人が最期に求めるのは家や家族、最期まで自宅で過ごせる世の中を作りたい

東洋経済の「成長ビジネス100」に選ばれるなど、業界内外から注目の集まるLife On Vital Element株式会社の代表として、在宅医療の提供体制作りに尽力されている多江和晃さんにお話をお聞きしました(2013/10/21)

まず、起業されたきっかけを教えて下さい。

私は大学の看護学科を卒業後、赤十字や大学病院で急性期医療に関わり、救命や治療が最優先の中で働いてきました。命の瀬戸際にある患者さんを救おうとする、緊張感のある仕事にやりがいを感じる一方で、延命よりも安らかな最期を望み、「入院したくない、家に帰りたい」という患者さんが多いことにジレンマを感じてもいました。

そこにニーズと可能性を感じ、在宅医療の会社に転職しました。訪問看護師として送る日常は、急性期医療の現場とは全く違うものでした。お恥ずかしい話、訪問看護を始めた当初は、深いところでモチベーションが上がりませんでした。私自身が若かったことが大きかったのだと思いますが、急性期と較べて緊張感が少なかったことも要因だと思います。そんな生活を送る中で、あるエピソードがありました。

当時のお客様が、奥様の食事介助の際に誤嚥させてしまい窒息状態に陥ったのです。主治医と連絡がつかず、SOSを受けた私が駆けつけたときは、すでにサチュレーションが50%をきっていました。急いで救急車を呼び吸引器を持ってきてもらいました。そして私が吸引器を使い、間一髪、奥さまは息を吹き返されたのです。処置をする私の背後で、お客さまは号泣されていました。『自分のせいで取り返しのつかない事態になるところを、君が救ってくれた』、『主治医より君を選びたい』と。

このエピソードがあり、2つのことを再確認しました。1つ目は、人は家や家族と生活したいという根源的な感情があるということ。2つ目は、自宅で最期まで生活していくことには生死と隣合わせのリスクが潜んでいるということ。この2つのことに取り組めるのは看護師しかいない。これは生涯を賭けて取り組むべきテーマだと思い起業をしました。

Life On Vital Elementの今の事業について教えて頂けますでしょうか。

Life On Vital Element株式会社 多江 和晃 様

私が最初に在宅医療に関わった場所であり、使命感を与えてくれたのが城南エリアです。Life On Vital Elementでは、まずこの城南エリアを「最期まで在宅ですごせる」地域にしたいと考えています。そのためには在宅医療のモデルケースと目されるほどの質の高いサービスが必要になるでしょう。そのサービスの質を実現したいと考えています。そしてそのノウハウを全国に広めたいというのが、将来のビジョンです。

当社ではこの考えに基づき、現在は自由が丘エリア(東京都内の城南から多摩地区)で6つの訪問看護ステーションを集中展開しています。規模感としてはエリア内のシェア2割を越えた所です。

サービスとしては、看護師による訪問看護のみで当初は始めましたが、ご活用者様(※注1)への的確なケアを考える中で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ職を配置していくようになりました。

先にお話したように、自宅で最期まで生活していくことには生死と隣合わせのリスクが潜んでいますので、設立時から、土日祝日、24時間対応というこだわりでサービスを提供しています。過激な言い方にはなりますが、これが出来ていない事業者が無くなれば良いなと思っています。また、ご担当をされるケアマネがいらっしゃらない方からのご相談が増えてくるなかで、些細な相談ごとを受け付けていけるよう同エリアで居宅介護支援事業所も展開しています。

将来のビジョンの実現に向け、そして目先のサービス着実に充実させていくために、毎年、改めた場で経営方針の発表をしています。私からの事業計画に関する発表だけではなくスタッフ全員の一年のマニフェストを発表し、目標意識を高めています。

訪問看護はやりがいがある反面、責任が大きいというイメージがあります。転職を躊躇される看護師さんも多いですよね。

仰るとおり、責任感は高く求められますが、それは病院勤務でも同じですし、看護師としてのやりがいの部分でもあります。ただ、ご活用者様との関係値が深くなる分だけ、プレッシャーに感じるのかもしれませんね。やはり訪問看護と病院での看護の違いとして一番大きいのは「時間」です。30分なり1時間なりという時間をご活用者様と向き合えるのが訪問看護の良い所です。じっくり時間を費やせるだけに、治療だけではなく、その方らしく生活するために必要なことを考えて病院勤務では出来ない深さで支援できます。その中で「ぜひあなたに来てほしい」と言われることは本当にうれしいことですよ。

