとおり、准看護師は自らの判断で業務をおこなえず、必ず医師や歯科医師、看護師の指示を受けなければなりません。また、年齢や経験に関わらず准看護師から看護師へ指示を出すことはできません。
准看護師 | 看護師 | |
免許 | 都道府県知事の免許 | 厚生労働大臣の免許 |
学歴要件 | 中学卒業 | 高校卒業 |
要求水準 | 医師・歯科医師・看護師の指示のもと、療養上の世話や診療の補助を実施する能力 | 科学的根拠に基づいて看護を実践する能力 |
業務の進め方 | 医師・歯科医師、看護師の指示が必要 | 自らの判断で業務をおこなえる |
看護師について詳しくはこちらの記事で解説しています。
2. 准看護師になるには?
都道府県知事認定の准看護師免許が必要
准看護師として働くには、各都道府県で実施される試験に合格して准看護師免許を取得しなくてはなりません。
准看護師試験を受験するには、中学校卒業の場合は准看護師養成所で2年または高校の衛生看護科で3年の課程を、高校卒業の場合は准看護師養成所で2年の課程を修了する必要があります。
准看護師養成所には全日制と定時制があります。養成所によって異なりますが、全日制の養成所では週3日、定時制の養成所では週5日授業をおこなうケースが多く、空いた時間に働きながら資格取得を目指すことも可能です。
なお、全国の准看護師養成所は日本准看護師連絡協議会のページで確認できます。
>日本准看護師連絡協議会|全国の准看護師学校養成所一覧
准看護師試験の概要
准看護師試験は各都道府県で年に一回、2月上旬〜中旬にかけて実施されます。都道府県によって試験日が異なるため、同じ年に複数の都道府県で受験することも可能です。受験地の要項をよく確認して願書を提出しましょう。
- 10月〜12月:願書等提出
- 2月上旬〜中旬:試験日
- 3月上旬〜中旬:合格発表
准看護師試験の出題内容は都道府県によって異なりますが、次の科目から1問1点で全150問が出題されます。
- 人体の仕組みと働き
- 食生活と栄養
- 薬物と看護
- 疾病の成り立ち
- 感染と予防
- 看護と倫理
- 患者の心理
- 保健医療福祉の仕組み
- 看護と法律
- 基礎看護
- 成人看護
- 老年看護
- 母子看護及び精神看護
そのほか、准看護師試験に関する最新情報は日本准看護師連絡協議会のページからご確認ください。
>日本准看護師連絡協議会|これから准看護師を目指す人
准看護師試験の合格率の推移
准看護師試験の過去5年間の合格率は96〜99%と高い水準で推移しています。看護師国家試験と比べると受験資格を得るまでの期間も短いことから、資格取得のハードルは比較的低いと言えます。
准看護師から看護師になるには?
准看護師から看護師になるには、2年制の看護師養成所での課程を修了し、看護師国家試験に合格しなくてはなりません。2年制の看護師養成所には全日制、定時制(昼間・夜間)、通信制の3種類があります。
全日制、定時制の看護師養成所は、准看護師資格があれば受験可能です。ただし中学卒業後に准看護師になった人の場合、3年の実務経験が必要になります。また、通信制の看護師養成所の受験には、准看護師資格と7年の実務経験が必要です。
3. 准看護師の仕事内容
准看護師と看護師で業務範囲に大きな違いはありません。勤務先や配属先によって異なりますが、医師や歯科医師、看護師の指示のもと、バイタルチェック、手術・診療の補助、カルテの記入などをおこないます。ただし、准看護師養成所の教育内容に看護計画立案が含まれていないことから、看護計画立案は看護師の役割となります。
准看護師にできること・できないこと
できること | できないこと |
・バイタルチェック ・点滴・注射・採血 ・食事・排泄・入浴介助 ・手術・診療補助 ・カルテの記入 など |
・自らの判断で業務をおこなうこと ・看護師に指示を出すこと ・看護計画立案 など |
4. 准看護師の勤務先
准看護師の勤務先は7割が病院・診療所といった医療機関で、それに特養や老健などの介護保険施設が続きます。勤務先を問わず、看護師と准看護師では待遇が異なるため、仕事を探す際には労働条件をよく確認しましょう。
なお、看護師と准看護師の割合を施設別に比較すると、准看護師比率が高いのは介護保険施設や診療所、准看護師比率が低いのは訪問看護ステーションや病院であることがわかります。
*社会福祉施設:有料老人ホームや認知症グループホームなどの老人福祉施設、保育所や児童養護施設などの児童福祉施設が該当
病院