さらに在宅看護は、ご活用者様の家族に対するケアを抜きにしては語れません。日々のケアはもちろん、最期の時を迎える心構えなど、きめ細かいサポートが必要です。言い換えれば、どのように毎日を過ごしたいのか、どう看取りたいのか、主導権はすべてご本人さまとご家族にあります。その辺りは病院勤務で身につくスキルとは異なりますので教育システムが必要です。それでもやはり病院看護師の経験は、訪問看護をする上で大きな財産になりますので、ご興味をお持ちの方は最初の一歩目を踏み出してみていただきたいと思いますね。

ただ、一概に訪問看護といっても、会社によって全く環境が違います。定員ギリギリの状態などは、全ての事業所で一度は通る道ではありますが、やはり経験者の方が安心して働けると思います。訪問看護未経験者の方は、ある程度体制の整った事業所から勤務を始めるほうが早く成長出来るかも知れません。

具体的にどんな事業所なのでしょうか。

Life On Vital Element株式会社 多江 和晃 様

例えば自由が丘ステーションには、現在スタッフが15名でチーム医療をおこなっています。内訳としては看護師が6名、理学療法士が6名、作業療法士が2名、言語聴覚士が1名です。

訪問看護と聞いてご想像される規模感より少し大きいかもしれませんが、ひとつのステーションの中に医療系の多種職が存在しているので、とても連携しやすいですね。また、誰かが得た“気付き”も共有されていますので、ご活用者さまがいつ、どんな状態になっても、そのステーションのスタッフは誰でも対応できるということです。このように、ある程度基盤が固まってきていますね。

そういう状況のため、必ずしもベテランの訪問看護経験者のみを採用しているわけではありません。訪問看護の経験がない方でもゼロから成長できる教育体制に力を入れています。

在宅医療のモデルケースを目指す当社ですから、理想としては「訪問看護の登龍門(成功するための入口)」になることだと考えています。簡単に言うと、当社で働けばどこに行っても一流だと思われる人材を育てるということです。そこを目指し、社内に「教育チーム」を結成して、教育・研修体制の改善・充実に取り組んでいます。大学病院のICU経験者や、米国でのRN(米国の看護師資格)保有者なども一緒に働いているチームですので、学べることは少なくないと思います。

研修はどんなことがあるのでしょうか。

当社では社内キャリアとして、ワークライフバランス型とキャリアアップ型の2つを用意しています。

ワークライフバランス型のキャリアは、訪問看護業務だけやりたいという方向け。キャリアアップ型は「最期まで在宅ですごせる地域」を作るために、訪問看護業務以外にも、組織を育てたりといった仕事に取り組みたい方向けです。いずれにしても、入社後しばらくは訪問看護業務に専念します。慣れてくるに従い、キャリアアップ型を目指すメンバーは、訪問看護業務以外に、プロジェクトチームに属して教育体制や業務体制を改善したりといった、会社の発展に向けて取り組みます。チームリーダーからステーションの管理者という、キャリアパスの道も開かれています。

研修は色々ありますが、入社後の導入研修は外部のコンサルティング会社に依頼することでスタッフが社会性を養うことにも力を入れています。業務に必要なOJT研修では、プリセプター制度を導入しています。先輩の指導のもと、訪問看護のポイントを吸収できます。また、スタッフの面談には特に力を入れ、一人ひとりのキャリアアップについてきちんと考えるようにしています。

「サービスの質を上げるにはどうしたら良いか」その問いを考えると、サービスを提供するのは「人」なのでそこに答えがあるのです。なので私たちは徹底してそこに力を入れていく必要があると思っています。そういった考え方から、同業他社と較べてはるかに高い給料設定をしています。

最後にメッセージをお願いします。

Life On Vital Element株式会社 多江 和晃 様

この前、ある応募者の方から、面接で『看護が大好きです』と言われたんです。シンプルなその言葉に、ハッとしました。当たり前すぎて忘れがちになりますが、「看護が好き」という想いがこの仕事の原点です。そうした気持ちをお持ちの方なら、当社の考え方に共感していただけることと思いますし、一緒に働きたいと心から思えます。

訪問看護に興味はあるけれど一歩を踏み出せない方は、是非見学にいらして下さい。

※ジョブメドレーの会員の皆様には面接前見学も受付中ですのでエントリー時にその旨を記載下さい。


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