准看護師の4割は病院で働いており、看護師と同じように医師の診療補助や患者の世話を担います。病棟の場合、基本的な看護技術を身に付けられることや夜勤で手当が上乗せされることが魅力といえるでしょう。ただし、病棟では看護師一人ひとりが自律して職務に当たることが求められるシーンが多いため、応募要件を正看護師に限定している求人もあります。
診療所
准看護師の3割は診療所で働いていており、診療前の問診や検査の説明、採血、注射、点滴など一般的な診療補助を担います。小さな診療所では受付や会計、清掃などの雑務が業務に含まれることもあります。診療所の9割が無床診療所のため、基本的に外来・日勤のみという働き方になります。医師から直接判断を仰ぎやすい環境にあるため、病院より「准看護師可」の求人は多い傾向にあります。
介護施設
病院や診療所を除いた残りの多くの准看護師は介護施設で働いています。介護施設の場合、バイタルチェックや服薬管理、薬の塗布、喀痰吸引、往診・受診の付き添いなど、利用者の健康管理全般を担います。必要に応じてほかの介護職員と協力して利用者の入浴・食事・排泄の介助をおこなうこともあります。利用者の要介護度や医療依存度、夜勤やオンコールの有無は施設によって異なります。高齢化にともない施設数は増えているうえ「准看護師可」の求人も多いため、希望に合った仕事を探しやすいでしょう。
保育園
看護師と同じく准看護師も保育園で働くことができます。看護職員として、園児の健康管理や感染症の予防、職員(保育士)や保護者に対する指導などをおこないます。また、保育園で働く看護師または准看護師は1施設につき1名まで「保育士」とみなすことができるため、保育(補助)が業務に含まれることがあります。
5. 准看護師の働き方
准看護師の一日
病棟勤務の場合、仕事の流れは看護師と変わりません。詳しくは「看護師の一日」で解説していますので、こちらをご参照ください。ここでは准看護師比率の高い介護施設や診療所での一日の仕事の流れを紹介します。
准看護師の休日
勤務先が病院や介護施設の場合、休日は不定期となります。おおむねシフトで4週8休や、月9休とする場合が多いようです。診療所の場合は、休診日に当たる日曜に加え、月曜〜土曜の間にシフトで1日休みをもらい、完全週休2日とするのが一般的です。
6. 准看護師の給料
准看護師の月収・賞与・年収の相場
厚生労働省がおこなった「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、准看護師の平月給は29万6,200円、賞与は62万7,300円、年収は418万1,700円です。
准看護師と看護師の比較
同調査から准看護師と看護師の月給・賞与・年収を比較すると、次の通りとなります。
准看護師 |
看護師 |
|
---|---|---|
月給 |
29万6,200円 |
35万1,600円 |
年間賞与 |
62万7,300円 |
86万2,100円 |
年収 |
418万1,700円 |
508万1,300円 |
准看護師と看護師では月給で約5.5万円、年収で約90万円の差があります。看護師と比べて夜勤の多い病院で働く准看護師の割合が少ないことや、准看護師は指示を受けて業務をおこなうため、管理職やリーダー職への昇進が難しいことが影響していると考えられます。
7. 准看護師の将来性
女性が高等教育を受ける機会が限られていたことを背景に創設された准看護師資格ですが、現在は高校進学が当たり前となっています。加えて医療技術は日々進歩しており、看護職員には自ら判断して行動する能力がますます求められるようになっています。このような社会の変化から、准看護師の就業者数は年々減少しています。
しかし、准看護師には看護師と比べて資格取得にかかる時間や費用を抑えられるといったメリットがあります。定時制の養成所であれば働きながら、あるいは、育児をしながら資格取得を目指せるなど、准看護師はライフステージを問わずが目指しやすい資格です。さらに近年は高齢者施設や在宅サービスでのニーズが高まっており、慢性的な看護職員不足を補う存在でもあります。
准看護師は将来的に看護師を目指すことも可能です。早い段階で医療現場での経験を積める准看護師を目指すのか、それとも将来的なキャリアアップを見据えて看護師を目指すのかなど、自身の状況や働き方の希望に合わせて方向性を考えてみましょう。ジョブメドレーでは准看護師資格を活かせる求人を用意しています。自分に合った働き方を見つけてみてください。
参考
- e-Gov法令検索|保健師助産師看護師法
- 日本准看護師連絡協議会|公式サイト
- 日本看護協会|准看護師の方へ